EY Finance Summit 2026

EY Finance Summit 2026

未来を創るファイナンスを考える ~Future of Finance~

戦略的CFOが導く、経営変革の新時代 開催レポート



EY Finance Summit 2026

未来を創るファイナンスを考える ~Future of Finance~
― 戦略的CFOが導く、経営変革の新時代

開催日:2026年2月16日(月)
会場:帝国ホテル 東京
主催:EY Japan株式会社
共催:株式会社ビジネス・フォーラム事務局

開催趣旨

企業の持続的な成長と価値創造を支える「ファイナンス機能」は、いま大きな転換期を迎えています。経営環境の不確実性が一段と高まるなかで、CFOや経理財務部門、経営企画部門、そして監査役に求められる役割は、従来のバランスシート管理やガバナンス業務にとどまらず、経営の意思決定をリードし、変革を推進する戦略的パートナーへと進化することが求められています。

一方で、現場では課題も山積しています。グローバル経営の複雑化により、経営管理や資本配分の高度化、データ活用分析、人材、迅速な経営情報の可視化の難しさなど、構造的な制約が多くの企業を悩ませています。さらに、AIや自動化技術の進展に伴い、財務業務の効率化とガバナンスの両立、人材のリスキリングや新たなスキル体系の構築、また、資本市場からの「資本効率」や「企業価値向上」に対する要求が一段と高まりつつあります。

こうした背景のもと開催された「EY Finance Summit 2026」では、「戦略的CFOが導く経営変革の新時代」をテーマに、企業価値創造を支えるファイナンス部門の進化について多面的な議論が行われました。

企業の成長とレジリエンスを支える“攻めのファイナンス”をいかに実現するか。

本レポートでは、当日の講演・ディスカッションの内容をもとに、その様子をご紹介します。

参加者の属性

参加者の属性:部門別
参加者の属性:役割別



オープニング


EY Finance Summit 2026
未来を創るファイナンスを考える ~Future of Finance~
― 戦略的CFOが導く、経営変革の新時代

登壇者:

EY Asia Eastマネージング・パートナー
EY Japan チェアパーソン 兼 CEO 貴田 守亮

 


EY Asia Eastマネージング・パートナー EY Japan チェアパーソン 兼 CEO 貴田 守亮

「ポリクライシス(複合危機)」という言葉が象徴するように、現代の経営環境は複雑さを増しており、地政学リスクやAIの進化など企業が直面する課題は山積しています。

本セッションでは、EY Japanの貴田が登壇し、激動の時代にいてCFO(最高財務責任者)が果たすべき「役割」と、日本企業が世界で発揮すべき「ポテンシャル」について解説しました。


複合的危機がもたらす経営課題

現代の企業は、単一の課題ではなく、複数の危機が複雑に絡み合うポリクライシスに直面しています。
 

ダボス会議から見えた世界の潮流

貴田は冒頭、カナダの首相がダボス会議で提案した「中堅国同士の国家主導でのリスク管理」の動きに言及しました。インフレや地政学リスクが企業の持続可能性に直接的な影響を及ぼす中、すでに世界規模で機動的な対応が始まっています。
 

相反する要請に応える「経営の翻訳者」

激動の環境下において、日本のCFOは「短期的な業績重視」と「長期的な価値創造への投資」という、相反する要素のバランスをステークホルダーに理解してもらう難易度が一層高まっています。アクティビストと対峙しつつ株主還元を実現し、同時に海外子会社を含めた連結レベルでのガバナンス強化を両立させなければならないからです。これらを乗り越える成功の鍵は、複雑な経営課題の本質を、明確な財務戦略へと落とし込む「翻訳者」としての能力に他なりません。
 

AI投資とグローバル連携における真価

激変する環境を乗り越えるためには、テクノロジーの活用とグローバルな視点でのパートナーシップが欠かせません。
 

戦略的資産としてのAI活用

企業におけるAI投資のROI判断も、現在の重要なアジェンダとなっています。
AI投資は単なる効率化ツールではありません。同じアウトカム、あるいは新たな価値を創造するためにも、業務プロセスを根から変える「戦略的資産」と位置付けるべきだと指摘しました。その為にはCIO(最高情報責任者)に任せるのではなく、CFO自らが主導して経営戦略と内部統制を変革させていくことこそが、持続的な成長を実現するための解決策となります。
 

日本企業への期待

さらに貴田は、EYドイツの責任者から「エネルギーやサプライチェーンを軸に、日本とのさらなる関係強化を模索している」との相談を受けた事例を紹介。世界が日本そして日系企業との新たな連携を求めている現状を示しました。日本経済の再浮上に向け、バーティカルな強みを持つ日本の産業力をグローバルな文脈で再定義し、マルチステークホルダーを見据えながら国と会社を牽引していくことが求められています。
 

まとめ:CFOによる企業価値創造

講演の締めくくりに、貴田は「経営の翻訳者」として変革に挑むCFOへの期待を込めてメッセージを送りました。ポリクライシス時代において、未来を切り拓くためには、CFO自らがリーダーシップを発揮し、ステークホルダーとの納得感あるナラティブを築くことが不可欠です。


キーノートスピーチ


市場再編時代のCFOの役割:
資本コストを意識した経営とリスク管理

登壇者:

日本取引所自主規制法人 
常任理事(上場管理担当)
長谷川 高顕 氏

市場再編時代のCFOの役割:資本コストを意識した経営とリスク管理

日経平均株価が史上最高値を更新し、プライム市場における外国人投資家の保有比率が30%を超えるなど、市場環境は劇的に変化しました。かつて日本企業を規律付けていた、メインバンクを中心とするデットガバナンスの影響力は相対的に低下し、代わって株主や投資家との建設的な対話を重視する「エクイティガバナンス」への移行が不可逆的な潮流となっています。この市場再編時代において、企業はいかにして持続的な成長を実現すべきなのでしょうか。

本セッションでは、日本取引所自主規制法人の長谷川 高顕 氏が登壇し、東京証券取引所が要請する「資本コストや株価を意識した経営」の本質と、足元で高まる「リスクへの防衛策」について解説しました。CFOが果たすべき「攻めのガバナンス」と「守りのガバナンス」という2つの観点から、企業価値を最大化するための解決策をひもといていきます。

「形式的な開示」からの脱却と、真の「攻めのガバナンス」

東京証券取引所が、上場会社の企業価値向上のために資本コストや株価を意識した経営の推進・対話促進の要請を行って以来、多くの企業が対応を進めてきました。現状分析から計画策定、そして実行というサイクルの中で、足元ではプライム市場の約9割の企業が何らかの開示を行っています。しかし長谷川氏は、こうした現状に対して投資家から厳しい視線が向けられていると指摘します。その背景には、開示そのものが目的化し、企業価値向上に向けた抜本的な経営判断が十分に伴っていないのではないかという懸念があるといいます。
 

成功の鍵は「事業ポートフォリオの抜本的見直し」

投資家が真に求めているのは、形式的な対応やスローガンのような成長戦略ではありません。経営資源を最適に配分し、資本効率を最大化するための具体的なアクションです。長谷川氏は、企業価値向上の重要な鍵の1つは、不採算事業からの撤退や成長領域への資源配分といった「事業ポートフォリオの抜本的見直し」にあると明言しました。実際、資本コストを意識したノンコア事業の売却や、M&Aによる戦略的アライアンスを模索する企業は増加傾向にあります。また近年では、PBRが1倍を上回る企業であっても、事業のポテンシャルを十分に引き出せていないとして、アクティビストから提案を受けるケースが広がっています。
 

投資家との対話を深める「非財務情報の開示」

さらに長谷川氏は、「サステナビリティ領域の開示」と「親子上場のあり方への対応」が、今後の重要なアジェンダになると指摘しました。特に、気候変動などの環境リスクや、サプライチェーン上の人権リスクへの対応については、投資家からの要求が年々高まっています。また、日本企業に多い親子上場の形態についても、少数株主保護の観点から、その意義を投資家目線でロジカルに説明することが不可欠です。こうした課題に対し、投資家の期待を正確に把握した上で、それを上回る成長ストーリーを描くことが、グローバル市場で競争優位を確立するために重要であると長谷川氏は述べました。
 

足元をすくわれないための「守りのガバナンス」再構築

「攻め」の経営を加速させる一方で、企業を取り巻くリスク環境も大きく変化しています。
 

増加する「会計不正」と「サイバーリスク」

近年、会計不正や粉飾決算が相次ぎ、その波はガバナンス体制が整っているはずのプライム市場の上場企業にも及んでおり、第三者委員会を設置する事案が増加しています。 また、ランサムウェアによるサイバー攻撃も多発しており、決算データの喪失による有価証券報告書の提出延期など、事業存続を揺るがす深刻な事態も発生しています。 長年築き上げたブランドや社会的信用は、たった一度の不祥事で瞬時に毀損し、企業価値を大きく損なう結果を招きかねません。見えない脅威に対して常にアンテナを張り、組織全体でリスク感度を高めておくことが急務となっています。
 

内部統制強化に向けた実務指針

長谷川氏は、日本取引所自主規制法人が公表した「不祥事予防・対応のプリンシプル」や、本年発行された「内部統制の強化・不祥事予防に向けたハンドブック」にも触れました。これらは、不祥事の未然防止や発生時の対応、さらには再発防止策の事例などを整理した資料であり、企業が内部統制の強化を検討する上で参考となるものです。自社の取り組みを見直す際の一助として活用してほしいと呼びかけました。
 

まとめ:経営の「ナビゲーター」としてのCFO

最後に長谷川氏は、これからのCFOに求められる役割の重要性を改めて強調しました。資本コストを意識し、抜本的な事業再編を牽引する「攻めのガバナンス」と、複雑化する不祥事やサイバーリスクを検知し、組織をコントロールする「守りのガバナンス」。これら相反する機能を高度なレベルで統合し、経営判断の羅針盤となることができるのは、企業全体の情報を数値として把握しているCFOをおいて他にありません。CFOが財務の専門家という枠を超え、ファイナンス思考に基づき経営戦略の中枢でリーダーシップを発揮していくこと。その変革への意志と行動が、市場再編という激動の時代を乗り越え、日本企業の企業価値向上に向けた重要な鍵になるといえるでしょう。


鼎談


CFOアジェンダ:これからのCFOの役割

登壇者:

日本取引所自主規制法人
常任理事(上場管理担当)
長谷川 高顕 氏

EY Japan マネージング・パートナー/アシュアランス
EY新日本有限責任監査法人 理事長 
松村 洋季 

EY Japan マネージング・パートナー/コンサルティング
EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 代表取締役 
吉川 聡 


鼎談 CFOアジェンダ:これからのCFOの役割

不確実性が常態化する現代の経営環境において、CFOの役割は、従来の単なる数字の管理者から大きく変容しています。
キーノートスピーチの論点を引き継ぐ本セッションでは、日本取引所自主規制法人の長谷川 高顕 氏に加え、EY Japanの松村 洋季と吉川 聡が登壇し、市場再編時代におけるCFOの真の役割について活発な議論が交わされました。
 

EY Japan マネージング・パートナー/コンサルティング EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 代表取締役 吉川 聡
 

VUCA時代に求められる「集団経営」とCFOの役割

地政学リスクや気候変動、急速なテクノロジーの進化など、企業を取り巻く環境は予測困難なVUCAの時代へと突入しています。
 

 

予測不可能な時代における「経営の質」の転換

吉川は冒頭、多くの経営トップとの対話を通じて見えてきた経営環境の劇的な変化に言及しました。かつては精緻な中長期計画を立て、それを計画通りに実行する「予測して当てる経営」が主流でした。しかし、前提条件が次々と崩れる現代の環境下においては、当初の計画に固執するよりも「計画修正の早さ」や「完璧主義よりスピード」が重視されるようになっています。こうした経営の難易度上昇に伴い、もはやCEO単独のカリスマ性のみで意思決定を下すことは困難です。複雑化する経営課題に対応するためには、CEOを支え、CFOをはじめとするCXOチームが強固に連携してかじ取りを行う「集団経営」へのシフトが不可避の潮流といえるでしょう。
 

 

次世代CFOに求められる「3つの進化」

この集団経営において、中心的な軸となるべき存在がCFOに他なりません。全事業や全投資、全リスク、そして全ステークホルダーを横断的に俯瞰できる唯一の役員として、CFOへの期待はかつてなく高まっています。吉川は、次世代CFOが備えるべき要件として、「可視化するCFO」「意思決定を加速させるCFO」「資本市場と経営をつなぐCFO」という3つの進化を提示しました。複雑化する事業構造のブラックボックスを残さず、数字によって経営を可視化すること。そして、リスクを恐れて投資を止めるブレーキ役ではなく、成長に向けた「ハンドルとナビ」を握る存在になることが求められていると述べました。

日本取引所自主規制法人 常任理事(上場管理担当) 長谷川 高顕 氏
 

「社内アクティビスト」としての機能

CFOの役割が際限なく広がる中、企業価値を最大化するためには「攻め」と「守り」の両輪を高い次元で統合しなければなりません。
 

 

攻めと守りを両立させるバランス感覚

長谷川氏は、CFOが果たすべき責任範囲が急速に拡大している事実に言及しました。事業ポートフォリオの最適化やM&A戦略といった「攻めのガバナンス」を牽引する一方で、サイバー攻撃や企業不祥事のリスクが高まる現代においては、内部統制をはじめとする「守りのガバナンス」の再構築も急務となっています。また、サステナビリティ領域の開示やデジタル技術の活用など、従来は管轄外とされがちだった新たなアジェンダに対しても、CFOがリーダーシップを発揮することが求められています。こうした多岐にわたる課題に対し、攻守のバランスを保ちながら経営のかじ取りを担うことが、持続的な成長に向けて重要になると指摘しました。 

EY Japan マネージング・パートナー/アシュアランス EY新日本有限責任監査法人 理事長 松村 洋季
 

トップや事業部門に切り込む「社内アクティビスト」

松村は、監査法人のトップとしての視点から、CFOが「社内アクティビスト」として機能することの重要性を説きます。ある歴史ある企業の事例では、外部から招聘されたCFOが、既存の事業や資産のあり方に自ら厳しい問いを投げかけ、抜本的な改革を推進しているケースが紹介されました。外部のアクティビスト(いわゆる物言う株主)から厳しい指摘を受ける前に、CFO自身が社内の“聖域”に切り込み、論理的かつ冷静な判断を下せる体制を平時から整えておくこと。こうした社内対話の積み重ねが、資本市場からの信頼を高め、予期せぬリスクから企業を守る上で重要になると松村は指摘しました。
 

 

まとめ:未来のファイナンス 

最後に松村は、EY Japanとして、今後も横断的な経営課題に対して幅広いプロフェッショナルが寄り添いながら、未来のファイナンスについて意味のある対話を深めていきたいと述べ、鼎談は幕を閉じました。



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