EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
機能の拡張と接続性の改善を図り、新しい革新的なサービスを生み出した金融機関の事例をご紹介します。
本事例では、クラウドマイグレーションの成功を左右する重要なナレッジが示されています。現実的なクラウドマイグレーションの進め方として、単にクラウド導入を目的とするのではなく、周辺の課題にも目を向けることが重要です。例えば、関連する法令の遵守や、クラウド化に伴う品質管理、利用者のアクセシビリティの変化に対応したセキュリティ対策など、多岐にわたる検討事項があります。これらを見落とさないためには、組織横断的なチームやCCoE(Cloud Center of Excellence)組織の組成などの体制整備が不可欠です。さらに、プロジェクト推進に当たっては、経営層のビジョンや現場の意見を反映し、全社的な合意形成を図ることも成功の鍵となります。EYでは、クライアントの経営課題や目指す姿に寄り添い、必要な専門性を持つチームが全方位的にクラウドマイグレーションを推進し、クライアントのビジネスの成功に正しく寄与するよう伴走支援します。
松本 剛
EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 テクノロジーコンサルティング デジタル・エンジニアリング リーダー/マイクロソフト リーダー パートナー
山浦 一季
EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 テクノロジーコンサルティング マイクロソフト サブユニットリーダー アソシエートパートナー
The better the question
大手投資銀行が、事業計画の柱にクラウドを取り入れた方法を見てみましょう。
重要なアプリケーションやインフラをクラウドへ移行することが、保守的でリスク回避型の組織にとっても今では当たり前の選択肢になっています。クラウドの魅力については、例えばイノベーションの加速、組織における俊敏性(アジリティ)の向上、業務の簡素化、あるいは単純に本業への集中など多様な理論的根拠があり、それは誰もが認めるところでしょう。
しかし、適切なクラウドジャーニーの計画がないまま突き進んでしまうと、ただ多額のコストがかかり、期待外れの結果になりかねません。失敗の形はそれぞれ違いますが、いくつかの共通点が浮かび上がります。まず初めの段階で経営層が壮大な目標を掲げ、多くの場合、クラウドの取り組みに個人的に強い関心を持っています。そして数多くある他のITプロジェクトと同じように、その全体管理はIT部門に一任され、華々しくスタートします。残念ながら、実際のクラウド移行は複雑なため、いくつかのアプリケーションを導入したところで行き詰まることがよくあります。その結果、多くの時間と費用が無駄になり、当初は意気揚々としていた経営層も落胆してしまうのです。
こうした失策を避けることが、ある大手グローバル投資銀行にとって大きな動機となりました。当時、同社では3年間にわたるクラウドシフトにかじを切る戦略的なテクノロジー変革プロジェクトを開始するところでした。本プロジェクトの主な目的には、業務機能の拡大、データエコシステム全体にわたる接続性の改善、新たな洞察の獲得、そして革新的な新サービスの創出などが挙げられていました。
同社は、クラウドの取り組みに生じやすい障害を取り除き、プロジェクトの成功率を上げるために、EYに協力を依頼しました。そこには、いくつかの本質的な理由がありました。まず、EYはクライアント企業のビジネス課題や規制動向を踏まえた一貫したアプローチを提案しました。また、クラウドや先端技術、テスト、データ、サイバーセキュリティ領域で豊富な経験を持つ多様な人材を国内外から招集してチームを編成しました。さらに、データ戦略や開発プロジェクトにおけるEYの実績が同社内であり、すでに信頼関係が醸成された状態で、経営層とのつながりがあったことも背景にありました。
The better the answer
経験豊富なクロスファンクションチームの構築が、プロジェクトの土台となりました。
EYはプロジェクトの始動に当たり、ビジネス部門やIT、リスク管理、サイバーセキュリティのそれぞれの代表者を含むクロスファンクショナルチームの体制づくりが、最良の成果につながると判断しました。そこで、クラウドへの移行対象となるシステムやサービスをすべて洗い出し、多岐にわたる規則的なプロセスを定義し、効率よく全体の移行計画を支援しました。また、クライアント企業と密接に協業し、戦略、ガバナンス、アーキテクチャ、オペレーションについて考慮すると同時に、セキュリティやコンプライアンス違反を防ぐための適切なルール設計にも力を入れました。さらに、最終的にクライアント企業内でオペレーションを管理することを常に念頭に置き、移行後の運用を引き継ぎ、将来にわたって自走できる体制の土台を整えました。
クライアント企業がクラウドサービスにMicrosoft Azureを選定したことにより、EYはMicrosoftと緊密に連携し、金融向けサービス基盤となるプラットフォームや再現性の高いソリューションの開発を常に強化しています。これらのソリューションが規制業界におけるビジネス変革の原動力となり、クラウドの利点を生かして規制課題を乗り越え、イノベーションの創出を支えます。また、EYが技術設計・構築を担当し、Microsoftは Azure基盤の手厚いサポートを提供しました。さらに、Microsoftのチームはクライアント企業とのさまざまな打ち合わせやインタラクションに参加し、プログラム資料をレビューし、技術的知見を提供しました。
➜ 重要な組織目標を達成するための包括的なクラウド戦略
➜ 再現性の高いベスト・プラクティスを集約したクラウドCoE(センター・オブ・エクセレンス)
➜ 必要最低限の機能で構成されるクラウド「MVC」(ミニマル・バイアブル・クラウド)用途のアーキテクチャ、拡張性、セキュリティ、および将来の先端ニーズを組み込んだMicrosoft Azureランディングゾーン初期版
➜ リスクとポリシーを整合させ、コンプライアンスとセキュリティレベルを確保するための管理フレームワーク
➜ クラウド適用型オペレーションモデル(クラウドアプリケーションの展開は、オンプレミスとは質的に異なることを前提としたもの)
➜ Microsoft Azureの利点を生かした、クライアント企業における主要5つのアプリケーション領域の再設計とクラウド移行
The better the world works
論理的で一貫したアプローチが、本業に専念する動機付けになりました。
本プロジェクト開始に当たり、EYはクライアントの早急なクラウド移行ニーズを認識していましたが、無理な方法を望んでいないことも理解していました。最良の成果を得るためには、インテリジェントかつ持続可能な手法を適用することが重要だと考えました。そのためには、まずクライアント企業、Microsoft、およびEYで構成される適切なクロスファンクションチームを編成することから開始し、常に関係者間で情報共有する体制を整えました。
EYは規制要件や銀行業界の課題を理解していたため、ガバナンスやコンプライアンス、セキュリティ上のリスクを最小限に抑えることができました。また、短期間で現実的な結果を出すことを重視したアジャイル手法により、Azureクラウド上にアプリケーションを展開しました。それにより、机上の計画プロセスに時間をかけすぎて、稼働に至らない事態を回避しました。
アジリティと再現性を実現するためには、標準的な枠組みを超えた堅固なアーキテクチャの設計や、CoEの設立などの視点が必要です。例えば、クラウド変革において品質保証の考慮がおろそかになる、もしくは軽視されがちです。本プロジェクトでは、クライアント企業においてより広範でかつ洗練されたDevOpsプロセスに組み込める自動化テスト戦略をEYが策定しました。また、監視・管理も習慣的に後回しにされやすいため、プロセス詳細レベル、組織構造、スキル評価、役割と責任を含むクラウドガバナンスとターゲット・オペレーティング・モデル(TOM)を設計しました。さらに、プロジェクト全体で継続的な学習・改善を取り入れたことで、他領域への流用性が高く、自動化された設計パターンとプロセスを開発することができました。
こうしたすべてが相互作用する取り組みは、大きな成果につながりました。あるクライアント企業のシニアエグゼクティブによると、EYが主導した本プロジェクトにより、クラウド移行期間が12カ月短縮したとのことです。その結果、同社は新しいクラウド環境に他のアプリケーションも迅速に移行でき、クラウド本来の開発機能やサービスを最大限に活用する体制を構築できたのです。
EYの関連サービス
継続的に適応できる構成可能なアーキテクチャとエコシステムを活用した次世代クラウドコンピューティングは、ビジネスプランを加速させ、長期的価値(Long-term value、LTV)を創出します。
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