EYの事例

ファイナンス業務の変革を大きく前進させたマイクロソフトのAIイノベーションとは

新興テクノロジーを活用してファイナンス業務を変革し、チームの力を高めるとともに、競争優位性を築いているマイクロソフトの取り組みをご紹介します。


EY Japanの視点

AI活用で経理財務部門の業務改革を加速

昨今、日本企業の経理財務部門においてもAI導入は進み、日常業務の中で生産性向上に活用され始めています。一方、その多くは単純作業の効率化など個人レベルでの活用にとどまっており、今回のマイクロソフト社の事例のように、組織横断的な業務改革(イノベーション)を実現し、AIの導入に関して十分な投資対効果(ROI)を達成している日本企業はまだまだ少ないのが現状です。

 

本記事では、マイクロソフト社が新製品導入時のファイナンス業務プロセスの中にAIを組み込むことで、新製品の導入スピードを飛躍的に改善させた事例を紹介しています。この取り組みは、AIの活用による高度な分析業務の効率化を通じて、ファイナンス部門がビジネス上の競争優位性の創出に貢献し得ることを示しています。日本企業にとっても、AI活用をイノベーションへと発展させていくための重要な示唆を与える好事例と言えるでしょう。

EY Japanの窓口

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The better the question

AIイノベーションはファイナンス業務の将来像をいかに塗り替えるのか?

業務プロセスの高度化と効率性向上を目指してマイクロソフトが展開した、データドリブン戦略をひもときます。

新興テクノロジーが日進月歩で進化する中、競争優位性を維持するにはイノベーションが不可欠です。この点を踏まえ、テクノロジーと人工知能(AI)の分野で世界をけん引するマイクロソフトは、自社のファイナンス部門の継続的な進化を重要な取り組みとして位置付けています。

 

この方針の下、同社は、データリテラシーの向上と社内に蓄積されてきた知見の活用を目指し、まず、数万点に及ぶ詳細な財務関連の過去ファイルを集約し、それらに自然言語で照会可能な単一のナレッジライブラリを構築する構想を打ち出しました。加えて、製品開発に関連するファイナンス業務の時間効率と生産性を高めることを目的に、過去の製品投入情報の検索・取得をAIで自動化できないか、その可能性についても検討しました。

 

こうした背景のもと、マイクロソフトは、自社が保有する膨大な財務データに秘められた価値を引き出すため、EYのプロフェッショナルと協働しました。この協働を通じて、同社は重要なインサイトを得るとともに、それをもとにベストプラクティスを実践し、デジタルエンジニアリング、AI、データ分析における専門性を高めました。

 

マイクロソフトでGM of Finance Data and Experiencesを務めるSebastian Ayala氏は、次のように述べています。「私たちがテクノロジーを最大限に活用しイノベーションを追求する中で、EYはファイナンス部門の変革において極めて重要な役割を果たしてくれました。ファイナンス・オペレーション分野における豊富な経験に加え、グローバル規模での対応力と機動力は当社の強みを補完し、ファイナンス部門へのAIソリューションの導入を成功に導きました。その結果、業務効率をこれまでにない水準へと高めることができました」

 

こうした取り組みは、マイクロソフトが拡張性を前提としたソリューションに強くコミットしていることを明確に示すとともに、効率的でデータドリブンな業務環境の実現にもつながっています。またユーザーの能力が最大限に引き出され、製品開発のリードタイムが大幅に短縮されるとともに、イノベーションの効果が企業全体に広がっています。

ファイナンス・オペレーション分野における豊富な経験に加え、グローバル規模での対応力と機動力は当社の強みを補完し、ファイナンス部門へのAIソリューションの導入を成功に導きました。その結果、業務効率をこれまでにない水準へと高めることができました
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The better the answer

マイクロソフトはAIを活用し、ファイナンス業務を抜本的に変革

AIを活用したアプリケーションは、データフルエンシー(データを理解し、活用する力)を高めるとともに、財務プロセスの効率化とタスクの自動化を通じて生産性を向上させ、意思決定に役立つインサイトを提供します。

マイクロソフトは、AIを活用してファイナンス部門の効率化を図るため、「Replay AI」と「Finance Launch AI」という2つの施策を並行して推進しました。   

Replay AI:財務データを一元化し、照会と分析を容易にする 

その第一歩として取り組んだのが、Replay AIの構築です。Replay AIは、複数の異なる財務データベースに接続されたさまざまなAIアプリケーションを一元的に集約したエコシステムです。こうしたモジュール型AIプラットフォームを構築したことで、要約、抽出、分析といった中核機能をさまざまなアプリケーション間でシームレスに利用できるようになり、最小実行可能製品(MVP)の開発を従来よりも迅速に進められるようになりました。このアプローチにより、分散していたシステム基盤は単一の環境に集約され、これにより、一貫したユーザー体験が提供され、運用負荷の軽減と、新機能の市場投入までの期間短縮が実現しました。

さらにReplay AIでは、自然言語による操作が可能となり、ファイナンス部門や事業部門の担当者は、技術的な専門知識を持たずとも、複雑な計算やデータ分析を行えるようになりました。Replay AIは文書の要約やファイルの翻訳、大規模データセットからの傾向・パターンの把握といった機能も備えているため、AI活用の幅が広がり、企業全体の財務データフルエンシーの向上につながっています。Replay AIはまた、自然言語処理(NLP)を活用してユーザーの質問を構造化クエリ言語(SQL)へと自動変換し、財務情報を図表やグラフで可視化した詳細なレポートを生成することもできます。これにより、将来のトレンド予測に役立つインサイトを迅速に獲得できるようになりました。

Finance Launch AI:自動化で、製品投入プロセスを効率化する 

Finance Launch AIは、大規模言語モデルを活用したチャット型アプリケーションです。主な機能として、重要なファイナンス業務プロセスの簡素化、ユーザーの生産性向上、新製品投入に伴う各種タスクの自動化を実現します。本アプリケーションを活用することで、新製品投入の責任者は、市場展開に必要な主要要件に関するデータやインサイトを包括的に取得できます。Finance Launch AIの中核を成すのはナレッジライブラリで、これは、Excel、Word、PDF、PowerPoint、電子メール、JPEG、OneNote、Visioなど、さまざまな形式の自社独自の過去データを集約したリポジトリです。

Finance Launch AIでは、AIを活用することで、市場投入前の仕様書から導入後の報告書の要約に至るまで、幅広い財務関連資料にファイナンスチームが容易にアクセスできるようになっています。こうしたアクセス性の向上により、企業内の知見が体系的に蓄積され、最適な市場投入条件を見極めるための検討に要する期間も大幅に短縮されます。さらに、過去の類似する市場投入データを分析・評価することで、要件検討プロセスを簡素化します。こうした機能により、プロセスに関する複雑な文書を理解・要約するファイナンスチームの能力が高まり、新製品の市場投入を個々の状況に即してカスタマイズするための有用なツールとなっています。 

Finance Launch AIの特筆すべき機能の1つは、初期段階の財務要件のドラフト作成を自動でたたき出せる点です。これにより、マイクロソフトの従業員は貴重な時間と労力を節約できるようになりました。例えば、ある特定の地域で新たな在庫管理単位(SKU)をリリースするにあたり、担当者が社内の税務やコンプライアンス上の留意点について確認したい場合、Finance Launch AIはわかりやすく的確な回答を提示します。また、未充足の要件を洗い出し、類似した製品投入の事例や関係する主要なステークホルダーを明らかにすることで、担当チームは自信を持って業務を進めることができます。   

EY Americas Generative AI LeaderのDavid Guarrera博士は、次のように述べています。「Replay AIとFinance Launch AIには、回答生成の際に信頼できる情報源を参照できるよう、検索拡張生成(RAG)が実装されており、これがシステムのパフォーマンス向上を支えています。このような責任あるAIアプローチにより、正確性・関連性・実用性の高い回答が可能となり、システムに対する信頼性と信用が高まります」

マイクロソフトのファイナンス部門は、Replay AIとFinance Launch AIを通じて、業界の変化に対応するだけでなく、その先頭に立って変革を主導しています。これら2つの革新的AIは、ファイナンス部門にとどまらず、企業全体の生産性とインサイトを、新たな次元へと押し上げる可能性を秘めています。

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The better the world works

Replay AIとFinance Launch AIがもたらす価値

効率性とスピードの飛躍的向上

Replay AIとFinance Launch AIによってファイナンス部門の大幅な効率化を実現したマイクロソフトの事例は、新興テクノロジーが企業にもたらす価値を示す画期的な好例です。 Finance Launch AIは同社で急速に利用が広がっており、ユーザーからは「まるで魔法のようだ」と評価する声も上がっています。 

マイクロソフトでは現在、100名を超える財務担当者がFinance Launch AIを日常業務で活用し、数百件もの文書や数千ページに及ぶ情報をわずか数秒で検索し業務に役立てています。これは、従来の業務プロセスの前提を覆す、まさにゲームチェンジャーと呼ぶべき成果です。こうした成果は、このテクノロジーの有効性を裏付けるものであり、新製品導入に必要な財務要件の洗い出しと情報収集に要する期間を、従来の6~8週間から3~4週間へと短縮するというマイクロソフトの目標達成を支えています。

一方、Replay AIの活用によって、AIアプリケーションのMVP開発に要する期間は、従来の4カ月から6週間へと大幅に短縮されました。その背景には、マイクロソフトの各部門が、さまざまなAIプロジェクトで共通して必要となるコンポーネントを再利用できるようになったことがあります。これにより、ゼロから開発する手間が省かれ、企業全体でのAI導入コストの大幅な削減が実現しました。Replay AIはまた、データやインサイトへの安全なアクセスと、一貫したユーザーエクスペリエンスの確保にも寄与しています。

こうしたテクノロジーは、AIによってファイナンス部門の複雑な業務プロセスを変革・効率化するとともに、ユーザーが自然言語を通じて企業内の知見やデータを自在に活用できることを示し、業界全体に新たな基準を打ち立てています。


Replay AIにより、MVP開発期間が
75%
短縮されました。
Finance Launch AIにより、新製品導入に必要な財務要件の洗い出しと情報収集に要する期間が
50%
短縮されました。

マイクロソフトがファイナンス業務の変革に成功した背景には、いくつかの重要な戦略がありました。第一に、社内のさまざまな部門から専門人材を集め、プロジェクトに参画させることで、部門横断的なニーズや課題を包括的に把握しました。第二に、モジュラー設計を採用してシステムを開発したことで、個別に交換可能なコンポーネントの実装が可能となり、柔軟性と拡張性が向上しました。第三に、概念実証(POC)を通じてシステムのテストと検証を行うことで得られた貴重なインサイトをもとに、初期の小規模な開発段階のものに対して改良を重ねました。第四に、責任あるAI戦略のベストプラクティスを取り入れることで、データセキュリティを確保するとともに、ハルシネーションのリスクを抑え、AIへの過度の依存を回避しました。

マイクロソフトのAyala氏は、「当社のAIを活用したソリューションは、業界全体の効率性とイノベーションを新たな水準へと引き上げています」と述べています。その上で同氏は、次のようにコメントしています。「複雑なプロセスを簡素化し、データ分析に要する時間を短縮するReplay AIとFinance Launch AIは、単なるツールではありません。財務エクセレンスの実現を推進する上で欠かせない、信頼できるパートナーです」


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