EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
要点
EY Japanの視点
不確実性が高い環境下における新規事業の実践は「計画の完成度(成功確率追求)」ではなく「学習速度(試行回数)」を競争力の源泉にすることがポイントです。机上での計画を深掘りし続けるのではなく、小さく試し、顧客・現場・データによる示唆で投資配分を素早く組み替えることで、失敗コストを抑えつつ新規事業の探索を加速できます。課題は、稟議(りんぎ)や年度予算、部門最適が意思決定を遅らせ、失敗回避の評価文化が実験の継続を阻みやすい点です。解決には、①テーマ別に権限移譲した投資枠(検証予算)と迅速な承認、②売上KPIに加えて学習指標(検証数、転換率、継続率等)を経営KPIに組み込み、③プロダクト・サービスチーム(プロダクト・マネージャー)だけでなく、プロダクトマーケティング、営業などの現場を起点とした共創と越境チームの常設化(短サイクルのスプリント運用)が鍵となります。
Section 1
SkiStar社は、新たなビジネスの可能性を引き出し、顧客基盤を拡大するために、プロトタイプを作りながら関係者と共創で形にしていくプロセスを採用しました。
SkiStar社は、住宅、小売、レジャーを含むアルペン観光におけるエンド・ツー・エンドのソリューションを提供する、売上高42億SEK(約39億米ドル)のスウェーデン企業です。同社は、スウェーデンおよびノルウェーにおいて、スカンジナビア最大級のアルペン山岳リゾートを運営しています。
スカンジナビアを代表するホリデープランナーとしてSkiStar社は、冬はアルペンスキー、夏はアウトドアやスポーツを楽しむアクティブな休暇を通じて、記憶に残る体験を創出することを目指しています。
事業を継続的に成長させ、気温上昇という将来の厳しい環境変化に備えるために、SkiStar社は自らが変化する必要があると認識しました。冬の休暇スポットというイメージから脱却し、一年を通して世界中の人々が訪れる観光地へと進化することを目標に、SkiStar社は顧客エンゲージメントを強化・維持する方法を模索し始めました。
さらに、新たな収益源を創出するために、SkiStar社は将来のビジネス投資領域を特定し、革新的で顧客中心のサービス提供を通じて、成長を加速させることを目標に掲げました。同社は、戦略の具体化を図るため、将来のイノベーションにつながる領域の開発を検討しました。また、今後の事業を形成・拡大し得る製品コンセプトを、プロトタイピングやテストを通じて検証することで、戦略を実行段階へと移行させたいとも考えていました。
では、EY Studio+チームはどのようにして、SkiStar社が最適なビジネスオポチュニティを見いだすための支援を行ったのでしょうか。また、このコラボレーションは、どのようにしてリスクを低減しつつ、将来の実行に向けて従業員の賛同を得ながらイノベーションを進めることを可能にしたのでしょうか。
EY Studio+チームは、既存の働き方やサービスをポートフォリオに追加する従来のプロセスに挑戦するため、SkiStar社に対して仮説検証型の戦略を採用することを提案しました。このアプローチでは、最初の段階から経営層と従業員を巻き込み、すべてのステークホルダーが将来のオポチュニティを特定するプロセスに関与し、その追求に対してインスピレーションと当事者意識を持てるようにすることを重視しました。
Section 2
EY Studio+チームは、SkiStar社の従業員を巻き込みながら、最適なオポチュニティを見いだし、それらを並行して検証する支援を行いました。
EY Studio+チームがこのアプローチを選択した理由は、あらゆる変革において最も困難な点はその実行段階にあるからです。変革の初期段階から人材を巻き込むことで、SkiStar社の従業員は共創者となり、イノベーションに対する当事者意識を持った自発的な実行者となることができました。これは、EYのデータにも裏付けられており、人材を変革の中心に据えることで、イノベーションの成功の可能性は70%以上高まることが示されています。この手法は、一般的に企業の上位5%程度しか理解していない従来型の戦略アプローチと比べて有効です。従来のアプローチでは、実行段階で戦略が機能せず、プロジェクト後半にフラストレーションが生じがちでした。同様に、最近のEYの調査では、変革を「継続的な適応を要する動的なプロセス」として捉え直すことで、従業員のフラストレーションをプログラムへの活力へと転換し、全体的な成功を高められることが示されています。
EY Studio+チームは、私たちが既存のオペレーションを超えて考えるための新しい働き方に挑戦させ、アイデアを実現することが現実的かつ楽しいものだと感じさせてくれました。
このプロセスの一環として、EY Studio+チームは3つの異なる共創型ワークショップを実施しました。
これら4つのオポチュニティのうち3つについては、現在、実行可能性と魅力度を高めるために、プロトタイピングおよびコンセプト化が進められています。
「このチームは、私たちが既存のオペレーションを超えて考えるための新しい働き方に挑戦させ、アイデアを実現することが現実的かつ楽しいものだと感じさせてくれました。従業員が経営層と戦略を共創することで、これまで見えなかった可能性が開かれました。ここまで開発してきたものを次の段階へスケールさせていくのが待ちきれません」と、SkiStar社のCEOであるStefan Sjöstrand氏は述べています。
このプロセスは、SkiStar社における戦略の実行を加速させています。例えばValleのプロジェクトでは、すでに30組の家族がさまざまなアクティビティのテストに参加しています。テストグループは、新しいヘルシーなレシピの試行や、ゴミ拾い活動などに参加し、新しいプラットフォームのコンテンツを評価するためのフィードバックを提供しています。
このように、戦略は策定と同時に検証されており、より迅速な実行と新たな収益源の創出につながっています。
Section 3
戦略を現場で検証することで、自信を醸成し、ステークホルダーの賛同を得ることができます。
SkiStar社での取り組みは、戦略の策定と並行して検証を行うことが、大規模なグローバル企業においても有効であることを示しています。このアプローチはまた、変革の中心に人材を据えることの重要性を確立し、関係者全員のエンゲージメントを維持することにも寄与します。現在、組織内では、この戦略検討を通じて生まれたさまざまな取り組みを展開していくことに対し、大きな期待感が広がっています。例えば、Valleアプリはすでに2023年初頭にリリースされています。もう1つの取り組みである、採用プラットフォームおよび連携するアカデミーについても、まもなく展開が予定されています。
EY Studio+ Nordics Business Reinvention LeaderのLisa Lindströmは、「密接なコラボレーションとオープンな姿勢によって、非常に短期間で大きな価値を創出することができました。今後このコラボレーションからどのような成果が生まれるのか、とても楽しみです」と述べています。
SkiStar社の新規事業開発へのアプローチには、従来型の戦略アプローチと比べて、いくつかの利点があります。
戦略はすでに一般市場で検証されており、従業員も初期段階から関与しているため、自発的な実行者となっています。これは、実行こそがあらゆるイノベーションにおいて最も困難な部分であるため、非常に重要です。共創の中心に従業員を据えることで、彼らは最初からプロジェクトにコミットします。スピードの源泉は、盛大で高コストなローンチに向けて壮大な構想を練ることではなく、2週間のスプリントでアイデアを形にし、テストを繰り返すことにあります。
この実験的なアプローチにより、戦略を実行するチームは、大きな投資を行う前に、「有望な方向性かどうか」、確信を持って判断できます。これによりリスクが低減され、組織として実行可能な戦略に投資しているという妥当性が高まります。
取締役会やその他のステークホルダーは、戦略が実際に動いている様子を見ることで、その内容を理解できるため、賛同を得やすくなります。
EY Studio+チームの間には、「イノベーションがあまりにもリスクが高いと感じられる場合、それはどこか間違っている可能性が高い」という共通認識があります。イノベーションは企業にとって極めて重要であるため、成功の可能性が低いものに信頼を預けるべきではありません。戦略を策定と同時に検証することで、リスクを抑えつつ、より迅速な実行が可能になります。こうしたプログラムを推進するにあたり、EY Studio+チームは、移行を支援するために多層的な共感を持ち込み、何よりも変革にスピードをもたらしています。
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SkiStar社は通年型ビジネスへの転換に向け、共創型の仮説検証アプローチを採用。プロトタイピングを通じてリスクを抑えつつ実行力を高め、成長機会の創出を加速した。
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