経済価値ベースのソルベンシー規制~ESRアップデート~

経済価値ベースのソルベンシー規制 ~ESRアップデート~(2025年7月)


経済価値ベースのソルベンシー規制等に関する法令案の公布により、2026年3月31日より本規制が保険会社に適用されることになりました。本記事では、経済価値バランスシートの監査に焦点をあてて、主要な内容をご紹介します。


要点

  • 日本公認会士協会(以下、「JICPA」)は、経済価値バランスシートの監査に係る実務上の指針を公表した。
  • 保険業法施行規則別紙様式第7号第13の3(記載上の注意)2等において規定された個別及び連結の経済価値バランスシートおよびその注記が監査対象となる。
  • 監査の基準は、想定利用者である監督当局によるESR規制への対応のために設定され(特別目的の財務報告の枠組み)、当該バランスシート作成基準への準拠性を検証する(準拠性の枠組み)。
  • 本実務指針は、2025年4月1日以後開始する事業年度の年度末に係る経済価値バランスシートに対する監査から適用される。


1. 業種別委員会実務指針第75号 「経済価値ベースのソルベンシー規制に基づく経済価値バランスシートに係る監査上の取扱い」(以下、「実務指針第75号」)の公表

2025 年7月 23 日に金融庁より公布された改正保険業法施行規則等の公布により、2026年3月31日より経済価値ベースのソルベンシー規制が保険会社に適用され、経済価値ベースのソルベンシー・マージン比率(以下、「ESR」)の算定が求められることになりました。

経済価値バランスシートに関する監査について、保険業法施行規則別紙様式及び保険会社向けの総合的な監督指針等に規定されました。これにより、監査人が独立の立場から、経済価値バランスシートに対する意見を表明することとなります。

そこで、経済価値バランスシートに関する監査において関連する監査基準報告書の要求事項を適切に適用するための指針が必要となり、公布同日にJICPAより実務指針第75号が公表されました。


2. 実務指針第75号のポイント

経済価値ベースのバランスシート監査において、監査人が監査基準報告書等の要求事項を遵守するにあたり、当該要求事項及び適用指針と併せて適用するための指針を示すものであり、新たな要求事項は設けられていません。

保険業法施行規則別紙様式第7号第13の3(記載上の注意)2等において規定された個別及び連結の経済価値ベースのバランスシートおよびその注記が監査対象となります。

想定利用者である監督当局によるESR規制への対応のために設定され(特別目的の財務報告の枠組み)、当該バランスシート作成基準への準拠性を検証するものです(準拠性の枠組み)。

  • 会計監査人と経済価値ベースのバランスシートの監査人が同一であること、財務諸表監査におけるリスク評価手続及びリスク対応手続等の実施結果等の一部を利用することが想定されています。
  • 経済価値ベースのバランスシートには、保険負債等の多くの見積り要素を含むため、保険数理に係る内部統制の有効性を重要視し、それを評価した上で依拠することを検討することで効果的かつ効率的な監査を実施できることが規定されています。
  • プロポーショナリティ原則の適用など、ESR規制特有の実務に対する監査上の指針や留意点などが規定されています。
  • 2025年4月1日以後開始する事業年度の年度末に係る経済価値バランスシートに対する監査から適用されます。


サマリー

2026年3月末の経済価値ベースのソルベンシー規制等の適用に向けて、保険会社は自社の態勢整備を進めることに加え、監査への対応が求められます。初回報告に向けて、監査人とのコミュニケーション含め、本規制に関する算出方針の検討、ガバナンスの態勢整備などを進めていくことが重要となるでしょう。


関連記事

経済価値ベースのソルベンシー規制~ESRアップデート~(2025年1月)

金融庁は、経済価値ベースのソルベンシー規制等の導入に向けて、2024年10月および2025年1月に、新規制に関する法令等の新規又は改正案を公表しました。2026年3月末の適用に向けて多くの議論がまとまり、法令等の整備が進んでいます。本記事では、公表された主要な内容をご紹介します。

経済価値ベースのソルベンシー(ESR)規制等に関する残論点の方向性

2024年5月金融庁より公表された「経済価値ベースのソルベンシー規制等に関する残論点の方向性」では、2023年6月の「経済価値ベースのソルベンシー規制等に関する基準の最終化に向けた検討状況」で残された論点について、新規制の方向性などが示されています。

経済価値ベースのソルベンシー規制等~ESRに関する検証の枠組みとガバナンスへの影響~

2023年6月に金融庁より公表された「経済価値ベースのソルベンシー規制等に関する基準の最終化に向けた検討状況について」では、経済価値ベースのソルベンシー規制等に関する各論点の方向性などが示されています。 本記事では、公表されたレポートからESRに関する検証の枠組みに係る論点を取り出し紹介します。

    寄稿記事

    経済価値ベースのソルベンシー規制における検証態勢の構築に向けて 第5回:まとめ(第1回~第4回のポイントの整理)

    【寄稿記事】2024年4月26日 保険毎日新聞(執筆者:EY新日本有限責任監査法人 齋藤 剛、EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 鈴木 敦之)

    経済価値ベースのソルベンシー規制における検証態勢の構築に向けて 第4回:検証に関する主な課題と方向性について

    【寄稿記事】2024年4月12日 保険毎日新聞(執筆者:EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 鈴木 敦之)

    経済価値ベースのソルベンシー規制における検証態勢の構築に向けて 第3回:外部専門家による検証について

    【寄稿記事】2024年3月15日 保険毎日新聞(執筆者:EY新日本有限責任監査法人 齋藤 剛)

    経済価値ベースのソルベンシー規制における検証態勢の構築に向けて 第2回 ~検証の枠組みとガバナンスへの影響~

    【寄稿記事】2024年1月31日 保険毎日新聞(執筆者:EY新日本有限責任監査法人 齋藤 剛)


      この記事について