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日本における医療・介護・福祉分野におけるデータ活用と医療DXの現状とは


医療・介護・福祉分野で進むDX施策と課題を整理し、生産性向上に向けたDXの取組みや政策動向の要点を示します。


要点

  • 人材不足となる医療、介護、福祉現場において生産性向上は重要かつ迅速に対処すべき課題であり、日本のこれまでの取組み、現状、ポイント整理する。

医療・介護・福祉分野でのデータ活用とDX化

今後、人材不足となる医療、介護、福祉現場において生産性向上は重要かつ迅速に対処すべき課題です。そのうえで、生産性向上に向けたデータ活用やDXの取組みは解決策になり得ると考えています。ここではデジタル社会の実現に向けた、医療・介護・福祉分野のDX化(デジタル化)に関連する事項についてご報告します。

DX化に向けたこれまでの取組み

① 医療・保健医療分野におけるデータヘルス改革
2015年の骨太方針と日本再興戦略において、2020年までの5年間を「集中取組期間」として、遠隔医療の推進、医療等分野でのデータのデジタル化・標準化の推進、地域医療情報連携等の医療等分野におけるICT化が盛り込まれています。その後、保健医療分野におけるICT活用推進懇談会等での議論を踏まえて、政府主導で大規模な健康・医療・介護の分野を有機的に連結したICTインフラを2020年度から本格稼働させるべく、2017年に厚生労働大臣を本部長としてデータヘルス改革推進本部が設置され、現在データヘルス改革を推進しています。
厚生労働省の定義において、データヘルスとは電子的に保有された健康医療情報を利活用した分析や取組みを示しています。

② 2040年を見据えた医療・福祉サービス改革による生産性の向上
2019年には、生産年齢人口が急減する2040年を見据え、「より少ない人手でも対応可能な医療・福祉の現場を実現」に向けて4つの改革を通じて、医療・福祉サービス改革による生産性の向上を図ることが宣言されています。
この中では「ロボット・AI・ICT等の実用化推進とデータヘルス改革」、「タスクシフティングを担う人材の育成とシニア人材の活用推進」、「組織マネジメント改革」、「経営の大規模化・協働化」が4本柱とされています。例えば、「ロボット・AI・ICT等の実用化推進とデータヘルス改革」は2040年に向けたロボット・AI等の研究開発と実用化やデータヘルス改革推進本部の取組みを進める他、がんゲノム医療・AI利活用の推進、PHRの推進、医療・介護現場の情報連携促進、データベースの効果的な利活用の推進、オンライン服薬指導などを進めています。特に介護分野で、業務仕分け、元気な高齢者の活躍、ロボット・センサー・ICTの活用と介護業界のイメージ改善を行うパイロット事業を2020年度より全国に展開しています。

③ デジタル社会の実現に向けたデジタル庁の発足
2021年9月にはデジタル庁が発足し、デジタル社会形成基本法や関連法が施行され、内閣総理大臣を議長とするデジタル社会推進会議を通じ、デジタル化に向けた検討が進められ、2023年6月に「デジタル社会の実現に向けた重点計画」が閣議決定されています。これは、目指すべきデジタル社会の実現に向けて政府が迅速かつ重点的に実施すべきことで各種中央省庁が構造改革や個別の施策に取組む際の方針となるものです。健康・医療・介護分野は準公共分野に位置づけられ、基本的なデジタル政策として「医療DX」、「オンライン診療」、「次期感染症危機への備え」を行っていくことになっています。
具体的には「電子カルテ情報の標準化等」、「電子処方箋」、「全国医療情報プラットホーム」、「母子手帳との連携強化」、「診療報酬改定DX」、「オンライン診療の促進」等を拡充することになっています。

④ 医療・介護・福祉業界におけるDX化の遅れ
わが国ではデジタルリテラシーが高くない国民も多く、特に医療・介護を必要とする年齢層は一般的に75歳以上の高齢者が多いことから、前述した基本的なデジタル政策が浸透し、利用されるまでには、ある期間を要することが想定されています。
今までデジタル社会の実現に必要なインターネットに接続可能な電子デバイス(パソコンやスマートフォン)を使いこなしてこなかった75歳以上の高齢者が多いことから、電子デバイス利用に対する心理的な抵抗感があります。さらに高齢者は電子デバイスの利用は個人情報漏洩やハッキングの危険性があると考えていることから、多くの高齢者が積極的に電子デバイスを利用していないのが実情です。
各種中央省庁は現状、デジタル社会の実現のために注力していますが、国民のITリテラシーの低さやデジタルツールの導入コストなど、並びに医療・介護・福祉業界独自の課題から、他産業界と比較して圧倒的にDX化が遅れています。

結論

上記の状況においても深刻化する超高齢化社会とそれに伴う人材不足に最も影響を受ける業界と思われる医療・介護・福祉業界でのDX化の推進は急務といえます。
医療・介護・福祉業界には多くの課題がありますが、このまま何もしなければ悪化の一途をたどることから、デジタル社会を実現する医療政策を推進しながら、利用者のリテラシー向上を並行して進めることが非常に重要です。

弊法人は従来から医療政策と医療機関等のDX化などの業務に従事する経験豊かなメンバーが多数そろっています。そこで、各医療機関がDX化を実現するに際し、弊法人は医療機関における課題の洗い出しや適切なデジタルツールを導入するためのご支援が可能ですので、各医療機関がDX化を進める場合、弊法人にご相談いただければと考えます。

【共同執筆者】

鈴木 邦彦
EY新日本有限責任監査法人FAAS事業部 マネージャー

大手医療機器メーカーおよびプロフェッショナルファームでの豊富な経験を基に、医療機関向け病院情報システムの導入支援をはじめ、医療情報システムを中心とした省庁・自治体・大学・公的機関へのコンサルティングを多数実施

サマリー

人材不足となる医療、介護、福祉現場において生産性向上は重要かつ迅速に対処すべき課題であり、日本のこれまでの取組み、現状、ポイント整理する。

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