電子カルテなど病院情報システム導入セミナーの開催報告

医療DXの加速に伴う病院情報システムの未来とは ―標準化、データ活用、そして「生成AI」の時代へ―


医療DXが加速する今、病院情報システムの更新は経営の重要課題です。ベンダーロックインからの脱却、標準化や「生成AI」の活用など、次世代の医療基盤構築に向けた重要ポイントと、EYのシステム更新支援について解説します。


要点

  • 医療DXの推進と課題解決:ベンダーロックインやコスト高騰の課題に対し、HL7 FHIRを用いたシステムの標準化とデータ活用基盤の整備が病院経営の持続可能性を高める。
  • 「生成AI」の安全な活用と環境構築:生成AIの活用には、透明性と公平性の確保が不可欠である。セキュリティと利便性を両立させ、医療情報を安全に活用できる環境構築する。
  • EYによる中立的な導入支援:EYは中立的な立場で構想策定から導入までを一貫してサポート。客観的なベンダー選定と着実なプロジェクト管理により、医療機関のシステム更新を支援する。

政府による「医療DX」の推進が加速しています。2024年の診療報酬改定においても、医療情報システムのあり方は重要な論点となっています。多くの医療機関において、病院情報システム、とりわけ電子カルテシステムの更新は、単なる機器の入れ替えではなく、病院経営の持続可能性を左右する重要な経営課題となっています。

現状の課題:コスト高騰とベンダーロックイン

現在、多くの医療機関が直面している課題が、電子カルテシステム調達価格の高騰です。半導体不足や人件費の上昇に加え、ソフトウェアライセンス費用の値上げ、円安の影響も重なり、システム更新費用は増加の一途をたどっています。 さらに深刻なのが「ベンダーロックイン」の問題です。独自のデータ形式や仕様により、既存ベンダー以外のシステムへの切り替えが困難になることで、価格競争が働かず、保守費用も高止まりする傾向にあります。これは、病院経営を圧迫するだけでなく、データの自由な活用を阻害する要因ともなっています。

解決の鍵:標準化とFHIR

この状況を打破し、真の医療DXを実現するための鍵となるのが「標準化」です。厚生労働省は「標準型電子カルテ」の整備を進めており、データ交換規約として国際標準規格である「HL7 FHIR(Fast Healthcare Interoperability Resources)」の導入を推奨しています。 HL7 FHIRを採用することで、異なるベンダー間でも円滑なデータ連携が可能となります。これはベンダーロックインからの脱却を促し、適正な競争環境を生み出すとともに、地域医療連携や災害時の医療情報の共有にも大きく寄与します。

未来への展望:データの二次利用と生成AI

システムが標準化され、データが整備されることで、医療データの二次利用への道が開かれます。蓄積されたデータは、医学研究や創薬だけでなく、病院経営の効率化や質の向上に向けた分析にも活用できます。 また、近年注目を集める「生成AI」の活用も期待されています。医師の診療記録作成の支援や、退院サマリー作成の自動化など、医療従事者の働き方改革に直結するソリューションが登場し始めています。 一方で、病院情報システムのセキュリティ対策は喫緊の課題です。サイバー攻撃のリスクが高まる中、利便性と堅固なセキュリティを両立させる必要があります。EYでは、急速に進化する「生成AI」の活用において、透明性や公平性を確保し、セキュリティリスクを低減する安全な病院情報システムの導入を支援しています。

EYのアプローチ

病院情報システムの更新は、複雑かつ高度な専門知識を要するプロジェクトです。ベンダー主導ではなく、医療機関が主体となって最適なシステムを選定・構築するためには、客観的な立場からの専門的な支援が不可欠です。
EYでは医療情報システム更新に関わる包括的なアドバイザリー業務を提供しています。現状の課題分析からシステムの稼働まで、一気通貫した支援を通じて、医療機関の医療DX推進と質の高い医療の提供に貢献します。

医療情報システム更新支援:サービス詳細プロセス

医療情報システムの更新は、単なるITインフラの刷新にとどまらず、病院経営の質や医療DXの実現を左右する重要なプロジェクトです。EYのプロフェッショナルは、特定のベンダーに依存しない中立的な立場から、システムライフサイクルの全フェーズにおいて、貴院を支援します。

① 現状分析・基本計画策定
~「あるべき姿(To-Be)」の描画と経営課題の整理~


システム更新を単なる「機器の入れ替え」で終わらせないためには、プロジェクトの初期段階での構想策定が極めて重要です。

  • 現状分析(As-Is分析)
     現行システムの機能過不足や運用上の課題を洗い出します。
     部門間ヒアリングを通じて、現場のニーズと経営層の意向のギャップを可視化します。
  • 基本計画策定(To-Be策定)
     「医療DX」や「データ二次利用」を見据えた将来構想を策定します。
     概算予算の算出やスケジュール立案を行い、投資対効果を検討するための判断材料を提供します。

② 要求仕様書(RFP)作成支援
~ベンダーロックインの回避と標準化の推進~

ベンダーロックインを防ぎ、競争原理が働く調達を実現するためには、曖昧さを排除した明確な要求仕様書の作成が不可欠です。

  • 機能要件の定義
     
    標準型電子カルテやHL7 FHIRなどの標準規格への対応を要件に盛り込み、将来的なデータ連携基盤を確保します。
     生成AIの活用など、先進的な技術要件についても実現可能性を考慮しつつ定義します。
  • 非機能要件の定義
     
    厚生労働省のガイドラインに準拠したセキュリティ要件や、BCP(事業継続計画)の観点からの可用性要件を策定します。
     保守体制や拡張性に関する条件を明記し、長期的な運用コストの適正化を図ります。

③ システム会社選定・契約支援
~客観的かつ公平な評価によるパートナー選定~

複数のベンダーからの提案を横並びで比較・評価し、医療機関にとって最適なパートナー選定を支援します。

  • 評価基準の策定と評価支援
     機能面、コスト面、実現性、将来性など、多角的な視点からの評価基準(採点表)を策定します。
     プレゼンテーションやデモンストレーションの運営を支援し、プロフェッショナルとしての知見に基づいた評価助言を行います。
  • 契約交渉支援
     見積もり内容の精査を行い、ブラックボックス化しやすいシステム費用の透明性を確保します。
     法的なリスクを低減し、将来的なトラブルを防止するための契約条件の確認を支援します。

④ システム導入支援(PMO支援)
~プロジェクトの円滑な遂行と品質管理~

ベンダー決定後は、病院側のプロジェクト管理オフィス(PMO)として、導入プロジェクトをけん引します。

  • 評価基準の策定と評価支援
     機能面、コスト面、実現性、将来性など、多角的な視点からの評価基準(採点表)を策定します。
     プレゼンテーションやデモンストレーションの運営を支援し、プロフェッショナルとしての知見に基づいた評価助言を行います。
  • 契約交渉支援
     見積もり内容の精査を行い、ブラックボックス化しやすいシステム費用の透明性を確保します。
     法的なリスクを低減し、将来的なトラブルを防止するための契約条件の確認を支援します。

まずは相談ください

当法人では、医療機関に合わせたコンサルティングサービスを提供しています。
病院情報システム更新に不安や疑問がある場合は、ぜひご相談ください。


【共同執筆者】

竹田 将紀
EY新日本有限責任監査法人 FAAS事業部 マネージャー

大手ITベンダーおよび外資系医療機器メーカーにて、電子カルテ(EMR)導入PM、重症部門・手術部門システムの技術支援、提案営業、部門ベンダーコントロールを担当し、中規模〜大規模病院向けのEMR・部門システム導入支援に従事。現在は、病院情報システム更新に係るコンサルティング支援を担当。

サマリー

医療DXに向けた電子カルテ更新や病院情報システムの導入支援について解説します。システム標準化、ベンダー選定、生成AI活用など、失敗しない更新のポイントとは。EYが構想策定から稼働まで中立的な立場でコンサルティング支援します。


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