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要点
2026年6月から適用された「電子的診療情報連携体制整備加算」は、単なる加算名称の変更にとどまらず、医療機関におけるDX対応のあり方を実質的に見直す制度と位置付けられます。オンライン資格確認、マイナ保険証、電子処方箋、電子カルテ情報共有サービスなどについて、導入の有無だけでなく、日常診療の中で継続的に活用できているかが、これまで以上に重視される点が特徴です。
評価の焦点は、「システムを導入したか」ではなく、「現場で使い続けられる状態にあるか」にあります。ベンダーとの契約や機器設置が完了し、形式上は利用可能であっても、受付、診察室、会計、部門間連携、さらには障害発生時の対応まで含めて運用が定着していなければ、制度要件を安定的に満たすことは難しくなります。
施行直後の現場では、確認済みと認識していた事項が実際には未確認であった、届出は提出したものの受理状況を把握していなかった、運用を裏付ける証跡が十分に残っていなかったといった管理上の課題が表面化しやすくなります。これらは算定継続に影響を及ぼすリスクとなり得ます。
本稿では、制度概要の再説明にとどまらず、医療機関の経営層、事務部門、情報システム担当者が、加算取得後も制度対応を維持するために確認すべき実務上の論点を整理します。
2026年5月31日をもって従来の医療DX関連加算の一部は整理され、6月1日から新加算が開始されています。すでに医療DX推進体制整備加算等を届け出ていた医療機関であっても、新加算へ自動的に移行されたわけではありません。改めて施設基準の届出を行い、算定開始時点で地方厚生局に受理されている必要があります。
実務上の分岐点は、「提出済み」ではなく「受理済み」であることを確認できるかどうかです。届出控え、提出日、受理確認、算定開始日、医事会計システムへの設定反映の有無は、1つの管理表で継続的に管理することが有効です。
外来では初診時に15点、9点、4点の3区分、再診時等は区分にかかわらず2点、入院では入院初日に限り加算1が160点、加算2が80点とされています。ただし、点数の高低だけで区分を判断することは適切とはいえません。自院の体制や実際の運用が制度要件を満たしているかを踏まえて判断することが重要です。
加算1を算定するためには、電子処方箋や電子カルテ情報共有サービスへの対応が求められます。ただし、単にシステムが接続されているだけでは十分とはいえません。運用開始の登録が完了しているか、患者への説明方法が整理されているか、障害発生時の対応や記録保存の手順が明確になっているかなど、日常診療の中で継続的に運用できる状態にあるかを確認する必要があります。
一方で、電子カルテ情報共有サービスについては、全国的な運用開始が見込まれているものの、現場運用との乖離や技術的課題が指摘されており、仕様方針の見直しが行われる可能性もあります。したがって、対応時期を固定的に捉えるのではなく、制度の動向や技術仕様、ベンダー対応の進捗を踏まえて判断することが求められます。電子カルテ情報共有サービスの動向については、以下関連する解説記事も併せてご参照ください。
電子カルテ情報共有サービスのモデル事業では、どのような課題が見えたのか ―今後の方向性について
こうした状況を踏まえると、現時点では、まず基本的なDX体制を評価する区分や、電子処方箋に対応した区分で運用を安定させ、実績や証跡を積み上げた上で、段階的に上位区分への移行を検討する対応が現実的と考えられます。特に診療所や中小規模の医療機関では、「制度上取得できるか」だけでなく、「担当者が不在となった場合でも運用を継続できるか」を含めて判断する視点が重要です。
施行後、マイナ保険証利用率30%以上の要件は、実務上の運用課題として明確に現れる可能性があります。本質は数値向上策そのものではなく、利用率を誰が、どの頻度で確認し、どこに保存し、基準未達時に誰が対応するのかという運用設計です。
支払基金等の実績値を月次で確認し、画面の記録や管理表として保存すること、基準未達時の改善担当者を明確にすること、受付での声掛けを標準化することは、算定を維持するための内部統制として有効です。
利用率は受付導線の影響を受けます。カードリーダーの配置、声掛けの方法、説明内容、エラー時対応を統一し、特定の担当者に依存しない標準化を進めることが重要です。評価されるのは医療機関単位の数値であるため、属人的な対応に依存した運用では、制度要件を安定的に満たしにくくなる可能性があります。
電子処方箋は制度上の整備が進んでいる一方で、医療機関側では普及がなお途上にあります。導入済みの医療機関であっても、電子処方箋と紙の処方箋が併存しているケースが多く、当面は両者を前提とした運用が続くことが想定されます。
この段階で重要なのは、電子処方箋を将来的な完成形として捉えるのではなく、紙運用との併用を前提に、例外対応を含めた業務プロセスとして整理することです。ネットワーク障害や処方情報の未受信、引換番号の不整合、患者控えの紛失、薬局からの照会など、想定される事象ごとに、誰が、どのタイミングで、どの手順に基づいて対応するのかを明確にしておく必要があります。
また、患者が電子処方箋の利用に不慣れな場合や、薬局側の対応状況に差がある場合も考慮が必要です。受付、診察室、会計、薬局連携窓口、情報システム担当者の役割を整理し、患者への説明方法、薬局への連絡手順、ベンダーへの問い合わせ基準を標準化しておくことが、運用の安定につながります。
今後、利用件数が増加した場合に備え、件数が少ない段階から手順書や連絡先一覧、記録様式を整備し、実際の対応を通じて見直していくことが重要です。
入院加算では、「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」への準拠が実務上の論点になります。ガイドラインの改定動向も踏まえ、経営管理、企画管理、運用、委託管理における責任分界を確認することが求められます。
ガイドライン対応は、単なる文書整備ではなく、組織統制の一部です。証跡の有無は、制度対応状況を説明する上で重要な要素になります。BCP訓練記録、バックアップおよび復元の確認記録、研修記録、インシデント対応記録、委託先管理に関する記録が整備されているかを確認する必要があります。
制度はすでに開始されており、運用負荷は継続的に発生します。制度対応は一時的な取得プロジェクトではなく、継続業務です。この認識が不足すると、特定の担当者に業務が集中しやすくなります。
中小病院や診療所では、実質的に1人の事務長、1人の情報システム担当者、1人のベンダー窓口に依存する体制になりがちです。しかし、制度要件は組織として満たすものであり、個人の記憶や経験だけに依存すべきものではありません。
経営層が確認すべきなのは、システムの導入状況だけではありません。管理責任者は誰か、担当者不在時でも運用を継続できるか、証跡の保管場所は統一されているか、委託先との責任分界は明確か、障害時の意思決定フローは整理されているか。これらの運用統制が、今後も制度対応を継続できるかを左右します。
施行直後に確認すべき事項は、次の5つに整理できます。
「電子的診療情報連携体制整備加算」は、単なるDX推進施策ではなく、導入した仕組みを継続的に安定運用できる体制を問う制度へ近づいていると考えられます。今後の医療DXでは、システムやツールの有無だけでなく、業務プロセス、責任分界、証跡管理、障害時対応を含め、組織として説明できる状態を整えることが重要です。
そのためには、自院の対応状況を客観的に把握し、制度要件、業務運用、システム管理、組織体制の間にあるギャップを整理する必要があります。特に、届出・算定要件、マイナ保険証利用率、電子処方箋や電子カルテ情報共有サービスの運用、BCP・研修・障害時対応の記録は、部門横断で確認すべき論点です。
当法人では、医療機関における制度対応、業務プロセスの見直し、システム運用、ガバナンス・内部統制、証跡管理などの観点から、医療DX対応の現状整理や課題の可視化をご支援しています。加算取得後の運用維持、上位区分への移行、今後の医療DX投資の方向性に不安や課題がある場合は、お気軽にご相談ください。
電子的診療情報連携体制整備加算は、導入状況ではなく運用の継続性が問われる制度です。医療DX、マイナ保険証利用率、電子処方箋、電子カルテ情報共有、BCPや証跡管理など、算定維持に必要な実務論点を整理します。
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