電子カルテなど病院情報システム導入セミナーの開催報告

電子カルテベンダー情報共有サービスのモデル事業では、どのような課題が見えたのか ―今後の方向性について


電子カルテ情報共有サービスのモデル事業で顕在化した課題から技術解説書(ベンダー向け技術仕様)の内容が大きく転換されています。内容変更の経緯、関連する検討会での検討内容から、電子カルテ情報共有サ―ビスの全国運用を見据えた方向性について、整理します。


要点

  • 電子カルテ情報共有サービスは、モデル事業を通じて現場運用との乖離や技術的課題が顕在化している。
  • 課題を踏まえ、技術解説書は2.0.0版へ改定され、内容が大きく転換されている。
  • 全国運用に向け、医療機関においては今後も電子カルテ情報共有サービスのスケジュールに対する進捗状況の確認が必要である。

電子カルテ情報共有サービスとは

電⼦カルテ情報共有サービスは、政府が推進する「全国医療情報プラットフォーム」の仕組みの1つであり、全国の医療機関や薬局などで患者の電⼦カルテ情報を共有するための仕組みです。

患者本人の同意を前提に、3文書(診療情報提供書等)と6情報(傷病名、アレルギー等)を全国の医療機関等で安全に共有でき、以下4つのサービスの提供を予定しています。

■ サービス種別

  1. 診療情報提供書を電子で共有できるサービス。(退院時サマリーについては診療情報提供書に添付)
  2. 各種健診結果を医療保険者及び全国の医療機関等や本人等が閲覧できるサービス。
  3. 患者の臨床情報を全国の医療機関等や本人等が閲覧できるサービス。
  4. 患者サマリーを本人等が閲覧できるサービス。

厚生労働省「電子カルテ情報共有サービス|厚生労働省」www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/johoka/denkarukyouyuu.html(2026年4月10日アクセス)

全国運用を見据えた計画とモデル事業踏まえた方針転換

令和7年2月よりモデル事業を開始しています。今後のスケジュール(案)においては、以下図の通り、健康・医療・介護情報利活用検討会において検討が行われ、令和7年12月24日時点では、令和8年度の冬ごろをめどに全国的な運用開始を目指しています。

しかし、現状としては、モデル事業で得られた知見や他システムの動向等を踏まえ、仕様方針の抜本的な見直しが実施されています。これに伴い、技術解説書は1.3.0版(令和7年6月公開)から2.0.0版(令和8年1月公開)へと改定されています。

図1
出典:厚生労働省「電子カルテ情報共有サービスに関する検討事項について」P.26 www.mhlw.go.jp/content/10808000/001620512.pdf(2026年4月10日アクセス)

モデル事業で見えた課題や方針転換した内容を以下記載しています。

健康・医療・介護情報利活用検討会で挙げられたモデル事業における課題と対応策

令和7年12月に行われた健康・医療・介護情報利活用検討会では、モデル事業における課題として、現場運用との乖離や技術的な課題が挙げられています。健康・医療・介護情報利活用検討会の資料を参考として、以下課題と対応策について要約・解説しています。

① 文書情報
課題:現状、退院時サマリーを他医療機関に共有する場合、診療情報提供書に添付して送付する仕様となっており、診療情報提供書とは別のタイミングで送付する場合の方法が明らかになっていません。
対応策:頭紙程度の診療情報提供書を作成(システム側での自動作成を想定)し、退院時サマリーを添付する形とし、診療情報提供書と別タイミングでの送付方法を提示します。

② 臨床情報
課題:検査結果値の単位について、医療機関内の単位を電子カルテ情報共有サービスで指定された単位に統一する必要があり、登録時に単位の変換が必要ですが、医療現場でその対応が困難となっています。一方で、患者がマイナポータル等で情報を閲覧する際に単位が統一されていないと理解しづらいという課題があります。
対応策:当分の間、電子カルテから登録する検査結果値の単位については、医療機関ごとに取り扱っている単位で登録することとします。並行して、特にマイナポータルで検査情報を提供する場合の単位のあり方について、引き続き検討することとします。

技術解説書2.0.0版での改定内容

令和8年1月に改訂された技術解説書2.0.0版では、以下項目を大きく転換していると説明されています。また、以下に明記している項目以外にも記述の改善や、構成の見直し等が複数行われていると説明されています。

1. 臨床情報としての処方情報連携の取りやめ

電子処方箋が院内処方を取り扱う制度設計となったことから、処方情報を診療情報提供書・退院時サマリーから抽出し臨床情報として共有する方式を廃止しています。これにより、臨床情報一覧には処方情報が表示されなくなります。

2.文書情報の構造化データ中心設計から、Narrative(ナラティブ:テキスト記述)中心へ

文書の本文について、FHIRの「現病歴」「検査結果」等の各構造情報セクションで指定されたリソース(Condition、Observationリソース等)を利用して原則構造化データとして連携する従来の方式は、紹介元の登録内容と紹介先の表示内容との不一致を招く恐れがあるため、文書の本文をNarrative及びPDFに全て含めて登録することを必須、前述のような構造化データは当分の間登録任意とする方式へ転換しています。また、NarrativeかPDFでの文書本文の表示を必須とし、前述のような構造化データは当分の間表示任意とします。

※Narrative:構造化データ(要素やコード体系による機械可読な情報)と対比される、FHIRリソースに含まれる「人が読める形式の要約情報(説明文)」を表す要素。文書情報のComposition.section要素配下の各構造情報セクション、備考・連絡情報セクションのtext要素にXHTML形式で記述されています。

3. 退院時サマリー登録機能の任意化

全ての医療機関で紹介目的として退院時サマリーの外部共有が必要とは限らないため、退院時サマリー登録機能の導入は必須から任意に変更しています。

4. 傷病名・薬剤アレルギー等・その他アレルギー等の臨床的定義の再整理(※検討継続中)

閲覧側の医療機関・薬局や患者本人が誤解しない情報共有のため、臨床的整理を継続しており、今後、登録・閲覧両面において仕様変更の可能性があります。

厚生労働省「電子カルテ情報共有サービスの導入に関する システムベンダ向け技術解説書」www.mhlw.go.jp/content/10800000/001330543.pdf(2026年4月10日アクセス)

今後の仕様変更予定

技術解説書2.0.0版では、仕様検討中の事項も一部含まれており、現在も仕様整理が行われています。仕様整理の結果としては、令和8年度冬ごろの改訂を見込んでいる技術解説書3.0.0版で公表を予定しています。

現在の予定では、全国的な運用開始時期が令和8年度冬ごろとなっていますが、技術解説書3.0.0版の公表と同時期になることは、現実的ではないため、全国的な運用開始に遅れが発生する可能性もあります。

そのため、健康・医療・介護情報利活用検討会において議論されているスケジュールについては、更新状況を注視し、電子カルテ情報共有サービスの対応時期について検討する必要があります。

まとめ

電子カルテ情報共有サービスは、モデル事業を通じて明らかになった現場運用との乖離や技術的課題を踏まえ、仕様方針の抜本的な見直しが行われています。仕様方針の見直しに伴い、技術解説書は2.0.0版へと改定され、臨床情報の連携方法や文書情報の取り扱いなどについて、方向転換されています。

今後は、令和8年度冬ごろをめどとした全国的な運用開始が予定されていますが、現実的にはスケジュールに遅れが発生する可能性もあると考えています。そのため、全国的な運用開始時期については、スケジュールの状況を定期的に確認し、電子カルテ情報共有サービスの対応時期は、検討する必要があると考えます。

具体的な対応時期の検討状況については、以下健康・医療・介護情報利活用検討会のホームページ上で関連資料が掲載されていますので、気になる方は確認ください。

厚生労働省「健康・医療・介護情報利活用検討会 医療等情報利活用ワーキンググループ」
www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-isei_210261.html(2026年4月23日アクセス)

サマリー

電子カルテ情報共有サービスの現状と、モデル事業を踏まえた技術解説書(ベンダー向け技術仕様)見直しの背景を整理します。

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