EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
EY-Parthenonは、EYにおけるブランドの一つであり、このブランドのもとで世界中の多くのEYメンバーファームが戦略コンサルティングサービスを提供しています。
要点
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上下水道分野で官民連携 (Public Private Partnership、以下PPP)が注目され始めたのは、1999年のPFI1法制定や2002年の水道法改正が契機です。この結果、浄水場や下水処理場の運転管理業務を民間に委託する仕組みが整い、2000年代前半から全国の自治体で浄水場運転の包括委託や下水道施設のDBO方式(設計・建設・運転維持管理を一括契約)等が導入されました。
官民連携により、自治体の施設管理が民間ノウハウで効率化され、コスト削減やサービス向上が各地で実現しています。
さらに2018年の水道法改正で公共施設等運営権の設定(コンセッション方式)が水道事業でも可能になると、宮城県の上水道事業など大型案件が誕生し、PPPのスキーム活用が広がりました。
また、PPP/PFI推進アクションプラン(令和5年改定版)では、「ウォーターPPP(水の官民連携)」を含む官民連携方式が重点分野に位置付けられています。
「ウォーターPPP(水の官民連携)」は、公共施設等運営事業に加えて、管理・更新一体マネジメント方式(レベル3.5)を総称したもので、下水道事業では汚水管の改築に係る国費支援に関する要件となっているため、多くの自治体で導入検討が進んでいます。
ウォーターPPPは、上下水道分野における官民連携の総称であり、コンセッション方式(レベル4)と管理・更新一体マネジメント方式(レベル3.5)の2方式で構成されます。
レベル4は、公共主体が施設の所有権を維持したまま公共施設等運営権(コンセッション)を民間に設定し、民間が利用料金を直接収受する仕組みです。事業期間の柔軟性などが高いなどの利点がある一方、PFI法の適用関係など制度上の留意点が生じます。
レベル3.5は、公共から支出される委託料等を原資として、長期契約のもと維持管理と更新を一体でマネジメントする方式です。性能発注により民間の創意工夫を引き出すとともに、事業期間中の改善提案を促すため、仕様の変更などが必要なものも含めて対応できるようプロフィットシェアに関する条項を設けることなどが求められています。事業期間としては、原則10年間とされていますが、広域・分野横断型で複数団体を段階的に連携する場合は、連携の見通しの公表や維持管理から更新までの1サイクルが回ることなどの条件を満たすことを前提に、7〜15年程度の柔軟な期間設定も可能とされています。
政府目標2では、2031年度までに水道100件、下水道100件、工業用水道25件の事業の具体化を掲げています。この目標を実現するためには、これまでDBOやPFIなどによる官民連携案件が上下水道分野で年10件程度にとどまっていたところを、ウォーターPPPだけで年30件以上に拡大していくことが求められます。官民連携事業の急速な件数増加が見込まれる中で、事業を担える民間企業が十分に育っていなければ、民間側の対応能力が限界を超える事態が起こり得ます。自治体が官民連携を望んでも受け手となる企業が見つからない、あるいは見つかっても十分な提案や運営が行えないことで、「官民のマッチング」が十分に機能しなくなる恐れが生じます。
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また、量だけでなく質の面でも、市場環境の変化点となります。ウォーターPPPの導入により、これまで公共が担ってきた事業の全体最適化(マネジメント)について、民間による検討・提案が求められるようになっています。
特に、自治体の上下水道部局の体制不足により、老朽化した管路や浄水場などの施設更新工事が進んでおらず、今後の更新計画の立案も十分とは言えません。また、今後の更新工事の増加などが水道料金に与えるインパクトの試算、必要な料金水準の検討なども十分できていません。従来の民間委託では「施設の運転・維持管理(O&M)のみ」、「料金徴収のみ」、「施設の建て替え工事」といった限定的な業務スコープ設定が主でした。また、従来のPFI事業やDBO事業では、施設の新設や更新工事といった設計・建設からの事業開始であり、民間企業が実施すべき業務は明確でした。他方、ウォーターPPPでは、上下水道施設の運転・維持管理をしながら、今後の施設更新計画を立案することや、更新工事を並行して実施していくなど、長期的な上下水道事業の在り方を考えていく「マネジメント領域」への対応が民間企業に求められます。このように質的な側面でも、官民連携、民間企業に期待される役割が拡大していると言えます。
前述のとおり、公共側はマネジメントを担い、民間側は現場を持つO&M業界やEPC3業界がそれぞれの強みを生かして役割分担してきました。
しかし、特に中小規模の自治体では、職員の高齢化や人材不足によって体制が脆弱(ぜいじゃく)になり、公共側だけではマネジメントを十分に担いきれなくなる恐れがあります。それにより、上下水道インフラの受益者であり負担者でもある住民の利益を損なう可能性があります。
そのため、官民連携の実施に向けては、民間との役割分担の見直しとともに、管理と更新の一体化に必要なソリューションを導入し、地域に根差したインフラ経営を担う事業者を選定する視点が重要です。
一方で、民間側にも、全体最適を踏まえた提案や、住民・地域の視点に立った事業展開がより強く求められます。こうした変化に対応するため、大手企業による再編や地域企業の統合が進み、PPP市場の構造変化が加速していくと考えられます。
上下水道事業については、住民生活に不可欠なインフラであり、自治体として残すべき機能・体制があります。
また、民間が担い手となる場合でも、自治体が培ってきたノウハウや技術力の継承が重要です。現状と将来の地域像を踏まえた官民連携の模索が重要です。
ここでは、より良い事業とするために、事業規模の確保(バンドリング4、広域連携等)、官民双方の十分な対話・選定基準の明確化(早期の情報提供、マーケットサウンディング5等)、事業期間後の見直し、定期的な市民への情報公開(見直し、契約変更プロセスの明示・情報公開等)など、各検討段階において押さえるべきポイントについて紹介します
バンドリングや広域化による事業規模の拡大:単体事業規模が小さいと応募者が集まりにくく、対話の相手が存在しないということも考え得るため、関連業務をまとめて一括委託することが考えられます。例えば、石川県かほく市では、上下水道一体による点検業務の効率化や緊急時にそれぞれの事業間で人員を融通することなど、平時・緊急時の効果6が生じているとされています。
今後の人口減少社会を見据えた場合、他分野(道路、エネルギー、廃棄物処理など)との連携や自治体の垣根を越えた広域的な業務受託を行うことは、地域インフラを維持していく視点から不可欠と考えます。
政府も、少なくとも10万人程度の人口規模を一つの目安とするべきとするなど、一定の事業規模を確保することが執行能力や官民連携の効果向上には必要であるとの方針7を示しています。
特に中小規模の自治体においては、官民連携を検討する際、広域連携・他分野連携を出発点として位置付けることが求められます。
官民双方の対話:事業規模だけでなく、提案する民間企業によって課題への対応策が異なることから、さまざまな事業者と対話を進めていくことがより良いパートナーを選定するためには重要となります。結果として応札が1者であったとしても、事業の最適化のためには多様な事業者との対話が必要不可欠です。そのため、事前に仕様書等を公表し事業条件に関する意見交換・調整を行うなど、公募前の情報公開・対話の期間を設けることが求められます。
選定基準の明確化:その上で、課題認識や柔軟なソリューションの導入などインフラ経営の視点を選定基準として形にすることが求められます。
また、千葉県柏市では、提案者が1者のみの場合には、一定以上の点数がないと優先交渉権者になれないとするなど、平均的な提案では選定されないようにする「足切り基準」を設けています。この様に競争があることで期待される効果を疑似的に取りこむことも有効的です。
中途見直し条項・契約解除条件の明確化: 長期PPP契約では、期間中の環境変化に対応できる柔軟性が重要です。例えば、茨城県守谷市では、中間総合評価として事業開始5年後に中間レビューを行い、契約継続の有無について確認を行うことを契約書に盛り込んでいます。
透明性の確保・モニタリングルールの設定: 今後の官民連携では、自治体と事業者は契約上の受託者・発注者という関係ではなく、ともに地域生活を守るパートナーとして位置付けることが必要となります。そのため、契約期間中に判明した事実・予期せぬ状況変化(技術革新や法令改正など)や双方の追加提案などが生じた際などの協議方法について定めるとともに、自治体と事業者が定期的に情報共有・協議を行う場(運営会議、モニタリング会議等)を設ける条項を盛り込みます。特に契約変更を伴う場合には、より透明性が求められることから、情報発信・情報公開の仕組みを設けることや地域住民・議会等も交えた協議を進めるなどがインフラ事業に求められる説明責任を果たす一助となります。例えば、「大津市ガス特定運営事業等」では、料金改定に必要な資料(調達価格の変化等)や考え方について契約書上に明示し、民間事業者が負う説明責任について明確化している事例などもあります。
さらに、既存契約に追加案件を組み込むなど、柔軟な制度設計も重要です。広域化やバンドリングの中で、新規事業追加や評価方法の整備により、透明性と効率化を両立できます。また、官民双方の人材交流や出向による相互理解の促進も有効です。
図 段階別の検討ポイント、最終的な目標・達成するべき事項
官民の役割分担が変化する中、今後はウォーターPPPをはじめとした官民連携を担う民間事業者にも、管理と更新の一体化を見据えた業種横断的な提案・事業運営が求められます。
こうした業界構造の変化や官民連携案件の増加を背景に、M&Aの活発化も期待されます。
上下水道事業は、他のインフラ事業とは料金決定プロセスが異なるため、より慎重な制度設計が必要です。一方で、料金・利用料収入が安定しており、地域住民や産業と密接に連携したビジネスであるという特徴もあります。
これらのビジネス上のメリットを官民で共有しつつ、モニタリング体制の整備、外部評価委員会の活用、住民説明の強化など、住民視点でのガバナンス体制を構築することが重要です。費用削減や体制補完にとどまらず、地域と共に歩むパートナーシップの構築を目指すという観点から、事業の在り方や事業者選定の考え方を再定義していく必要があります。
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ウォーターPPPをはじめとした、管理・更新を一体化した官民連携が拡大する中 、官民双方の役割分担について見直しが必要です。
持続可能な地域インフラ経営に向け、官民双方の体制見直し、市民目線での透明性強化など、官民連携のさらなる 深化が求められます。
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