2. 成長投資の促進と経営資源配分の検証
今回の改訂で最も重要なテーマの1つが成長投資の促進です。
原則4-1において、取締役会の役割・責務として、会社の目指すところ(経営理念等)を確立し、戦略的な方向付けを行うことが主要な役割・責務の1つとされていましたが、今回の改訂において、新たに会社の目指すところに向けた成長の道筋を構築することが記載されました。経営戦略・経営計画の策定・公表に当たっては、成長の実現を目指し、自社の資本コストを踏まえて収益計画や資本政策の基本的な方針を示すこと、収益力・資本効率等に関する目標を提示しその実現のために、成長投資(設備・研究開発・人的資本・知的財産等の無形資産への投資等)や事業ポートフォリオの見直し等の経営資源配分等に関し具体的に何を実行するのかについて説明することが求められています。また、解釈指針において、投資先の検討に当たり、①自社内部か外部か、②短期か中長期か、③国内投資か国外投資か、といった多様な観点に基づき投資機会を認識すべきであることが示されています。
加えて、原則4-2において、取締役会は自社の経営資源の配分が経営戦略・経営計画に照らして適切なものとなっているかについて、不断に検証を行うべきとされました。
3. 取締役会の機能強化
上場企業における取締役会の実効性向上に向けた整備も今回の改訂の重要な柱です。
取締役会の機能強化に向けた取組みは引き続き重要であることを踏まえ、今回の改訂においては、改訂前のCGコードから、取締役会の中核的な責務は原則に記載し、具体的な例示等の部分は「解釈指針」に移管され、必要に応じて加筆されています。
独立社外取締役が浸透しつつある状況を受けて、そのさらなる機能の質の向上のため、独立社外取締役の役割・責務、質・量の確保、独立性確保の重要性が強調されるとともに、支援体制の強化についても重視されています。この点、原則4-14の解釈指針において、取締役会事務局(コーポレートセクレタリー等)の機能強化について追記がなされています。取締役会事務局は、会議運営を行う単なる事務方としての役割にとどまらず、取締役会やその傘下の各委員会が実効性ある議論の場となるよう、果たすべき役割・責務に照らし適切な審議事項を定めるなど、当該会議体の運営を能動的に行うことが望ましいとされています。また、取締役会事務局は、必要に応じて、社外取締役・社外監査役の指示を受けて会社の情報を適確に提供できるよう社内との連絡・調整に当たる役割を担うことも期待される旨の記載もされています。
4. 有価証券報告書の定時株主総会前の開示
実務への大きな影響を及ぼし得る事項として、原則1-2において、有価証券報告書を株主総会開催日前に提出することが、株主総会における権利行使に係る適切な環境整備の重要な例として明記されました。解釈指針では、さらに、有価証券報告書は「株主総会開催日の3週間以上前に提出されることが最も望ましいと考えられる」とされ、株主総会開催時期や議決権行使に係る基準日の後ろ倒しも検討の選択肢とされています。
この改訂の背景には、当局からの要請等もあり、徐々に株主総会前の有価証券報告書の開示が広まりつつあるものの、株主総会開催日までに十分な日程を確保した上での開示が実現されていないことがあります。
株主の議決権行使に資するという意味では、余裕を持った有価証券報告書の事前開示が理想的であるものの、企業への負担も大きく企業努力だけでの実現は困難であることから、制度的な見直し含めて検討されるのが合理的です。そのため、「金融庁は、企業負担も考慮し、現行法制下で一般化している実務運用からすると株主総会開催日の3週間以上前の開示は必ずしも容易ではないとの認識の下、法務省とも連携しつつ、法制審議会において議論されている有価証券報告書と事業報告等の一本化・会社法上の監査と金融商品取引法上の監査の一元化や、有価証券報告書の記載事項の整理といった制度的な検討も並行して進める」こととされています。