EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
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EYヘルスアウトカム・プラットフォームは価値ベース契約への転換を大規模に進める実用的なソリューションを提供して、すべてのステークホルダーの認識や方向性を一致させます。続きを表示
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同様に、現在の「スマート人工関節」も術後ケアを提供するデジタルエコシステムの一部となるでしょう。患者は現在、退院後の回復とセルフケアを自分で管理する必要があり、指導をあまり受けられない状況にありますが、近い将来にはデジタル・パーソナルアシスタントを介して、自宅でコーチングを受けられるようになります。スマート人工関節から送られてくるデータにアクセスすることで、患者は指導を受けながらリハビリを進めることができ、リハビリの終了も早まります。またこのデータは、コーチングプログラムの最適化にも役立つはずです。さらに、インテリジェント・ヘルスエコシステムでは術後の患者が、今まで以上に個別化された効果的な管理を受けることができます。人工関節やスマートホーム環境から送られてくる豊富なデータを参考にシミュレートされたデジタルツインを構築することで、患者一人ひとりのニーズに合わせた双方向型物理療法による個別化治療が可能になるでしょう。
デジタルケアとコネクテッドケアを経て、インテリジェント・ヘルスエコシステムへの移行が完了すれば、患者が必要に応じて訪れる従来型の医療機関での医療ではなく、健康管理が生活と実質的に一体化し、治療が進む中で患者を取り巻くテクノロジーが常に自動的に最適化され、アウトカムを向上させることのできる世界が実現するものと考えられます。現在は、旧式のシステムにデジタル遠隔医療がある程度導入されるレベルにとどまっていますが、将来的にはバーチャル病院の認知度が高まり、高度に個別化、かつ予測的でもある、専門家の総合的なサポートをリモートで提供できるようになるでしょう。インテリジェント・ヘルスエコシステムの進化に伴い、さらにその先へと進み、大規模で専門的な遠隔診療が出現すると見込まれます。この遠隔診療では、医療エンジニアがデータとテクノロジーを活用して、離れた場所にいる膨大な人数の患者を実質的に管理することになるとみられます。
医療に対するこの新たなアプローチでは、各ステークホルダーが求めるアウトカムをもたらすことになるはずです。医療提供者は、現在より格段に効果的に医療を届けるために必要な情報とツールを手にし、ペイヤーと政策立案者は、真に機能する医療に資源を投じるようになるでしょう。医療のスマート化で、長期間にわたり費用もかさむ患者の通院が不要になり、住民のウェルビーイングと生産性が維持されます。政策立案者にとってはヘルスケア(今日の医療は正確には「シックケア」と表現される)を単に財政的な負担としてではなく、社会の公共資産と考えるようになります。こうした効果的な新しいケアアプローチを実現できる医療機関も、提供した便益によって評価されることになるでしょう。価値ベースの医療システム内における異なる償還価値が、イノベーションを評価し支えることになるのです。
インテリジェント・ヘルスエコシステムが提供する個別化されたヘルスエクスペリエンスは、特別なものではなく必要とされるもの
価値ベースの医療は、個別化治療を通じて業務を効率化し、効果と効率を両立させるのです。現状では、どのような介入がどの患者の役に立つかを予測する上で必要なデータが少なすぎるため、医療費の多くが見当違いの目的に使われ、無駄が生じていますが、インテリジェント・ヘルスエコシステムの構築に向けたこの取り組みは変革をもたらし、一人ひとりのペイシェントエクスペリエンスとアウトカムを向上させることになるでしょう。医療の個別化は特別なことではなく、アクセスの拡大と健康の公平性の確保で必要不可欠なものなのです。
ヘルスケア業界とそのステークホルダーは長い間、ヘルスエクスペリエンスの質が患者にとっていかに重要であるかを軽視してきました。他業界を見ると、より良いユーザーエクスペリエンスを提供する上で、利便性、品ぞろえ、シームレスな取引、透明性、個別化の重要性をマーケットリーダーが身をもって示しています。ヘルスケア業界では、こうした学びを得るのに時間を要したものの、医療システムのデジタル化が進み、よりつながり、よりスマートなシステムになるにつれ、エクスペリエンスの向上は重要な問題となるでしょう。これまでは、個人の主観的なヘルスエクスペリエンスは取るに足らない問題と見なされ、臨床結果に焦点が当てられてきましたが、今やアウトカムの向上で中心的な役割を果たしています。自らの治療に一層関与し、力を得ることで患者は単により幸せになるだけでなく、より健康にもなるのです。
インテリジェント・ヘルスエコシステムは、業界とそのステークホルダーのニーズ、そして、両者が一致協力して貢献する患者のニーズを満たすことができるヘルスケアの未来を創出します。こうしたビジョンを実現するためのテクノロジーが今ここにあります。そのテクノロジーに長期間にわたり効果を発揮させ、医療の提供の仕方を飛躍的に変えることのできる組織が、この新しい時代のリーダーとなり、未来にふさわしい医療を届けることができる新たなエコシステムにおいても、中心的な役割を担っていくでしょう。