4.AIを活⽤してテクノロジー課題の解決を促進する
企業は、財務的に圧迫している時期には、⼤規模なデジタル変革への意欲が低下します。そのため、ファンドは、すでに保有しているテクノロジーから得られる価値をいかにして増⼤させるかに焦点を当てています。
AIの普及を背景に、PEファームの経営幹部の多くがテクノロジーの優先順位を再検討しています。AIの潜在的な影響は、この1年間で、デューデリジェンスの領域でますます顕著になっています。こうした状況を受けて、ファンドは次のような疑問について考えています。「AIは、企業⾃体、そのオペレーティングモデル、およびバランスシートにどのようなディスラプション(破壊的創造)をもたらす可能性があるのか」「AIはどの領域で機会を⽣み出し、どの領域で脅威となるのか」「AIによって参⼊障壁はどのように低減する可能性があるのか。新たな競合他社が市場に参⼊しやすくなったり、既存の企業が隣接する市場やセグメントに進出する機会が⽣まれたりするのか」
ファンドは、こうした戦略的な検討事項と並⾏して、AIを効果的に活⽤するために必要なデータを⽣成・収集するなど、投資先企業がAIを活⽤できる態勢を整備できるよう数多くの実務的作業を⾏っています。またAIの導⼊により、企業の再評価やマルチプルの向上を通じて、売却時の価値が⾼まっています。先般のPEの動向調査でも、GPの85%近くが、今後5年超の期間にAIは事業運営⽅法に重⼤な、または変⾰的な影響をもたらすと予想しています。しかし、10⽉のCEO Outlook Puls調査でインタビューに参加したCEOのうち、AI戦略の成熟度について「⾃社は先行している」と回答したのはわずか4%でした。
検討すべき優先事項は以下の通りです。
- 直ちに実⾏できる⽣成AIのユースケースを特定する
先進的な企業は、最⼤の価値を提供できる⽣成AIのユースケースを特定して優先課題として取り組み、事業成⻑と業務最適化を推し進めています。そのような企業では、⾼品質のデータ、イノベーションの⽂化、⽣成AIの倫理的で責任ある利⽤の取り組みなど、導⼊を成功に導くための適切な基盤が整備されています。
- ⽬に⾒える実益を迅速に追求する
企業は、⻑期的な取り組みに限ることなくAIについて検討し、⽬に⾒える実益を迅速に達成できるテクノロジーの導⼊に努めることで成果を挙げています。そのような企業では、より早期の利益実現に向けて戦術的なアプローチに従ってAIを導⼊し、投資先企業のイグジット時の魅⼒(リターン)を⾼めるため、ディールのデューデリジェンス段階でAIを活⽤したロードマップを策定・開始しています。
- データを整備する
企業は、AI利⽤のためのデータの正確性、完全性、信頼性を保証するために、強固なデータガバナンスのフレームワークとデータ品質管理プロセスを導⼊しています。また、異なるデータソースを統合し、AIのために利⽤できる統合データレイクを構築するための、データプラットフォームとインフラへの投資も進めています。
5. ESGは価値創造の触媒
ESG原則の採⽤が劇的に増加しています。Pitchbookによると、画期的な責任投資原則(PRI)に署名したGPは、2010年にはわずか155社でした。現在、その数は2,000社を超えています。もっとも重要なのは、サステナビリティがコンプライアンス上の取り組みを超えて、価値創造戦略の不可⽋な要素になったことです。企業がESG報告要件を充⾜できない場合、イグジット時に⼀部の新規株式公開(IPO)の道筋が閉ざされることになるでしょう。
ファンドが先進的なESGアプローチを堅持するようになっている理由は他にもあります。ファンドが受ける投資には、多くの場合、ESGコミットメントが付随していることです。ESGの投資への寄与を過⼤評価するべきではないとはいえ、PEファンドはESGをリスクの問題ではなく、価値の源泉と捉える傾向は⾼まっています。
検討すべき優先事項は以下の通りです。
- 世界のマクロトレンドの進化とサステナビリティ関連規制の増加に対処する
先進的な企業は、確実に規制に準拠するため、ESG報告のための包括的なフレームワークと統制を導⼊するとともに、ネットゼロ⽬標達成とグリーンファイナンス/インセンティブの利⽤に向けて、ロードマップを策定しています。
- 投資先企業の企業戦略にESGの基本原則を組み込む
多くの企業がESG成熟度評価を実施し、⻑期的なレジリエンス構築のため、重要なESG要因を事業戦略、オペレーティングモデル、バリューチェーン活動に組み込んでいます。
- 消費者やステークホルダーの進化する要望の先⼿を打つ
今後なすべきこととして、⻑期的にトップラインとボトムラインの成⻑を実現するための持続可能な戦略とアプローチの策定が考えられます。
価値の創出にたゆまず⼒を注ぐ
⼀部のファンドは企業の保有期間を⻑期化させていますが、それが価値創造のペースの鈍化を意味するわけではありません。PEファームは常に介⼊に積極的なアプローチを堅持し、もっとも重要なことにたゆまず⼒を注いできました。
このような先⾏きが不透明な時代にあっても、企業はアプローチを⾰新・適応させ、⻑期化する保有期間中の業績の最適化に向けて投資先企業を⽀援するとともに、機会が訪れた時の選択とイグジットについて俊敏性を⾼めています。
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