Joyful friends watching movies on a projection screen  in the backyard
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シンプルさと選択肢を求めるコネクテッドコンシューマーのエンゲージメントを高めるには


競争が激化する現在のデジタルホーム市場で存在感を確立するには、顧客からの信頼と親密な関係性(カスタマーインティマシー)を再構築することが不可欠です。では、具体的な進め方を見ていきましょう。


要点
  • AIの活用は、カスタマージャーニーにおいて不可欠なものとなり、かなり浸透してきている。一方で、精度やセキュリティへの懸念には対応が求められる。
  • 料金設定の重要性は依然として高いが、より優れた体験が得られるのなら、追加の支払いをいとわないデジタルホーム世帯が増えている。
  • インターネット接続サービスとコンテンツをバンドルしたプランは引き続き高い魅力を持つものの、いくつかの顧客課題が今後の成長の制約となる可能性がある。



EY Japanの視点

デジタルホームの勝ち筋は「整えて任せる」体験

EYの調査においては、デジタルホーム市場を、通信・コンテンツ・デバイス・サポートを世帯単位で統合し「暮らしとしてのデジタル体験」を提供する領域としています。これは個別の製品やサービスを提供する市場ではなく、家庭内のデジタル環境をいかに分かりやすく、安心して利用できる形で成立させるかが問われる市場です。

グローバルでは、地政学リスクやインフレを背景に価格不安が高まる中、通信速度よりも安定性や体験の一貫性、分かりやすさが重視される傾向が強まっています。その結果、FWAや衛星通信の活用、ストリーミングサービスの流動的な利用が進み、AIは購買や情報探索を加速させる役割を担う一方、最終的な信頼は人による対応が担うという構図が明確になりつつあります。

一方、日本市場ではFTTHの高い普及率により性能差を感じにくく、惰性による継続利用が多いのが特徴です。そのため競争軸は「安さ」や「速さ」から、災害時も含めた安心感や、契約・コンテンツの整理・統合、AIと人を組み合わせた丁寧なサポートへと移行していくと考えられます。日本では“選ばせる”よりも、“整えて任せられる”体験設計が、デジタルホーム市場の成否を左右すると言えるでしょう。


EY Japanの窓口

原 晋一郎
EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 テクノロジー/メディア・エンターテインメント/テレコムセクター アソシエートパートナー



不確実性の高まりを背景に、インターネット接続サービスとコンテンツを選ぶ際の消費者の判断基準は急速に変化しています。世界的に見て、ほとんどの世帯は依然として年間料金の引き上げに不満を抱いており、最近のブロードバンドサービスの料金引き上げと配信プラットフォームの料金高騰を「不当で納得しがたい」と捉えています。一方、サプライヤーの選択は、政治やテクノロジーを取り巻く環境の変化の影響も受けるようになっています。こうした状況を背景に、企業には、信頼と価値を明確に提示するとともに、提供内容のシンプル化によって価値をより分かりやすく伝えることが求められています。さらに、人工知能(AI)を利用してカスタマージャーニーをより迅速で円滑なものへと高めていく必要性が高まっています。

一方、プラス面に目を向けると、不確実性の高まりは、こうした課題だけでなく、好機ももたらしています。消費者にとって魅力的な料金設定は重要ですが、その一方で、付加価値の高いプレミアムなサービスであれば料金が高くなっても構わないと考えてもいるのです。同時に、バリュー・フォー・マネー重視の姿勢は、特にインターネット接続サービスにおいて引き続き高い水準を維持しています。また、消費者が料金設定の透明性よりコンテンツの効果的な集約を重視していることも分かりました。これは、コンテンツのバンドルプランをこれまでとは異なる形で構築できるプロバイダーにとって、収益を上げる機会となるかもしれません。

今まで述べてきたことは、「Decoding the Digital Home 2025 Study(デジタルホーム市場を読み解く 2025)」の結果から浮かび上がってきたテーマの一部にすぎませんこちらからレポートを申し込み可能。今年の調査結果を深く掘り下げて得られたインサイトは主に7つあります。

第1章:地政学・経済環境の変化がプロバイダーの選択を左右する
第2章:ブロードバンドプロバイダーへの「ロイヤルティ」は惰性に依存しがちである
第3章:衛星通信とFWAが従来型のインターネット接続サービスに対して存在感を高める
第4章:よりシームレスなサービス連携がバンドルプランを活性化できる
第5章:配信サービス利用者に向けた新たなエンゲージメント戦略が不可欠
第6章:パーソナライズ強化がプレミアムコンテンツの価値を最大化する
第7章:顧客の間でAIによる支援が浸透してきているものの、やはり重要なのは人による対応

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第1章

 

地政学・経済環境の変化がプロバイダーの選択を左右する

世界の分断が進む中、料金設定に対する消費者の懸念は高まっています。通信事業者はコンテンツプロバイダーより、バリュー・フォー・マネー面で優位にある一方で、若年層ユーザーのマインドシェア(認知度)は低い状況にあります。

 

今回の調査でほとんどの回答者が口にしたのは、貿易摩擦がインターネット接続サービスとコンテンツの料金設定に影響を及ぼす可能性があることへの懸念です。この背景には、一部通信事業者がコストの上昇分を消費者に転嫁する意向を明確に示していることがあります1。その結果、こうしたサービスへの消費者の支出に影響が及ぶ可能性があります。ただ、今回の調査では、国やセグメントにより大きなばらつきがあるものの、全てのデジタルホームサービスにおいて、バリュー・フォー・マネー重視の姿勢は前年からおおむね一貫していることが確認されました。その一方で、サブスクリプション料金の上昇が続く中、支払っている対価に見合う価値が得られていないと感じる割合は、有料チャンネルサービス加入者より、配信プラットフォーム加入者で顕著に高くなっていました2。マクロ経済要因と競争環境がこれまでにない形で変化する今、サービスプロバイダーはバリュー・フォー・マネー重視の姿勢を決して当然と受け止めてはなりません。


同じく注目すべきは、今回の調査結果が、地政学的環境によりサプライヤーに対する消費者の選好が変化する可能性があることを示唆している点です。世界全体の世帯の27%が「自国に顧客対応拠点があるインターネット接続プロバイダーを優先的に選ぶ」と回答しました。通信事業者は、ワンストップサプライヤーとしての利便性や、バリュー・フォー・マネー重視の姿勢が総じて高い評価を得ています。さらに、ナショナリズムの高まりにより消費者が自国のサービスを選好する「バイ・ローカル」の動きが、国内のインターネット接続・コンテンツ事業者に追い風となる可能性もあります。しかしそれでも、若年層ユーザーのマインドシェアが著しく低いのが現状です。それが意味するところとは何でしょう?外部環境の変化が顧客の選択に及ぼす影響が一段と強まっているため、全てのサービスプロバイダーは変化する消費者の優先事項に対応するため、自社の価値提案と顧客への約束を見直していく必要があるのです。


第2章

ブロードバンドプロバイダーへの「ロイヤルティ」は惰性に依存しがちである

「満足している」以外の理由で、利用するブロードバンドサービスを変えない世帯が多いことから、インターネット接続プロバイダーは消費者満足度を向上させて売上増につなげるべく、もっと力を入れる必要があるといえます。

世界全体で見ても、最近ブロードバンドを乗り換えたか、今後12カ月間に乗り換えを計画している世帯は少なく、これはブロードバンドプロバイダーにとって好材料です。一方、あまり良くない材料もあります。明らかに「ロイヤルティの高い」世帯で、乗り換えない主な理由として「現在利用しているプロバイダーに満足している」と回答したのは全体の3分の2弱でした。プロバイダーを変えないその他の理由は、「プロバイダー間の差別化がない」や「乗り換えの手続きが複雑」などです。長期的に見ると顧客の無関心と不満がユーザーあたりの収益(ARPU)の増加を阻む恐れがあるため、こうしたロイヤルティの低下要因に対処した新規顧客獲得戦略と顧客定着戦略を策定しなければなりません。


FTTH(ファイバー・トゥ・ザ・ホーム)の普及加速は喫緊の課題です。業界データによると、EU27カ国および英国ではフルファイバー接続の普及率は55%にとどまり、前年からの伸びもわずか1ポイントにとどまっています3。今回の調査結果から、消費者がブロードバンドのアップグレードにメリットがあるのか、疑問を感じていることが分かりました。最速プランにアップグレードしない理由として、単なる家計やサービスの制約を挙げたのは4分の1の世帯にとどまりました。最高速度への需要が限定的であることに加え、プレミアム料金帯のネットワーク性能を疑問視する見方が広まっています。こうした状況から、最速プランの利点について、利用者の理解をより一層促していく必要があります。特に注視すべきは、いまだに「インターネット接続が不安定になることがたびたびある」と回答した世帯が全体のほぼ4分の1(24%)に上る点です。


Young black woman eating popcorn lying on the sofa at night

第3章

衛星通信とFWAが従来型のインターネット接続サービスに対して存在感を高める

固定ブロードバンドサービスに不満を抱く消費者は乗り換えにより前向きであり、衛星通信プロバイダーにとって新たなビジネス機会が生まれています。

低軌道(LEO)衛星サービスは成熟産業となり、2026年にはエンドユーザーの支出額が世界全体で148億ドルに達する見通しです4。今回の調査結果から、世帯全体の3分の1が衛星インターネットサービスに関心を持っていることが分かりました。最も人気があったのは衛星通信をバックアップとしたモバイルプランです(34%)。一方、衛星サービスを家庭向けブロードバンドサービスとして利用することへの関心は、料金が高いと感じられていることが阻害要因となって低いものの、ニーズを満たせるなら固定ブロードバンドから衛星ブロードバンドに乗り換えてもいいと考える世帯が全体の39%に上りました。その背景にあるのは、居住地域では必ずしも高速光ファイバーのパッケージプランを利用できないという不満があります。衛星通信プロバイダーは今後、料金をさほど気にしない消費者を中心に、こうした潜在的な不満をうまく利用できるかもしれません。

通信事業者がバックアップ接続で衛星サービス事業者との連携を進めており、また通信事業者のCEOの90%がD2D(direct-to-device)サービスをモバイルサービスの価値提案の主要な一部と位置付けていることから、固定ブロードバンドプロバイダーは、一般家庭市場で変革が起きる可能性があることを軽視すべきではありません。


レガシーテクノロジーに取って代わる新たな選択肢がある中で、固定無線アクセス(FWA)ブロードバンドは比較的低料金であることなどから、すでに家庭用インターネット接続市場に浸透しつつあります。さらには、今回の調査におけるFWA利用世帯の回答で、これらユーザーが平均的な消費者より情報感度が高く、パッケージプランが提供する料金以外のメリットに敏感であることが裏付けられました。FWA利用世帯はプロバイダーを乗り換える傾向にある一方、「良いサービスなら高い料金を払う」ことと、FWAとモバイルのバンドルプランに前向きであることから、顧客の定着や再獲得に向けた新たな戦略への道が開かれます。FWA利用世帯のニーズを長期的な視点で捉える通信事業者は、「余計なサービス抜き」のパッケージプランからさらに一歩進んで、より充実した機能や補完的サービスを提供して、顧客ロイヤルティを一段と高め、成長を加速させることができます。


第4章

よりシームレスなサービス連携がバンドルプランを活性化できる

ブロードバンドサービスと別タイプの通信サービスやコンテンツをセットにしたバンドルプランが非常に魅力的な価値提案であることに変わりはありません。しかし、カスタマージャーニーを分析すると供給過多の兆候がうかがえ、また、これとは異なる内容の魅力的なバンドルプランも出てきました。

今やさまざまなサービスの組み合わせがある中で、消費者普及率が相変わらず最も高いのはブロードバンドサービスとテレビ放送をセットにしたプランです。しかも、将来的にこうしたサービスを利用する可能性が高いと回答した世帯の割合は、その普及率をはるかに上回っており、今後はこれがインターネット接続プロバイダーにとって重要な差別化要因になることは間違いないでしょう。ただ、(ベースラインが低いとはいえ)より大きな成長が見込まれるのは、セキュリティやウェルビーイングの機能とのバンドルをはじめとした、他のブロードバンドサービスの組み合わせです。一方、今回の調査結果から、「選択肢が多過ぎる」や「複数のプラットフォーム間でコンテンツを追うことが難しい」などの問題を中心に、ブロードバンドサービスとコンテンツをバンドルしたプランに対する不満がカスタマージャーニー全体で生じていることが明らかになりました。こうした不満に対処しなければ、プレミアムパッケージプランの今後の成長に支障が生じかねません。

有料チャンネルプラン、ブロードバンドサービス、コンテンツをバンドルしたプランに対する意識


配信プラットフォーム事業者が新たな提携先の協力を得て、より規模の大きいバンドルプランを開始していることから5、インターネット接続プロバイダーは、テレビ放送をバンドルした自らのプランに注目を集めたいのであれば、サービスの集約を真剣に検討する必要があります。今回の調査で、消費者はコンテンツの組み合わせの充実を何よりも求めていることが分かりました。消費者が望む、インターネット接続とコンテンツをバンドルしたプランの改善点のトップは「チャンネル、ライブテレビ、配信専用アプリの組み合わせの充実」で、サービスプロバイダーがサービスの集約を強化する必要があることは明らかです。同時に、消費者の約4割が料金設定やコンテンツのオプションについての情報提供の強化を求めています。このような改善を実現できるプロバイダーは、よりスムーズなカスタマージャーニーを提供できるパーソナライズド体験に重点を置くべきです。確実にプレミアム料金を設定することができます。


Group of people watching a football match on TV, one person holding a smartphone, in a cozy living room setting.

第5章

配信サービス利用者に向けた新たなエンゲージメント戦略が不可欠

解約率が上昇していますが、配信サービスを解約する理由は、料金からコンテンツの充実度やより魅力的な別の配信サービスの存在へと移行しつつあります。

配信サービスは依然として人気があり、世界全体の有料月額契約数は2029年までに20億件を超える見通しですが、成長率は横ばいで推移するとみられています6。こうした状況を背景に、今回の調査結果からも、配信サービスの競争が激化していることが分かりました。少なくとも1つのプラットフォームを解約したか、今後解約する予定の配信サービス利用世帯は全体の38%に上り、前年の35%から増えています。一方、今年は解約の理由に「別のプラットフォームの方が良くなった」や「好きなコンテンツが配信されなくなった」を挙げる世帯が増えました。「節約」は依然として上位にランクされているものの、これまでに比べ若干重視度が下がっています。実際のところ、プラットフォームの選択基準として良質のコンテンツを挙げる人が年々増えています。こうした需要のシフトを受け、オリジナルコンテンツへの投資が増えていますが、サービスプロバイダーは今後、制作コストの上昇とステークホルダーの厳しい目にうまく対応する必要があり、それに伴い戦略の変更も余儀なくされることになるでしょう。


配信サービス市場で選択の幅が広がっていることから、加入/解約の繰り返しは単なる一時的な現象ではありません。消費者と配信プラットフォームの関係は基本的に不安定で、全体の4割が月額料金を抑えて一気見するためや、特定のイベントを視聴するため、あるいはキャンペーン期間中の割引を利用するために、「加入・視聴・解約・再加入」を繰り返しているのです。その結果、「配信サービスプロバイダーは加入や解約の煩わしい手続きなしに、コンテンツを簡単に視聴できるようにすべきだと思う」と回答した世帯が全体の半数を超えました(56%)。顧客の長期定着を目指す配信サービスプロバイダーは、新たなエンゲージメント戦略や料金設定モデル、ユーザーインターフェースを生かして、こうした顧客のマインドセットの変化に対応する必要があるでしょう。


第6章

パーソナライズ強化がプレミアムコンテンツの価値を最大化する

プレミアム製品・サービスの利用意欲はさらに高まる余地があります。3分の1の世帯は、問題点がいくつかあるとはいえ、有料でもスポーツを観戦したいと考えているのです。

コンテンツプロバイダーが収益化を強化するには、スポーツの独占配信からファミリープランや高画質の動画、広告スキップ機能など、さまざまな手段があります。こうした機能などについては、3分の1の世帯が、プレミアム料金を払ってもよいと回答しました。有料スポーツコンテンツは引き続き長期的な差別化と成長のけん引役となる可能性がありますが7、今回の調査結果から、注意が必要な問題点がいくつかあることが浮き彫りとなりました。消費者が指摘した課題は、料金の高さや、好きなスポーツや応援しているチームを見つけ、追いかけ続けることの難しさです。サービスプロバイダーは、こうした利用意欲と不満が入り交じった感情に対処する必要があります。若年層ユーザーはこの両方の意識がより顕著に見られる傾向にあり、丁寧な対応が必要です。


配信プラットフォーム事業者は複数のコンテンツジャンルを扱い、エンドユーザーにとって魅力があり、最も人気のあるプロバイダーです。大手有料チャンネルサービスプロバイダーは、配信プラットフォーム事業者ほど浸透しておらず、それに対処する必要があります。配信プラットフォーム事業者は、コンテンツのレコメンド機能があるため、マインドシェアの獲得でも有利です。そのため、プレミアム料金を払うだけの価値を持たせることを目指す、配信プラットフォーム事業者以外のサービスプロバイダーは、単なるオリジナルコンテンツや独占コンテンツへの投資強化以上の対応をする必要があるでしょう。また、AIはカスタマージャーニーやパーソナライズに関わるメリットを全てのコンテンツプロバイダーにもたらすことができますが、オンライン体験にAIが活用されていることで不信感を抱く消費者がいまだに少なくありません。したがって、消費者に今まで以上に安心感を与え、説明責任を果たすことが肝要です。


Youth friends community phubbing using smartphones sitting outdoors on a bench - lifestyle people and technology concept

第7章

顧客の間でAIによる支援が浸透してきているものの、やはり重要なのは人による対応

AIが購買プロセスを変えつつあり、市場変革を起こす可能性もありますが、人による対応を望む声に加え、AIの有効性に対する疑念が、サービスプロバイダーによるチャットボットの本格的な普及を阻んでいます。

消費者は購買プロセスでの生成AIの活用に肯定的です。従来型のオンライン検索サイトや料金比較サイトより生成AI検索サマリーを信用しているとの声も多く聞かれるようになりました。サービスプロバイダーがAIを活用するには、マーケティング戦略を転換して、従来型の検索エンジン最適化(SEO)の先を行く、生成エンジン最適化(GEO)を見据える必要があります。GEOを利用することで、ウェブサイトの文章で主要なメリットや価値提案を前面に打ち出したり、顧客のレビューをAIツールが発見しやすいように掲載したりできます。AI検索サマリーが消費者に徐々に浸透してきています。こうした状況に気づき、対応するサービスプロバイダーは、カスタマージャーニーの変化をうまく活用できるはずです。


購買プロセスではAIの普及が拡大し、またAIが認知・検討プロセスに変革をもたらす可能性が高いとされているのとは対照的に、通信事業者によるAI活用のおよそ半分をカスタマーサポートが占める中8、サポート窓口でのチャットボットの導入は思ったほどではありません。コールセンターに対する顧客の信頼度が低下していますが、それに反比例してチャットボットへの選好度が高まっているわけではなく、若年層ユーザーの間でもコールセンターは強い存在感を維持しています。問題の核心を理解し、情報を引き出し、問題を解決するスキルを含めた人間による支援は依然として顧客が最も期待していることであり、また顧客の信頼を得る上で極めて重要です。不満の兆候の検知や、チャットボットからオペレーターに対応を切り替える際に、顧客の問題に関する情報を適切に引き継ぐことを含め、チャットボットと人による対応をさらに効果的に連携させていくことが不可欠です。


サービスプロバイダーの次なる対策

今回の調査結果全体を踏まえると、デジタルホームサービスプロバイダーがより効果的にコネクテッドコンシューマーのエンゲージメントを高め、かつ収益化を図るために講じるべき対策は5つあります。

価値提案とブランド原則を強化する

料金引き上げに対する消費者の不安は変化し続けており、またサプライヤーの選択において消費者が地政学的状況を考慮する可能性もあります。バリュー・フォー・マネー重視の姿勢はおおむね安定しているものの、アップセルで有利な立場に立てるかどうかは、ブランドへの信頼、料金設定、利便性など複数の要因に左右されます。製品やサービスを多様化する新たな機会を開拓しながら、主力サービスの強みを明確に打ち出しましょう。同時に、顧客とデータを保護する体制を強固に維持するとともに、急速に変化する地政学的環境を踏まえ、ステークホルダーとの関わり方にも十分配慮することが重要です。

カスタマーインティマシー(顧客親密性)、顧客理解、共感を見直す

今回の調査結果から、既存のセグメント分類アプローチや市場参入アプローチでは捉えきれない、顧客の新たな行動やニーズが明らかになりました。顧客の「囲い込み」を優先する契約モデルを見直して、より情報感度が高くフットワークの軽い消費者をターゲットにしましょう。既存のロイヤルティを満足感と混同しないよう注意し、顧客の潜在的な不安に対処するとともに、プレミアムサービスのメリットをはっきりと打ち出してください。カスタマーサポートのパーソナライズ強化に伴うサービス機能の新設や改善について積極的に情報提供することにより、売上高も顧客満足度も高めて、顧客の能動的なロイヤルティの形成につなげることができます。

サービスの進化とシンプル化を同時に図る

単なる「more for more(付加価値に応じた料金体系)」ではなく、「more for better(サービス品質に応じた料金体系)」を原則として、顧客のニーズに合ったサービスのラインアップを実現しましょう。異なる形態の接続サービスの組み合わせや、多様なフォーマットを効果的に組み合わせたコンテンツの充実など、新たなタイプのバンドルプランは重要ですが、シンプルさを求める顧客の声の高まりを無視することはできません。サービス設計では、効果的に集約することを最優先事項とするべきです。顧客がサービスをより簡単に見つけ、利用できるようになるだけでなく、新たな形の価値をアピールすることもできます。顧客体験の向上についても、パートナーやサプライヤーの協力が得られる領域を検討し、改善を図りましょう。

カスタマージャーニーの超短縮化に備える

生成AIはすでに購買プロセスで消費者の人気を集めつつあり、従来の問い合わせ方法や検索方法に取って代わる可能性があります。顧客のデジタル能力が向上するにつれ、エージェント型AIが認知・検討・購買プロセスの統合・短縮を引き起こす可能性が大きくなるため、新たな形の価値提案を再構築し、販売時点よりもはるか前に示すことが不可欠です。カスタマージャーニーの急速な変化やシフトをうまく生かせるよう、製品・サービスの差別化を図り、AIシステムに認識されやすく、容易に理解されるものとなるよう十分配慮しましょう。

デジタルサポート体験の向上の阻害要因となる信頼の欠如に対処する

サービスを見つけるにあたりAIが果たす役割は変化していますが、サービスのラインアップとカスタマーサポートシステムでAIが担う役割については、消費者の懸念や不満もつきまといます。人を中心としたサポートが欠かせないエンドユーザーが多いことを認識した上で、デジタルツールが顧客とのやり取りで果たす役割の効果的な訴求に優先して取り組んでください。同時に、課題把握や問題解決において、人のスキルを補完できるAIの役割を強化して、人とデジタルツールのプラスの相互作用を最大限高めましょう。新たなテクノロジーとプロセスを効果的に導入することで、顧客のニーズと期待に応えることができます。


サマリー

急速に拡大し、競争も激化しているデジタルホーム市場では、サービスの加入や利用継続を決める際の消費者の判断基準が引き続き速いペースで変化し、また基準の幅も広がっています。こうした動向を常に把握して、自らが選んだサービスに消費者が求める高い信頼性と明確な価値の提供に的を絞った対策を講じなければ、顧客の支出に占める割合を維持・拡大することはできません。ここでご紹介した5つの対策を講じることで、その維持・拡大を図るとともに、今後さらなる成長を遂げる態勢を整えることができます。


コネクテッドコンシューマーのエンゲージメントについて詳しく知る

EY Decoding the Digital Home 2025 Studyをご覧ください。ビジネス戦略の策定に役立つインサイトを詳しくご紹介しています。



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