制度の運用から見えた課題を乗り越え、制度を機能させる組織へ
桑原:制度導入後の社員や周囲の反応はいかがでしたか。
岩瀬氏:まだ利用者は多くありませんが、実際に使っている社員からは「自分の思いが制度に反映された」という声が挙がっており、会社へのエンゲージメント向上につながっていると感じています。また、電通グループから来ている非常勤取締役も高く評価してくれて、「先進事例としてグループ内で紹介したい」という話もいただきました。その役員は自身も3人のお子さんの子育てに積極的に関わっていて、制度の意義に共感してくれたのだと思います。その後、グループ内で情報発信してくれたことで、グループ他社の人事部門から「詳しく話を聞きたい」という問い合わせもあり、大きな反響がありました。
桑原:制度を運用していく中で、見えてきた課題はありますか。
岩瀬氏:実際に運用すると、もちろん課題も見えてきます。例えばサポートする側に1万円のインセンティブを設定した制度では、サポートする社員は休む社員と同等レベルのスキルを持っている必要があります。しかし、その社員のスキルが高かった場合、サポートできる同等レベルのスキルを持つ社員は決して多くありません。また、社員の属人的スキルに頼って業務を履行している面も浮かび上がってきました。ただ、こういった課題は運用してみて分かることでもあります。今後は属人化を解消する組織構成に変えていくことで、インセンティブ制度をより機能させるなど、一つ一つ課題を乗り越えながら、制度を成熟させていく必要があると考えています。
岡田氏:新たな課題はあるものの、このような突破口を作れたことは大きな前進です。今後は、この制度をどう機能させていくか。代替人財を確保し、育成していく組織体制へと変えていくための議論が不可欠と考えています。
社員一人一人の成長が会社を成長させる
桑原:電通ランウェイの人員構成を踏まえると、制度利用者は今後、確実に増えていくと思われます。今後の方向性をどのようにお考えですか。
岩瀬氏:一般的に見て、現在の20代~30代前半の女性社員が子育て世代に入る未来は確実に訪れます。その時にキャリアを中断することなく、自分の思い描くキャリアを着実に築き、成長していってほしいと願っています。人事からも「自分のありたい姿を考え続けましょう」というメッセージを発信し、個人の成長と会社の成長が連動する状態を作りたいと考えています。
桑原:コーポレート部門としての方向性はどのように考えていますか。
岩瀬氏:目指すのは、クライアントから信頼され、競合に勝ち、新規案件を獲得しながら成長していく会社です。そのためには、社員一人一人が成長し続けなければいけません。その成長を後押しする仕組みをどう作るかが、コーポレート部門の重要な役割です。会社が向かうべき方向性をコーポレート部門の社員が正しく理解し、経営と一体となって課題を解決し、提案していく。そうした姿勢で同じ方向を向いて進んでいければよいと考えています。
伴走者としてのコンサルに期待する役割とは
桑原:今後、EYに期待することはどんなことでしょうか。
岩瀬氏:人事制度など「人」に関わる仕組みは、一度作れば終わりではなく、環境に合わせて常にカスタマイズし、アップデートしていく必要があります。自分たちだけでは行き詰まることもあるため、私たちには思いつかない発想で、相談に乗っていただきたい。時代や環境の変化によって制度が合わなくなれば、柔軟に変えていかなければなりません。そのような局面でアドバイスをいただける存在であってほしい。電通ランウェイのことをよく理解してくれている、良きパートナーだと思っていますので、今後もさまざまな助言をいただけるとうれしいです。
岡田氏:私は、ほどよい距離感で伴走してほしいと考えています。中途入社の社員が多く入ってきている中で、成長したりチャレンジできたりするのは「安心して働ける場所」があるからです。
何が安心につながるのか、何が求められているか。新しい会社とはいえ、約7年の間に感覚が鈍っている部分もあります。一歩引いた視点で見てくださる方がいると、気づかなかった点に気づき、「この方向に少し修正したほうがよい」といったことが客観的に分かります。そのような存在は会社の成長にとって非常に重要であり、EYにその役割を担っていただければ、私たちも安心してチャレンジを続けられると感じています。