ニュースリリース
2025年5月9日  | Tokyo, JP

EY調査、海外赴任者を取り巻く環境変化は大きいものの、給与・手当の水準に顕著な変化は見られない

「第8回EYモビリティサーベイ」を発表:国内200社以上の海外赴任者に関する給与・手当実態調査

プレス窓口

関連トピック
  • 海外赴任者の給与体系は、本国での購買力と同等の購買力を赴任先でも維持することを目的とした「購買力補償方式」を採用する割合が74%と最も多い。
  • 海外勤務手当および単身赴任手当の金額は、3年前の同調査と比較して課長クラス・一般スタッフクラスで10%前後の上昇。日本企業の賃上げ機運に乗り海外勤務者に対する手当額も上昇傾向にあるが、「現地物価高騰への対応」を課題とする企業も多く、海外インフレ率の上昇スピードには追い付いていない様にも見受けられる。
  • 海外赴任者規程の見直しや作成に当たって最も難しいと感じる要素として「世間相場の把握(手当・給与・福利厚生等)」「税務リスク(日本・海外)低減」「赴任者コストの削減」「グローバル共通で利用できる規程作成のためのノウハウ習得」が挙げられており、自社での対応が困難な場面での外部専門家の活用が進むと考えられる。

EY税理士法人(東京都千代田区、統括代表社員 蝦名 和博)は、海外赴任者に関する給与・手当の実態を調査した「第8回EYモビリティサーベイ」調査結果を発表したことをお知らせします。今回は「海外赴任者の給与・手当/海外赴任者規程/労災特別加入制度」について調査を実施しました。

本調査は、海外赴任者に関する処遇の実態を明らかにすることを目的とし、2025年1~3月にかけて実施しました。主に企業の人事・経理・経営企画系を中心とした管理系部門に属する延べ269名(245社)の回答を基に調査・分析を行いました。

第8回EYモビリティサーベイの調査結果

給与体系
回答企業245社のうち182社が、海外赴任者の給与体系に「購買力補償方式(本国での購買力と同等の購買力を赴任先でも維持することを目的に、本国給与を基に赴任者給与を決定する方式)」を採用しています。本国給与は支払うが、それとは別に海外勤務のために必要な給与・手当を上乗せ支給する、いわゆる「併用方式」を採用している企業は14%でした。また、現地の給与体系+海外勤務のために必要な給与・手当を支給するいわゆる「Local Plus」や、現地の給与体系を採用する企業はそれぞれ1社にとどまりました。この結果から「購買力補償方式」と「併用方式」が、日本企業の給与決定方式の主流を占めていることが分かります。

海外勤務手当 
海外勤務手当の支給基準は「役職ごとに定額で支給」との回答が32%と最も多く、「月収の一定割合」「年収の一定割合」とする企業も計32%という結果となりました。
本調査では、部長/課長/一般クラス別の具体的な支給金額についても調査を実施しました。中央値は部長クラス165,000円、課長クラス142,000円、一般スタッフ110,000円(2022年の同調査では部長クラス165,000円、課長クラス135,000円、一般スタッフ100,000円)。3年前と比較して課長クラス・一般スタッフは10%前後上昇していることが分かります。

ハードシップ手当
ハードシップ手当の決定要素として最も多い回答は「コンサルティング会社や調査会社の発行する指数」の56%。次いで「自社独自の基準や調査結果」が13%。
本調査では、ニューデリー、ハノイ、バンコク、ジャカルタ、マニラ、北京に赴任した場合に支給するハードシップ手当の金額についても調査を実施しました(いずれも課長クラス相当に支給する場合)。中央値はニューデリー120,000円、ハノイ54,500円、バンコク35,000円、ジャカルタ75,000円、マニラ68,000円、北京35,000円(2022年の同調査ではニューデリー110,000円、ハノイ50,000円、バンコク40,000円、ジャカルタ70,000円、マニラ72,000円、北京40,000円)。

単身赴任手当
単身赴任手当の支給基準は「役職や年収などにかかわらず全員一律」が最も多く29%、「支給していない」割合も18%に上りました。
中央値は部長クラス・課長クラスともに100,000円、一般スタッフ90,000円(2022年の同調査では部長クラス100,000円、課長クラス88,000円、一般スタッフ80,000円)。3年前と比較して課長クラス・一般スタッフは10%程度上昇していることが分かります。

非管理職者の残業代
「一定時間分のみなし残業代を生計費のベースに含めて計算」が38%と最も高く、次いで「一定時間のみなし残業代を手当として支給」が19%、「赴任先での実残業時間に基づき残業代を支給(残業代の計算は日本基準または赴任先基準)」が11%と、何らかの形で残業代相当分を海外赴任中にも支給している企業が過半数を占めます。

海外赴任者の手当・給与についての課題
現地の物価高騰や為替変動時の対応を課題として挙げる企業が多く、近年の世界的な物価高騰や為替の急激な変動など、赴任者を取り巻く環境変化スピードへの対応に苦慮する企業側の姿が垣間見えます。

海外赴任者規程
245社のうち68%に当たる167社が、海外赴任者規程の見直しや新規作成の理由・目的について「赴任者の処遇改善のため」と回答しました。
また規程の見直しや作成に当たって最も難しいと感じる要素としては「世間相場の把握(手当・給与・福利厚生等)」が43%に上りました。他に「税務リスク(日本・海外)低減」「赴任者コストの削減」「グローバル共通で利用できる規程作成のためのノウハウの習得」が各14%という結果となりました。
「赴任者の処遇改善」の根拠として重要な「世間相場の把握」に課題感を抱える企業が多く、外部専門家や調査機関の活用も解決策の一つと言えます。

労災特別加入制度
労災保険の海外派遣者特別加入制度について、「特別加入できる海外赴任者は全員加入している」との回答が全体の59%を占めている一方、「特別加入していない」との回答も18%に上ります。また制度に加入していない/加入できない場合の対応については「民間の保険制度に加入」が36%で最多でしたが、「特に対応はしていない」との回答も22%でした。赴任先で経営的な立場となる場合は加入制度の対象外となることもあるため、赴任者が加入制度の要件を満たしているかの確認も重要となります。


EY税理士法人 パートナー 藤井 恵(ふじい めぐみ)のコメント:
「今回は『海外赴任者の給与・手当』について、『給与体系・手当」「各種手当」「海外赴任者規程の見直し状況」いう観点で調査を実施しました。また、『労災保険の海外派遣者特別加入制度』の加入状況についても併せて調査しています。

海外勤務者の海外勤務手当、単身赴任手当の水準や決定方式は3年前の調査結果と比較して大きな変化は見られませんでした。本調査結果によると『過去3年間に規程を見直した』とする企業は245社中80社と約1/3程度であることからも、海外勤務者の手当などの見直しはあまり進んでいないことが分かります。ここ3年においても、海外の物価上昇が進んでいる中、手当の水準があまり変わらず、かつ円安も進んでいる状況では、海外赴任者の生活も以前よりも厳しくなっており、「海外赴任すれば貯金がたまる」という時代は遠い昔になったと感じさせられます。

なお、今回の調査結果は別途、赴任者数別でも分析していますが、一部の項目を除いては、赴任者の違いによる傾向の顕著な違いは見られませんでした。手当の金額水準および上位職者と下位職者で各種手当の金額にどの程度の差を設けるかは、同一業種や同規模企業でも大きく異なります。つまり手当の金額や制度設計の違いは、企業規模や赴任者数よりも、企業毎の海外赴任に対する考え方によるところが大きいことが浮き彫りになりました。

本調査結果から分かるように、規程改定に当たり最も難しいと人事ご担当者が感じる要素は『世間相場の把握(手当・給与・福利厚生)』であることが明らかです。EYでは今後も、本調査を継続して行い、回答された方には結果の共有および調査結果に関する説明セミナーの実施など、海外人事ご担当の皆様にとって、有意義な情報の提供を行ってまいります。

また、さらなるグローバル化を推進する企業にとっては、日本企業における海外赴任者の報酬水準のみならず、欧米などを中心とした海外に本社を持つグローバル企業の動向についても気になるところではないでしょうか。これらの企業のトレンドや日本企業との考え方の違いや生じる課題などについても、情報発信していきたいと考えています」


本調査結果に関する解説ウェブキャストを実施いたします。

<第8回EYモビリティサーベイ解説ウェブキャスト(オープンセミナー)>
日時:2025年6月18日(水)13:30~14:30
登壇者:EY税理士法人 パートナー 藤井 恵 ほか
お申し込み:https://globaleysurvey.ey.com/jfe/form/SV_b4rR2hh2qaTyY3Y


調査結果の概要
主な調査結果のポイントは、以下の資料から詳細をご確認ください:

第8回 EYモビリティサーベイレポート


第8回EYモビリティサーベイ概要

本調査は、海外赴任者・出張者・海外からの出向者の実態を明らかにすることを目的として定期的に実施しております。

目的:海外赴任者に関する処遇・税務などの実態調査・分析
テーマ:海外赴任者の給与・手当・海外赴任者規程・労災特別加入制度
実施期間:2025年1月23日(木)~3月14日(金)
回答者数:269名(有効回答数* :245件)
*同一企業から複数名ご回答いただいた場合は、以下の基準により代表回答を選定
1. 本社と現地子会社-本社の回答を優先
2. 人事系部署とそれ以外の部署-人事系部署からの回答を優先
3. 同一部署内より複数名のご回答-設問に対する有効回答数が多い方を優先

これまでの調査結果

・第1回EYモビリティサーベイ
コロナ禍の一時帰国者処遇、利用できないベネフィット・残留赴任者の取り扱い、費用負担、赴任者総コスト、任地個人所得税
実施期間 2021年10月22日(金)~2021年11月26日(金)
EY調査、新型コロナウイルスの海外赴任への影響や赴任者コストに関する実態が明らかに

・第2回EYモビリティサーベイ
ビザ・水際対策・海外出張・外国籍社員の受け入れ
実施期間 2021年12月8日(水)~2022年1月17日(月)
EY調査、新型コロナウイルスの水際対策による企業活動への影響の大きさが鮮明に

・第3回EYモビリティサーベイ
海外赴任者の手当・給与・福利厚生・海外赴任者規程・海外出張時の二重課税
実施期間 2022年2月14日(月)~2022年3月31日(木)
EY調査、海外赴任者に関する処遇制度の見直し・再検討が急務に

・第4回EYモビリティサーベイ
帯同する子の教育・帯同家族の就労・赴任前支度金
実施期間 2022年9月8日(木)~2022年10月14日(金)
EY調査、海外赴任時の帯同家族の就労状況、帯同する子の費用負担が課題

・第5回EYモビリティサーベイ
海外赴任中の医療費・出産・子育てへのサポート体制・物価・為替変動への対応
実施期間 2023年9月12日(火)~2023年10月13日(金)
EY調査、海外赴任者の多様化進む、サポート体制の強化が急務に

・第6回EYモビリティサーベイ
海外出張、海外人事体制、国をまたいだリモートワーク・バーチャルアサインメント
実施期間 2024年4月8日(月)~2024年5月31日(金)
EY調査、海外人事体制の強化、人員不足の解消が課題

・第7回EYモビリティサーベイ
海外赴任者の税務(コスト負担/税・社保の管理体制/みなし税/税務ブリーフィング/
夫婦合算申告/個人的収入に対する課税/退職金課税)
実施期間 2024年9月4日(水)~2024年10月18日(金)
EY調査、海外赴任者関連の税務対策の遅れが明らかに


補足資料:
第8回全調査項目は以下の通りです(太字箇所は調査結果の概要にて記載)。

1.ご回答者の属性
-所属部署/役職/日系・外資系/産業別/従業員数/海外赴任者数
2.海外赴任者の給与体系
-購買力補償方式を採用する企業が74%と最も多い

3.購買力補償方式(賞与の取り扱い)
4.購買力補償方式(本国みなし住宅費の取り扱い①)
4-1.購買力補償方式(本国みなし住宅費の取り扱い②)
5.非管理職者の残業代
6.海外勤務手当の支給基準
-役職や年収・月収に応じて差を設けている割合が過半数

6-1.海外勤務手当の支給基準(家族帯同状況による影響)
6-2.海外勤務手当の支給金額
7.ハードシップ手当の決定要素
-「コンサルティング会社や調査会社の発行する指数」の利用が56%

7-1.ハードシップ手当の支給基準(家族帯同状況による影響)
7-2.ハードシップ手当の支給金額
8.単身赴任手当の支給基準
-「役職や年収などにかかわらず全員一律」が29%
8-1.単身赴任手当の支給金額
9.海外役職手当の支給基準
10.赴任先の役職に基づく給与水準>海外赴任者として受け取る給与水準の取り扱い
-「海外赴任者として定められた給与水準のみ受け取る」が35%

11.日本勤務時給与と海外勤務時給与の水準比較
12海外赴任者の手当・給与についての課題
13.海外赴任者規程の新規作成・見直し計画
-過去1年以内~今後1年以内に実施予定が41%

14.海外赴任者規程の過去の改定時期
15.海外赴任者規程の新規作成・見直しの理由・目的
16.海外赴任者規程の新規作成・見直しに当たっての課題
-「世間相場の把握」が最も難しいと感じる割合が43%

17.労災特別加入制度への加入状況
-「特別加入できる海外赴任者は全員加入している」が59%

18.労災特別加入制度に加入していない場合の対応
過去に実施したサーベイ 
EY税理士法人 People Advisory Services サービスのご紹介とサービス実績


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