EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
「第9回EYモビリティサーベイ」を発表:国内200社以上の海外赴任者に関する実態調査
EY税理士法人は、日本企業の海外赴任者の帯同家族に関するサポートの実態を調査した「第9回EYモビリティサーベイ」を発表したことをお知らせします。今回は海外赴任者関連事項のうち「帯同する子の教育/帯同配偶者の現地就労/赴任中の出産休暇・育児休業・不妊治療費/帯同する子のベビーシッター・キッズシッター費用/出産や子育てへのサポート体制の見直し/国・地方自治体から日本居住者に支給される各種給付金の海外赴任者への対応」について調査を実施しました。
本調査は、海外赴任者に関する処遇の実態を明らかにすることを目的とし、2025年8~9月にかけて実施しました。主に企業の人事・経理・経営企画系を中心とした管理系部門に属する延べ248人(227社)の回答をもとに調査・分析を行いました。
<第9回EYモビリティサーベイの調査結果(一部抜粋)>
1. 基準校設定
回答企業により基準校設定/未設定の回答結果が割れる結果となりました。
基準校設定時の参考要素としては、「海外子女教育振興財団の学校情報」「現地責任者、赴任者からの情報」を挙げる企業が設定企業の約半数に上りました。
2. 幼稚園費用の具体的支給額
幼稚園の年間授業料が200万円と仮定した場合、日本語で授業を行う幼稚園、日本語以外で授業を行う幼稚園のいずれにおいても、会社支給の中央値は200万円(平均値は160~170万円程度)となりました。帯同する子が若年齢化する中、幼稚園の費用補助は必須であり、会社にとっても大きな負担となっています。
3. 教育費用の最終負担者
「全額赴任先負担としている拠点が多い」が62%、「全額赴任元負担としている拠点が多い」が22%という結果となりました。教育費用は赴任者費用のため出向先負担とするのが原則です。出向元が負担している場合、日本の税務調査で「寄附金」として指摘されるリスクがあります。
4. 教育費用の現地申告状況
「申告が必要な国や地域では必ず申告している」割合が最も多く59%。ただし26%は「現地法人に一任しているため把握していない」と回答しており、現地申告漏れのリスク検証が必要です。
1. 帯同家族の現地所得税申告のサポート範囲
帯同家族の現地就労を積極的または消極的に認めている企業のうち、申告書作成費用や所得税額など経済的サポートを行う企業は1割以下と少ないものの、「申告書作成の方法やベンダーを紹介」との回答は約2割となりました。
2. 帯同家族の現地就労を認めていない理由
「家族ビザで入国しているため就労は認めていない」との回答が最も多く、次いで「税務面」「安全上の理由」との回答となっています。
3. 課題
帯同家族の現地就労を積極的または消極的に認めている企業のうち、「家族が就労していないケースと処遇差を設けるべきかが分からない」が最も多く、次いで「帯同家族の就労状況を把握しきれていない」との回答となりました。就労状況を把握していないと、安全管理上のリスク、所得税申告漏れリスクなどが生じる場合があります。また、前例がなく希望者が出た都度個別対応となっているという意見も多くありました。世界的なインフレによる生活コスト増や帯同家族のキャリア形成を重視する考え方が要因となり、今後は帯同家族が現地就労を希望するケースが増えると見込まれます。
1. 女性赴任者の赴任中の出産・育児休業の取得
全体の55%が「事例がない」と回答している一方で、赴任先での出産を認め、「日本で出産する場合と同様に取り扱う」が10%、「赴任先(会社・国)のルールに従う」が8%。一方で「認めない(一時帰国または帰任)」とする企業も8%存在します。
2. 男性赴任者が赴任先で育児休業の取得を希望する場合
全体の35%が「希望事例がない」と回答。一方で、「育児休業は赴任先(会社・国)のルールに従う」が21%、「日本と同様に取り扱う」が18%と希望があれば認めるとする企業も4割近く存在。「育児休業の取得は認めていない」は7%と少数派です。
3. 赴任中の不妊治療費用の取り扱い
全体の38%が「事例がない」と回答。「費用補助は行っていない」は19%ですが、「赴任中に加入する医療保険制度でカバー」「赴任元の企業が一部または全部負担」「赴任先の企業が一部または全部負担」を合算すると「治療費のサポートを行う企業」と「行わない企業」は同数程度と考えられます。
EY税理士法人 パートナー 藤井 恵(ふじい めぐみ)のコメント:
今回は「海外赴任者の帯同家族に関するサポート」について、「帯同する子の教育」「帯同配偶者の現地就労」「赴任中の出産休暇・育児休業・不妊治療費」「帯同する子のベビーシッター・キッズシッター」「出産や子育てへのサポート体制の見直し」という観点で調査を実施しました。また、「国・地方自治体から居住者に支給される各種給付金の海外赴任者への対応」についても併せて調査しています。
円安や海外物価の上昇により、海外赴任による金銭的メリットはこれまでに比べ大きく減少しています。さらに共働きが一般化する現在、配偶者が海外赴任に帯同することで離職・休職を余儀なくされるケースは、世帯年収の大幅な減少につながり、将来的なライフプランにも重大な影響を及ぼします。
また、終身雇用前提のキャリア観が崩れつつある中、キャリアにはプラスになるとしても、家族と離れたり世帯年収が半減したりする等、「一時的な自己犠牲を払ってまで会社に従う」という選択が必ずしも合理的ではないと考えるのは自然な流れです。男性の育児休業取得が一般化し、父親の育児参画も以前と比べて進む中、家族と長期間離れてまで赴任することに疑問を抱く社員も増加しています。
一方、帯同者側にとっては、海外でのリモートワークや現地就労が依然として困難であり、キャリアの中断を受け入れざるを得ないという課題が残ります。
このように働き方やキャリア観が大きく変化する中で、海外赴任者関連制度も抜本的な再設計が求められています。「帯同配偶者はフルタイムの仕事を行っている」「赴任者は男性だけでなく女性も存在する」という前提で、制度を根底から見直すことも一案ですが、具体的には以下の観点が重要になります。
本サーベイの自由記述欄からも、海外人事担当者が会社と赴任者の板挟みとなり、制度上の課題に日々直面している実態が明らかになりました。これはもはや福利厚生の問題ではなく、「タレントマネジメント」の核心と言える経営課題です。
海外ビジネスを一層拡大する必要がある日本企業にとって、帯同家族を含めた支援体制や海外赴任に関する考え方を再定義し、迅速に実行に移すことは不可欠です。帯同家族へのサポート体制を含む海外赴任者制度の見直しは、現場を最も理解している海外人事担当者の声を取り入れながら、経営として優先的に対応すべき重要テーマではないでしょうか。
EYでは今後も、本サーベイを継続して行い、回答された方には結果の共有および、サーベイ結果に関する説明セミナーの実施を行うなど、海外人事ご担当の皆様にとって、有意義な情報の提供を行ってまいります。
また、さらなるグローバル化を推進する企業にとっては、日本企業における海外赴任者の報酬水準のみならず、欧米等を中心とした海外に本社を持つグローバル企業の動向についても気になるところではないでしょうか。これらの企業のトレンドや日本企業との考え方の違いや生じる課題等についても、情報発信していきたいと考えています。
本調査結果に関する解説ウェブキャストを実施いたします。
<第9回EYモビリティサーベイ解説ウェブキャスト(オープンセミナー)>
日時:2025年12月12日(金)15:00~16:00
登壇者:EY税理士法人 パートナー 藤井 恵 ほか
お申し込み:ey.com/ja_jp/media/webcasts/2025/12/ey-tax-2025-12-12
調査結果の概要
主な調査結果のポイントは、以下の資料から詳細をご確認ください:
調査結果の概要
主な調査結果のポイントは添付の通り(調査結果リンク)
<第9回EYモビリティサーベイ概要>
本調査は、海外赴任者・出張者・海外からの出向者の実態を明らかにすることを目的として定期的に実施しております。
目的: 海外赴任者に関する処遇・税務などの実態調査・分析
テーマ:海外赴任者の帯同家族に関するサポート
実施期間:2025年8月8日(金)~同年9月19日(金)
回答者数:248名(有効回答数* :227件)
*同一企業から複数名ご回答いただいた場合は、以下の基準により代表回答を選定
1. 本社と現地子会社-本社の回答を優先
2. 人事系部署とそれ以外の部署-人事系部署からの回答を優先
3. 同一部署内より複数名のご回答-設問に対する有効回答数が多い方を優先
これまでの調査結果
補足資料:
第9回全調査項目は以下の通りです(太字箇所は調査結果の概要にて記載)。
| 1 | ご回答者の属性 -所属部署/役職/日系・外資系/産業別/従業員数/海外赴任者数 |
| 1. | 帯同する子の教育 |
| 2 | 幼稚園(保育園)費用 -全額・一部含めて何らかの形で支給が89% |
| 3 | 基準校設定(幼稚園・保育園) |
| 4 | 基準校設定時の参考要素(幼稚園・保育園) |
| 5 | 幼稚園・保育園費用の支給開始年齢 -日本の幼稚園入園時期から支給開始としている割合が71% |
| 6-1 | 幼稚園費用の具体的支給額(日本語で授業を行う幼稚園) |
| 6-2 | 幼稚園費用の具体的支給額(日本語以外の言語で授業を行う幼稚園) |
| 7 | 日本人学校のない地域での小中学校費用 |
| 8 | 日本人学校のない地域での基準校設定(小中学校) -「設定している」と「設定していない」がそれぞれ4割程度 |
| 9 | 日本人学校のない地域での基準校設定時の参考要素 |
| 10 | 学校費用の支給範囲 -授業料、入学金、スクールバス代は回答企業の9割以上が支給 |
| 11 | 日本人学校のない地域での授業料の具体的支給額(小中学校) |
| 12 | 高校に通学する場合の費用 |
| 13 | 授業料の具体的支給額(高等学校) |
| 14 | 教育費用の最終負担者 -「全額赴任先負担としている拠点が多い」が62% |
| 15 | 教育費の現地での申告状況 -「申告が必要な国や地域では必ず申告」が59% |
| 2. | 帯同家族の現地就労 |
| 16 | 帯同家族の現地就労に対する会社の考え方 -「消極的に認めている」が61%、「認めていない」も21% |
| 17 | 現地就労のサポートの範囲 -「就労ビザ取得のサポート」が最も多い |
| 18 | 帯同家族の現地での所得税申告サポート状況 |
| 19 | 帯同家族の現地就労による赴任者の福利厚生や処遇水準の変更 |
| 20 | 帯同家族の就労を認めていない理由 |
| 21 | 帯同家族の就労に関する課題 -家族が就労していない場合との公平性や、実態把握ができていない点に課題 |
| 3. | 海外赴任中の出産・子育てへのサポート体制 |
| 22 | 女性赴任者が赴任先で出産や育児休業の取得を希望する場合の取り扱い -事例がない企業が半数以上、女性赴任者が想定されていないケースも |
| 23 | 男性赴任者が赴任先で育児休業の取得を希望する場合の取り扱い -39%が何らかの形で育児休業取得についてルール化されていると回答 |
| 24 | 赴任者またはは帯同家族が赴任先で不妊治療を受ける場合の費用の取り扱い -何らかの形で費用を負担しているケースが26% |
| 25 | 帯同する子に対する学費以外のサポートと対象者 |
| 26 | 男性赴任者が赴任先で育児休業の取得を希望する場合の取り扱い -39%が何らかの形で育児休業取得についてルール化されていると回答 |
| 27 | 赴任者またはは帯同家族が赴任先で不妊治療を受ける場合の費用の取り扱い -何らかの形で費用を負担しているケースが26% |
| 28 | 帯同する子に対する学費以外のサポートと対象者 |
| 4. | 国・地方自治体から日本居住者に支給される給付金についての海外赴任者への対応 |
| 29 | 日本居住者に支払われる政府からの給付金に対する海外赴任者への対応方針 |
EYについて
EYは、クライアント、EYのメンバー、社会、そして地球のために新たな価値を創出するとともに、資本市場における信頼を確立していくことで、より良い社会の構築を目指しています。 データ、AI、および先進テクノロジーの活用により、EYのチームはクライアントが確信を持って未来を形づくるための支援を行い、現在、そして未来における喫緊の課題への解決策を導き出します。 EYのチームの活動領域は、アシュアランス、コンサルティング、税務、ストラテジー、トランザクションの全領域にわたります。蓄積した業界の知見やグローバルに連携したさまざまな分野にわたるネットワーク、多様なエコシステムパートナーに支えられ、150以上の国と地域でサービスを提供しています。
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