EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
EYではサステナビリティ開示・保証に関連したグローバル動向の最新情報を毎月お届けしています。
ISSBは4月のプレスリリース(*1)で、カナダと日本(*2)が最近、ISSB基準と整合性のあるサステナビリティ開示基準の公開草案について公開協議を開始したことを歓迎しました。オーストラリア(*3)、シンガポール(*4)、マレーシア(*5)においては公開協議が終了しています。また、ブラジル(*6)、コスタリカ(*7)、スリランカ(*8)、ナイジェリア(*9)、トルコ(*10)など、ISSB基準を導入する、あるいは何らかの形で導入する決定を発表している他の法域も紹介しています。
2月から3月にかけて、エマニュエル・ファベールISSB議長(*11)は、ケニア(規制当局がISSB基準を導入する意向を表明)、ナイジェリア(大統領がISSB基準を導入するコミットメントを再確認)、南アフリカ(ステークホルダーとの様々な会合でISSB基準の価値を強調)を訪問しました。またIFRS財団は、アフリカにおけるISSB基準の導入と適用を支援するため、汎アフリカ会計士連盟(PAFA)とのパートナーシップ(*12)を開始しました。
なお、2023年4月23日付のリリース(*13)にて、ISSBは、「生物多様性、生態系、生態系サービス」と「人的資本」のリスクと機会に関する開示をリサーチするプロジェクトを開始する旨を公表しています。
米国ではSECが、先ごろ最終化した気候関連開示規則(*14)について、その施行を一時停止すると発表しました。SECは、4月4日に公表した文書(*15)の中で、裁判により、最終的に上場企業に対する気候関連開示の義務化が認められることを確信していると述べました。しかし、裁判が最終決着するまでの間、気候関連開示規制の施行を延期することは、潜在的な規制の不確実性を回避することになるとしています。
現時点では、SECの気候関連開示規則の要求事項は、大規模早期提出会社の2025会計年度のデータに基づく2026年開示から段階的に適用され、初年度においてはGHG排出の開示は要求されていません(大規模早期提出会社の場合、Scope 1及びScope 2排出の開示は適用2年目から)。最終規則の内容、保証要件、報告スケジュールの詳細については、EYの最新のTo the Point(*16)とTechnical Line(*17)をご参照ください。
ブラジルでは、中央銀行(BCB)が、金融機関の社会・環境・気候関連のリスク及び機会に関する年次報告書(GRSAC)の開示要件を拡大し、ESGリスク及び機会に関する新たな定量的要件を盛り込む提案について、公開協議(*18)を開始しました。この協議では、GRSACとISSB基準のより緊密な整合性も提案されています。(注:BCBによるこの取り組みは、ブラジル証券取引委員会(*6)が2023年10月に発表した、上場企業、証券化企業、投資ファンドに対するISSB基準の採用を2026年以降より義務付けることとは別個のものです)。BCBの公開協議に対する意見募集期間は2024年6月28日までです。
欧州連合(EU)では、2024年4月24日に欧州議会がコーポレート・サステナビリティ・デュー・ディリジェンス指令(CSDDDまたはCS3D)(*19)を採決しました。
対象企業は、自社の事業やグローバルサプライチェーンにおける人権や環境への悪影響を防止、緩和、是正するためのデューディリジェンスを実施することが義務付けられます。
CSDDDは2024年秋までにEU官報に掲載され、その掲載の翌日から20日後に発効します。EU加盟国は2年以内に国内法に移管します。
EU加盟国は、企業サステナビリティ報告指令(CSRD)の自国の法制度への移管作業が続いています。これまでのところ、フランス、フィンランド、チェコ共和国、ハンガリー、ルーマニアは移管手続を終えています。ベルギー、ドイツ、オランダ、イタリア、スペインは、現在進行中または最近終了した公開協議を通じて、それぞれの法律草案を検討しています。加盟国の移管期限は2024年7月6日です。
3月22日、ナイジェリアの財務報告審議会(FRC)は、ISSB基準を導入するためのロードマップ案(*20)を公表しました。このロードマップは、IFRS S1とIFRS S2を任意で適用するための2024年までのガイドラインと、上場企業への強制適用(*21)へ段階的に移行する2028年までの計画を提示しています。ナイジェリアは、ISSB基準を正式に採用し導入を開始する最初のアフリカの国となります。
4月12日、中国の三大株式市場である上海証券取引所(SSE)、深セン証券取引所(SZSE)及び北京証券取引所(BSE)は、上場企業に対するサステナビリティ開示要求事項を最終化しました。以前公表された草案の一部が変更され、特に財務マテリアリティのみを4つの柱からなる開示フレームワーク(*22)に沿って開示しなければならないことが明確化されました。インパクトマテリアリティのみの事項については、より緩やかな基準が適用され、該当する一般的な開示要求事項に従って開示することができます。新しい開示要求事項は2024年5月1日から適用され、企業は2025会計年度のデータに基づいて、2026年に最初の報告書を発行しなければなりません。
3月29日、サステナビリティ基準委員会(SSBJ)は、日本で適用されるサステナビリティ開示基準の公開草案を公表(*2)しました。この公開草案は、ISSB基準(IFRS S1及びIFRS S2)と整合性のあるものとなっていますが、企業が適用することを選択することができる日本固有の選択肢を追加しています。SSBJは、ISSB基準との差異等の一覧(*23)を公表しています。公開草案に対するコメント期限は2024年7月31日です。金融庁は、SSBJ基準が最終化された後、日本の規制の枠組みにこの要求事項を組み込むかどうか、またどの程度組み込むかを検討する予定です。
3月27日、オーストラリア政府は、気候関連報告及び保証を義務付ける法案(*24)を提出しました。この法案は、財務省が2024年1月に公表した法案(*25)に寄せられた意見を反映したもので、オーストラリア会計基準審議会(AASB)に対して、ISSB基準に基づく気候関連報告の要求事項(*26)を策定する権限を、オーストラリア監査・保証基準審議会(AUASB)に対して、サステナビリティ保証基準を開発する権限を付与するものです。この法案は、1月の法案(*25)と概ね一致していますが、最大規模の企業に対する報告義務の開始は2025年1月1日からとなりました(従来は2024年7月1日)。
3月20日、AUASBは、オーストラリアにおける気候関連情報の保証を段階的に義務化するためのモデル案の策定について意見を求めるコンサルテーション・ペーパー(*27)を公表しました。このコンサルテーションでは、特に、国際監査・保証基準審議会がすでに開発している保証基準ISSA 5000(*28)の採用や、最終化されるISSA 5000を補足するオーストリアの見解を開発する可能性について提案しています。意見募集期間は2024年5月3日までです。
現在予定されている、注目すべき今後の主な日程は以下です。
2021年10月22日に欧州監督当局がサステナブルファイナンス開示規則のドラフト版細則を公表
2021年10月22日、欧州監督当局より、欧州の資産運用会社等に対する開示を義務付けた「サステナブルファイナンス開示規則(SFDR)」における詳細な内容を定めた「ドラフト版細則(Draft Regulatory Technical Standards; Draft RTS)」が公表されました。
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