EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
EY新日本有限責任監査法人
公認会計士 加藤 紘司
企業会計基準委員会(以下「ASBJ」という。)は、2025年11月11日に、実務対応報告第47号「非化石価値の特定の購入取引における需要家の会計処理に関する当面の取扱い」(以下「本実務対応報告」という。)を公表しました。
近年、多くの企業が脱炭素、低炭素化に向けた取組みを活発化させており、当該取組みの1つとして、いわゆるバーチャル電力購入契約(Virtual Power Purchase Agreement)(以下「バーチャルPPA」という。)により取得した非化石価値と別途調達する再生可能電力でない電力を組み合わせることで実質的に再生可能電力を調達したのと同じ効果を得られる手法がみられます。今後も各企業の環境意識の高まりとともに、バーチャルPPAの利用がさらに拡大することが見込まれます。
こうした状況を踏まえて、ASBJにおいて、バーチャルPPAにおいて取引される非化石価値に係る需要家の会計処理に関する当面の取扱いについての検討が行われ、本実務対応報告が公表されました。
本実務対応報告では、非化石価値の特定の購入取引における需要家の取扱いを定めています(本実務対応報告第1項)。ここで需要家とは、後述の (2)の特徴を有する契約を締結する者のうち、非化石価値を自己使用目的で購入する者をいうとされています(本実務対応報告第5項(2))。
このように本実務対応報告の対象者の範囲が限定されたのは、企業会計基準諮問会議に寄せられたテーマ提案において、本実務対応報告を適用する契約の当事者である需要家及び発電事業者の双方の会計上の取扱いを検討する場合には一定の時間を要することが予想される中、早期の対応が必要であることに鑑み、より広範囲に影響があると考えられる需要家の会計上の取扱いのみを検討することが提案されたことによるものです。これを踏まえ、ASBJにおいて、本実務対応報告は需要家の会計上の取扱いを定めることとされ、発電事業者の会計上の取扱いは定めないこととされています。
本実務対応報告を適用する契約の範囲は、発電事業者と需要家の相対の契約のうち一定の特徴を有する契約と、それに加えて特定卸供給事業者等と需要家の契約のうち同様の特徴を有する契約とされています。
① 発電事業者と需要家の相対の契約
本実務対応報告は、発電事業者と需要家の相対の契約については、非化石価値取引において需要家による非化石価値の転売(子会社又は関連会社への融通を除く。以下同じ。)が想定されておらず、発電事業者から需要家に電力の取引を伴わずに非化石価値を移転する契約のうち概ね次の特徴を有するものに適用するとされています(本実務対応報告第2項)。
ⅰ 発電事業者と需要家の相対の契約である。
ⅱ 需要家は、発電事業者との間で、契約で指定された再生可能電力発電設備の発電量に応じた量の非化石価値を購入する契約を締結する。
ⅲ 需要家は、当該非化石価値を買い取る義務を負う。
このように本実務対応報告を適用する契約が有する特徴が列挙されたのは、企業会計基準諮問会議からの提言が、本実務対応報告の開発時点の我が国におけるバーチャルPPAに関する実務を考慮して当面の取扱いを定めた上で、実務の進展や国際的な会計基準における取扱いがより明確になったこと等を契機として今後必要に応じて見直しを行うというものであり、これを踏まえASBJにおいて現在我が国において行われているバーチャルPPAの一般的な取引形態において需要家が取得する非化石価値の性質や取引条件等を基礎として整理が行われたことによるものです。バーチャルPPAのイメージは<図表1>のとおりです。
② 特定卸供給事業者(アグリゲーター)等と需要家の契約
本実務対応報告は、上述の発電事業者と需要家の相対の契約に加え、特定卸供給事業者等と需要家との間の非化石価値取引において需要家による非化石価値の転売が想定されておらず、特定卸供給事業者等から需要家に電力の取引を伴わずに非化石価値を移転する契約のうち、同様の特徴を有するものについても適用するとされています(本実務対応報告第3項)。
このように本実務対応報告を適用する契約の範囲に、特定卸供給事業者等と需要家の契約を含めたのは、本実務対応報告の開発時点の制度上、需要家は特定卸供給事業者との直接取引において非化石価値を購入することが認められていることを踏まえたことによるものです。また、需要家が非化石価値の移転に関する契約を締結する相手方になり得る者として、電気事業法(昭和39年法律第170号)上の特定卸供給事業者の定義は満たさないが、複数の再生可能電力発電設備を束ねることで再生可能電力発電設備の発電変動を吸収し、安定した供給力として卸電力市場などへ電力を供給する者も挙げられることから、本実務対応報告は、このような役割を担う者を特定卸供給事業者に準ずる者として、特定卸供給事業者とまとめて「特定卸供給事業者等」と定義し、本実務対応報告を適用するにあたり、「発電事業者」を「特定卸供給事業者等」と読み替えるものとする定めが置かれています(本実務対応報告第4項、第5項(5))。特定卸供給事業者等と需要家とのバーチャルPPAのイメージは<図表2>のとおりです。
<図表2>特定卸供給事業者等と需要家とのバーチャルPPAのイメージ
企業会計基準諮問会議に寄せられたテーマ提案では、非化石価値の対価として、契約上の固定価格と卸売電力市場で決定される電力価格(以下「卸電力市場価格」という。)の差額に契約で指定された再生可能電力発電設備の発電に応じた電力量を乗じて得た金額を発電事業者と需要家との間で決済すること(以下「差金決済」という。)が一般的であるとされ、差金決済の想定元本等の量が定まらない場合に、デリバティブに該当するか否かについて明確化することを検討することが挙げられていました(本実務対応報告BC21項)。
この点に関して、上述の1.(2)又は(3)の特徴を有する契約(以下「本実務対応報告を適用する契約」という。)には、需要家が支払う対価を固定価格とするものであり、契約上の固定価格と卸電力市場価格の差額を非化石価値の価格とすることは需要家が支払う対価を決定する1つの方法であると考えられるため、ASBJは、契約に含まれる差金決済という特徴のみに着目してデリバティブに該当するか否かの検討を行うのではなく、需要家にとって契約の主たる目的であると考えられる非化石価値の取得について、非化石価値取引の概要や非化石価値の特徴を踏まえてどのような会計処理が経済実態を表すのかの検討を行うこととされました(本実務対応報告BC22項)。
本実務対応報告では、非化石価値を受け取る権利及び対価の支払義務に関する会計処理に関し、①非化石価値を受け取る権利及び対価の支払義務の認識時点、及び②非化石価値を受け取る権利の認識時点の会計処理について、次のとおり定めています(本実務対応報告第6項及び第7項)。
| 非化石価値を受け取る権利及び対価の支払義務に関する会計処理 |
①非化石価値を受け取る権利及び対価の支払義務の認識時点 | 契約で指定された再生可能電力発電設備による発電が行われ、かつ、金額を信頼性をもって測定できる時点において会計処理を行うこととされています。遅くとも国による電力量の認定時点では、金額を信頼性をもって測定できるものとして取り扱うとされています。 |
②非化石価値を受け取る権利の認識時点の会計処理 | 費用処理を行い、対価の支払義務に係る負債を計上することとされています。 |
① 非化石価値を受け取る権利及び対価の支払義務の認識時点
ⅰ 会計処理を行う時点
本実務対応報告では、需要家は、非化石価値を受け取る権利について、契約で指定された再生可能電力発電設備による発電が行われ、かつ、金額を信頼性をもって測定できる時点において費用処理を行い、対価の支払義務に係る負債を計上することとされています。ここで、遅くとも国による電力量の認定時点では、金額を信頼性をもって測定できるものとして取り扱うこととされています。
本実務対応報告では、本実務対応報告を適用する契約において、発電により将来非化石価値を受け取る権利及び対価の支払義務が需要家に生じていることを考慮すると、発電時点において会計処理を行うことが考えられることが示されています。しかしながら、国による電力量の認定時点より前は非化石価値の量が確定していないこと等により、発電時点において会計処理を行うことが実務的に困難な場合があることが想定されることを踏まえ、本実務対応報告では、発電が行われ、かつ、金額を信頼性をもって測定できる時点で会計処理を行うこととされています。
この場合、国による電力量の認定時点では、非化石価値の量が確定することとなり、契約内容や卸電力市場価格等に基づき価格についても情報を得ることができると考えられるため、遅くとも国による電力量の認定時点においては金額を信頼性をもって測定できるものとして取り扱うこととされています(<図表3>)。
<図表3>会計処理を行う時点
なお、本実務対応報告では、電力量の認定結果は発電月から3か月後の月末(電力量の申請期限から1か月後)に、国から発電事業者へ通知され、また、国は、認定した電力量を取引所へ通知することが示されています。
ⅱ 決算日において発電が完了しており、決算日後に国による電力量の認定が行われた場合の取扱い
本実務対応報告では、決算日において発電が完了しているものの、非化石価値の量や価格に係る情報を収集できない等の状況下で、需要家が非化石価値を受け取る権利の金額を信頼性をもって測定することができなかった場合には、当該需要家は非化石価値を受け取る権利に係る費用を計上することはなく、したがって、仮に決算日後の事実と状況により信頼性をもって測定することが可能となったとしても修正後発事象として非化石価値を受け取る権利に係る費用計上の修正を行う必要はないと考えられることが示されています。ただし、決算日において発電が完了しており、かつ、非化石価値の量や価格に係る必要な情報を収集したことで需要家が非化石価値を受け取る権利の金額を信頼性をもって測定したことにより、当該需要家が非化石価値を受け取る権利に係る費用を計上した場合には、当該需要家が決算日後により精緻な測定が可能となる情報を入手したことを受けて、重要性に応じて計上した費用の金額を修正することが考えられることが示されています。
② 非化石価値を受け取る権利の認識時点の会計処理
本実務対応報告において、我が国の会計基準では、資産の定義及び認識要件は明示的に定められていませんが、将来の経済的便益の流入又は将来の経済的資源の流出の削減をもたらす蓋然性が高い項目について、会計上資産を認識していると考えられることが示されています。これについて、本実務対応報告では、非化石価値は、温室効果ガスの排出量の報告において温室効果ガスの削減相当量として報告すること等を通じて、間接的に将来の経済的便益の流入又は経済的資源の流出の削減をもたらす蓋然性はあると考えられるものの、本実務対応報告の開発時点の我が国における制度において、需要家が取得する非化石価値は第三者への転売が想定されておらず、また、需要家に温室効果ガスの排出量の削減義務は課されていないため、非化石価値の売却による直接的な将来の経済的便益の流入や温室効果ガスの排出量の削減義務を履行するための直接的な将来の経済的資源の流出の削減もないと考えられることが示されています。これらの点を踏まえ、将来の経済的便益の流入又は経済的資源の流出の削減を間接的にしか捉えることができず、それらをもたらすかどうかについて不確実性があると考えられることから、非化石価値及び非化石価値を受け取る権利を費用処理することとされています。
本実務対応報告では、非化石価値の対価として差金決済を行う場合において、卸電力市場価格が契約上の固定価格を上回ることにより、需要家が対価を受け取ることとなるときは、当該対価を費用から減額することとされています(本実務対応報告第8項)。
本実務対応報告では、非化石価値の対価の支払条件が差金決済の場合は、需要家が支払う対価がマイナスとなる場合があり得ますが、これは、卸電力市場価格が契約上の固定価格を上回る場合であり、電力量がマイナスとなって需要家が発電事業者に対して非化石価値を引き渡す義務を負うことはないことが示されています。この点を踏まえると、需要家は常に非化石価値を取得しており、その対価はプラスにもマイナスにもなり得るものと考えられ、本実務対応報告では非化石価値を受け取る権利について費用処理することとされていることから、需要家が支払う対価がマイナスとなる場合には、マイナスの対価を費用から減額することとされています。
本実務対応報告では、子会社又は関連会社への非化石価値の融通に関して、次のとおり定めています。
① 親会社から子会社又は関連会社への融通は「転売」として取り扱わないこととし、本実務対応報告を適用する契約を締結する者が、その子会社又は関連会社に融通する目的で非化石価値を購入する場合において、当該子会社又は関連会社が非化石価値を自己使用目的で取得するときは、当該契約を締結する者を「需要家」として取り扱う(本実務対応報告第2項、第5項(2))。
② 需要家がその子会社又は関連会社に融通する目的で非化石価値を購入する場合、当該需要家とその子会社又は関連会社との取引については、両者の合意内容に基づき会計処理を行う(本実務対応報告第9項)。
本実務対応報告の開発時点における我が国の制度上、調達の効率化や与信面等を理由にグループの親会社が調達した非化石価値をグループ内の他社に融通したいという要望があったことを背景とし、親会社が購入した非化石価値を会社法(平成17年法律第86号)上の子会社又は会社計算規則(平成18年法務省令第13号)上の関連会社に融通することが認められています。
このような制度を前提に、子会社又は関連会社に代わり親会社がまとめて非化石価値を購入することはグループ経営の一環として通常考え得ることから、親会社から子会社又は関連会社への融通を「転売」として本実務対応報告の適用対象外とするのではなく、子会社又は関連会社において自己使用目的となる場合には、グループ全体としては自己使用目的であるとして本実務対応報告の適用対象とすることとされ、この場合、本実務対応報告を適用する契約を締結する者を「需要家」として取り扱うこととされています。
需要家が子会社又は関連会社に融通する目的で非化石価値を購入した場合、需要家は、子会社又は関連会社へ融通する分も含めて費用処理を行った上で、需要家と子会社又は関連会社との取引について取引の経済実態を適切に表すように両者の合意内容に基づき会計処理を行うとされ、例えば子会社に代わり需要家がまとめて非化石価値を購入することを前提とすると、子会社が需要家に対して実費精算のために支払った額について、子会社において費用として計上し、需要家において費用の減額とすることが考えられることが示されています。また、合意内容によっては、いったん需要家の個別財務諸表において立替等の会計処理を行う場合もあると考えられることが示されています。
開示について、本実務対応報告の開発時点で観察される契約における非化石価値の金額が電力料金に比べて相対的に少額である中で、その開示の有用性を勘案し、非化石価値を自己使用目的で取得するという本実務対応報告の範囲では、開示に関する定めは設けないこととされています。
ただし、本実務対応報告を適用する契約が財務諸表全体の観点から重要であり、利害関係者が企業集団又は企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に関する適正な判断を行うために必要と認められる場合には、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」等に基づき、追加情報として開示することになると考えられることが示されています(本実務対応報告BC45項)。
本実務対応報告では、適用時期について次のように定めています(本実務対応報告第10項)。
① 2026年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する。
② ただし、公表日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することができる。
本実務対応報告では、本実務対応報告を適用することによりこれまでの会計処理と異なることとなる場合、需要家に生じた非化石価値を受け取る権利で、契約で指定された再生可能電力発電設備により適用初年度の期首までに発電が行われ、かつ、金額を信頼性をもって測定できるものについては、当該非化石価値を受け取る権利の金額を適用初年度の期首の利益剰余金に加減することとされています。この場合、当該期首時点で国による電力量の認定時点が到来しているものに係る金額は、適用初年度の期首の利益剰余金に加減する金額に含めることとされています(本実務対応報告第11項)。
公開草案公表時点において制度変更について検討が行われており、本実務対応報告において制度変更に対応し、親会社を需要家として取り扱う等の追記が行われたものです。上記にその内容を示しています(上記Ⅱ.2.(4)参照)。
本実務対応報告を適用する契約の範囲について、公開草案にコメントが寄せられ、その対応が行われたことによるもので、特定卸供給事業者等と需要家の契約について一定の要件を定め、当該要件を満たす契約に本実務対応報告を適用することとされています(上記Ⅱ.1.(1)②参照)。
公開草案では、「非化石価値」について、エネルギー源の環境適合利用に由来する電気の非化石電源としての価値と定義されていました。これについて公開草案においてコメントが寄せられ、本実務対応報告では、本実務対応報告が適用される契約における非化石価値が再生可能エネルギー源に由来するものであることが明確化されました。
公開草案では、需要家が会計処理を行う時点について、需要家は、発電により生じた、非化石価値を受け取る権利について、金額を合理的に見積ることが可能となった時点において費用処理を行い、対価の支払義務に係る負債を計上することとされ、遅くとも国による電力量の認定時点までに金額を合理的に見積ることとされていました。これについて公開草案においてコメントが寄せられ、本実務対応報告では、次のとおり表現の見直しが行われました(上記Ⅱ.2.(2)①ⅰ)参照)。
① 「合理的に見積る」という表現を削除して、発電が行われ、かつ、金額を信頼性をもって測定できる時点において費用処理を行うことが明確化された。
② 遅くとも国による電力量の認定時点では、金額を信頼性をもって測定できるものとして取り扱うこととされた。
本実務対応報告において、修正後発事象との関連について、「結論の背景」に追記が行われ、決算日後に国による電力量の認定が行われた場合の取扱いが明確化されました(上記Ⅱ.2.(2)①ⅱ)参照)。
本実務対応報告において、開示に関する定めは設けられていませんが、本実務対応報告を適用する契約が財務諸表全体の観点から重要な場合の追加情報に関し、「結論の背景」に追記が行われました(上記Ⅱ.3参照)。5.公開草案からの主な修正点
(1) 親会社からその子会社又は関連会社への非化石価値の融通を認める制度変更への対応
公開草案公表時点において制度変更について検討が行われており、本実務対応報告において制度変更に対応し、親会社を需要家として取り扱う等の追記が行われたものです。上記にその内容を示しています(上記Ⅱ.2.(4)参照)。
(2) 特定卸供給事業者等と需要家の相対の契約への本実務対応報告の適用
本実務対応報告を適用する契約の範囲について、公開草案にコメントが寄せられ、その対応が行われたことによるもので、特定卸供給事業者等と需要家の契約について一定の要件を定め、当該要件を満たす契約に本実務対応報告を適用することとされています(上記Ⅱ.1.(1)②参照)。
(3) 非化石価値の定義の明確化
公開草案では、「非化石価値」について、エネルギー源の環境適合利用に由来する電気の非化石電源としての価値と定義されていました。これについて公開草案においてコメントが寄せられ、本実務対応報告では、本実務対応報告が適用される契約における非化石価値が再生可能エネルギー源に由来するものであることが明確化されました。
(4) 会計処理を行う時点について、その明確化と公開草案における「合理的に見積る」という表現の見直し
公開草案では、需要家が会計処理を行う時点について、需要家は、発電により生じた、非化石価値を受け取る権利について、金額を合理的に見積ることが可能となった時点において費用処理を行い、対価の支払義務に係る負債を計上することとされ、遅くとも国による電力量の認定時点までに金額を合理的に見積ることとされていました。これについて公開草案においてコメントが寄せられ、本実務対応報告では、次のとおり表現の見直しが行われました(上記Ⅱ.2.(2)①ⅰ)参照)。
① 「合理的に見積る」という表現を削除して、発電が行われ、かつ、金額を信頼性をもって測定できる時点において費用処理を行うことが明確化された。
② 遅くとも国による電力量の認定時点では、金額を信頼性をもって測定できるものとして取り扱うこととされた。
(5) 決算日において発電が完了しており、決算日後に国による電力量の認定が行われた場合の取扱いの明確化
本実務対応報告において、修正後発事象との関連について、「結論の背景」に追記が行われ、決算日後に国による電力量の認定が行われた場合の取扱いが明確化されました(上記Ⅱ.2.(2)①ⅱ)参照)。
(6) 本実務対応報告を適用する契約が財務諸表全体の観点から重要な場合の追加情報に関する追記
本実務対応報告において、開示に関する定めは設けられていませんが、本実務対応報告を適用する契約が財務諸表全体の観点から重要な場合の追加情報に関し、「結論の背景」に追記が行われました(上記Ⅱ.3参照)。
なお、本稿は本会計基準等の概要を記述したものであり、詳細については本文をご参照ください。
ASBJウェブサイトへ
会計・監査や経営にまつわる最新情報、解説記事などを発信しています。