EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
金融庁は、2025年11月26日に「企業内容等の開示に関する内閣府令」(以下「開示府令」という。)及び「企業内容等の開示に関する留意事項」(以下「企業内容等開示ガイドライン」という。)等の公開草案(以下、これらを合わせて「本公開草案」という。)を公表しました。
本公開草案では、主にサステナビリティ開示基準(以下「SSBJ基準」という。)の適用開始に向けた環境整備、人的資本開示に関する制度の見直し、総会前開示への対応に関する改正が提案されており、サステナビリティ開示に対する保証等については織り込まれていません。
①サステナビリティ開示基準の適用
本公開草案では、金融庁は、金融庁長官が「一般に公正妥当なサステナビリティ情報の作成及び開示に関する基準」として定めた基準を、有価証券報告書の「サステナビリティに関する考え方及び取組」の開示において適用するサステナビリティ開示基準としています(開示府令第19条の9第5項)。そして、金融庁長官は、2025年10月31日までに公表されているSSBJ基準を我が国における「一般に公正妥当なサステナビリティ情報の作成及び開示に関する基準」として指定すめることを提案しています。
また、本公開草案では、国際サステナビリティ開示基準(以下「ISSB基準」という。)は、「一般に公正妥当なサステナビリティ情報の作成及び開示に関する基準」として指定されていません。このため、有価証券報告書においてSSBJ基準の適用が求められる会社は、SSBJ基準に変えてISSB基準のみを適用することはできない点に留意が必要です。ただし、SSBJ基準独自の取扱いの適用を選択しない場合、SSBJ基準に準拠した開示は、ISSB基準にも準拠した開示になると考えられます。
②SSBJ基準の適用が求められる会社
本公開草案では、東京証券取引所プライム市場に上場しており、平均時価総額が1兆円以上の企業について、SSBJ基準によるサステナビリティ開示を義務付けることを提案しています(開示府令第19条の9第1項)。
ここでいう平均時価総額は、SSBJ基準が適用対象となる事業年度の前事業年度の期末日の時価から起算して過去5年間に遡って平均時価総額を算定することを提案しています。また上場日後、5年経過していない会社については、上場日を含む事業年度の期末日の時価から起算して平均時価総額を算定することを提案しています(開示府令第19条の9第3項)。
ただし、本公開草案の適用にあたっての経過措置として、2026年3月末日の平均時価総額が3兆円以上の会社は2027年3月期から、1兆円以上の会社は2028年3月期からSSBJ基準を適用する考えを金融庁が示しています。
また、SSBJ基準の適用開始年度及びその翌年度においては、それぞれの翌期の半期報告書の提出期限までに、訂正報告書によってSSBJ基準に準拠したサステナビリティ開示を行うことを前提に、有価証券報告書にはSSBJ基準に従ったサステナビリティ関連記載事項の開示をしないこと、いわゆる二段階開示を可能とする考えも金融庁は示しています。
なお、2025年7月に金融庁が公表した「金融審議会 サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ 中間論点整理」では、平均時価総額が5000億円以上、1兆円未満の会社をSSBJ基準の適用対象とすることについて今後検討とされましたが、2025年12月に公表された金融審議会「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ報告書案」では適用対象とすることが示されています。しかし今回の開示府令ではまだ適用対象になっていません。
<図表2>上場日後、5事業年度経過した会社のSSBJ基準適用時期の考え方
③SSBJ基準の適用に伴う「サステナビリティに関する考え方及び取組」の開示項目の整理
公開草案では、SSBJ基準適用状況を明確にするために、以下の事項を新たな開示項目として求めることを提案しています(開示府令第二号様式(記載上の注意)(30)a)。
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一方で、人材の多様性を含む人的資本に関する開示は、SSBJ基準に従って、同様の事項を記載している場合、省略することを認めることを提案しています(開示府令第二号様式(記載上の注意)(30)cただし書き)。
その他、SSBJ基準適用会社か否かにかかわらず、将来に関する情報、見積情報又は会社の統制が及ばない第三者から取得した情報(以下「将来情報等」という。)を記載する場合は、以下の事項を記載することを求めることを提案しています(開示府令第二号様式(記載上の注意)(30)d)。
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また、前事業年度の有価証券報告書に記載した見積りの方法により算定した数値について、中間連結会計期間中に当該数値が確定し、当初見積っていた数値と確定した数値との間に差異があるときは、見積数値及び確定数値並びに当該差異が生じた理由を半期報告書に記載することができることを提案しています(開示府令第四号の三様式(記載上の注意)(9-2))
なお、SSBJ基準を適用しない会社は、従来と同様の「サステナビリティに関する考え方及び取組」に関する開示を求めることを提案しています(開示府令第二号様式(記載上の注意)(30)b及びc)。
④Scope3温室効果ガス排出量の虚偽記載等に係るセーフハーバー・ルール
従来より、「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」、「事業等のリスク」及び「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」における将来情報について、有価証券報告書に記載すべき重要な事項について、一般に合理的と考えられる範囲で具体的な説明が記載される場合には、将来情報と実際に生じた結果が異なる場合であっても、直ちに虚偽記載等の責任を負うものではないと企業内容等開示ガイドラインにおいて定められていました。
本公開草案では、当該企業内容等の開示ガイドラインに、「サステナビリティに関する考え方及び取組」におけるスコープ3温室効果ガス排出に関する定量情報も対象に含めることを提案しています。
なお、一般に合理的と考えられる範囲で具体的な説明を記載する場合の例示として、上記の「開示府令二号様式(記載上の注意)(30)d 」の開示事項を記載することが考えられます(企業内容等開示ガイドライン5-16-2)。
本公開草案では、SSBJ基準の適用が義務付けられる会社も含め、人材戦略に関する基本方針等(開示府令二号様式(記載上の注意)(58-2) )及び従業員の状況(開示府令二号様式(記載上の注意)(58-3))の開示を求めることを提案しています。
人材戦略に関する基本方針では、連結会社の人材戦略を経営方針・経営戦略等に関連付けて具体的に記載することや、連結会社の従業員の賞与を含む給与、その他の給付の額及び内容の決定に関する方針を記載することを求めることを提案しています。なお、当該方針については提出会社に係るものとすることを認めることも提案しています。
また、従業員の状況では、従来の開示に加えて、新たに平均給与の対前事業年度増減率の開示を求めることを提案しています。また、持株会社については、連結会社のうち従業員数が最も多い最大人員会社を対象として開示することを明確化することを提案しています。
そして、従業員の状況は、改正前は「第1【企業の概況】」において開示することとされていましたが、改正後は従業員に関する情報を集約して、「第4【提出会社の状況】」に開示することを提案しています。
また、使用人等のみに対して発行する新株予約権の付与に関する決議、付与数、行使時の払込金額や行使期間等、開示府令二号様式(記載上の注意)(39)aからdの記載事項については、従業員の状況に記載する場合、その旨を記載することで新株予約権等の状況の記載を省略することができます。同様に、使用人やその他の従業員のみを対象とした役員・従業員株式所有制度についても、制度の概要等、開示府令二号様式(記載上の注意)(46)a(a)から(c)の記載事項を従業員の状況に記載する場合は、その旨を記載することで役員・従業員株式所有制度の内容の記載を省略することができます。一方で、これらの開示について、新株予約権等の状況や役員・従業員株式所有制度の内容に記載し、従業員の状況では、その旨を記載し当該開示を省略することもできます(開示府令二号様式(記載上の注意)(58-3)e)。
<図表3>人的資本開示に関する有価証券報告書の記載
会社の開示負担を軽減し、株主総会前の有価証券報告書の開示を促進する観点から、本公開草案では、有価証券報告書の総会前開示を行う場合、有価証券報告書の記載事項等が定時株主総会又はその直後に開催される取締役会の決議事項となっているときにおける当該決議事項等の概要の開示は原則として不要となることが提案されています。ただし、剰余金の配当に関するものは開示が必要となる点に留意が必要です(開示府令第三号様式(記載上の注意)(1))。
また、半期報告書において、中間配当基準日現在における「大株主の状況」及び「議決権の状況」を記載することができるようになることが提案されています。
本公開草案は、公布日から施行され、SSBJ基準の適用が義務付けられる会社は、以下のように定められる予定です。
平均時価総額 | 適用時期 |
2026年3月31日を基準として算定した5事業年度末の平均時価総額が3兆円以上 | 2027年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書等 |
2026年3月31日を基準として算定した5事業年度末の平均時価総額が3兆円未満1兆円以上 | 2028年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書等 |
また、人的資本開示に関する制度見直し及び総会前開示への対応については、2026年3月31日以後終了する事業年度に係る有価証券から適用される予定です。
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