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EY新日本有限責任監査法人
公認会計士 大竹 勇輝
<企業会計基準委員会が2026年1月9日付で公表>
2026年1月9日に、企業会計基準委員会(以下「ASBJ」という。)より、企業会計基準公開草案第94号(企業会計基準第27号の改正案)「法人税等に関する会計基準(案)」を含め、以下の会計基準等(以下、合わせて「本公開草案」という。)及び補足文書(案)「我が国における課税対象利益を基礎とする税金及び税効果会計における税率に関する取扱いについて(案)」(以下「補足文書(案)」という。)が公表されています。
(公表された本公開草案及び補足文書(案))
| 企業会計基準公開草案第94号(企業会計基準第27号の改正案) | 法人税等に関する会計基準(案)(以下「法人税等会計基準案」という。) |
| 企業会計基準適用指針公開草案第94号(企業会計基準適用指針第28号の改正案) | 税効果会計に係る会計基準の適用指針(案)(以下「税効果適用指針案」という。) |
| 実務対応報告公開草案第73号(実務対応報告第42号の改正案) | グループ通算制度を適用する場合の会計処理及び開示に関する取扱い(案)(以下「実務対応報告第42号案」という。) |
| 移管指針公開草案第19号(移管指針第6号の改正案) | 連結財務諸表等におけるキャッシュ・フロー計算書の作成に関する実務指針(案)(以下「キャッシュ・フロー実務指針案」という。) |
| 企業会計基準公開草案第95号 | 「税効果会計に係る会計基準」の一部改正(そのX)(案)(以下「税効果会計基準一部改正案」という。) |
| 企業会計基準公開草案第96号 | 「連結キャッシュ・フロー7計算書等の作成基準」の一部改正(そのX)(案)(以下「キャッシュ・フロー作成基準一部改正案」という。) |
| 補足文書(案) | 我が国における課税対象利益を基礎とする税金及び税効果会計における税率に関する取扱いについて(案) |
現行の企業会計基準第27号「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」(以下「法人税等会計基準」という。)は、具体的な税金を挙げて、当該税金について規定する税法を参照することにより適用対象となる税金を特定して会計処理及び開示について定めていることから、個別の税金の創設を受けて都度改正が行われています。しかしながら、新たな税金の創設に対応した会計基準等の改正を行う場合、改正前の法人税等会計基準の適用対象となる税金の定め方に従えば、法人税等会計基準に個別の定めを追加することとなり、現行の税制改正のスケジュールに鑑みると、税制改正から税効果会計を含む会計基準の適用までの短期間で会計基準等の改正を行う必要があると考えられます。
この点、ASBJは、2025年5月より、法人税等会計基準の適用対象となる税金に関する原則的な定めを置くことに関して審議を開始し、検討を進めてきました。
今般、2025年12月25日開催の第566回企業会計基準委員会において、本公開草案の公表が承認され、2026年1月9日に公表されました。
本公開草案では、法人税、地方法人税、住民税、事業税及び特別法人事業税の基準法人所得割額(地方税法の規定により計算した所得割額(税率については地方税法に規定する標準税率による。))によって課すものについて、基本的には、所得を対象として課される税金という性質を有するものであることを考慮し、かつ、国際的な会計基準における法人所得税の定義等を参考にして、法人税その他の課税対象利益を基礎とする税金に関する会計処理及び開示を定めることが提案されています(法人税等会計基準案第1項、第2項、第27-2項)。
当該提案に従えば、在外支店等の財務諸表は親会社又は国内子会社の個別財務諸表に取り込まれ、在外支店等の利益は親会社又は国内子会社の個別財務諸表に計上されることから、親会社又は国内子会社の在外支店等が所在地国の法令に従い納付する税金で課税対象利益を基礎とする税金に該当するものは、法人税等会計基準案を適用することになると考えられるとされています(法人税等会計基準案第27-6項)。
また、課税対象利益を基礎とする税金に該当しない次のものについても、適用範囲に含め別途定めを置くことが提案されています(法人税等会計基準案第2-2項、第27-3項、第27-4項、第27-7項)。
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本公開草案では、国際的な会計基準における定義を参考に、それぞれ<図表1>のとおり用語の定義を行うことが提案されています(法人税等会計基準案第4項(1)、(2)、第28-2項から第28-4項)。
<図表1>課税対象利益及び課税対象利益を基礎とする税金の定義
| 用語 | 定義 |
| 課税対象利益 | 課税当局の定めに従って算定された特定の事業年度の利益であり、当該利益を対象として税金が課されるものをいう。 |
| 課税対象利益を基礎とする税金 | 課税対象利益を基礎として、課税当局の定めに従って算定された税金及びその付加税をいう。 |
法人税等会計基準では、課税対象利益を基礎とする税金に該当するものとそうでないものを一括して会計処理を定めていますが、本公開草案では、まず課税対象利益を基礎とする税金について定めを置き、住民税(均等割)、事業税(付加価値割)及び事業税(資本割)については、別途定めを置くことが提案されています。この際、課税対象利益を基礎とする税金の会計処理については、法人税等会計基準の考え方を踏襲した上で、文言の見直しを行うことが提案されています(法人税等会計基準案第5項から第8-2項、第29-13項)。
本公開草案では、課税対象利益を基礎とする税金に該当しないものについて、<図表2>のとおり、会計処理を定めることが提案されています(法人税等会計基準案第8-3項から第8-5項、第29-14項から第29-16項)。
<図表2>課税対象利益を基礎とする税金に該当しないものの会計処理
| 項目 | 会計処理 |
| 住民税(均等割)、事業税(付加価値割)及び事業税(資本割) | 法人税等会計基準の考え方を踏襲し、法令を適用して算定した額を損益に計上する |
| 受取利息及び受取配当金等に課される源泉所得税等 | 後述するように、売上原価、販売費及び一般管理費、営業外費用又は法人税等に表示することになると考えられることから、損益に計上する |
| 親会社及び国内子会社が外国の法令に従い納付する税金で課税対象利益を基礎とする税金に該当しないもの | 後述するように、売上原価、販売費及び一般管理費、営業外費用又は法人税等に表示することとなると考えられることから、損益に計上する |
本公開草案では、法人税等会計基準の考え方を踏襲した上で、表示科目の例についての記述を見直し、損益に計上する課税対象利益を基礎とする税金の額は、損益計算書の税引前当期純利益(又は損失)の次に、「法人税等」などの適切な科目をもって表示することが提案されています(法人税等会計基準案第9項、第40-4項、第40-5項)。
本公開草案では、課税対象利益を基礎とする税金に該当しないものについて、<図表3>のとおり、表示することが提案されています(法人税等会計基準案第18-2項から18-5項、第18-7項から第18-9項、第40-6項から第40-24項)。
<図表3>課税対象利益を基礎とする税金に該当しないものの表示
| 項目 | 現行の取扱い | 公開草案における提案 | |
| 住民税(均等割) | 損益計算書の税引前当期純利益(又は損失)の次に「法人税、住民税及び事業税」等の適切な科目をもって表示する | 課税対象利益を基礎とする税金に該当しないため、売上原価、販売費及び一般管理費又は営業外費用のうち適切な表示区分に表示する | |
| 事業税(付加価値割)及び事業税(資本割) | 原則として、損益計算書の販売費及び一般管理費として表示する | その内容に応じて、売上原価、販売費及び一般管理費又は営業外費用のうち適切な表示区分に表示する | |
| その内容に応じて、売上原価、販売費及び一般管理費又は営業外費用のうち適切な表示区分に表示する | 税額控除の対象となる税額 | 法人税等に基づき税額控除の適用を受けない税額は、損益計算書の営業外費用として表示する | ① 税額控除を選択した場合 ② 税額控除を選択しない場合 |
| 税額控除の対象とならない税額 | 受取利息及び受取配当金等を獲得するための費用とみることができると考えられるため、その内容に応じて、損益計算書の売上原価、販売費及び一般管理費又は営業外費用のうち適切な表示区分に表示する | ||
| 親会社及び国内子会社が外国の法令に従い納付する税金で課税対象利益を基礎とする税金に該当しないもの | 税額控除の対象となる税額 |
| ① 税額控除を選択する場合 ② 税額控除を選択しない場合 |
| 税額控除の対象とならない税額 |
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本公開草案では、法人税等会計基準案において課税対象利益を基礎とする税金を定義したことを受け、これと整合するように税効果会計基準一部改正案において、法人税その他の課税対象利益を基礎とする税金を「税効果会計に係る会計基準」における「法人税等」と定義することが提案されています(税効果会計基準一部改正案第2項、BC2項)。
なお、税効果適用指針案において、税効果会計基準一部改正案にあわせて法人税等の定義を見直すことが提案されていますが、法人税等に該当する税金は従来と同様であり、税効果会計の対象となる税金に関して変更を意図するものではないとされています(税効果適用指針案第4項(2)、第91項)。
本公開草案では、法定実効税率の定義に関して具体的な税金の名称を使用した算式を削除し、代わりに「課税対象利益に対する税負担率」とすることとし、具体的な税金の名称を使用した法定実効税率の算式については、補足文書にて示すことが提案されています(税効果適用指針案第4項(11)から(13)、第46項、第47項、第74-3項、第150-3項)。
本公開草案では、法人税等会計基準案と整合するよう、グループ通算制度の対象とされている税金に関する記述について見直しを行うことが提案されています(実務対応報告第42号案第2項、第36-2項)。
また、グループ通算制度を適用している場合における繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に用いる税率に関する設例を削除し、補足文書において示すことが提案されています。
本公開草案では、法人税等会計基準案において住民税(均等割)の損益計算書における表示に関して事業税(付加価値割)及び事業税(資本割)と整合的に取り扱うことを提案しているため、キャッシュ・フロー計算書においても、住民税(均等割)は「営業活動によるキャッシュ・フロー」に含まれるキャッシュ・フローではありますが、事業税(付加価値割)及び事業税(資本割)と同様に「法人税等の支払額」に含めてはならないことが提案されています(キャッシュ・フロー実務指針案第10項、第35-2項)。
法人税等会計基準案は、公表から1年程度経過した年の4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することが提案されており、その他の公開草案についても同じ時期に適用することが提案されています(法人税等会計基準案第20-7項等)。
また、これらの本公開草案については、公表日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から早期適用することができることも提案されています。
本公開草案では、住民税(均等割)については、現行の取扱いと異なる取扱いが提案されていますが、住民税(均等割)については、企業会計基準第24号「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」第35項の重要性に照らした検討を行えば多くの場合に適用初年度の比較情報の組替を行わないとの結論に至るものと想定されることから、経過措置として、適用初年度の比較情報について、住民税(均等割)に関して新たな表示方法に従い組替を行うことを要しない、すなわち組替を行わないことができるとすることが提案されています(法人税等会計基準案第20-8項、第48項、キャッシュ・フロー実務指針案第26-10項、第51項)。
実務において参考となるように、次の内容を示した補足文書(案)が公表されています。
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補足文書は、企業会計基準、企業会計基準適用指針、実務対応報告及び移管指針(以下「企業会計基準等」という。)を追加又は変更するものではなく、企業会計基準等の適用にあたって参考となる文書であるとされています。
本公開草案及び補足文書(案)に対するコメント募集に際し、以下の個別の質問が示されています。
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