製造業 第1回:製造業における実地棚卸の要諦

EY新日本有限責任監査法人
製造業セクターワーキングループ


1. はじめに

製造業にとって棚卸資産は最重要勘定の1つであり、実地棚卸は企業において棚卸資産の実在性や評価の妥当性を確かめるための重要な業務です。その中でも、実地棚卸を確実かつ効率的に実施することは多くの企業における関心事であることから、今回は実地棚卸の効率化について、多くの企業の実態を踏まえて考察しました。


2. 傾向

(1) 実地棚卸の効率化の最大要因

調査の結果、実地棚卸効率化の最大要因の上位は以下の通りです。

第1位:整理整頓と正確なロケーション管理
第2位:バーコード読取端末利用
第3位:適切な棚卸実施要領作成(実地棚卸に係るナレッジの実施要領への落とし込み)

調査結果からは、大いにテクノロジーを用いることもさることながら、一見初歩的と考えられる作業を重視している企業が多いことがわかります。

(2) 実施棚卸の効率化事例

実地棚卸の効率化の取組事例は以下(表1)の通りです。

表1 実施棚卸の効率化事例

表1 実施棚卸の効率化事例

(3) 実地棚卸の非効率原因事例

現状、多くの企業における実地棚卸の非効率の原因となっている事例は以下(表2)の通りであり、企業の「ルールの非統一、理解不足」「ロケーション管理」などによる非効率があります。前項の効率化の事例としても上記項目は挙がっており、ここができていないと結果的に非効率になるといえます。

表2 実地棚卸の非効率原因事例

表2 実地棚卸の非効率原因事例

(4) よくある会計監査人による非効率に関する気づき事項

実地棚卸に関するよくある会計監査人による非効率に関する気づき事項は以下(表3)の通りであり、棚卸要領の理解不足、棚番管理(ロケーション管理)等による非効率が指摘されています。基本的な項目ではあるものの、会計監査人から過去に同様の指摘が多く行われていることも特徴的であり、棚卸を効率的に行うことは、延いては棚卸を効果的に行うことにつながると考えます。

表3 会計監査人による指摘事例

表3 会計監査人による指摘事例

3. おわりに

実地棚卸を効率的に行うためには、「整理整頓と正確なロケーション管理」や「適切な棚卸実施要領作成」といった一見基本的な事項を徹底することが重要です。これらの内容を徹底することで、さらなる効率化を達成できる企業がまだ存在するのではないかと考えます。

一方、非効率の原因として、「方法等の非統一、理解不足」や「ロケーション管理」といった事例が上がっていたことや、会計監査人による気づき事項として「実地棚卸前の品目別棚番管理の不徹底」や「要領の理解不足によるルール通りの運用ができていない(実施要領が古い)」といった事項があり、また、全数カウント後棚卸差異を確定し記帳するまでに多くの期間(1週間以上)を要する事例もありました。実地棚卸の事前の準備や棚卸方法の周知が重要なことがわかります。



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