EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
2024年7月4日に実施された英国の総選挙は労働党が圧勝し、14年ぶりの政権交代を果たしました。新首相に就任したキア・スターマー党首率いる労働党は、議会下院(定数650)において野党各党の合計議席数を174議席上回る圧倒的過半数を握りました。これは前与党・保守党が有していた議席数差の2倍超に上ります。
本稿では、労働党のマニフェストおよび総選挙中に発表された諸政策に基づいて、新政権下で予想される重要な事項の概要をお伝えします。現時点でまだ詳細が明らかになっていない点は多数あるものの、現在または将来英国に進出する日系企業グループは、来る予算案の編成の動向、特に英国への投資に影響を及ぼす動向を注視する必要があります。
新政権は発足後最初の100日以内に成果を出すことのできるアクションに注力すると予想されます。労働党が優先事項に挙げる可能性があるのは、新規住宅建設の促進や企業の投資および事業拡大の推進を狙いとする計画制度の変更(第1次立法が不要)です。これはスターマー首相とリーブス財務相が成長を解き放つために最も重要な要素の1つです。また労働党は今回の総選挙で、英国を「クリーンエネルギー大国」にすることを公約に掲げています。
今回の総選挙で労働党は以下の公約を掲げました。
これらの具体的な税制提案に加え、労働党は以下も公約しました。
また労働党は特定の分野において政策を変更しないことを公約していますが、これには以下が含まれます。
加えて、リーブス財務相はこれまでに次のように発言しています。「何百もの異なる減税措置が存在している。中には重要なものもあるが、最高の助言に対してコストを払える人々に、単に抜け穴を提供するだけのものが多過ぎる。よってわれわれは1つ1つの優遇措置を検証し、納税者や経済に成果をもたらさないものは廃止する」これによると、特定の問題(年金拠出金の高税率救済措置など)がこの議会にて提起される可能性があります。
2024年7月17日の議会開会式の国王演説で読み上げられた施政方針では、新政権の政策上の優先事項および今会期の法案が示されました。これには上記の事項に加えて以下が含まれます。
新政権による最初の予算案の日程は、議会が夏季休暇入りする7月30日までに確定すると見込まれます。予算案の日程は政府の裁量で決定されますが、労働党は予算案が独立した予算責任局(OBR)の予測に沿うことを公約しており、これには少なくとも10週間を要します。予算案は伝統的に水曜日に発表されること、および労働党は政権発足後最初の100日以内のアクションに繰り返し言及していることを踏まえると、予算案の発表は早ければ9月18日、遅くとも10月9日までに実施されると思われます。
予算案をめぐる発表がない場合でも、労働党は7月末までに政策変更を発表するか、場合によっては政策変更に対する回避行為の防止措置を設ける緊急法案の提出を行ったうえで、かかる変更の詳細を今後の予算案に盛り込むことを行う可能性があります。
これとは別にリーブス財務相は、待望される海外から英国への投資呼び込みを狙い、2021年と2023年に開催されたグローバル投資サミットを新政権の最初の100日以内に再び開催する方針です。このサミットの内容や構成の詳細は現時点でまだほとんど明らかになっていませんが、時間的な制約を踏まえると、近日中に具体的な情報の公表が予想されます。英国への投資に関心を持つ企業グループは、このサミットの最新情報に注目すべきです。
日本に拠点を置く英国税務デスクチームは、これらの事項を含む英国税務のさまざまな動向が自社ビジネスに及ぼす影響を企業グループの皆さまが把握できるよう支援いたします。
EY税理士法人
Ernst & Young Tax Co. (Japan), UK Tax Desk, Tokyo
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Rebecca McKavanagh シニアマネージャー
工藤 保浩 シニアマネージャー
Ernst & Young LLP (United Kingdom), London
小林 仁紀 シニアマネージャー
※所属・役職は記事公開当時のものです
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