EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
鉄鋼・アルミニウム製品に対する232条特別関税に対する今回の措置は、米国向け輸入に対する第三国を経由した迂回輸入の抑止を念頭においたものと考えられます。本制度が導入されたことによって、課税の対象製品について、課税対象国からの輸入は減少した一方で、輸入製品の川下の工程等を第三国に移転することによって、当該第三国の原産品として輸入時の特別関税の課税を回避することが増加したことが問題となりました。今回の措置では、鉄鋼・アルミニウム製品の川上工程である溶解・鋳造工程が米国・カナダ・メキシコで行われていることを求めることで、これらの迂回輸入を防止することが目的にあります。
なお、303条関税でも同様の迂回輸入の存在が米国内で指摘されており、規制・取締のさらなる強化など、今後の動向に注視が必要です。
2024年7月10日、バイデン政権はメキシコのマヌエル・ロペス・オブラドール大統領との間で、1962年の通商拡大法第232条に基づいて鉄鋼・アルミニウムの輸入に課せられる、現行の米国の制裁関税の回避を防ぐために、追加的な貿易措置を導入することに合意しました。
メキシコからの鉄鋼およびアルミニウム製品は、従来アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、カナダ、韓国からの鉄鋼・アルミニウムの輸入とともに、それぞれ25%と10%の第232条による制裁関税を免除されていました。今回の大統領布告によって、既存の関税を免除するためには、鉄鋼は米国、カナダまたはメキシコで溶解、鋳造すること、そしてアルミニウムは、中国、ロシア、ベラルーシ、またはイランで溶解もしくは鋳造してはならない、という要件が導入されました。
メキシコの鉄鋼およびアルミニウム製品に対する第232条の関税は、2024年7月10日午前12時1分(東部標準時)ちょうどに発効しました。ここで重要になるのは、この布告では、「特恵国待遇」によって米国の外国貿易地域(FTZ)へ消費のために輸入される鉄鋼およびアルミニウム製品に、同じ第232条の関税が適用されると規定していることです。
国際的なサプライチェーンを有する企業、特にメキシコや中国で調達・製造を行う企業は、これらの措置の潜在的な影響を直ちに特定し、緩和戦略の可能性を模索する必要があります。実行すべきアクションには、次のものがあります。
さらに、第232条の関税の賦課は、関連者から購入した製品が制裁関税の対象となっていることが明らかとなった米国の販売業者の移転価格にほぼ確実に影響します。影響を受ける企業は、所得税と関税のアプローチを調整しながら関税の影響を軽減するとともに、移転価格調整を米国税関に報告する仕組みも見直す必要があります。関税が1年の特定の期間にのみ適用される場合、このプロセスは特に複雑になる可能性があります。米国税関には、移転価格の調整など、輸入後に行われた価格の調整を報告するための具体的なルールがあります。これらのルールは、輸入製品に価格調整が見込まれる場合において、移転価格ポリシーへ関税に関連することを明記することを輸入者に求めるなど、輸入に先立つ手続きを定めています。適切な計画を立てることにより、移転価格が引き下げられた場合、支払った関税の還付を受けることが可能となります。
EY税理士法人
大平 洋一 パートナー
原岡 由美 パートナー
福井 剛次郎 マネージャー
※所属・役職は記事公開当時のものです
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