Tax controversy update vol. 17 ― 移転価格同時調査の最新状況 ~国税庁の新事務年度がスタート~



7月から、国税庁の新しい事務年度が始まりました。人事異動前の6月には、多くの企業に、7月からスタートする税務調査の日程調整に加え、資料準備の依頼が入りました。1年前に比べてかなり積極的な動き出しです。完全にコロナ体制から脱出、むしろ、それ以前よりも活発なようにも見受けられます。

ここで、最近の同時調査において移転価格項目の調査がどのように行われているか、最新の状況をご報告したいと思います。

【早期段階での移転価格問題の指摘】

お伝えしたいのは、移転価格の問題点の指摘がかなり早い段階で行われているという点です。同時調査ですので、調査担当官としては、法人税調査の問題点を指摘するタイミングに合わせて移転価格についても行いたいということなのだと思いますが、かなり拙速な指摘の場合も多くあります。調査開始から問題点の指摘まで3-4週間ということが常態化している国税局もあります。

【移転価格における修正申告】

そしてこのような場合には当然ですが、更正ではなく修正申告の慫慂(しょうよう)になります。移転価格に関する修正申告で注意すべき点はいくつかあります。第1に、相互協議の合意が困難になり、二重課税排除の道がかなり閉ざされてしまうこと、第2に、翌年以降も当局は修正申告した価格水準での税務申告を期待するため、当該水準を守れていない場合には期間を待たず調査による修正申告慫慂が行われる可能性が高まり、当然ながらその後も二重課税状態が続いてしまう可能性が高くなるといった点です。

加えて、修正申告・更正決定の区別なくマスコミ取材・報道の対象となっていることに留意すべきです。

 

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