Social insurance and labor update vol. 8 ― 2025年施行「育児・介護休業法」「雇用保険法」について vol. 2

2025年施行「育児・介護休業法」「雇用保険法」については、Social insurance and labor update vol. 6にてご紹介させていただきました。

Social insurance and labor update vol. 6 ― 2025年施行「育児・介護休業法」「雇用保険法」について

今回は、男女とも仕事と育児・介護を両立できるように、柔軟な働き方を実現するための措置の拡充や、育児・介護離職防止のための雇用環境整備、個別周知・意向確認の義務化などの改正について抜粋してご紹介します。


柔軟な働き方を実現するための措置等【義務:就業規則等の見直し】
(令和7(2025)年10月1日から施行)

(1)育児期の柔軟な働き方を実現するための措置

  • 事業主は、3歳から小学校就学前の子を養育する労働者に関して、以下5つの中から、2つ以上の措置を選択して講ずる必要があります。
  • 労働者は、事業主が講じた措置の中から1つを選択して利用することができます。
  • 事業主が講ずる措置を選択する際、過半数組合等(従業員代表)からの意見聴取の機会を設ける必要があります。

選択して講ずべき措置

①始業時刻等の変更 ②テレワーク等(10日以上/月) ③保育施設の設置運営等 ④就業しつつ子を養育することを容易にするための休暇(養育両立支援休暇)の付与(10日以上/年) ⑤短時間勤務制度

(2)柔軟な働き方を実現するための措置の個別の周知・意向確認

3歳未満の子を養育する労働者に対して、子が3歳になるまでの適切な時期に、事業主は柔軟な働き方を実現するための措置として(1)で選択した制度(対象措置)に関する以下の事項の周知と制度利用の意向の確認を、個別に行わなければなりません。

周知時期:労働者の子が3歳の誕生日の1か月前までの1年間(1歳11か月に達する日の翌々日から2歳11か月に達する日の翌日まで)

周知事項:①事業主が(1)で選択した対象措置(2つ以上)の内容 ②対象措置の申出先(例:人事部など) ③所定外労働(残業免除)・時間外労働・深夜業の制限に関する制度


仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮【義務】
(令和7(2025)年10月1日から施行)

(1)妊娠・出産等の申出時と子が3歳になる前の個別の意向聴取

事業主は、以下の時期に労働者の意向を個別に聴取しなければなりません。

①労働者が本人または配偶者の妊娠・出産等を申し出たとき
②労働者の子が3歳の誕生日の1か月前までの1年間(1歳11か月に達する日の翌々日から2歳11か月に達する日の翌日まで)

聴取内容は以下の通りとされています。

①勤務時間帯(始業および終業の時刻) ②勤務地(就業の場所) ③両立支援制度等の利用期間 ④仕事と育児の両立に資する就業の条件(業務量、労働条件の見直し等)

(2)聴取した労働者の意向についての配慮

事業主は、(1)により聴取した労働者の仕事と育児の両立に関する意向について、自社の状況に応じて配慮しなければなりません。

具体的な配慮の例としては、
勤務時間帯、勤務地にかかる配置、両立支援制度等の利用期間等の見直し、業務量の調整、労働条件の見直し等が挙げられます。


介護離職防止のための雇用環境整備【義務】
(令和7(2025)年4月1日施行)

介護休業や介護両立支援制度等の申出が円滑に行われるようにするため、事業主は以下①~④のいずれかの措置を講じなければなりません。

①介護休業・介護両立支援制度等に関する研修の実施 ②介護休業・介護両立支援制度等に関する相談体制の整備(相談窓口設置) ③自社の労働者の介護休業取得・介護両立支援制度等の利用の事例の収集・提供 ④自社の労働者へ介護休業・介護両立支援制度等の利用促進に関する方針の周知


介護離職防止のための個別の周知・意向確認等【義務】
(令和7(2025)年4月1日施行)

(1)介護に直面した旨の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認

介護に直面した旨の申出をした労働者に対して、事業主は介護休業制度等に関する事項の周知と介護休業の取得・介護両立支援制度等の利用の意向の確認を、個別に行わなければなりません。

(2)介護に直面する前の早い段階(40歳等)での情報提供

労働者が介護に直面する前の早い段階で、介護休業や介護両立支援制度等の理解と関心を深めるため、事業主は介護休業制度等に関する事項について情報提供しなければなりません。

上記、記載の個別周知・意向確認・情報提供の方法は以下とされています。

①面談(オンライン面談も可能) ②書面交付 ③FAX ④電子メール等のいずれか

人材不足が加速していく現代において、従業員が育児・介護を理由に離職すること、また生産性が下がることは企業にとっての損失です。今回の改正により、企業は内部の制度見直しや相談窓口の設置などを行う必要があります。

働き方が多様化していく中で、従業員の意向を尊重し、適切な対応を取ることで、従業員のキャリア継続が可能となり、企業の強靭性を高めることになるでしょう。


参考
mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html

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