メキシコ、「プラン・メキシコ」戦略の下、全ての業種と地域に適用される新しい税制優遇措置を提供

  • メキシコでは、新規固定資産の加速償却や、研修・イノベーション費用の追加控除など、大統領令によって認められた税制上の優遇措置の提供により、プラン・メキシコを推進
  • 加速償却の場合、適用される償却率は資産の性質に応じて35%から91%の範囲、費用の追加控除は当該事業年度において増加した研修またはイノベーション費用の25%相当額
  • 納税者は、これらの適用を受けるために、適格基準の遵守、特定記録の保持、そして評価委員会からの承認が必要

2025年1月21日にメキシコの「連邦官報」で公布された大統領令(以下、政令)は、規模、業種、場所に関わらず、新たな固定資産への投資の加速償却、研修やイノベーション費用の追加控除など、納税者に税制上の優遇措置を提供するものです。

この政令は、ニアショアリング戦略の強化、新規投資の促進、現地での研修プログラムの奨励、イノベーションの活性化により、メキシコを世界の10大経済大国に位置づけることを目的とした戦略、「プラン・メキシコ」を推進するために、大統領による一連の広報を受けて公布されました。

この政令は2025年1月22日に施行され、2030年9月30日まで適用される予定ですが、以前の政令に含まれていた輸出産業セクターに対する税制上の優遇措置を認める規定(新規固定資産投資の即時償却や研修費用の控除など)は、これによって無効となります(2023年10月13日付EY Global Tax Alert「Mexico offers tax incentives to taxpayers in key sectors of the export industry」をご参照ください)。

政令の対象となる納税者は、メキシコの納税者番号を有し、最新のコンプライアンス遵守を心がけている、評価委員会(優遇措置の透明性と管理を確保するために設立された新しい政府機関)から承認を得た、全ての法人および個人です。

政令の適用期間中に認められる税制優遇措置の総額は、300億メキシコペソ(約15億米ドル)を超えないものとし、加速償却については285億メキシコペソ(約14億2,500万米ドル)、研修・イノベーション費用の追加控除は15億メキシコペソ(約7,500万米ドル)を超えないものとされます。総額300億メキシコペソのうち、10億メキシコペソは、前年の所得が最大1億メキシコペソ(約500万米ドル)までの納税者のために確保されます。

新しい政令に含まれる優遇措置の重要点は次のとおりです。


新規固定資産投資の税務上の加速償却

この優遇措置により、2025年1月22日から2030年9月30日までに取得する適格な新規固定資産への投資については、加速償却を直ちに損金算入することができます。固定資産は、加速償却の損金算入を適用した年度から少なくとも2年間、生産的な経済活動の遂行に使用しなければなりません。

メキシコの過去の加速償却政策に沿って、この政令では、直ちに損金算入できる額を算定するために資産の取得価格に適用する償却率表を提供しています。資産の性質に応じて35%から91%の範囲の償却率を取得原価に適用し、単年度の損金算入額を算定します。指定された期間終了までに資産が売却または除却されない限り、残存価額は損金算入されません。政令には、経過期間に基づいて、これら売却・除却の場合に追加の損金算入を通じて回収できる金額の詳細を示す表が含まれています。

この恩典は、オフィス家具や備品、自動車、車両用武器庫、その他の個別に特定できない資産には適用されませんが、建設機械、鉄道、船舶、航空機、電気自動車、コンピューター機器、通信システム、その他の特定の産業機械など、幅広い資産に適用できます。

政令で定められた加速償却は、付加価値税(VAT)においても全額控除可能な費用とみなされます。


研修およびイノベーション費用の追加控除

2025年から2030年の事業年度の年次税務申告書では、所得税法上追加の費用控除を適用することができます。控除額は、その事業年度で増加した研修またはイノベーション費用の25%相当です。増加額は、その事業年度で発生した研修またはイノベーション費用と、過去3年度におけるこれらに該当する費用の平均を比較し、増加した額として計算されます。

「研修」とは、納税者の活動に関連する技術的または科学的知識に関するものであり、「イノベーション費用」は、特許につながるイノベーション開発のための投資プロジェクト、および現地または地域のサプライチェーンへの統合のための初期認証に関連するものになります。

研修またはイノベーション費用は、納税者がその発生事業年度にこの優遇措置を適用しなかった場合、その後適用することはできません。


コンプライアンスとモニタリング

納税者は、これらの優遇措置の恩典を受けるために、確実に適格基準と文書化要件を、厳格に遵守しなければなりません。例えば、即時の損金算入を選択した投資について特定の記録を保持し、裏付けとなる文書化を維持する必要があります。

税務当局は、優遇措置が確実に適切に利用されるよう、定期的な調査とモニタリングを実施します。自動的にこの政令の適用が無効とされる状況には、詐欺取引への関与、欠損金の濫用、賦課された税金の未納付、清算手続き開始、停止されたデジタルスタンプの請求書への貼付などがあります。

優遇措置の違反または誤用は、受け取った恩典の返還を含むペナルティの対象となる場合があります。

メキシコ税務当局と評価委員会は、追加の規制を公表する予定です。


影響

メキシコに子会社を有する、またはメキシコへの投資に関心のある多国籍企業は、メキシコ政府が提供する本税制優遇措置を理解し、適用することで、メキシコでの事業コストを削減できる可能性があります。

お問い合わせ先

EY税理士法人

Ernst & Young Tax Co., Latin America Tax Desk, Japan & Asia Pacific
Raul Moreno Partner & Desk Leader
Luis Coronado Partner
Hector Rosano Manager

Ernst & Young LLP (United States), Latin American Business Center
Tak Morimoto Senior Manager

APAC Tax Desk Leader-US Tax Desk Leader
Jeremy Litton Partner

※所属・役職は記事公開当時のものです