国税庁、「特定多国籍企業グループ等報告事項等の記載要領」の改訂版を公表

2025年6月、国税庁より「特定多国籍企業グループ等報告事項等の記載要領」の改訂版(以下、「GIR記載要領」)が公表されました。

2025年1月にOECDより公表されたGloBE Information Return(GIR)のデータポイント及び説明ガイダンス(以下、「GIR説明ガイダンス」)を踏まえたものとなっています。

なお、2024年4月1日以後に開始する対象会計年度分の特定多国籍企業グループ等報告事項等について、本改訂後の記載要領によるものとされている点に留意が必要です。

以下では今回の改訂のポイントを解説します。
 

1. 国内法とモデルルールとの差異に関する報告

表2.1及び表3.1について、課税権を有する国又は地域の国内法に基づく国別実効税率の計算結果等がOECDのモデルルール等に基づく計算結果等と異なる場合における計算結果等の差異を報告するための記載欄が追加されました。

ここにいう「課税権を有する国又は地域」とは、特定多国籍企業グループにおいてGloBEルールの対象となり、かつ、いわゆる「ルール・オーダー」に従ってGloBEルールを適用する必要がある国又は地域をいい、QDMTTを導入している国又は地域も含まれます(GIR説明ガイダンス 23)。

課税権を有する国又は地域の例示は次の通りです(GIR記載要領1.4.4)。

①A国を所在地国とするS社に対してIIRによるトップアップ税を課することとされるP社の所在地国であるB国は、当該A国に対して課税権を有する。

②いわゆるQDMTTセーフハーバーの適用により構成会社等に係るIIRによるトップアップ税が0とされる国は、その国自身に対して課税権を有する。

GIRは、原則として、OECDにより公表されたモデルルール等に基づいて作成することとされていることから、課税権を有する国又は地域の法令に基づくセーフハーバーの判定結果や国別実効税率の計算結果等が、OECDのモデルルール等に基づくものと異なる場合には、GIRにおいてその差異を報告することになります(GIR記載要領2.1.5、3.1.5等)。
 

2. 繰延対象租税額の調整計算

表3.2.2.1aについて、法人税等調整額のうち、連結等財務諸表における資産又は負債の額とGloBEルールにおける資産又は負債の額とが異なるものに係る繰延税金資産(DTA)又は繰延税金負債(DTL)を報告するための記載欄が追加されました。

また、表3.2.2.1cについて、基準税率を上回る適用税率により算出されたDTAもしくはDTL又は基準税率を下回る適用税率により算出されたDTAに係る調整に係る調整額の記載欄が追加されました。

これらの項目の記載要領欄も含めて、繰延対象租税額の調整についての計算順序が明確化されたといえます。

すなわち、国別実効税率の分子の構成要素である繰延対象租税額は、会計上の法人税等調整額を出発点に、まず、会計上とGloBEルール上とで帳簿価額差異の存する資産・負債に係る法人税等調整額の調整を行い、次に、GloBEルールにおいて規定される繰延対象租税額に係る種々の調整を行い、その後、基準税率(15%)による再計算を行うことによって算出されることになります。

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