トランプ米大統領、日米合意の実施に関する大統領令を発令

  • 2025年9月4日、トランプ米大統領は、貿易関係の強化と国家安全保障上の懸念への対応を目的とした日米合意を履行する大統領令を発令した。
  • 本合意では、日本からのほぼ全ての輸入品に対し、15%のベースライン関税を設定し、自動車、航空宇宙製品、その他の主要セクターに特定の規定を設けている。米国政府は、大統領令が官報に掲載されてから7日以内に、自動車および航空宇宙製品に関連する変更内容を公表する。
  • 日本は、米国農産品に対し大幅な市場アクセスを提供し、雇用創出および製造業強化のため、米国経済に5,500億米ドルを投資することを約束する。
  • 日本企業は、日米合意による定量的な影響を試算した上で、これらの関税の中長期的な継続を前提とした対応策を検討する必要がある。


エクゼクティブサマリー

2025年9月4日、米国のドナルド・J・トランプ大統領は、「日米合意の実施に関する大統領令(Implementing the United States-Japan Agreement)」を発令しました。本大統領令は、当初2025年7月22日に枠組みが示されました。大統領令では、本合意が相互主義および共通の国家利益の原則に基づき、米国と日本の間の貿易関係の新たな時代を築くことを目的としたものであると説明されています。さらに、本合意は、米国の対日貿易赤字の削減、米国経済の活性化、そして製造業および防衛産業基盤の強化を目的としています。

大統領令では、本合意には、米国の生産者に公平な競争環境を提供しつつ、国家安全保障のニーズにも対応する包括的な関税枠組みが含まれていると説明されています。また、本合意は、米国の製品およびサービスに対する市場アクセスの拡大に向けた日本のコミットメントも反映しています。


大統領令の主な規定

一般関税

米国は、日本からのほぼ全ての輸入品に対して、15%のベースライン関税を適用します。具体的な関税率は、米国関税率表(HTSUS)における製品の現行の従価税率(または従価税相当率)に基づいて決定します。

  • HTSUSにおける税率が15%未満の製品については、合計15%となる関税を設定する。
  • HTSUSにおける税率が15%以上の製品については、追加関税をゼロとする。

本合意には、自動車、航空宇宙製品、ジェネリック医薬品、および米国で生産されていない天然資源に関する別途の規定が含まれています。これらのセクターには、公正な貿易を促進するために調整された関税措置が適用されます。


自動車および部品に対する関税引き下げ

大統領令では、日本製の自動車および自動車部品に課されている追加の第232条の関税について、各製品のHTSUSにおける税率に基づいて調整されることが示されています。

  • 最恵国待遇(MFN)関税率が15%以上の対象製品には、第232条の関税を適用しない。
  • MFN関税率が15%未満の対象製品には、合計15%となる関税を適用する。


航空宇宙製品

本合意には、有人の民間航空機および航空機部品に関する規定が含まれており、世界貿易機関(WTO)の民間航空機貿易に関する協定に基づき日本製品に課されていた一部の関税が撤廃されます。この変更により、航空宇宙製品の貿易がさらに促進され、協力関係の強化が期待されます。


農産品の市場アクセス

日本は、米国農産品に対して大幅な市場アクセスを提供します。具体的には、以下の内容が含まれています。

  • ミニマム・アクセス米制度の枠内における米国産コメの調達を75%増加する。
  • トウモロコシ、大豆、肥料、バイオエタノールを含む米国農産品を年間80億米ドル相当購入する。


投資のコミットメント

日本は、米国に5,500億米ドルを投資することを約束しており、これにより雇用が創出され、国内の製造能力が拡大することが期待されています。2025年7月にホワイトハウスが発表したファクトシートでは、この投資は、日本による環大西洋パートナーシップへの強いコミットメントと、米国が外国投資にとって安全な投資先であるとの認識を反映したものであると位置付けられています。


監視と遵守

米国商務長官は、他の関係当局者と協議の上、本合意に基づく日本のコミットメントの履行状況を監視します。日本が義務を履行しない場合、米国は国家安全保障上の懸念に対処するため、大統領令を修正する可能性があります。


企業が検討すべき対策

影響を受ける企業は、以下の対策を検討する必要があります。

  • 日米合意の影響を確認し、輸入アプローチと遵守義務を整合させる。
  • 法務および貿易アドバイザーに相談し、新たな関税構造の複雑さに対応し、本合意の遵守を確保する。
  • 関税や税金に関する契約上の責任を明確化するため、サプライヤーおよび顧客との契約を見直す。
  • サプライヤーおよび顧客との価格合意や費用分担の取り決めの再交渉を検討する。


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EY税理士法人

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※所属・役職は記事公開当時のものです