令和8年度税制改正大綱(概要版)

Japan tax alert 2025年12月23日号

令和7年12月19日に、令和8年度与党税制改正大綱が公表されました。以下、大綱で明らかにされた主要な改正・見直し項目の概要を説明します。なお、今後の与野党間の協議及び国会における改正法案審議の過程において、一部項目の修正・削除・追加などが行われる可能性があることにご留意ください。


法人課税

1. 大胆な設備投資促進税制の創設

  • 大規模かつ高付加価値の設備投資を推進する観点から、全ての業種について、産業競争力強化法の確認手続きを経た設備投資計画に基づいて取得した一定の規模以上の生産設備等(機械装置、工具、器具備品、建物、建物付属設備、構築物、ソフトウエア)を対象とする投資促進税制が創設されます。対象資産について、即時償却又はその取得価額の7%(建物等については4%)の税額控除の選択適用ができることとされます。
  • 税額控除額は法人税額の20%を上限とし、控除限度超過額は3年間の繰越しが認められます。


2. 研究開発税制の見直し

  • 一般型とは別枠で、新たに「戦略技術領域型」が創設されます。産業技術力強化法の重点産業技術(仮称)(AI・先端ロボット、量子、半導体・通信、バイオ・ヘルスケア、フュージョンエネルギー、宇宙)に係る試験研究費について、40%(認定研究開発機関との共同・委託研究については50%)の税額控除ができることとされます。税額控除額は法人税額の10%を上限とし、控除限度超過額は3年間の繰越しが認められます。
  • 一般型の控除率カーブ及び控除上限の変動措置について見直しが行われます。
  • 海外への委託研究について、税額控除対象金額に制限が設けられます。


3. 賃上げ促進税制の見直し

  • 大企業向けの措置は、令和8年3月31日をもって廃止されます。
  • 中堅企業向け措置については、より高い賃上げを促す方向で要件を見直して継続し、適用期限(令和9年3月31日)の到来をもって廃止されます。
  • 中小企業向け措置については、現行制度を維持することとし、適用期限到来時に必要な見直しが検討されます。
  • 教育訓練費に係る上乗せ措置は廃止されます。


4. その他

  • 租税特別措置(特定の税額控除規定)の不適用措置について、要件の強化が行われます。
  • オープンイノベーション促進税制は、M&A型について見直しを行った上で、適用期限が2年延長されます。
  • パーシャル・スピンオフ税制の適用要件が見直されます。
  • 地方拠点強化税制について、見直しを行った上で適用期限が2年延長されます。
  • 中小企業者の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例措置について、取得価額の基準を40万円未満(現行:30万円未満)に引き上げる見直しを行った上で、適用期限が3年延長されます。
  • 企業グループ間の取引に係る書類保存の特例が創設されます。
  • グループ通算制度の投資簿価修正制度における調整勘定対応金額の加算措置について、見直しが行われます。


国際課税

1. 外国子会社合算税制の見直し

  • 解散した外国関係会社の取り扱いに関する特例が創設されます。
  • ペーパーカンパニー特例に係る資産割合要件及び最高税率を用いて租税負担割合を計算することができる特例について、見直しが行われます。


2. その他

  • グローバル・ミニマム課税について、OECDにより発出されたガイダンスの内容を踏まえ、制度の明確化の観点から所要の見直しが行われます。
  • 投資組合の外国組合員に対する課税の特例について、有限責任組合員の持分割合要件(現行:25%未満)が50%未満に引き上げられます。


個人所得課税

1. いわゆる「年収の壁」の見直し

  • 消費者物価指数の上昇を踏まえ、基礎控除の本則については現行58万円が62万円に、給与所得控除の最低保障額については現行65万円が69万円に、それぞれ引き上げられます。加えて、基礎控除の特例は42万円まで引き上げられ(給与収入665万円相当まで)、給与所得控除の最低保障額も追加で5万円引き上げられます。
  • これらの措置により、全ての納税者の「所得税の負担開始水準」(「基礎控除」及び「給与所得控除」の合計額)は178万円以上となります。以上の見直しは、令和8年分の所得税及び令和9年度分の個人住民税から適用されます。


2. NISAの拡充

  • つみたて投資枠の対象年齢を0歳まで拡充します。口座保有者である子が0歳から17歳の間については、年間投資枠は60万円、非課税保有限度額は600万円とされます。


3. 防衛特別所得税(仮称)の創設

  • 防衛力強化に係る財源確保のため、所得税額に対して税率1%の新たな付加税として、防衛特別所得税(仮称)が令和9年1月から課されます。
  • 併せて、復興特別所得税の税率が1%引き下げられます。課税期間は令和29年までの10年間延長されます。


4. 住宅ローン減税延長と見直し

  • 住宅ローン減税は令和12年末まで5年間延長されます。
  • 中古住宅の購入者の控除期間は10年から最大13年に延長されます。減税対象となる最大借入額も現行の3,000万円から3,500万円(子育て世帯は4,500万円)に引き上げられます。床面積要件についても、40㎡に緩和されている特例の適用範囲が中古住宅にも拡充されます。


5. 暗号資産取引に係る課税の見直し

  • 金融商品取引法等の改正を前提として、国民の資産形成に資する暗号資産に限って、その現物取引、デリバティブ取引及びETFから生じる譲渡所得は分離課税の対象として20%(所得税15%、個人住民税5%)の税率により課税されることになります。生じた損失については、3年間の繰越控除制度が創設されます。


6. その他

  • 超富裕層向けに追加の税負担を求める措置が見直されて、対象者が広がります。
  • 「ふるさと納税」について、年収1億円以上の人を念頭において、住民税から控除できる額に上限が設けられます。
  • 同族会社の株主が支払を受ける社債の利子について、同族会社との間に第三者(特定法人)を介在させて社債利子を受け取るような場合でも、総合課税の対象とされます。
  • 道府県民税利子割に関して、都道府県間で個人に係る所得金額を基準にして税収帰属を調整する清算制度が新たに導入されます。


資産課税

1. 賃貸用不動産・不動産小口化商品の財産評価の適正化

  • 貸付用不動産の市場価格と相続税評価額との乖離の実態を踏まえ、以下の見直しが行われます。
  • 相続開始・贈与前5年以内に有償で取得又は新築をした一定の貸付用不動産については、課税時期における通常の取引価額に相当する金額(取得価額を基にして算定)によって評価することとされます。
  • 商品として小口化された貸付用不動産については、取得時期にかかわらず、課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価することとされます。


2. その他

  • 教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置については、適用期限(令和8年3月末)の到来をもって廃止されます。


消費課税

1. 国境を越えた電子商取引に係る消費税の適正化

  • 国境を越えて行われる通信販売のうち、1万円以下の商品について、販売者に消費税の納税義務を課す制度が導入されます。
  • デジタルプラットフォームを介する物品販売において、これらの取引を仲介するプラットフォーム事業者に物品販売に係る納税義務を転換する制度が導入されます。


2. 消費税インボイス制度導入に伴う経過措置の見直し

  • いわゆる「2割特例(新たにインボイス発行事業者となった小規模事業者に関する経過措置)」の終了後、その納税額を売上税額の「3割」とすることができる経過措置が2年に限り講じられます。
  • いわゆる「8割特例(免税事業者からの課税仕入れに係る税額控除に関する経過措置)」は、段階的に縮減することとされていますが、その最終的な適用期限が2年延長されます。控除ができる割合については、令和8年10月からは7割、令和10年10月からは5割、令和12年10月からは3割と段階的に縮減して、令和13年9月末をもって適用が終了します。


3. その他

  • 非居住者に対して行われる国内に所在する不動産に関する役務提供について、消費税の課税対象とする見直しが行われます。


納税環境整備・その他

  • 刑事訴訟法の改正を踏まえ、国税犯則調査手続のデジタル化に対応するための整備が行われます。
  • 国際観光旅客税の税率が現行の出国1回につき1,000円から3,000円へ引き上げられます。
  • 自動車税及び軽自動車税の環境性能割が廃止されます。
  • 個人使用貨物に限り、関税課税価格を海外小売価格の6割にする特例が廃止されます。
     

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