韓国における関税評価手続きの改正

背景

従来、韓国において、輸入者は関税評価に関する書類の保管を義務付けられていましたが、これらの資料は税関事後調査時に初めて提出されることが一般的でした。そのため、輸入者である企業は、事後調査開始以前にそのような提出書類によってどのような結果がもたらされるかを予測することが困難でした。また、調査時も、必要な書類を提出したと考える企業と、提出された資料は適切な関税評価額か否かを判断するには不十分とする韓国関税庁(KCS)との間で見解の相違が生じる状況が頻発していました。

2025年9月1日より、KCSは、輸入取引に関して最低限のデータ・書類を、事後調査時ではなく輸入申告時点に提出することを義務付け、その手続きと具体的な提出書類を明示しました。この改正により、事前に最低限の書類を入手することができるため、税関は、税関事後調査をより迅速かつ効率的に実施することが可能となります。また、輸入者も、最低限準備する必要があるデータ・書類が明確になり、事後調査時に急遽対応に追われることもある程度回避できます。

書類提出は、輸入許可日から遅くとも30日以内に行われる必要があります。また、書面は一度提出すれば、取引内容に変更がなければ以降1年間の再提出は不要となります。具体的な提出書類は、以下のカテゴリーごとに定められています。

カテゴリー

必要書類

ロイヤルティ/ライセンス料

特許・商標契約書、ロイヤルティ等の計算・支払明細書

無償または値引きをして提供された物品や役務

関連の契約書、物品や役務提供の明細

手数料

委託・仲介契約書、手数料の計算・支払明細書

運賃・保険料

輸送関連契約書、運賃・保険料の費用・支払明細書

包装・容器の費用

海外での梱包サービス契約書、費用・支払明細書

売手帰属利益

利益分配に係る契約書、計算・支払明細書

製品代金の間接支払い

相殺・還付といった間接支払いに関連する資料、当該支払いの計算・支払明細書

関連者間取引

価格設定に関する資料、移転価格スタディ、その他関連資料

なお、この改正では、AEO(Authorized Economic Operator)、ACVA(Advance Customs Valuation Arrangement)プログラムの参加企業、または年間納税額が5億ウォン未満の企業は、輸入申告時の関税評価関連書類提出が免除されます。


推奨される対応

輸入申告時の関税評価関連書類の提出義務は9月1日から生じているため、すでに対応済みの企業が多いものの、韓国より、9月以降もこれらの資料を提出していなかった輸入者が税関から提出を求められている、また、対応済みの輸入者も提出資料につき質問を受けている、という情報も入っており、今一度本社側でも対応状況を確認しておくことが推奨されます。

本改正は、書類提出手続きの全面改正ではなく、従来は税関の事後調査において提出が求められていた書類について、今後は輸入申告時点での提出を企業に求めるものです(したがって、提出を求められる書類の内容自体に変更があるわけではありません)。

自社の取引が、前述の書類提出が求められる8カテゴリーのいずれかに該当する場合、提出書類の詳細度については検討が必要となります。ただし一般的には、直ちに価格決定の詳細を開示するのではなく、自社がすでに公開している情報、適切に締結された契約書、および過去の事後調査において提出済みの書類をもって対応することが想定されます。関連者間取引の場合、移転価格は税関事後調査において中心的な論点となるため、提出書類の選択は非常に重要な問題です。そのため、まずは、移転価格文書等の関連個所のみを抜粋して提出することが考えられます。

この場合、移転価格文書は法人税観点から作成されているものであり、必ずしも関税観点からそのまま利用できるとは限らないことに注意が必要です。例えば、韓国販社の利益率が高いことは韓国法人税観点からは直ちに問題とならなくとも、税関がその数値を見ると、関連会社からの仕入れ値が低いから利益率が高いのではないかとチャレンジを受ける可能性があります。そのため、提出する資料については関税観点から関税評価額を裏付けるものとして適切であるかという視点で一度確認し、必要に応じて、関税評価観点から価格の適切さを説明できる文書を準備しておくことが最も望ましいと言えます。また、今回の手続き変更も含め、KCSが関税評価に強い関心を示している状況を踏まえると、ACVAプログラムに参加して事前に当局と関税評価方法について合意を得ておくことは非常に重要であると考えられます。


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EY税理士法人

原岡 由美 パートナー
南部 信介 シニアマネージャー

※所属・役職は記事公開当時のものです