行政書士法改正と企業が直面する「非行政書士行為」リスク:外注・内製化の見直しが急務

1. はじめに

2025年6月13日に「行政書士法の一部を改正する法律」(令和7年法律第65号)が公布され、2026年1月1日に施行されました。本改正では、行政書士の使命・職責の明確化に加え、特に重要な点として、非行政書士による違法行為(非行政書士行為)の禁止規定がより明確化されました。

本改正は、外国籍人材の在留手続きを行う企業(人事・総務部門)や、外国人の受け入れ関連業務を外注している企業に直接的に影響しますので、以下概要を説明します。


2. 行政書士法改正のポイント

本改正につき、本稿で注目する点は、業務の制限(非行政書士行為)に関する以下の条文です。

改正前:
行政書士法第19条第1項
行政書士又は行政書士法人でない者は、業として第一条の二に規定する業務を行うことができない。

改正後:
行政書士法第19条第1項
行政書士又は行政書士法人でない者は、他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業として第一条の三に規定する業務を行うことができない。(以下省略)

改正後の条文には「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」という文言が追加されています。改正前においては、この部分は、所与の前提だったといえますが、実際には、行政書士又は行政書士法人ではない者が、「事務手数料」「コンサル料」「事務サービス料」「会費」「支援委託費」など、さまざまな名目をもって「報酬を得て」、入管庁に提出する申請書等を作成しているケースが散見されてきました。本改正は、これまでも違法であった行為を、明確にしています1


3. 非行政書士行為(行政書士法第19条第1項違反)とは何か

非行政書士行為とは、以下の要件を満たす場合に該当します。

(1)行政書士又は行政書士法人ではない者が、

(2)他人の依頼を受け、

(3)報酬を得て

(4)官公署に提出する書類(電磁的記録を含む)その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む)を

(5)業として

(6)作成すること
 

例えば、以下の事例では、非行政書士行為として違法となります。非行政書士行為は、違反行為をした者だけではなく、その法人も処罰の対象となります(百万円以下の罰金)(行政書士法第19条1項、法第22条の4、第23条の3)。

(1)行政書士又は行政書士法人ではない者が、自社の従業員以外の他人に係る在留資格認定証明書交付申請や在留期間更新許可申請の書類(オンライン申請における電磁的記録を含む)を作成し、「リロケーションサポート料」「オプションサポート料」といった名目の報酬を受け取る場合

(2)採用エージェントが、自社で雇用する予定の内定者以外の内定者の在留資格に係る申請書類を作成し、「手続き代行料」を受け取る場合

(3)本社の人事・総務などの部署が、本社で雇用される社員ではなく、グループ会社(別法人)の従業員の在留手続きに係る申請書作成を行い、グループ会社(別法人)から「業務委託費」等の報酬を受領する場合


4. 外国籍人材を受け入れる企業が取るべき対応策

企業の在留手続きの実務は、(1)外注するケースと(2)内製化するケースに大別されます。本改正を契機にそれぞれ以下の対応をご検討ください。

(1)外注している場合の対応策――ベンダーの適法性を確認する。

企業は、書類作成を伴う在留手続きを依頼しているベンダーが「行政書士」または「行政書士法人」であるかを確認してください。行政書士・行政書士法人ではない事業者が、入管庁に提出する書類作成について企業から受注し、行政書士・行政書士法人に(再)委託することも認められていません。在留手続きについては、外国人・企業と行政書士・行政書士法人とが「直接」契約しなければなりません(このような事業者は、非行政書士行為を行っている違法な事業者です)。

(2)内製化している場合――内製化が認められている範囲を確認する。

  • 自社の外国籍従業員に関する手続きに限定する。

企業が自社の従業員や採用内定者の在留手続きに係る書類作成を行う場合、「他人から」依頼を受けているわけではありませんので、非行政書士行為とはなりません。しかし、自社以外の別法人の従業員に係る書類作成を行う場合は、「他人」の依頼を受けて行うものですので、非行政書士行為に該当する可能性があります。この点、別法人格であるグループ会社に雇用される従業員であっても、「他人」になります。

  • 外国籍の新卒採用や、他社に在籍する外国籍の中途採用者に

これらの場合、採用内定があれば、非行政書士行為に該当しないと考えられています。なぜなら、採用内定によって条件付き2の雇用契約が成立しているので、雇用契約自体は成立していると考えられているからです。したがって、新卒採用や他社からの中途採用者については「他人の」依頼を受けているものではなく、非行政書士行為に該当しません。


5. 不適法なケースが見つかった場合の対応

もし、外注先のベンダーが行政書士・行政書士法人でない場合や、「内製化」した範囲が「他人」に及んでいる場合などのリスクが判明した場合には、以下の対応を取ってください。

(1)直ちに運用を停止する。

採用時期が迫っているので、「数も少ないから」「今、運用を停止しては採用時期に間に合わないから」といった理由で運用を継続することは避ける必要があります。コンプライアンスの観点から即時の対応が必要です。

(2)代替策を検討・実行する。

行政書士または行政書士法人に外注することや、本人や申請代理人に書類を作成させる方式への切り替えを選択肢として検討してください。


6. おわりに

行政書士法改正は、これまで曖昧だった「非行政書士行為」を明文化し、行政書士以外の書類作成への関与を強く制限する内容となっています。企業にとっては、外注ベンダーの適法性の確認、内製化の範囲の厳密な見直し、グループ会社間の対応の再整理を行うことがポイントとなります。この点、各企業の体制や現行運用によって対応方法は変わりますので、ご希望があれば、貴社の現在の運用に関するヘルスチェックを実施し、行政書士法・入管法の両面からリスク評価や改善案をご提案いたします。

なお、本稿では、入管庁に提出する書類を主眼においていますが、このほかにも補助金申請や許認可申請においても制限がありますので同様の検証を行ってください。

巻末注

  1. なお、他の士業における業務の制限に関する条文は以下のとおりです。
    弁護士法第72条第1項:弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。
    司法書士法73条第1項:司法書士会に入会している司法書士又は司法書士法人でない者(協会を除く。)は、第3条第1項第1号から第5号までに規定する業務を行つてはならない。

  2. 停止条件付き解約権留保付き始期付き雇用契約が成立すると考えられています。

お問い合わせ先

EY 行政書士法人

木島 祥登 パートナー

※所属・役職は記事公開当時のものです