最新法令等紹介―「企業内容等の開示に関する内閣府令」および「特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令」の一部改正、他

今回ご紹介する法改正案等は、①「企業内容等の開示に関する内閣府令」および「特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令」の一部を改正する内閣府令、②「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」の改定案、「製造委託等に係る代金の支払に関する特定の不公正な取引方法」案(運用基準案含む)および「特定荷主が物品の運送又は保管を委託する場合の特定の不公正な取引方法」の改正案、③「外国為替及び外国貿易法の一部を改正する法律案」です。


1. 「企業内容等の開示に関する内閣府令」および「特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令」の一部を改正する内閣府令の公布およびパブリックコメントの結果を公表

2026年2月20日、金融庁は、「企業内容等の開示に関する内閣府令」および「特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令」の一部を改正する内閣府令を公布するとともに、当該改正に関するパブリックコメント(意見数213件)の結果を公表しました。本改正は、サステナビリティ情報開示および人的資本開示の拡充を中心として、上場企業の開示実務に重要な影響を与える内容となっています。

なお、施行時期については、本改正府令は公布日から施行されます。サステナビリティ開示に関する規定は、原則として令和10年3月期から適用されますが、平均時価総額が大きい会社については令和9年3月期からの前倒し適用となります。人的資本開示およびその他の改正事項については、令和8年3月期から適用される予定です。


(1)サステナビリティ開示基準の適用開始に向けた環境整備のポイント

第一のポイントは、サステナビリティ開示基準(「SSBJ基準」)の適用開始です。「金融庁長官が指定する取引所金融商品市場」に上場する会社のうち、平均時価総額が1兆円以上の会社について、「一般に公正妥当と認められるサステナビリティ情報の作成および開示に関する基準」に従い、有価証券報告書等においてサステナビリティ情報を記載することが義務付けられます。対象となる市場は東京証券取引所プライム市場であり、平均時価総額は、対象事業年度の前事業年度末およびその前4事業年度末の時価総額の平均値により判定されます。なお、上場後5事業年度を経過していない会社については、経過した事業年度の末日時価総額の平均値により判定されることとされています。

また、SSBJ基準の適用開始年度およびその翌年度については、SSBJ基準に従って記載すべきサステナビリティ情報を当初の有価証券報告書に記載しないことが認められており、その場合には、翌期の半期報告書の提出期限までに、当該事項を記載した訂正報告書を提出する、いわゆる二段階開示が可能とされています。

第二のポイントは、SSBJ基準の適用に伴う開示項目の追加・明確化です。SSBJ基準に基づき開示が求められる事項に加え、SSBJ基準に準拠している旨や、二段階開示および経過措置の適用状況についての記載が求められます。また、将来情報やScope3温室効果ガス排出量に関する定量情報については、その推論過程等に関する説明や、これらの情報に係る社内の開示手続きについての記載が必要とされます。さらに、前事業年度の有価証券報告書において見積りにより算定した数値について、確定値が判明し、見積値との差異が生じた場合には、半期報告書において当該差異を記載することが可能とされています。

第三のポイントは、Scope3温室効果ガス排出量に関するセーフハーバー・ルールの整備です。Scope3排出量に関する定量情報について、差異が生じる要因や推論過程、社内の開示手続き等が一般に合理的と考えられる範囲で具体的に記載されている場合には、虚偽記載等の責任を負わないとする考え方が、企業内容等開示ガイドライン上で明確化されました。


(2)人的資本開示に関する制度見直しのポイント

「従業員の状況」の記載位置を「第1【企業の概況】」から「第4【提出会社の状況】」へ移動した上で、連結ベースの企業戦略と関連付けた人材戦略、当該戦略を踏まえた従業員給与等の決定方針、ならびに提出会社の従業員の平均給与およびその対前年比増減率の開示が新たに求められます。提出会社が主として子会社の経営管理を行う会社である場合には、提出会社および最大人員会社についての方針を記載することとされ、最大人員会社については、従業員給与の平均額やその前年比増減率等の記載も必要となります。また、使用人のみを対象としたストックオプション制度や役員・従業員株式所有制度については、「株式等の状況」に代えて「従業員の状況等」に記載することも可能とされています。


(3)まとめ

今後、対象となる企業においては、自社が適用対象に該当するかの確認に加え、SSBJ基準への対応体制の整備や、人的資本情報の収集・整理を含む開示実務への早期対応が重要となります。


2. 「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」の改定案、「製造委託等に係る代金の支払に関する特定の不公正な取引方法」案(運用基準案含む)および「特定荷主が物品の運送又は保管を委託する場合の特定の不公正な取引方法」の改正案の公表、ならびに当該案に対するパブリックコメントおよび公聴会の開催

2026年3月12日、公正取引委員会は、「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」の改定案、「製造委託等に係る代金の支払に関する特定の不公正な取引方法」案(運用基準案含む)および「特定荷主が物品の運送又は保管を委託する場合の特定の不公正な取引方法」の改正案について公表し、あわせてパブリックコメントおよび公聴会の開催を発表しました。本件は、企業取引研究会における議論を踏まえ、製造委託および物流分野を中心として、優越的地位の濫用規制の明確化および実効性の強化を図るものです。

本改正の目的は、取引条件や支払条件に関する判断基準を整理・具体化することにより、事業者の予見可能性を高め、独占禁止法違反行為の未然防止を図る点にあります。とりわけ、物流分野における取引慣行や、製造委託取引における代金支払の在り方が重要な検討対象とされています。


(1)今回の意見募集の対象とされている対象

第一に、「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」の改定案です。本改定案では、優越的地位に該当するか否かの判断に当たり考慮される要素について、取引依存度、代替可能性、取引継続の必要性といった観点を中心に整理が行われています。また、優越的地位の濫用として問題となり得る具体的な行為類型についても、近時の取引実態や過去の執行事例を踏まえ、判断枠組みの明確化が図られています。これにより、どのような取引行為が独占禁止法上問題となり得るのかについて、事業者の予見可能性を高めることが意図されています。

第二に、「製造委託等に係る代金の支払に関する特定の不公正な取引方法」案の新設です。製造委託等における代金の支払遅延を、不公正な取引方法として明確に位置付けることが提案されています。

第三に、製造委託等に係る代金の支払に関する特定の不公正な取引方法に関する運用基準案です。本運用基準案では、新たに不公正な取引方法として位置付けられる行為について、具体的にどのような事情の下で問題となるのかが整理されています。例えば、代金支払の遅延や支払条件の設定に関し、取引の実態や当事者間の力関係を踏まえつつ、問題となり得る行為とそうでない行為の考え方が示されています。これにより、形式的な契約内容のみにとどまらず、実質的な取引状況を踏まえた判断が行われることが明確化されています。

第四に、「特定荷主が物品の運送又は保管を委託する場合の特定の不公正な取引方法」の改正案です。本改正案では、物流分野における実際の取引慣行や、近年指摘されてきた商慣習上の問題を踏まえ、いわゆる物流特殊指定の内容が見直されています。具体的には、物流事業者に対する一方的な取引条件の設定や、費用負担・役務提供に関する不当な要求などについて、規制の対象となり得る行為がより明確に整理されています。これにより、荷主と物流事業者との間の取引の適正化を図り、物流分野における優越的地位の濫用の未然防止を目的としています。


(2)まとめ

物流取引や製造委託取引に関与する事業者にとっては、今後の実務に直接的な影響を及ぼし得る内容であるため、改正案の内容を早期に確認し、必要に応じて意見提出や社内対応の検討を行うことが重要となります。


3. 「外国為替及び外国貿易法の一部を改正する法律案」の閣議決定

2026年3月17日、政府は、「外国為替及び外国貿易法の一部を改正する法律案」を閣議決定しました。本改正法案は、対内直接投資の促進と国の安全等の確保を両立させる観点から、対内直接投資等に対する審査・規制の実効性を一層強化することを目的とするものです。

近年、国際情勢の複雑化や経済安全保障上のリスクの高まりを背景として、従来の外為法上の枠組みでは十分に対応できない投資形態や支配構造が問題となっていました。本改正法案は、こうした課題を踏まえ、間接的な投資や潜脱的なスキームも含めて、制度全体の網羅性と実効性を高める内容となっています。

施行期日については、原則として公布の日から1年以内に政令で定める日とされています。ただし、関係行政機関への意見照会に関する規定については、公布の日から施行される予定です。


(1)主な改正内容のポイント

第一に、外国投資家が、本邦企業に対して一定の投資を行っている海外法人等の議決権を50%以上取得する行為等を、新たに「対内直接投資等」として規制対象に追加します。これにより、外国投資家が日本企業の株式等を直接取得する場合に限らず、日本企業に投資している海外法人等を通じて、間接的に日本企業を支配する構造についても、対内直接投資規制の対象となります。形式上は日本企業への直接投資に該当しない場合であっても、実質的に経営支配や重要な影響力を及ぼし得る投資について、外為法上の審査・規制の枠組みに取り込むことを意図したものです。

第二に、事前届出制度の見直しとして、国の安全等を損なうおそれを除去するために講ずる措置、いわゆるリスク軽減措置を、事前届出における届出事項として明示的に位置付けます。あわせて、当初届け出たリスク軽減措置の内容を変更しようとする場合には、あらかじめその変更について事前の届出を行うことが義務付けられます。これにより、審査過程において前提とされたリスク軽減措置が、事後的に形骸化することを防止し、継続的な実効性確保を図る仕組みが整備されます。

第三に、外国投資家以外の者であっても、契約その他の法的関係に基づき、非居住者等のために、当該非居住者等の名義を用いずに行う対内直接投資等又は特定取得については、その者を外国投資家とみなして外為法の規制を適用する規定が設けられます。実質的には外国投資家による投資でありながら、形式的に規制を回避する行為を防止する趣旨です。

第四に、事前届出の対象とならない対内直接投資等および特定取得についても、将来の国際情勢の変化等により国の安全を損なうおそれが大きいものについては、当局が必要に応じて外国投資家に対し報告を求めることができる仕組みが新設されます。さらに、当該投資等が国の安全に係る対内直接投資等又は特定取得に該当すると認められる場合には、関税・外国為替等審議会の意見を聴いた上で、株式等の処分その他必要な措置について勧告又は命令を行うことが可能となります。また、緊急の必要がある場合には、新たな投資の禁止等、国の安全を確保するために必要な措置を命ずることができるとされています。

第五に、対内直接投資等又は特定取得の審査等において必要がある場合には、財務大臣および事業所管大臣が、関係行政機関の長に対して意見照会を行うことが義務付けられます。


(2)まとめ

本改正法案は、外国投資家のみならず、日本企業側における投資受入れスキームの検討や、M&A・資本提携の実務にも影響を及ぼす可能性があります。今後の国会審議の動向に加え、成立後に整備される政令・省令の内容を含め、引き続き注意深く確認していく必要があります。


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津曲 貴裕 パートナー

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