EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
IRSのAPMAプログラムは、2025年3月30日、Announcement 2026-08において第27回年次報告書を公表しました。報告書では、2025年のAPMAの活動や人員構成などが述べられており、APA制度の運営について有益な知見を提供しています。
2025年のAPA申請件数は前年からわずかに増加し、178件(2024年は169件)となりました。一方、締結されたAPAの総数は142件から110件へと2年連続で減少し、APAの締結までの平均所要期間は、2024年の39.1カ月から2025年には44.1カ月へと延びました。
1991年のAPAプログラム開始から2025年12月31日までに、IRSは合計3,633件のAPA申請を受理し、2,676件のAPAを締結しました。以下の表は、2025年の申請件数、締結件数、継続件数に関する統計の要約を示すものです。データは一国内APAと二国間APAに分かれており、2025年、2024年、2023年で比較されています。
2025年において、APMAの職員総数は減少しました。エコノミストの数は35名(2024年)から30名(2025年)に減少し、チームリーダー(弁護士および会計士の混成)の数も76名(2024年)から63名(2025年)に減少しました。マネージャーとアシスタントディレクターは従来と変わらず、それぞれ12名と3名でした。
以下のデータは、新規の二国間APA合意までの平均所要期間が2023年の水準に戻ったことを示しており、2024年の45.9カ月に対し、2025年は50.0カ月を要しました。また、更新の二国間APA合意までの平均所要期間は、2024年の36.0カ月から2025年には37.5カ月とわずかに長くなりました。一方、更新の一国内APA合意までの平均所要期間は、2024年の24.3カ月から2025年には40.4カ月へと著しく長期化しました。また、新規の一国内APA合意までの平均所要期間も2024年の28.9カ月から2025年には39.6カ月へと長期化しました。
次の図に示すように、2025年に締結された二国間APAのうち、インドとのAPAが35%を占め、最多となっています。これは、IRSとインド税務当局との関係が、過去数年間に見られた改善傾向を継続していることを示しており、インドに投資する多国籍企業が直面する不確実性や二重課税のリスクを考慮すると、これは好ましい結果と言えます。
日本は、2025年に締結された二国間APAにおいて、再び2番目に多い締結相手国となり、全体の25%を占めました。これは、米国と日本のAPA制度が成熟していること、そしてAPMAチームと日本の国税庁との豊富な交渉経験に基づくものと見られています。
2025年二国間APA国別申請状況1
2025年二国間APA国別締結状況
2025年に締結されたAPAの業種別の割合には、わずかな変化が見られます。卸売・小売業が引き続き最大の割合であり、締結されたAPAの29%を占めていますが、サービス業が製造業を上回り、締結されたAPAの25%を占めました。この2つの業種で締結されたAPAの過半数を占めていますが、両業種ともに割合自体は過去数年と比べると低下しています。これは、APAによってもたらされる税務上の確実性を求める企業のタイプに変化が生じていることを示している可能性があります。
2025年APA締結業種別内訳
報告書では、確認対象取引と各取引における検証対象企業の種類を示しています。なお、1件のAPAにおいて複数の取引を確認対象とする場合があり、全てのAPAにおいて検証対象企業が存在するわけではありません。
確認対象取引の種類
検証対象企業の種類
2025年報告書におけるAPAプログラムの結果は以下のとおりです。
米国のAPAプログラムの結果に変化が生じた背景には、いくつかの要因があると考えられます。第1に、2023年および2024年は、APAプログラム開始以来最多の締結件数と過去最高の人員数を擁した、記録的な年でした。
第2に、連邦政府職員数削減の取り組みが、APMAの規模縮小に実際に影響を与えました。案件を担当する人員が減少する一方で、納税者のAPAに対する需要が依然として強いことから、締結件数が減少し、全体の滞留(継続)件数が増加したものと考えられます。この傾向は2025年初頭に予想されていました(本件に関しては2025年3月28日付EY Global Tax Alert「APA report for 2024 shows consistent number of APAs executed in less time」もご参照ください〈英語のみ〉)。
最後に、米国による追加関税の導入および全体的な経済状況が、二国間APA交渉における相手国の判断に影響を与えています。2025年における世界経済の不確実性を背景に、世界各国の税務当局は自国・地域の税収を守るための取り組みを進めてきました。この変化により、権限ある当局がより強硬な姿勢を取るようになり、二国間APAの条件について合意に至るまでに、より長い交渉期間が必要となった可能性があります。
しかし、こうした課題があっても、納税者においては、APAを申請して税務上の確実性を求めることをためらうべきではないものと考えられ、現在のAPA手続きに関する現実的な見通しを確認するために税務アドバイザーに相談することは、引き続き極めて重要です。税務アドバイザーは、数多くのAPA業務への関与を通じて、現在のAPAプログラムにおいて最も適した案件の種類や、APA合意までに要する期間についての知見を備えています。
注記
1本稿に掲載されている円グラフは、告示 2026-08に掲載されたものです。
EY税理士法人
谷津 剛 パートナー
Ernst & Young LLP
金成 龍秀 パートナー
國塩 大晃 シニアマネージャー
※所属・役職は記事公開当時のものです
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