米国内国歳入庁2025年APA年次報告書を公表、APAの大きな需要を示す

  • 事前確認・相互協議(APMA)プログラムは、Announcement 2026-08において第27回年次報告書(以下、報告書)を公表した。
  • 内国歳入庁(IRS)は2025年に178件の事前確認(APA)申請を受理した。これは2024年の169件からわずかに増加したが、締結されたAPA件数は前年の142件から減少した110件だった。
  • APA合意に要する期間の中央値は、41.6カ月へと長期化した。
  • APAプログラムは移転価格の確実性を確保するための重要な手段であり続けているが、IRSの人員および予算の削減が2025年のAPA締結件数に影響を与えたとみられる。

IRSのAPMAプログラムは、2025年3月30日、Announcement 2026-08において第27回年次報告書を公表しました。報告書では、2025年のAPMAの活動や人員構成などが述べられており、APA制度の運営について有益な知見を提供しています。

2025年のAPA申請件数は前年からわずかに増加し、178件(2024年は169件)となりました。一方、締結されたAPAの総数は142件から110件へと2年連続で減少し、APAの締結までの平均所要期間は、2024年の39.1カ月から2025年には44.1カ月へと延びました。

概要

  • 2023年(156件)および2024年(142件)の2年間は過去最高水準のAPA締結件数が続いたが、2025年に締結されたAPA件数(110件)は、2017年から2021年の間に締結された件数に近い水準となった。
  • 5年連続で、APMAが受理したAPA件数は締結した件数を上回っており、2025年のAPA申請は178件、締結は110件であった。未処理案件の増加総数は62件であり、約11%の増加となった。
  • 年末時点で継続中のAPAは622件あり、その内訳は二国間APAが543件、多国間APAが18件、一国内APAが61件であった。
  • APA合意に要する期間の中央値は、2024年の33.5カ月から2025年には41.6カ月へと、約8カ月増加した。
  • APMAの職員総数は、2024年12月31日時点の126名(Directorを含む)から、2025年12月31日時点では108名へと、約15%減少し、現在の人員数は、2023年12月31日時点の人員数(114名)をわずかに下回っている。
  • 2025年に締結された米国の二国間APAの約71%は、インド(35%)、日本(25%)、カナダ(11%)とのAPAであった。
  • インド(26%)、日本(24%)、イタリア(8%)との間で申請された二国間APAが、米国の二国間APA申請全体の58%を占めていた。
  • 2025年に締結されたAPAは、親会社が外国にある企業とその米国子会社間の取引(45%)と、親会社が米国にある企業とその海外子会社間の取引(45%)の2つのグループに均等に分かれている。近年、米国に親会社を持つ企業によるAPA申請の割合が増加傾向にある。残りの10%の締結されたAPAは、兄弟会社間の取引であった。
  • 企業間サービス取引を含むAPAの83%で、利益比準法/取引単位営業利益法(CP/TNMM)が適用された。CPM/TNMMにおいて最も頻繁に選択された利益水準指標(PLI)は、売上高営業利益率(OM)および営業利益対営業費用比率であり、全体の66%で使用された。
  • CPM/TNMMは、有形資産取引や無形資産取引においても最も多く適用された移転価格算定方法である(86%)。OMは57%のケースで使用され、最も多く適用されたPLIであった。


APAの申請件数、締結件数、継続件数

1991年のAPAプログラム開始から2025年12月31日までに、IRSは合計3,633件のAPA申請を受理し、2,676件のAPAを締結しました。以下の表は、2025年の申請件数、締結件数、継続件数に関する統計の要約を示すものです。データは一国内APAと二国間APAに分かれており、2025年、2024年、2023年で比較されています。

APAの申請件数、締結件数、継続件数

IRSの職員配置と運営の効率化

2025年において、APMAの職員総数は減少しました。エコノミストの数は35名(2024年)から30名(2025年)に減少し、チームリーダー(弁護士および会計士の混成)の数も76名(2024年)から63名(2025年)に減少しました。マネージャーとアシスタントディレクターは従来と変わらず、それぞれ12名と3名でした。


APA締結までの期間

以下のデータは、新規の二国間APA合意までの平均所要期間が2023年の水準に戻ったことを示しており、2024年の45.9カ月に対し、2025年は50.0カ月を要しました。また、更新の二国間APA合意までの平均所要期間は、2024年の36.0カ月から2025年には37.5カ月とわずかに長くなりました。一方、更新の一国内APA合意までの平均所要期間は、2024年の24.3カ月から2025年には40.4カ月へと著しく長期化しました。また、新規の一国内APA合意までの平均所要期間も2024年の28.9カ月から2025年には39.6カ月へと長期化しました。

APA締結までの期間

二国間APAの締結相手国

次の図に示すように、2025年に締結された二国間APAのうち、インドとのAPAが35%を占め、最多となっています。これは、IRSとインド税務当局との関係が、過去数年間に見られた改善傾向を継続していることを示しており、インドに投資する多国籍企業が直面する不確実性や二重課税のリスクを考慮すると、これは好ましい結果と言えます。

日本は、2025年に締結された二国間APAにおいて、再び2番目に多い締結相手国となり、全体の25%を占めました。これは、米国と日本のAPA制度が成熟していること、そしてAPMAチームと日本の国税庁との豊富な交渉経験に基づくものと見られています。

2025年二国間APA国別申請状況1

2025年二国間APA国別申請状況1

2025年二国間APA国別締結状況

2025年二国間APA国別締結状況

APAの確認対象業種

2025年に締結されたAPAの業種別の割合には、わずかな変化が見られます。卸売・小売業が引き続き最大の割合であり、締結されたAPAの29%を占めていますが、サービス業が製造業を上回り、締結されたAPAの25%を占めました。この2つの業種で締結されたAPAの過半数を占めていますが、両業種ともに割合自体は過去数年と比べると低下しています。これは、APAによってもたらされる税務上の確実性を求める企業のタイプに変化が生じていることを示している可能性があります。

2025年APA締結業種別内訳

2025年APA締結業種別内訳

APAの確認対象取引と検証対象企業

報告書では、確認対象取引と各取引における検証対象企業の種類を示しています。なお、1件のAPAにおいて複数の取引を確認対象とする場合があり、全てのAPAにおいて検証対象企業が存在するわけではありません。

確認対象取引の種類

確認対象取引の種類

検証対象企業の種類

検証対象企業の種類

まとめ

2025年報告書におけるAPAプログラムの結果は以下のとおりです。

  • APAの申請件数は178件、2024年の169件から増加
  • APMAが締結したAPAは110件、2024年の142件から減少
  • 新規の二国間APA合意に要する期間の中央値は、2024年の45.9カ月から2025年の50.0カ月へと長期化
  • 一国内APAの更新合意に要する期間の中央値は、2024年の25.0カ月から2025年の40.4カ月へと長期化
  • APA(二国間および一国内)合意に要する期間の中央値は、2023年の42.0カ月および2024年の33.5カ月から、2025年は44.1カ月へと長期化

今後の影響

米国のAPAプログラムの結果に変化が生じた背景には、いくつかの要因があると考えられます。第1に、2023年および2024年は、APAプログラム開始以来最多の締結件数と過去最高の人員数を擁した、記録的な年でした。

第2に、連邦政府職員数削減の取り組みが、APMAの規模縮小に実際に影響を与えました。案件を担当する人員が減少する一方で、納税者のAPAに対する需要が依然として強いことから、締結件数が減少し、全体の滞留(継続)件数が増加したものと考えられます。この傾向は2025年初頭に予想されていました(本件に関しては2025年3月28日付EY Global Tax Alert「APA report for 2024 shows consistent number of APAs executed in less time」もご参照ください〈英語のみ〉)。

最後に、米国による追加関税の導入および全体的な経済状況が、二国間APA交渉における相手国の判断に影響を与えています。2025年における世界経済の不確実性を背景に、世界各国の税務当局は自国・地域の税収を守るための取り組みを進めてきました。この変化により、権限ある当局がより強硬な姿勢を取るようになり、二国間APAの条件について合意に至るまでに、より長い交渉期間が必要となった可能性があります。

しかし、こうした課題があっても、納税者においては、APAを申請して税務上の確実性を求めることをためらうべきではないものと考えられ、現在のAPA手続きに関する現実的な見通しを確認するために税務アドバイザーに相談することは、引き続き極めて重要です。税務アドバイザーは、数多くのAPA業務への関与を通じて、現在のAPAプログラムにおいて最も適した案件の種類や、APA合意までに要する期間についての知見を備えています。


注記

1本稿に掲載されている円グラフは、告示 2026-08に掲載されたものです。


お問い合わせ先

EY税理士法人

谷津 剛 パートナー

Ernst & Young LLP
金成 龍秀 パートナー
國塩 大晃 シニアマネージャー

※所属・役職は記事公開当時のものです