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2026年8月、出入国在留管理庁は、永住者の在留資格の取消しに関するガイドライン案を公表し、意見募集(パブリックコメント)を開始しました(出入国在留管理庁「永住者の在留資格の取消しに関するガイドライン案に係る意見募集について」〈2026年8月7日アクセス〉)。
今回のガイドラインは最終決定ではありませんが、2024年の入管法改正を受けた制度運用の方向性を示すものであり、今後の実務への影響は小さくないと考えられます。
特に企業としては、下記の点に留意する必要があります。
今回のガイドライン案で最も注目されているのは、改正入管法により永住者の在留資格の取消事由とされた「故意に公租公課の支払をしないこと」の解釈です。ガイドラインでは単なる納付遅れを対象としているわけではありません。入管庁は、支払義務を認識しているにもかかわらず、あえて支払わない場合を問題視しており、本人の事情等を総合的に判断するとしています。
今回の制度のポイントを整理すると次のとおりです。
| 取消事由 | 内容 | 典型例 |
|---|---|---|
| 公租公課の不払い | 税金・社会保険料等を故意に支払わない | 長期間の滞納、脱税等 |
| 入管法上の義務違反 | 在留カード関連義務等への違反 | 更新しない、提示拒否など |
| 特定犯罪による拘禁刑 | 一定の犯罪で拘禁刑を受けた場合(執行猶予が付された場合を含む。) | 詐欺、窃盗、恐喝等 |
ガイドライン案では、公租公課とは、広く公共の目的で義務的に徴収される性質のものであり、以下のようなものなどとされています。
① 所得税
② 住民税
③ 固定資産税
④ 国民健康保険の保険料
⑤ 健康保険の保険料
⑥ 国民年金の保険料
⑦ 厚生年金保険の保険料
一方、以下に挙げるものは公租公課に含まれていません。
① 交通違反による罰金・反則金
② 富士山登山料
③ 各種利用料
ガイドライン案では、「故意に公租公課の支払をしないこと」という取消事由に該当すると想定されるケース、該当しないと想定されるケースが挙げられています。これらを通じていえる重要なポイントは、「払えない」のではなく「払う意思がない」と判断される場合には、取消しの対象となり得るという点です。
① 長期間滞納して所在不明
② 督促を受けても相談しない
③ 納付意思を示さない
④ 分納約束を何度も破る
⑤ 脱税で有罪判決
⑥ 財産隠しなど徴収逃れ
他方で、次のような事情は考慮されると明記されており、ガイドライン案では、次のようなケースでは、取消し対象とならない可能性が高いといえます。
① 病気
② 災害
③ 失業
④ DV被害
⑤ ハラスメントによる離職
⑥ 分納制度を利用している
⑦ 猶予措置を受けている
「取消し(在留不可)」と「職権による在留資格変更」は別です。「永住者の在留資格を失えば強制退去」といった見方も一部でみられますが、実際には取消し後の取扱いは一律ではありません。取消事由に該当するとされる場合でも、改正入管法の規定により、とられる措置は段階的になっています。すなわち、ガイドライン案では、取消事由に該当しても、引き続き日本に在留することが適当でないと認める場合を除き、日本への定着性等をみて、「定住者」などへ職権変更することが想定されるとされています。
今回のガイドライン案は、実は企業側にも無関係ではありません。特に以下のケースは注意が必要です。
ガイドライン案では、法人の経営又は管理に実質的に関与している永住者が、法人の納税を意図的に行わない場合も取消事由に該当し得るとされています。
興味深い点として、給与から公租公課が控除されているにもかかわらず会社が納付していなかった場合、永住者本人は取消事由に該当しない例として明示されています。これは外国人社員保護の観点から重要なメッセージといえます。
海外赴任中の住民税や社会保険の手続に誤りが生じるケースは珍しくありません。
今後は、下記の点などをこれまで以上に適切に管理する必要があります。
企業および永住者にとっては、下記の点が重要になります。
今回のガイドライン案は、「永住者の排除」を目的とした制度というよりも、悪質な法令違反への対応を明確化する一方で、日本への定着性や個別事情にも十分配慮するという考え方を示したものと読むことができます。実際、ガイドライン案では、取消事由に該当したとしても直ちに永住者の在留資格を取り消すのではなく、「定住者」などへの職権変更を基本とする考え方が示されています。最終的なガイドラインの内容はパブリックコメントを踏まえて確定される予定ですが、外国人材の受入れが進む中、企業としては「永住者だから在留管理不要」と考えるのではなく、税務・社会保険・在留管理を含めた総合的なコンプライアンス体制を再確認する良い機会といえるでしょう。
EY行政書士法人
木島 祥登 パートナー
※所属・役職は記事公開当時のものです
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