日本の新規上場動向 - 2026年1月~6月

EY新日本有限責任監査法人
企業成長サポートセンター
マネージャー 公認会計士 市川 英史

1. 新規上場市場の概況

2026年上半期の国内株式市場は、日経平均株価の年初終値51,832円でスタートしました。その後、AIブームや企業業績の拡大、海外資金の流入を背景に上昇基調となりました。3月末には一時51,000円台まで下落したものの、その後は徐々に回復し、6月には中東情勢の改善や原油価格の下落を受けて史上最高値を更新し、6月最終日の終値は70,062円となりました。

このような市場環境の中、新規上場企業数は17社となり、前年同期(2025年上半期)と比較して11社減少しました。市場別に見ると、全体の64.7%にあたる11社がグロース市場に上場しており、新興市場合計で全体の約3分の2を占めています(表1)。

表1 最近5年間(上半期)の市場別新規上場企業数

表1 最近5年間(上半期)の市場別新規上場企業数
(注1)東証(1部、2部、マザーズ、JASDAQスタンダード)及び名証セントレックスについては2022年1月から4月3日の実績となっています。
(注2)対象期間に新規上場実績のある市場のみを上記に記載しています。
(注3)東証と同日に他の市場に上場している場合は、東証の実績に含めています。

2. 新規上場企業データの分析

(1) 業種別新規上場企業数

業種別では、情報・通信業が7社(前年同期8社)、サービス業が4社(前年同期10社)となりました。それぞれ新規上場企業全体の41.2%、23.5%を占めており、前年同期と同様、他の業種との社数の差が見られます(表2)。

表2 2026年上半期の業種別新規上場企業数

表2 2026年上半期の業種別新規上場企業数

(2) 本社所在地別新規上場企業数

本社所在地別では、全体の76.5%にあたる13社が東京都に本店を置いており、依然として東京都への集中が見られます(表3)。また、本店所在地が東京都以外である場合でも、上場市場は東証に集中しています。

表3 2026年上半期の本社所在地別新規上場企業数

表3 2026年上半期の本社所在地別新規上場企業数

(3) 上場直前期の売上高

直前期の売上高の推移を見ると、売上高50億円未満の企業が全体の過半を占める状況が継続しています。2026年上半期においても、売上高10億円未満の企業が2社(11.8%)、10億円以上50億円未満の企業が7社(41.2%)でした(表4)。一方、売上高200億円以上の企業は、直近4年間では毎年10社程度見られましたが、2026年上半期においては、グロース市場に上場した1社のみとなっています。

表4 最近5年間の直前期 売上高

表4 最近5年間の直前期 売上高

(4) 赤字上場企業数

赤字上場(直前期の当期純利益が赤字で上場した会社)の推移を見ると、IPO全体に占める赤字上場案件の割合は、概ね25%程度で推移しています。2026年上半期では、グロース市場に上場した3社のみが赤字であり、その割合は17.6%となりました。赤字上場企業は減少傾向にあることがうかがえます(図1)。

赤字上場案件の減少は、投資家が将来の成長可能性に加えて、黒字化までの道筋やキャッシュ・フロー創出力をより厳しく見極めるようになっていることを示唆しています。特にグロース市場を目指す企業においては、先行投資による赤字であっても、ユニットエコノミクス、顧客継続率、粗利率の改善など、収益性改善に向けた具体的な指標を提示することが、上場時の評価形成において重要になっていると考えられます。

図1 最近5年間の赤字上場(直前期の当期純利益が赤字)

図1 最近5年間の赤字上場(直前期の当期純利益が赤字)

(5) 上場時の時価総額

時価総額(公開価格ベース)の推移を見ると、昨年度から時価総額50億円未満の企業の構成割合は減少傾向にあります。2024年度は全体の39.5%を占めていましたが、2025年度は30.8%、2026年上半期では23.5%となっています(表5)。一方、時価総額50億円以上100億円未満の企業の構成割合は高まっており、全体として時価総額のレンジが上方にシフトしている傾向がうかがえます。なお、2026年上半期に公開価格ベースの時価総額が最も高かったのは、GO株式会社の1,864億円でした。

時価総額50億円未満の小型IPOが減少している点は、グロース市場の上場維持基準の見直しや、上場後の企業価値向上への期待を踏まえ、一定規模に達するまで上場時期を慎重に見極める企業が増えていることを示していると考えられます。今後は、上場時の時価総額だけでなく、上場後に市場から継続的に評価されるための成長投資、ガバナンス、開示体制の整備が一層重要になると考えられます。

表5 最近5年間の時価総額(公開価格ベース)

表5 最近5年間の時価総額(公開価格ベース)

(6) 初値の状況

初値の公開価格に対する比率の推移を見ると、直近4年間では、概ね7割から8割程度の企業が公開価格を上回る初値をつけています(図2)。しかし、IPO銘柄に対する投資家の慎重な見方の影響を受け、2026年上半期に初値が公開価格を上回った企業は、17社中9社(52.9%)にとどまりました。

図2 最近5年間の初値の状況(対公開価格)

図2 最近5年間の初値の状況(対公開価格)

(7) オファリング総額

オファリング総額の推移を見ると、直近4年間では、オファリング総額が50億円未満となる案件が全体の70%超を占めています(表6)。なお、2026年上半期で最も多額であったのはGO株式会社であり、公募を伴わないグローバル・オファリングを実施し、売出総額886億円の大型IPOとなりました。

表6 最近5年間のオファリング総額(公募売出額)

表6 最近5年間のオファリング総額(公募売出額)

(8) 監査法人別新規上場企業数

監査法人別では、EY新日本有限責任監査法人、有限責任監査法人トーマツ、PwC Japan有限責任監査法人がそれぞれ1社(5.9%)にとどまりました。一方で、中小規模等のその他の監査法人の割合は大幅に増加しており、そのうち太陽有限責任監査法人が4社(23.5%)となっています(表7)。新規上場プロセスにおいて、これらの監査法人が担う役割が大きくなってきていることがうかがえます。

表7 最近5年間の監査法人別新規上場企業数

表7 最近5年間の監査法人別新規上場企業数

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