EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
EYではサステナビリティ開示・保証等に関連したグローバル動向の最新情報を公表しています。
今月号では、サステナビリティ報告及び開示に関する動向にて、カリフォルニア州における気候開示規制(SB253/SB261)の進展、ISSBによる自然関連開示についての協議、EUタクソノミー規則第8条に関するテクニカルアドバイス、「スポットライト」にて産業戦略とグリーン・トランジションの整合を取り上げ、日本企業の経営戦略にも影響するグローバル動向を解説しています。
当記事はEY Globalより2026年4月9日(日本時間)に配信されたPublic Policy Sustainability Bulletinの日本語翻訳になります。原文の配信を希望される方はこちらよりご登録ください。
2月25日と26日、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)は2月の会議(*1)を開催し、生物多様性・生態系及び生態系サービス(BEES)に関する基準設定プロジェクトの名称を自然関連開示プロジェクトへ変更することに合意しました。審議会では、自然関連リスク(物理的リスク及び移行リスクの双方を含む)などの中核的な用語や概念について議論され、一部は正式に定義し、その他は記述により説明することが合意されました。さらに、審議会は、気候関連のリスク及び機会と自然関連リスク及び機会とのつながりについて、追加的なガイダンスを提供することを暫定的に決定しました。ISSBは、自然関連開示に関する公開草案を本年10月に公表する意向を示しています。
3月26日、ISSBは、優先度の高い3つのSASBスタンダード(農産物、食肉・家禽及び乳製品、電気事業者及び発電事業者)に対する修正を提案する公開草案(*2)を公表しました。本修正案は、産業別指標、開示トピック及び補足的なテクニカルガイダンスの強化を通じて、国際的な適用可能性を高め、他のサステナビリティ関連基準及びフレームワークとの相互運用可能性を支援することを目的としています。これらの提案は、ISSBが継続的に進めている基準強化プログラムの一環であり、意見募集は2026年7月24日に締め切られます。
3月20日、英国金融行為規制機構(FCA)は、一定の上場企業に対し、2027年1月1日以降開始する会計期間から、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に基づく既存の要求に代えて、英国サステナビリティ報告基準(UK SRS)に基づく報告を求める提案に関する協議を終了しました(*3)。同提案では、スコープ3を除く気候関連開示を義務化するとともに、スコープ3排出量及びより広範なサステナビリティ開示(気候以外)について「コンプライ・オア・エクスプレイン」の要件を導入することが示されています。FCAは、改訂後の英国上場規則を2026年秋に最終化する見込みです。
ここ数か月にわたり、複数の法域においてISSB基準に整合したサステナビリティ報告規則の導入計画が進展しています。先月号で取り上げたとおり、韓国(*4)及びインドネシア(*5)は、これらの規則の実施に向けたロードマップを公表しました。さらに、3月4日、フィリピン証券取引委員会が、ガバナンス、統制及びデータシステムを強化し、高品質な開示を実現するため、ISSBと整合したサステナビリティ報告フレームワークの実施を支援するための能力開発プログラム(*6)を開始しました。
加えて、2月25日、エチオピア会計監査委員会(AABE)が、ISSB基準に整合した段階的な開示フレームワークに関する意見募集(*7)を開始しました。また、2月23日には、ナイジェリアの財務報告評議会が、IFRS S2号の最近の修正を反映した導入ロードマップの改訂(*8)を最終化しました。さらに、2月9日にはジンバブエ公認会計士監査委員会が、提案されている実施アプローチを示すロードマップ(*9)を公表しました。
2月24日、IFRS財団は、ISSBに整合した基準の導入に向けた準備状況を評価することを支援するための法域別準備状況評価ガイド及び付随するツール(*10)を公表しました(*11)。本ガイドは、既に導入を進めている法域の経験を踏まえ、報告エコシステム、企業の準備状況及び支援インフラについて、体系的な評価を提供しています。これらの資料は、IFRS財団の規制導入プログラム(*12)の一環であり、より広範な透明性向上の取組みを補完するものです。
3月3日、欧州委員会は、EUタクソノミー規則第8条(*13)に基づく開示委任規則(*14)に関して、欧州監督機関(ESA)(*15)に対しテクニカルアドバイスを求める要請(*16)を発出しました。これは、2026年のオムニバス委任規則を踏まえたものであり、投資家にとっての有用性及び相互運用可能性を維持しつつ、非常に専門的で複雑な報告分野の簡素化を目的としています。最終的なアドバイスは、2026年10月までに公表される予定です。
2月26日、カリフォルニア州大気資源局(CARB)は、気候関連財務リスク法(SB 261)(*17)及び気候企業データ説明責任法(SB 253)(*18)の2つの気候関連開示法を施行する(*19)規則を採択しました。年間売上高が10億米ドルを超える企業はSB 253の適用対象となり、2026年8月10日までにスコープ1及びスコープ2排出量の報告が求められ、スコープ3排出量の報告は2027年から開始される予定です。SB 253は現在、法的異議申立ての対象となっていますが、裁判所はその施行を停止しておらず、CARBは規則策定を引き続き進めています。3月23日に、CARBはワークショップ(*20)を開催し、スコープ1及びスコープ2の報告期限について議論するとともに、SB 253に基づく将来のスコープ3報告規則の構成に関する意見募集が行われました。これは、2月に基本的な定義及びタイムラインが承認されたことに続く、カリフォルニア州における排出量開示規制の制度設計の第2段階に相当するものです。
SB 261は、カリフォルニア州で事業を行い、年間売上高が5億米ドルを超える企業に適用されます。最初の開示は、当初2026年1月までとされていましたが、係争中の訴訟が続いているため、裁判所により本法の施行は停止されています。
3月2日、アルゼンチン証券委員会(CNV)は、証券報告の枠組みにサステナビリティ情報開示を正式に組み込みました。CNVの決議 (*21)により、企業のサステナビリティ方針及び指標の開示、又はそれらが存在しない場合にはその合理的な説明を行うことを求めています。新たな要件は、公募制度(Public Offering Regime)の下で既に登録されているすべての事業体及び現在認可を申請中の事業体に適用されます。
3月13日、日本サステナビリティ基準委員会(SSBJ)は、IFRS S2号に対する修正(*22)を反映し、スコープ3排出量の要件を改正しました(*23)。今回の改正には、投資及び融資に関する開示の範囲を限定できる柔軟性や、世界産業分類基準(GICS)以外の産業分類システムの使用を認めることが含まれています。これらの変更は、ISSB基準との機能的な整合性が確保し、国際的に一貫した報告を支援するためのものです。
3月12日、ニュージーランドの外部報告審議会(XRB)は、サステナビリティ保証業務及び倫理に関する新基準を公表しました(*24)。これにより、国際監査・保証基準審議会(IAASB)及び国際会計士倫理基準審議会(IESBA)による新たな国際的ベンチマークと整合する、恒久的な枠組みが確立されました。本基準は、2026年12月15日以降に開始する報告期間に適用されます。
3月24日、国際自然保護連合(IUCN)(*25)は、世界貿易機関(WTO)の第14回閣僚会議において、持続可能な開発を中核原則として組み込むようWTO閣僚に要請しました。IUCNは、昆明・モントリオール生物多様性枠組みを含む生物多様性の目標と整合した貿易政策の必要性を強調しました。また、多国間環境協定との整合性強化、環境に有害な補助金の改革、及びネイチャーポジティブな貿易への支援強化を求めており、特に開発途上国や小島嶼開発途上国(SIDS)への支援の重要性を指摘しています。
3月20日、欧州委員会は、2030年以降の再生可能エネルギー(*26)及びエネルギー効率(*27)に関する法的枠組みの策定に向けて、2件の意見募集を開始しました。根拠に基づく情報提供の照会(calls for evidence)の期限は4月16日、意見募集への回答(consultation responses)の期限は6月12日とされています。再生可能エネルギーに関する意見募集では、温室効果ガス(GHG)排出量を90%削減するというEUの2040年目標達成に向け、各国別目標を維持するか、EUレベルのクリーンエネルギー目標を採用するかなどの選択肢が検討されています。一方、エネルギー効率に関する意見募集では、エネルギー効率指令(EED)の実効性を評価するとともに、投資の加速、エネルギー需要及びピーク負荷の削減、並びに電化の促進を目的として、制度の簡素化や関連法令との統合の可能性が検討されています。
3月17日、欧州委員会は、水枠組み指令(*28)の改訂に向けた4週間の根拠に基づく情報提供の照会(calls for evidence)(*29)を開始しました。これは、循環型経済及び重要原材料へのアクセスを妨げている規制上のボトルネックを取り除くことを目的としています。本取組みは、リソースEU行動計画(*30)及び水レジリエンス戦略(*31)を支援するものであり、環境及び健康に関する高い基準を維持しつつ、EUの戦略的自律性の強化を目指しています。利害関係者は、2026年4月14日までに証拠提出を求められています。
2月27日、欧州連合(EU)と南米南部共同市場(メルコスール)は、工業製品及び農産食品に対する関税削減、政府調達市場の開放、並びにグリーン・トランジションに不可欠な重要原材料へのアクセス強化を目的とした貿易協定(*32)について最終合意に達しました。本協定は、世界とのパートナーシップを強化しつつ、農家や消費者への影響に配慮し、環境基準を維持することを目指し、牛肉や家禽肉などのセンシティブ品目の輸入を制限するセーフガードを含みます。また、持続可能性に関するコミットメントとして、生物多様性の保全、労働者の権利、及びパリ協定との整合が盛り込まれています。
3月12日、サステナブル・グリーンファイナンス研究所(SGFIN)サステナビリティ・サミットにおいて、インドラニー・ラジャ氏は、シンガポール・グリーンプラン2030(*33)の下で実施される施策を発表しました(*34)。これには、自然に基づく解決策、建築物の脱炭素化、及び沿岸保護への投資方針が含まれます。政府は、炭素税の段階的引上げ、気候関連開示の義務化範囲拡大、国債及び政府系グリーンボンドの発行継続を確認しました。さらに新たな人材施策として、ESG分野における法務人材の出向、サステナブルファイナンス研修、及び金融サービス業務実施者向けの能力向上プログラムなどを盛り込みました。これらの取組みは、金融、法務、会計の各分野においてサステナブルファイナンスと気候リスクに関する専門性を強化することを目的としています。
主要経済圏は、エネルギー転換の要請と競争力維持の整合化を進めています。EU及び中国の事例を見ると、政策担当者は、経済的レジリエンスと排出削減の双方を追求する、政策支援を伴う市場主導型産業変革へと移行しています。
3月10日、欧州委員会はクリーンエネルギー投資戦略(*35)を公表し、エネルギー転換の実現には2030年まで年間6,600億ユーロ、2031年から2040年にかけては年間6,950億ユーロの投資が必要であると見積りました。本戦略では、民間資金の活用の必要性を強調するとともに、今後3年間で750億ユーロ超の欧州投資銀行(EIB)による資金供給を含む、的を絞った公的資金での補完が強調されています。戦略の主な目的には、送電網運営者の資金調達へのアクセス改善、新興技術及びクリーン技術に対するリスク排除のメカニズム、並びに公共政策と投資家ニーズを整合させるためのエネルギー転換投資評議会の新設が含まれています。
さらに、3月4日、欧州委員会は、EUの製造業を強化し、低炭素なEU製技術の需要拡大及び産業分野におけるクリーンな生産手法の導入を支援することを目的とした産業加速法案(IAA)(*36)を提案しました。本提案では、戦略的分野における公共調達に関して、「Made in EU」及び低炭素に関する的を絞った要件を導入するとともに、エネルギー集約型産業の脱炭素化プロジェクトに関するデジタル化された許認可手続の簡素化が盛り込まれています。またIAAは、重要産業分野における大規模な外国投資に対し、EU域内での価値創出、イノベーション及び高品質な雇用を確保するためのセーフガードを設けています。本提案は、欧州議会及びEU理事会による審議を経て採択及び発効する予定です。
一方、3月13日、中国では第15次五か年計画(2026~2030年)(*37)が承認され、高品質な発展と現代化に焦点を当てた長期的な政策方針が示されました。同計画では、科学技術イノベーションを通じた新たな質の生産力の育成、伝統産業の高度化、及び新興・未来志向型セクターの推進を優先事項としています。また、クリーンエネルギー、エネルギー効率及び汚染削減に対する取組みを強化するとともに、人口動態の変化による圧力や地域間の不均衡な発展といった構造的課題にも対応し、持続可能で包摂的な長期的成長を確保することを目指しています。
3月14日、より広範な産業戦略を補完する形で、中国の政府当局及び研究機関が「中国地熱産業発展報告書2025」を公表し(*38)、2035年までの成長目標を示しました。中国は現在、世界の地熱暖房市場を先導しており、その規模は2025年時点で16億5,000万平方メートルの地熱暖房・冷房能力に達し、さらに2035年までに30億平方メートルへ拡大することが見込まれています。また、同報告書では地熱発電について500MWの導入目標を掲げており、高温地熱資源の新規発掘、パイロットプラントの立ち上げ、及び深部地熱に関する国家重点研究所の設立により達成する見込みです。これらの施策は、クリーンエネルギー源の多様化を進めるとともに将来的な輸出可能性のある新興技術分野につき国内での専門性蓄積を図るという中国の戦略を反映しています。
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