EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
EYではサステナビリティ開示・保証等に関連したグローバル動向の最新情報を公表しています。
今月号では、IAASBによるISSA 5000の重要性の適用に関するFAQの公表、CARBによるスコープ1及びスコープ2排出量の報告期限の延期の提案、欧州委員会によるCS3Dガイドライン策定案の意見募集の開始、「スポットライト」にて2026年12月の国連水会議に向けた機運の高まりや、水政策の進展を取り上げ、日本企業の経営戦略にも影響するグローバル動向を解説しています。
当記事はEY Globalより2026年7月21日(日本時間)に配信されたPublic Policy Sustainability Bulletinの日本語翻訳になります。原文の配信を希望される方はこちらよりご登録ください。
6月25日、国際監査・保証基準審議会(IAASB)は、国際サステナビリティ保証基準(ISSA)5000の適用を支援するための「よくある質問(FAQ)」(※1)を公表しました。このガイダンスは、サステナビリティ保証における重要性の概念に焦点を当てており、定性的及び定量的開示の適用並びにダブル・マテリアリティの文脈における適用を含んでいます。本公表物は、保証業務実施者間の一貫性を促進することを目的としており、既存のISSA 5000実施支援資料を補完し、サステナビリティ保証フレームワークのグローバルな導入を支援するものです。
6月24日、カリフォルニア州大気資源局(CARB)は、企業温室効果ガス(GHG)報告規則に基づくスコープ1及びスコープ2排出量の報告期限を3か月延期する案を公表しました(※2)。規制の最終承認後、報告期限は2026年8月10日から2026年11月10日に変更される予定であり、対象企業に追加の準備期間を提供することを目的としています。また、CARBは本規則について一部解釈の明確化を行う予定です。
6月22日、欧州銀行監督機構(EBA)は、環境・社会・ガバナンス(ESG)リスク並びに株式エクスポージャー及びシャドーバンキングエクスポージャーを対象とするよう第3の柱「開示フレームワーク」を改訂する最終版の導入技術基準(ITS)案を公表しました(※3)。自己資本要求規則に基づき導入された要件を最終化するものであり、このITSは欧州連合(EU)が進める広範な簡素化の取組及び企業サステナビリティ報告指令(CSRD)改革と整合しています。本フレームワークでは、大規模金融機関に対するデータ項目数を37%削減するとともに、比例原則に基づく「コア+補足」方式を導入しています。2026年12月31日からの適用が見込まれています。
6月12日、欧州委員会は、企業サステナビリティデュー・ディリジェンス指令(CS3D)の実施を支援するガイドライン策定に関する意見募集を開始しました(※4)。これらのガイドラインは、企業、当局及びステークホルダーが事業活動及びバリューチェーン全体におけるデューディリジェンス義務を適用する際の支援を目的としており、人権及び環境への負の影響の特定、防止及び軽減を含みます。本意見募集は2026年7月24日まで実施されています。
6月5日、英国金融行為規制機構(FCA)は、ESGルールブックの改革案に関する意見募集を開始しました(※5)。本提案では、投資商品の商品レベルにおける気候関連報告の簡素化を目的としており、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)により確立された商品レベルの報告要件の廃止が提案されています。さらに、リテール投資家に対し、より明確で意思決定に有用な情報を提供するとともに、コンプライアンス費用を削減し、年間約2,000万ポンドのコスト削減を見込んでいます。本意見募集は2026年7月13日まで実施され、サステナビリティ報告要件の簡素化に向けた広範な取組の一環となっています。
6月4日、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)は、LEAPフレームワークを用いて自然関連リスク評価に環境犯罪を組み込むためのガイダンスを含むディスカッション・ペーパー案を公表しました(※6)。本意見募集は2026年8月7日まで実施されており、環境犯罪が事業活動、バリューチェーン及び金融システム全体において重要性があるリスクとして認識されつつあることを反映しています。このガイダンスは、不法な環境関連活動を財務及び事業上のリスク要因として位置付けることでTNFDフレームワークを拡張するものです。
6月4日、国際標準化機構(ISO)は、金融機関におけるネットゼロ移行計画に関する新基準であるISO 32212を公表しました(※7)。このフレームワークは、金融活動全体への移行計画の統合に関する要求事項及び推奨事項を定めており、脱炭素化に向けた資本配分を支援します。本基準は既存の移行計画及びサステナビリティ・フレームワークを補完するものであり、金融機関が気候変動への配慮を戦略及びガバナンスに組み込むことへの期待の高まりを反映しています。
5月26日、IFRS財団及びグローバル・レポーティング・イニシアティブ(GRI)は共同声明を通じて協力関係を再確認し(※8)、ISSB基準及びGRI基準を組み合わせて利用することで、投資家及びより広範なステークホルダー向けの相互補完的な開示を実現できることを明確にしました(※9)。2022年に開始された協働を基礎として、本取り組みは共通する開示事項の整合を図ることで重複を削減し、報告フレームワーク間の相互運用可能性を向上させることに重点を置いています。その目的は、より円滑かつ包括的なグローバル・サステナビリティ報告システムを支援することです。
5月26日、不平等・社会関連財務情報開示タスクフォース(TISFD)は、社会及び不平等に関する開示フレームワークのベータ版(v0.1)を公表しました(※10)。このフレームワークは、人に関連する影響、リスク及び機会を組織が識別し報告することを支援するための概念的基盤及び開示推奨事項案を示しています。ベータ・フェーズの一環として、2026年7月31日まで意見募集が実施されています(※11)。今後のバージョンでは指標及び適用ガイダンスが追加される予定であり、サステナビリティ報告における社会的側面への関心の高まりを反映しています。
5月26日、ニュージーランド金融市場庁は、2年目となる義務的な気候関連報告書のレビューに基づく「2026年気候関連開示インサイト報告書」(※12)を公表しました(※13)。この報告書では、ガバナンス、リスク管理及び温室効果ガス開示の明確化並びに報告構成の改善など、報告成熟度の向上が示されています。一方で、物理的気候リスク及びその影響の評価・開示には依然として課題があると指摘しています。これらの結果は、気候関連開示が初期導入段階から脱し、投資家やその他のステークホルダーのより適切な意思決定を支援できる成熟した開示へと移行しつつあることを示しています。
5月18日、オーストラリア証券投資委員会(ASIC)は、2026年6月30日を期末とする報告サイクルに先立ち、新たな義務的報告制度の下で作成された最初のサステナビリティ報告書に関する初期レビューの結果を公表しました(※14)。ASICは、開示の量及び質の向上を認める一方で、前提条件の明確性、気候関連目標の取扱い及び免責事項の使用などの分野に課題があることを指摘しました。これらの観察結果は、企業が報告実務の改善を継続する中で、より具体的で意思決定に有用な情報が必要であることを示しています。
5月18日、オーストラリア政府は2026年度連邦予算の一環として、生産性向上及び規制負担軽減を目的とした複数の改革案を提案しました(※15)。これらの改革案には、収益及び総資産の閾値をそれぞれ1億豪ドル及び5,000万豪ドルへ引き上げる提案が含まれており、その結果、監査済み財務報告書及びサステナビリティ報告書の作成、提出が求められる企業数が実質的に減少します。
また政府は、「過大なコストや労力(undue cost or effort)」といった重要概念が実務上どのように適用されるかを明確化すること、保証の設定を適切な水準となるよう調整すること、及びサプライヤーに求める情報の範囲をより明確にすることなど、中核的なサステナビリティ報告要件を維持しながら負担軽減を図る改革について協議を行う方針も示しました。
6月25日、中国本土は第15次五カ年計画(2026年~2030年)の一環として、2030年までに「クリーン・低炭素・安全・高効率」なエネルギーシステムを構築する計画を公表しました(※16)。この計画では、非化石エネルギーの割合を総エネルギー消費量の25%まで引き上げるとともに、風力・太陽光による発電設備容量を総設備容量の50%超とすることを目標としています。
また、本計画はエネルギー安全保障、市場改革及び技術的自立を優先事項として掲げており、2030年までの排出量ピークアウト及び2060年までのカーボンニュートラル達成という中国の広範な「デュアルカーボン目標」を強化するものとなっています。
6月23日、第30回から第32回までの気候変動枠組条約締約国会議(COP)の議長国(ブラジル、オーストラリア、トルコ、エチオピア)と、各国政府および国際機関による連合は、世界経済全体における電化を加速するための「Electrify Now」イニシアティブを立ち上げました(※17)。
このプラットフォームは、クリーンエネルギー導入の拡大、電力系統(グリッド)インフラの強化及び化石燃料への依存低減を目的としています。本イニシアティブは、エネルギー安全保障の強化と、脱炭素化の中核手段としての電化に対する政策的関心の高まりを反映しており、2035年までに最終エネルギー需要の35%を電化するという世界目標に向けた議論も進められています。
6月23日、国連(UN)事務総長アントニオ・グテーレス氏は、メタン排出削減に向けた行動を呼びかける声明を発表(※18)し、メタンがこれまでの地球温暖化の約3分の1の要因になっていることを強調しました。
このイニシアティブでは、化石燃料、農業及び廃棄物の各分野における9つの優先行動が示されており、その中には日常的なフレアリング(原油・天然ガスの生成過程で発生する余剰ガスの焼却処分)の廃止及び廃棄物管理システムの改善などが含まれています。今回の発表は、気温上昇の抑制に向けた短期的かつ費用対効果の高い手段として、メタン排出削減への国際的な関心が高まっていることを示しており、長期的な炭素排出削減戦略を補完する取り組みとして位置づけられています。
同日、国連事務総長は新たなAI環境透明性イニシアティブも発表(※19)し、テクノロジー企業に対して、人工知能(AI)システムに伴うエネルギー使用量、水使用量及び土地利用を含む環境フットプリント全体の開示を求めました。また、2030年までにデータセンターを100%再生可能エネルギーで運営することも求めています。
AIインフラの資源集約性に対する懸念の高まりを受けて策定された本イニシアティブは、透明性及び説明責任に関する基準を確立し、政策立案者を支援するとともに、より広範なサステナビリティ及びエネルギー移行の目標との整合を促進することを目的としています。
EBA、2027年EU全域ストレステストに関する協議を実施―初めて気候リスクを導入6月11日、欧州銀行監督機構(EBA)は、2027年EU全域ストレステストに関する方法論案、テンプレート及びガイダンス案を公表(※20)し、提案された枠組みに関する公開協議を開始しました。
このストレステストでは、初めて気候リスクが導入され、専用モジュールを通じて移行リスク及び物理的リスクが組み込まれています。また、データ要件を簡素化することで、堅牢性及び比較可能性を維持しながら報告負担の軽減を目的としています。気候関連の考慮事項をプルデンシャル規制・監督に統合するための取組を前進させるものです。公開協議は2026年7月10日に終了しました。
5月26日、英国・エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)は、簡素化エネルギー消費量及び二酸化炭素排出量に関する報告(SECR)制度(※21)に関する適用後レビュー(PIR)を公表しました(※22)。SECRは、2019年に炭素削減コミットメント・CRCエネルギー効率スキーム(※23)に代わって導入されたものです。
同レビューでは、SECRが企業によるエネルギー使用量及びGHG排出量の報告における透明性と一貫性を向上させたと評価する一方で、制度をさらに簡素化し、行政負担を軽減する余地があることも指摘しており、今後の政策立案に影響を与える可能性があります。
6月5日、カナダ・ケベック州政府は、Finance Montréalと共同で策定したサステナブルファイナンス・ロードマップを公表しました(※24)。
このロードマップは北米で初めてとなるサステナブルファイナンス戦略であり、ケベック州のサステナブルファイナンス・エコシステムの強化、イノベーションの促進及びよりレジリエントかつ持続可能な経済への移行支援を目的としています。また、経済の移行支援、サステナブルファイナンスに関する能力の向上、ならびに官民の関係者による連携した取り組みを通じたケベック州のリーダーシップ強化などの戦略的優先事項を示しています。
6月2日、英国政府は第7次カーボンバジェット案(※25)を公表し、2038年から2042年までの対象期間において、GHG排出量を1990年比で87%削減する目標を示しました(※26)。
この目標は気候変動法(※27)の枠組みに基づくものであり、クリーンエネルギーへの投資及び脱炭素化への推進に向けた中長期的な政策の確実性を提供することを目的としています。また、政府は今回の発表において、ネットゼロへの移行がもたらす経済面及びエネルギー安全保障面での効果も強調しています。
5月21日、英国金融行為規制機構(FCA)は、移行金融パイロットの調査結果を公表(※28)し、気候ソリューション向け資金供給の拡大を阻害するシステムレベルの課題を特定しました(※29)。これには、気候ソリューションの事業化・商業化の成熟度が十分でないこと、利用可能な資本と投資機会との間にミスマッチが存在すること、市場全体における情報や能力の不足があること、などが含まれています
また、FCAはこれらの調査結果を今後の政策立案や市場関係者間の連携強化に活用する方針を示しました。これには、中小企業(SME)による資金調達へのアクセス改善に向けた取組も含まれています。
5月20日、国連総会(UNGA)は、気候変動に関する国家の義務について示した国際司法裁判所(ICJ)の勧告的意見を支持する決議を採択しました(※30)。
この決議は、GHG排出への対処や環境保護が国際法上の法的責任であることをあらためて強調するとともに、気候変動対策と人権保護との密接な関係を指摘しています。これは、国際的な法的枠組みが世界の気候ガバナンス形成において、今後さらに重要な役割を果たしていくことを示唆しています。
5月28日、台湾は、2050年ネットゼロ戦略の一環として、国有金融機関向けESGイニシアティブ・プラットフォームの第3フェーズ(2026年~2028年)を発表しました(※31)。
本プログラムでは新たな炭素削減目標が導入されるとともに、国有金融機関が企業の持続可能な事業活動を積極的に支援することを奨励しています。これまでのフェーズを踏まえ、本イニシアティブは金融セクターによる持続可能なガバナンス支援を促進し、主要産業における低炭素移行を後押しすることを目的としています。
水政策は、気候レジリエンス、産業競争力及び経済安全保障において、ますます重要な位置を占めるようになっています。国連及び国際社会全体が2026年をグローバル水アジェンダ推進にとって重要な年と位置付ける中、各国政府は水政策を地域的なインフラの課題ではなく、戦略的なレジリエンス上の優先課題として再定義しています。最近の国際フォーラムに加え、英国、EU、カナダ及びブラジルにおける動向は、この変化を示しています。
5月には、2つの主要な国際フォーラムが開催され、2026年12月の国連水会議(UN Water Conference)(※32)に向けた機運醸成に寄与しました。これらのフォーラムは、気候変動への適応、経済の安定及び持続可能な成長において、水が中心的な役割を果たしていることを強調しています。5月18日から20日に開催されたグローバルウォーターサミット(Global Water Summit)では、1,200名を超える世界の水分野のリーダーが集まり、気候、エネルギー及び資本に関する制約が高まる中で、いかにして「持続可能な水利用への移行(water transition)を実現するか」について議論しました。プログラムでは、金融、公益事業及び技術などの主要テーマにわたり、投資、イノベーション及びインフラ整備の拡大に焦点が当てられました。特に、民間資本の動員及び大規模プロジェクト・パイプラインの推進が重視されました。
経済協力開発機構(OECD)及び気候変動リスク等に係る金融当局ネットワーク(NGFS)は、5月21日から22日にかけて、第13回水資金調達に関するラウンドテーブル(Roundtable on Financing Water)(※33)を開催しました。この会合には政策立案者、中央銀行及び金融機関が参加し、水関連リスクがマクロ金融面に及ぼす影響について検討しました。議論では、水不足、水資源の変動及び水質に関するリスクが金融の安定性及び経済レジリエンスにどのような影響を及ぼし得るか、並びにこれらのリスクをより適切に特定、評価及び対応するための監督及び政策枠組み強化について焦点が当てられました。
EUでは、5月11日に欧州委員会が、改訂EU水関連指令の発効を発表しました(※34)。この改訂では、水枠組み指令 (※35)、環境品質標準指令(※36)及び地下水指令(※37)が見直されています。この改訂は、EUの水レジリエンスを強化することを目的としており、汚染物質リストの見直し、規制対象物質の拡大及び汚染による累積的な影響を評価するための影響ベースのモニタリングの導入が含まれています。また、これらの改訂は、高度処理技術及び水効率の高いプロセスへの投資を促進し、水質をEUグリーンディール及び汚染ゼロ行動計画の中核要素として位置付けています。
またEUでは、5月8日に欧州中央銀行(ECB)が、気候関連及び自然関連リスク管理に関する好事例集の改訂版を公表しました(※38)。これは特に、水に関連する物理的リスク及び自然関連リスクとの関連性が高い内容となっています。60を超える金融機関の実務を基に作成されたこの資料では、銀行による物理的リスク及び自然関連リスクの評価におけるギャップが指摘されており、ECBはこれらのリスクが過小評価されている可能性が高いと考えています。このガイダンスは、ストレステスト、シナリオ分析及び移行計画などの分野において、これらのリスクをより深く反映することを促しており、自然関連リスクの重要性が高まっていることを強調しています。
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