EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
EYではサステナビリティ開示・保証等に関連したグローバル動向の最新情報を公表しています。
今月号では、IPBESのビジネスと生物多様性評価報告の公表、アメリカのGHGに関する危険認定の撤廃、EUオムニバスI採択、「スポットライト」では米・EU・日本の協力加速などを含めた重要鉱物施策を取り上げ、日本企業の経営戦略にも影響するグローバル動向を解説しています。
当記事はEY Globalより2026年3月9日(日本時間)に配信されたPublic Policy Sustainability Bulletinの日本語翻訳になります。原文の配信を希望される方はこちらよりご登録ください。
2月9日、生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES)は、企業の生物多様性へのインパクト及び依存度を評価するための方法論的枠組みである、「ビジネスと生物多様性評価報告書」を公表しました(*1)。この報告書は、すべての企業が自然に依存し、自然にインパクトを及ぼしているにもかかわらず、有害な資金の流れが保全への投資を大きく上回っていることを明らかにしています。同時に、企業及び金融機関の間で、自然関連のリスク及び機会をより深く理解しようとする機運が高まっており、これが今後、より効果的な行動の基盤を提供していくことを強調しています。また、本報告書は、ネイチャーポジティブへの移行を支援するために、信頼性と透明性のある企業戦略、事業運営、バリューチェーン及びポートフォリオ全体にわたる即時の行動を求めており、将来の生物多様性関連の基準及び報告枠組みに直接的な示唆を与えることが見込まれています。
1月14日、世界経済フォーラム(WEF)はグローバルリスク報告書2026を公表しました(*2)。同報告書は、世界中の1,300名以上の専門家の見解に基づく調査結果が含まれており、地政学的、経済的、環境的、技術的及び社会的リスクを即時(2026年)、短期から中期(2026年から2028年)及び長期(2026年から2036年)という3つの時間軸で分析しています。分析では、不確実性の高まり、多国間協力の弱体化及び地域経済的な緊張の高まりについて警告しています。短期においては、環境リスクの優先度が低下し、上位10リスクのうち2つを占めるにとどまっていると指摘する一方、長期においては、環境リスクが依然として最も深刻なリスクとして位置づけられ、上位10リスクのうち5つを占めています。本報告書は、複数のショックが同時並行で発生する状況及び体系的なサステナビリティの課題に対処することの複雑性を強調しており、また、WEFが公表した最新のグローバル協力バロメーター(*3)は、こうした課題を克服するため、柔軟かつ地域に根ざしたパートナーシップを通じて新たな形態の国際協力が進化していることを示しています。
2月10日、欧州議会は、1990年比で温室効果ガス排出量を90%削減するという2040年の拘束力を有する目標を定めるEU気候法の改正案を採択しました(*4)。この改正により、各国がこの目標を達成する方法に、より大きな柔軟性が与えられることになりました。例えば、2036年以降の国際的なカーボンクレジットの限定的な使用の許可、削減が困難な排出(hard-to-abate emissions)を相殺するために域内の恒久的炭素除去の活用を認める可能性、並びに進捗評価を隔年で実施することが含まれます。これらの規定は、EUが2050年までに温室効果ガス排出量ネットゼロを達成するという法的義務との整合性を維持しつつ、競争力に関する懸念に対応することを目的としています。
2月12日、米国環境保護庁(EPA)は、温室効果ガス(GHG)が公衆衛生及び環境に脅威をもたらすとする科学的判断であり、米国大気浄化法(*5)に基づく連邦気候規制の法的根拠となっていた2009年の危険認定(Endangerment Finding)(*6)を廃止する最終規則(*7)を発表しました。この廃止により、GHG排出を規制する連邦政府の権限は縮小されます。この規則は、将来の排出規制基準及び米国連邦気候政策に影響を及ぼすと見込まれており、また、連邦並びに州の裁判所及び議会において法的及び立法的な異議申立てを促すことも予想されています。この点に関し、十を超える環境及び公衆衛生団体による連合がすでにEPAに対して訴訟を提起しています。
1月29日、マレーシア中央銀行と証券規制当局は、ASEANタクソノミーと整合した国内におけるサステナブルファイナンスタクソノミーを策定する方針を発表しました(*8)。この取組みは、気候及びネイチャーポジティブな活動に向けた資本の動員を促進するため、統一された科学的根拠に基づく分類体系を構築することを目的としています。次の段階として意見募集が予定されており、これはマレーシアのサステナブルファイナンスエコシステムの強化及び地域における相互運用可能性の向上に向けた重要な一歩となります。
2月16日、グローバル・レポーティング・イニシアティブ(GRI)は、「生物多様性への影響を解き明かす:GRIスタンダードを用いた企業報告のための実践ガイド」を公表しました(*9)。本ガイドは、新たなGRI 101生物多様性スタンダードについて説明しており、このスタンダードは2024年及び2025年に14社によって試験的に採用され、2026年1月から一般に適用可能となったものです。ガイドでは、企業がどのように生物多様性へのインパクトを評価し、自然関連情報をガバナンス及び意思決定に統合し、地域特有のデータを評価し、サプライチェーン全体にわたるデータ収集の課題に対応できるかを解説しています。本ガイドは、IPBESの「ビジネスと生物多様性評価報告」を踏まえたもので、信頼性が高く意思決定に有用な生物多様性報告に対する市場の関心が高まっていることを反映しています。
2月25日、英国ビジネス貿易省(DBT)は、任意で(全部又は一部を)適用できる英国サステナビリティ報告基準(UK SRS)S1号及びS2号を公表しました(*10)。これらの最終版のUK SRSには、2025年6月の意見募集を踏まえた修正が盛り込まれており、その内容はDBTの回答文書(*11)において説明されています。DBTが進めるより広範な企業報告の近代化(MCR)に関する意見募集では、UK SRSに基づく民間企業に対する報告要件の必要性が検討される予定であり、今年後半に公表予定の意見募集のための協議文書に詳細が含まれる見込みです。
2026年1月30日、英国DBTは、英国におけるサステナビリティ保証に関し、国際的に認められた複数のサステナビリティ関連報告フレームワークに整合して作成される任意のサステナビリティ関連開示に対して、任意の監督制度を設ける計画を発表しました(*12)。この制度は英国財務報告評議会(FRC)によって運営され、業務実施者はFRCの適格要件を満たすことで参加できるようになります。2026年半ばまでに、この非立法の暫定的な制度が設けられる予定であり、2027年1月1日から開始する報告年度の前までに、暫定的な公開登録簿(public register)が稼働する見込みです。政府は、制度の任意性を維持しつつ、後日法律を制定して制度を正式なものとする意向です。この制度は、ガイダンスの提供、能力開発、認知されたサステナビリティ報告フレームワークとの整合を通じて、高品質な保証業務を支援することも目的としています。
2月24日、EU理事会はオムニバスIに関する合意を採択しました(*13)。オムニバスIは、サステナビリティ関連情報の報告を義務付ける2つの法令である企業サステナビリティ報告指令(CSRD)及び企業サステナビリティ・デューディリジェンス指令(CS3D)を改訂するものです。これらの改訂の支持者は、報告が必要となる企業数の減少、報告すべき情報量の削減、及び対象企業が報告義務を履行しなければならない期日の後ろ倒しにより、報告負担が軽減されると述べています。改訂案の文書は2月26日にEU官報で公表され(*14)、3月18日に施行されます。加盟国は、調和レベルに関する第4条を除き、12か月の導入期間が与えられています。第4条については2028年7月26日までの遵守が求められます。
2月17日、オランダ金融市場庁(AFM)は、CSRD保証業務の堅牢性を強化するための4つのガイドラインを公表しました(*15)。これらのガイドラインは、CSRD保証に関する堅牢な品質管理システムの維持、有能な保証チームの確保、クライアントに対する理解の向上、保証リスク評価及び重要性に応じて手続を設計する、という4つの主要な柱に焦点を当てています。AFMは、これらのガイドラインの公表を通じて、信頼性が高く、理解しやすく、一貫性のあるサステナビリティ報告に資するCSRD保証を推奨しています。
2月25日、韓国は、環境・社会・ガバナンス(ESG)に関する開示義務化の導入計画を示すロードマップ(*16)の草案を公表しました。
意見募集期間は3月31日までであり、KOSPI上場(公開)企業のうち大企業を対象に2027年度から段階的な開示が開始される見込みです。また、スコープ3排出量の開示は2030年度からの実施が予定されています。
さらに、韓国サステナビリティ基準審議会(KSSB)は、韓国サステナビリティ開示基準第1号及び第2号(IFRS S1号及びIFRS S2号に整合)を承認しました(*17)。
2月10日、インドネシアはサステナブルファイナンスの実施に関する規則案(*18)を公表しました。この規則案では、上場企業及び金融セクター事業体を対象とした段階的なサステナビリティ報告要件が提案されており、最大規模の事業体については2027年度から開始される予定です。また、この枠組みは、インドネシア版IFRS S1号及びS2号に相当するPSPK 1号及びPSPK 2号と開示内容を整合させ、既存の国内サステナビリティ報告義務と並行して運用される予定です。この提案は、国内の報告をグローバルなベースライン基準と調和させる方向への、インドネシアの継続的な動向を示しています。
1月30日、上海証券取引所(SSE)(*19)、深圳証券取引所(SZSE)(*20)及び北京証券取引所(BSE)(*21)は、上場企業のサステナビリティ報告を標準化するための包括的な技術ガイドラインを公表しました。このガイドラインは、中国が2026年に初めて義務的なESG評価期間へ入るにあたり、主要な環境開示の方法論を体系化したものです。取引所によれば、この協調的アプローチは、開示の質を向上させ、規制監督を強化しようとする中国の取組みを示すものです。
2月4日、米国は、54か国及び欧州連合の代表を迎え(*22)、2026年重要鉱物閣僚級会合を開催しました。この会合は、多様な鉱物サプライチェーンの確保に向けた米国の関心を反映しており、資源安全保障の戦略的重要性が一層高まっていることを強調するものとなりました。会合では、11件の新たな二国間枠組み及び覚書(MOU)の締結、投資コミットメントの拡大、資源地政学的関与フォーラム(FORGE)が中核的な調整枠組みとして正式化されました。
FORGEは、重要鉱物に関する価格設定、投資及びサプライチェーン開発を調整するために設計された新たな複数国間プラットフォームです。FORGEは鉱物安全保障パートナーシップの後継として、貿易政策の調和とパートナー国経済圏間のプロジェクト投資の支援を目指しています。FORGEの枠組みでは、重要鉱物の得恵貿易圏を設ける計画が示されており、協調的な補助金、価格の下限及び関税調整を含む共通の貿易及び規制メカニズムが構築される見込みです。これにより、重要鉱物をめぐる国際的な取引・投資の枠組みをより統一し、サプライチェーンの強化を図ることが見込まれています。
重要鉱物閣僚級会合において、米国、EU及び日本は、重要鉱物サプライチェーンのレジリエンス強化に向けた協力を加速することに合意しました(*23)。3者は、優先すべき採掘・加工・リサイクルプロジェクトの特定、協調的な貿易メカニズムの構築、備蓄情報の共有を目的とした覚書(MOU)を30日以内に締結する意向 を示しています。ただし、この覚書は、本号の発行時点ではまだ公表されていません。
2月2日、米国はプロジェクト・ヴォルト(Project Vault)を立ち上げ(*24)、米国戦略的重要鉱物備蓄制度を創設しました。この取組みは、100億米ドル規模の米国輸出入銀行による融資と、約20億米ドルの民間資金によって支えられる官民パートナーシップです。この備蓄制度は、供給変動から製造業者を保護するとともに、国内の加工能力の強化を目的としています。
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