EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
EYではサステナビリティ開示・保証等に関連したグローバル動向の最新情報を公表しています。
今月号では、EUのESRS改訂による報告負担軽減に向けた動き、中小企業向け任意のサステナビリティ報告基準案に関する進展、US SECによる2024年気候関連開示規則の撤廃提案、「スポットライト」にてエコスペリティウィーク2026とアジア市場におけるクリーン経済移行の加速を取り上げ、日本企業の経営戦略にも影響するグローバル動向を解説しています。
当記事はEY Globalより2026年6月9日(日本時間)に配信されたPublic Policy Sustainability Bulletinの日本語翻訳になります。原文の配信を希望される方はこちらよりご登録ください。
5月29日、ブラジルの証券規制当局であるブラジルの証券取引委員会(CVM)は、サステナビリティ開示フレームワークを改訂(*1)し、予定されていた義務的な報告から任意の「コンプライ・オア・エクスプレイン」へと移行しました。義務的な報告は、2026年1月1日以降に開始する事業年度から開始される予定でした。改訂後の規則の下では、上場企業はサステナビリティ報告書を公表するかどうかを選択することができますが、公表を選択する企業は、IFRS S1号及びIFRS S2号と整合するブラジルの基準に従って開示を作成し、合理的保証を受けるとともに、少なくとも連続する3年間にわたり報告を行わなければなりません。サステナビリティ報告書を公表しない企業は、年次財務諸表を提出する際に、その決定を公に説明することが求められます。報告を中止することを選択する企業も、当該決定を事前に開示しなければなりません。
5月29日、米国証券取引委員会(US SEC)は、2024年に採択した気候関連開示規則(*2)の撤廃を提案しました(*3)。当該規則は、公開企業に対して、重要性がある気候関連リスク(事業の戦略、ビジネスモデル及び見通しへの影響を含む)を開示すること、及び一部の発行体に対して重要性がある温室効果ガス排出量の報告を求めるものでした。US SECは、訴訟を理由として2024年に当該規則の適用を停止し、2025年には裁判において当該規則の擁護を中止しました。今回の撤廃提案において、US SECは、当該規則がUS SECの法定権限を超えていること、重要性に基づく開示アプローチから逸脱していること、並びに便益を上回るコストを課す可能性があることを指摘しました。意見募集期間は8月3日までです。
国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)の議長であるエマニュエル・ファベール氏は、4月23日に開催された2026年北京国際サステナビリティ会議において講演を行いました(*4)。同氏は講演の中で、「ISSB基準の採用は引き続き勢いをもって進んでいる」と述べ、現在では40を超える法域が当該基準を使用又は採用していることを強調しました。また、ファベール氏は、企業のレジリエンス及び資本市場における関連性に重点が移行している点を強調するとともに、IFRS実務記述書の形で任意の自然関連開示を進展させる計画についても言及しました。さらに当該講演では、クロスボーダー発行体における報告負担を軽減し、外国直接投資を支援することを目的としたグローバルパスポート構想 (*5)の進捗についても説明がなされました。
5月6日、欧州委員会は、改訂版欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)案に関する意見募集(*6)を開始しました。意見募集期間は2026年6月3日に終了しました。当該意見募集は、報告負担の軽減を目的として企業サステナビリティ報告指令(CSRD)を改正した2025年2月のサステナビリティ・オムニバスI・パッケージを受けたものです。改訂版ESRS案(*7)では、必須データポイントが60%超削減され、データポイント総数は70%超削減される見込みです。また、改訂版ESRS案では、グローバル基準との相互運用可能性の向上を目的として、追加的な段階的適用及び柔軟性が導入される予定です。
5月6日、欧州委員会は、中小企業(SMEs)向け任意のサステナビリティ報告基準案に関する意見募集(*8)を開始しました。意見募集期間は2026年6月3日に終了しました。当該基準案は、従業員数1,000人未満の企業に対してプロポーショナリティ(企業の成熟度に比例した規定)に基づいたサステナビリティ報告を支援し、報告負担の軽減を図りつつ、バリュー・チェーン全体における一貫性を維持することを目的としています。
また、「バリュー・チェーン・キャップ」を導入し、CSRDの適用対象企業が小規模な企業に対して要請できる情報を制限することとしています。当該基準は、管理上の負担を軽減しつつ、バリュー・チェーン全体にわたるサステナビリティ情報の質及び有用性を維持することを目的としています。
4月24日、欧州財務報告諮問グループ(EFRAG)は、2026年サステナビリティ報告ワークプログラム(*9)を欧州委員会に提出しました(*10)。当該プログラムでは、2026年におけるEFRAGの優先事項が示されており、具体的には以下が含まれています。
(i) EU域外グループ向けサステナビリティ報告基準(N-ESRS)の開発
(ii) 中小企業向け任意報告及び能力構築に対する継続的な支援
(iii) 導入ガイダンスの提供並びに国際的なフレームワーク(ISSB基準やグローバル・レポーティング・イニシアティブ(GRI)など)との相互運用可能性の向上
(iv) 報告のデジタル化の継続的な推進
5月12日、ニュージーランドの金融市場庁(FMA)は、サステナブル金融商品に関するサステナビリティ関連開示ガイダンス(*11)の更新版を公表し、明瞭性、立証可能性、一貫性並びにグリーンウォッシュを防止するための第三者の関与による管理を強調しました。発行体は、サステナビリティ関連のプロモーションが誤解を招くものではないことを確保するとともに、関連する戦略、目標及びリスクを含む重要性がある情報を明確に開示しなければなりません。
5月9日、COP30議長国は、「2030年までに森林破壊と森林劣化を停止し反転させるためのロードマップ」の策定を支援するためのグローバルな意見募集プロセスを発表しました(*12)。当該意見募集は、政策アプローチ、ベストプラクティス、資金調達メカニズム、ガバナンスモデル及び国際協力の道筋を統合した、拘束力のない行動志向の枠組みを策定するために、グローバルな意見を求めることを目的としています。これにより、各国が森林破壊を停止し、反転させるための独自の道筋を策定することを支援するものです。当該意見募集協議プロセスは2026年を通して継続される予定であり、統合されたロードマップは2026年9月の国連総会において提示される予定です。
4月24日、欧州連合(EU)及び米国は、重要鉱物のサプライチェーンに関する合意を発表しました(*13)。法的拘束力のない覚書及びこれに付随するアクションプラン(*14)を通じて、双方は重要鉱物のバリュー・チェーン全体にわたる連携の強化にコミットしました。当該合意は、共通の経済安全保障上の優先事項を反映するものであり、不可欠な資源へのアクセスを強化するものです。
5月1日、国際海事機関(IMO)は、2026年4月27日から5月1日に開催された海洋環境保護委員会(MEPC)の第84回会合の成果を報告しました(*15)。同会合における交渉を踏まえ、各国は、IMOネットゼロ・フレームワーク(*16)として知られる、グローバルな海運排出枠組みに関するコンセンサスの再構築に向けたコミットメントを改めて確認し、年内を通じてさらなる交渉が予定されています。
5月4日、欧州委員会は、改訂された欧州森林破壊防止規則(EUDR)(*17)の簡素化に関する報告書及び当該規則の実施を支援するための一連の措置を公表しました(*18)。
当該措置には、更新されたガイダンス、FAQ及び製品範囲に関する委任法令案が含まれており、利害関係者の懸念に対応することを目的としています。具体的には、以下が含まれています。
当該報告は、2026年12月30日からの規則適用に先立ち、義務の明確化及び効果的な実施の支援を目的とするとともに、EU市場に投入される商品が森林破壊を伴わないものであることを求める要件を維持するものです。
4月30日、欧州委員会は、今後の循環型経済法に関する立法提案の検討のため、ハイレベルのステークホルダーによる対話(*19)を開催しました。同法は、二次原材料の単一市場の創設、高品質なリサイクル材料の供給拡大、及びEU域内におけるこれら材料の需要喚起を目的としています。本対話では、EUの循環型経済への移行の加速、重要原材料への依存低減並びに経済的レジリエンスの強化に焦点が当てられました。参加者は、循環型ソリューションに関する単一市場の実現、廃棄物からの重要資源の回収、及び二次原材料市場の構築について議論を行いました。また、本法の枠組みに関する検討を進めるため、最終的なステークホルダーワークショップの開催も予定されています。循環型経済法の立法提案は2026年秋に公表される見込みです。
4月8日、カナダのビジネス・フューチャー・パスウェイズは、新たなタクソノミー及び移行計画評議会(*20)の初代議長及びメンバーを発表し(*21)、カナダのサステナブルファイナンスの枠組みの標準化を進めるものです。本枠組みの整備にあたり、カナダ政府は、カナダ独自のサステナブル投資ガイドラインの策定主体としてフューチャー・パスウェイズを選定しています(*22)。同評議会は、国家レベルのサステナブルファイナンス・タクソノミーの策定を統括し、「グリーン」投資及び「移行」投資の双方について、エビデンスに基づく分類基準を定義することとなります。また、企業向けの気候移行計画に関するガイダンスの策定も担います。本イニシアティブは、投資家に対する明確性を向上させるとともに、資金を気候整合的な活動へと動員し、さらにカナダの金融システムを国際的に認知されたフレームワークと整合させることを目的としています。
4月27日、カンボジア国立銀行は、同国の銀行セクター向けとして初となるサステナブルファイナンス・タクソノミーを公表しました(*23)。本タクソノミーは、サステナブルな経済活動を分類し、透明性及び一貫性を向上させ、グリーンウォッシュのリスクを低減することを目的としています。また、本タクソノミーは、活動を分類するために信号方式を採用しており、エネルギー、輸送、及び建物・建設セクターに重点を置いています。
4月24日、中国は、地方政府(省レベル)による気候行動を促進するためのキャンペーンを発表しました(*24)。新たな評価枠組みの下で、これらの政府は、排出削減、クリーンエネルギー消費の増加並びに石炭及び石油の使用の抑制について評価されます。評価が低いと判断された自治体は、30営業日以内に是正計画を提出することが求められ、懲戒処分の対象となる可能性があります。評価結果は、地域の指導者の評価、昇進及び監督に反映されます。同様の評価制度は、国有企業にも適用される予定です。
5月18日から21日にかけてシンガポールで開催されたシンガポールの政府系投資会社テマセク・ホールディングスのフラッグシップ・イベントであるエコスペリティウィーク2026(*25)には、政策立案者、投資家及び産業界のリーダーが集まり、アジアにおけるクリーン経済成長の加速が示されました。「Asia’s Race Towards 2030」(*26)をテーマに、資本の動員、政策枠組みの整備及びセクター横断の連携を通じた、商業的に実行可能でレジリエントなソリューションの拡大に議論が集中しました。当該移行は、一貫して単なる環境上の優先事項にとどまらず、競争力や産業戦略、長期的な経済的ポジションを左右する要因として位置付けられました。
一週間を通じて、参加者は、信頼性が高く実行可能な投資経路に沿って、適切な資本配分を行う重要性を強調しました。ブレンデッド・ファイナンス、リスク分担メカニズム及び政策の予見可能性は、インフラ及び新興市場への投資を促進する上で重要な要素であると認識されました。サステナビリティを長期的なビジネス戦略に統合する動きは進展しており、規制上の要請、エネルギー安全保障及びサプライチェーン上の圧力によって促進されています。移行金融(トランジション・ファイナンス)へのアクセスや資本を効率的に運用する能力は、競争力の形成における差別化要因として、ますます重要視されています。
デジタル成長とサステナビリティの関係性について議論が行われ、特にAIとデータセンターに伴うエネルギー需要及び水需要の増大が重要な論点として取り上げられました。こうした中、低炭素成長を持続させるためには、電力系統(グリッド)、蓄電及び再生可能エネルギーシステム等の実現基盤インフラの拡張が不可欠であると認識されました。また、エネルギー移行の経路は、脱炭素化の推進と、安全・安定かつ手頃な価格でのエネルギー供給の確保とのバランスとして整理され、産業競争力に対する影響が指摘されました。
レジリエンスと適応は、インフラ、エネルギーシステム及び食料安全保障への投資が、経済的に重要性を増していることが反映され、主要なテーマとなりました。こうした投資は、ショックへの影響の低減、サプライチェーンの安定化及び長期的な生産性の向上に不可欠であるとの認識が高まっています。さらに広く見ると、エコスペリティウィークでは、目標設定の段階から実行段階への移行が強調され、実行能力、関係者間の連携及び政策の整合性が、気候目標の達成と経済レジリエンスの双方にとって重要であると位置づけられました。
私たちは、最先端のデジタル技術とEY のグローバルネットワークにより、時代の変化に適応した深度ある高品質な監査を追求しています。
全国に拠点を持ち、日本最大規模の人員を擁する監査法人が、監査および保証業務をはじめ、各種財務関連アドバイザリーサービスなどを提供しています。
EYのプロフェッショナルが、国内外の会計、税務、アドバイザリーなど企業の経営や実務に役立つトピックを解説します。