TradeWatch 2024年 Issue 2 EU:最近の判決と訴訟が、通関後の関税評価額の調整に与える影響

TradeWatch 2024年 Issue 2 EU:最近の判決と訴訟が、通関後の関税評価額の調整に与える影響



税関評価の複雑さは、企業や税務当局にとって引き続き課題となっており、特に通関後の価格調整は論争の的となっています1。オランダでの最近の裁判所の判決と、欧州連合司法裁判所(CJEU)での訴訟により、この問題は再び注目され、関税法の適用における明確さと精度の必要性が浮き彫りになりました。

本稿では、これらの訴訟を概説し、その判決が国際貿易に従事する企業に与える影響について検討します。


通関後の調整に関する最近のオランダ裁判所の判決

2024年2月1日、オランダの裁判所による重要な判決は、移転価格調整が輸入品の関税評価額に与える影響について言及しました2。裁判所は、CJEUの浜松ホトニクス訴訟を参照しながら、関税評価額を一律の割合で修正することが適切かどうかを検討しました3

    浜松ホトニクス訴訟

    浜松ホトニクス訴訟で、CJEUは、輸入品の関税評価額は輸入時点での実際の経済的価値を反映すべきであるとしています。その調整額の増減を当初知ることのできない会計期間終了後に行われる一律の割合による調整額と、当初請求された金額からなる取引価格に基づく関税評価額は認められません。その結果、CJEUは、取引価格方式を退け、関税評価には他の方法を使用すべきであると裁定しました。

      本訴訟においては、輸入者は国際的な企業グループに属しています。オランダ税関に移転価格に基づく価格の上方調整を開示し、一旦、追加の関税を支払いました。その後、輸入者は方針を転換し、移転価格調整は輸入品の取引に関連付けることができないため、輸入品の関税評価額の算定において移転価格調整を考慮すべきではなかったと主張し、関税の還付を求めました。しかし、裁判所は、個別の関税評価額への遡及的な配分が可能であると結論付け、会社の還付請求を棄却することとなりました。裁判所は、本件では、子会社と親会社との間の利益配分を修正するための一時金はなかったと考えました。代わりに、調達された商品に関連して、独立企業間価格を達成するための固定利益率に基づく調整があったとしました。したがって、本件は浜松ホトニクス訴訟とは異なり4、CJEUの判決を適用せず、結論としては、取引価格方式において移転価格調整を考慮することを認めました5


      CJEU-通関後の価格調整に関する係争中の訴訟

      CJEUの係争中の「Tauritus」UAB v.Muitinės departamentas(税関部門)6の訴訟は、移転価格調整が輸入品の関税評価額の決定に与える影響についてのものではありませんが、別の理由による通関後の価格調整を論点として扱っているため、その点では興味深いものです。この場合、輸入者は輸入申告にあたっては輸入ディーゼルおよびジェット燃料のフォールバック方式に基づいて算出した暫定価格を関税評価額としていました。暫定価格は、その後、当該期間の市場における平均燃料価格や平均為替レートなど、商品の輸入後に生じた状況を考慮して最終価格に調整されました。最終価格に基づいて改訂されたインボイスを受け取った後に、輸入申告の修正を申請した輸入者もいれば、そうしなかった輸入者もいました。現地の税関当局は、輸入者は、改訂されたインボイスに示された最終価格を取引価額とし、問題となっている輸入申告においての価格調整を申告する義務、すなわち、取引価格方式に従って商品の関税評価額を算出する義務があるとの見解を示しました。裁判所が取引価格方式を適用すべきだと判断した今回の回答は、事後調整が行われる取引における取引価格の適用可能性と、輸入者が通関後に関税評価額を調整する義務について、貴重なガイダンスを提供するものであると期待されています。


      企業への影響

      これらの判決は、通関後の調整の複雑さと、それが関税評価に与える影響を浮き彫りにしています。企業は、関連する関税法を十分に理解した上で、これらの複雑な法的問題に対処し、確実に文書化や証拠が精査に耐えられるようにしなければなりません。

      国際貿易業界がこれらの訴訟結果の影響を見守っている間も、通関後の取引価格調整の問題が引き続き注目されることは明らかです。これらの決定は、関係者に影響を与えるだけでなく、将来の関税評価実務に影響を与える可能性のある先例を作ることにもなります。TradeWatchは、これらの動向を引き続き監視し、絶えず変化する関税規制の状況において、企業がコンプライアンスを維持し情報を得ることに役立つ洞察を提供します。

      巻末注

      1. EYウェブサイト「TradeWatch 2024年 Issue 2 移転価格と関税評価 - 永遠の対立をグローバル規模で捉える試み パートII」 こちらをご参照ください。
      2. 北ホランド州地方裁判所 2024年2月1日、No.AWB - 21_4607
      3. CJEU 2016年12月15日、C-529/16(浜松ホトニクス)、ECLI:EU:C:2017:984.
      4. この訴訟については、“Hamamatsu — a long journey about to end?”, TradeWatch Issue 3 2022, page63および“EU:CJEU rules on use of statistical data for determination of customs value”, TradeWatch Issue 2 2022, page35で詳しく取り上げています。
      5. 欧州委員会ウェブサイト「The transaction value method is the primary valuation method, which comprises the total amount paid (or to be paid) for the imported goods (Article 70 UCC)」 こちらをご覧ください。
      6. CJEU referral C-782/23.