Z世代の友人2人が一緒にスマートフォンを使用している
近代的な建物を背景にしたローアングル写真

どのようにすればAIの学習スピードに匹敵する速さで、Z世代のスキルアップを実現できるでしょうか?

Z世代のAIに対する理解度を評価した新たなグローバル調査によると、AIに関する教育と研修は十分ではありません。


要点

  • Z世代は職場で長期にわたりAIの影響を受けることになるが、AIの可能性を十分に活用できるほどのレベルのAIリテラシーを身に付けていない。
  • AIに関する自身の知識について「かなりある」と回答した調査回答者でさえも、AIテクノロジーのプロンプト作成や欠点評価に関しては低いスコアとなっている。
  • 教育者や企業、政策立案者は協働してAIリテラシー研修の内容と対象者を明確にする必要がある。

人工知能(AI)の中でも特に生成AIの台頭により、教育者や企業は、そのライフステージを考慮するとAIテクノロジーに最も影響を受ける可能性が高いZ世代に対して、早急にAIリテラシーを身に付けさせる必要に迫られています。

1997~2007年にかけて生まれたZ世代は、現在の年齢が高校卒業から20代後半にわたるため、次々と労働市場に参入しつつあります。このようなライフステージにあるZ世代は、仕事と私生活において最も長い期間新たなテクノロジーを利用していくことになります。AIは間違いなく今後数十年にわたって彼らの生活様式や仕事の仕方、趣味の楽しみ方に影響を与え、それらを形づくっていくでしょう。社会全体がZ世代に対して期待と好奇心を抱いており、この世代のAI活用方法は無限の可能性を示している一方で、テクノロジーのさらなる進歩によって生まれる課題やリスクにも特にさらされると言えます。「EY 2024 Work Reimagined Survey(EY働き方再考に関するグローバル意識調査2024)」によると、生成AIは、生産性を高め、従業員が付加価値の高い業務に集中する機会を増やすという肯定的な見方が広くあります。

AIの価値に疑問を持つ時代は終わりました。

Z世代の多くは、現在正規の学校教育を受けている最中ですが、その教育は彼らの将来に向けたキャリアのための理想的な準備となるべきです。しかし、教育現場への生成AIの導入は、Z世代が将来AIを駆使する環境の実現に向けた準備として適切に行われているでしょうか。キャリアで飛躍していくためには、どのような新しい道筋が必要でしょうか。

EYチームとTeachAIがMicrosoftの支援を得て実施した「How can we upskill Gen Z as fast as we train AI?(英語版のみ)」と題したグローバル調査は、Z世代によるAIの理解度やAIの利用方法、批判的な評価に関する理解を深めるのに役立ちます。この調査では、Z世代がAIをどのように利用し、理解しているかを探るだけでなく、彼らのAI分野のスキルや知識を検証しました。

主な調査結果

調査によると、Z世代がAIを理解し、利用する能力は妥当な水準であったものの、AIを批判的に評価する能力は十分に成熟していないことが分かりました。

特にZ世代には、以下の傾向があることが明らかになりました。

  • AIを頻繁に使用するタスクや商品の認識など、AIに対する理解を最も得意とする
  • AIから最適な回答を得るためのプロンプト作成など、AIを使用する際の質問の書き方にはあまり自信がない
  • AIシステムが事実に基づかない情報を生成する可能性(ハルシネーション)など、AIの重大な欠点を評価し、特定することに対して最も自信がない

自身の回答と実際の知識における差

AIに関する知識の自己評価を求める質問に対し、10人のうち3人が「あまり知識がない」または「全く知識がない」と回答しました。


しかし、本調査でAIに関するZ世代の実際の知識レベルを検証した際、知識がないと回答した人を含めて全体的に同様の結果となりました。この結果から、多くのZ世代は自身が認識しているよりもAIの知識を有しており、Z世代のAIリテラシーに関する認識は必ずしも正確ではないことが分かります。

職場と教育機関における利用の差

Z世代がAIを利用した方がよいと考えられる状況(職場または教育機関)についても質問しました。職場でAIは利用しない方がよいと考える回答者は7%のみであったのに対し、教育機関でAIは利用しない方がよいと考える回答者は21%に上りました。


この結果から、いくつかの疑問が提起されます。教育機関では、AIに対して適切なアプローチを教えているのでしょうか? 企業は適切な安全対策を講じないままAIの導入を促進しているのでしょうか? AIの利用に関する期待値を一致させるために、企業と教育機関においてAIに対する取り組みをどのように調整すべきでしょうか?

AIの価値に疑問を持つ時代は終わりました。企業の規模にかかわらず、すべての企業がAIの導入を検討しています。それに伴い、ますます多くの企業は従業員に対してAIツールの利用方法を教育し、効果的なユースケースを提供することがいかに重要であるかを認識していますとEY韓国のAIリーダーであるSooyeon Kimは述べています。

Z世代とAIの将来

Z世代とAIの関係において、私たちは岐路に立っています。将来の可能性の1つは、Z世代が十分なAIリテラシーを身に付け、AIが提供する利益を享受する機会を得て、豊かな未来を切り開くというものです。

これを実現するためには、政策立案者が理想的なAIリテラシー教育に関するガイダンスをこれまで以上に提供する必要があります。そうすれば、教育者と企業は、十分な情報に基づきAIリテラシー教育に関する判断を下せるようになります。

また、教育者と企業は、Z世代がAIに関する自身の知識を正しく評価できるとは限らない点も念頭に置く必要があります。教育者と企業は必要に応じて協働し、次世代の才能を育むために最適なAIリテラシー教育を設計して実施すべきです。

レポートをダウンロードする(英語版のみ)

サマリー

最も若い世代として労働人口に加わるZ世代は、キャリアを通して他のどの世代よりもAIがもたらす課題や機会に直面することとなります。しかし、Z世代は「デジタルネイティブ」であるにもかかわらず、AIツールを利用し、評価する自身の能力を過信しているかもしれません。政策立案者や教育者、企業は、将来のリーダーやイノベーターとなる世代のAIリテラシーを迅速に向上させる方法について、共通の理解を築くことが求められています。

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