ケーススタディ

Carrier Residentialが実現するeコマース構想とは

eコマース事業の流通モデルを再設計する方法──EYチームとShopifyが支援した取り組みについて解説します。



EY Japanの視点

現在のeコマース市場は、単なる成長フェーズから構造的な変革期を迎え、DX、AIによるパーソナライゼーションなど複数のトレンドが同時多発的に進行し、その変化のスピードはさらに加速しています。

顧客は利便性だけでなく、変革に応じた即時性・パーソナライズ・一貫性を“標準的な期待値”として企業に求めるようになっています。こうした高度化するニーズに応えるには、顧客理解を起点にデータ・チャネル・業務を統合し、俊敏かつ継続的に体験価値を最適化する体制の構築が急務です。

Shopifyはグローバルで大規模なエンタープライズ向けeコマースの実績を持ち、最先端のパーソナライズ、多様なインテグレーションを柔軟に実装できる点で最適なソリューションです。EYは、ビジネスモデルの再構築、デジタル変革、顧客体験に関するプロフェッショナルを集結し、Shopify導入に際してAI領域やCX変革、複雑なインテグレーションの実現を俊敏性と機動性を持つ体制で強力に支援いたします。


EY Japanの窓口

森 雅也
EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 デジタル・エンジニアリング パートナー



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The better the question

流通チャネルの進化は、どのようにしてビジネス変革と成果をもたらすのでしょうか?

革新的な顧客体験を起点として、ユーザー接点を高度化する新たなチャネルを築くことで、スピーディな価値創出とコスト削減を両立できる方法を見てみましょう。

Carrier Residential(以下、Carrier)は、インテリジェントな住宅用冷暖房ソリューション、さらには煙探知機や一酸化炭素警報器などの人命を守る製品で業界をリードしています。革新的な戦略に挑んできた歴史を持つCarrierは、住宅所有者と施工業者への直販ルートとなる新たなeコマースの構築に着手しました。こうした住宅所有者と施工業者へのダイレクト販売をデジタル化するアプローチは、Carrierにとってeコマースモデルを構築する革新的な取り組みです。市場から成長圧力を受け、施工業者のエクスペリエンスを向上させる要望も強まったことが、販売モデルを変革する好機につながりました。Carrierは新たな流通戦略を策定し、顧客・販売店・卸業者を中心に据えた顧客志向の流通モデルを再設計しました。このモデルは市場の最新トレンドにも対応しています。そして、同社はこうした新規の市場チャネルを確立し、迅速に手掛けることを目指しました。 

 

目標は高く、変革は大胆に

グローバルパートナーのEYとShopifyがCarrierと伴走し、オンラインコマースを次世代型に進化させる取り組みを強力に支援しました。両社の協業により、EYがグローバル規模で持つ一気通貫のインテグレーション力と、Shopifyの短期導入とカスタマイズが容易なプラットフォームを組み合わせることで差別化されたオファリングが実現し、魅力的なeコマース変革を推進しました。

 

適切なプラットフォームと、的確なインサイトを両輪に

eコマース変革に不可欠なのは、ビジネス課題の解決方法や、新たな市場チャネルの運用方法を全体的に理解し、かつ機能的に動けるチームです。このようなチームは、企業の顧客体験、流通ネットワーク、運用モデル間の複雑な構造をうまく切り抜けるために重要です。多国にわたって事業展開し、国ごとに異なる市場ニーズ・顧客層・流通チャネルを持つCarrierにとっても、同じことが当てはまりました。 —業界固有の知見を持ち、複雑に相関する数多くの課題を乗り越えるための変革チームをCarrierは必要としていました。 
 

EYは、ビジネスモデルの再構築、デジタル変革、GTM(Go to Market)戦略にわたるクロスボーダーチームを迅速に編成し、Carrierにとって初の「住宅所有者・施工業者にダイレクトにつながるeコマースソリューション」を設計しました。新ソリューションでは、複数の仕組みが融合するエコシステムを、統合されたシンプルなデジタル体験として提供することを目標にしました。また、このソリューションは、エンドユーザーとの新たな接点を創出し、ビジネス価値を高めるためのイノベーションを起こし、同時に従来の収益チャネルを補完する役割も果たすことになるのです。

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The better the answer

最善の変革を目指し、全体最適なアプローチをとる

EYは、Shopifyの標準機能を統合したエンタープライズソリューションを構築しました。


EYのチームは、新たなeコマース戦略・流通モデルを構築し、顧客体験を追求・最適化することで、新たな市場チャネルへ横展開できるeコマースソリューションの構築に取り組みました。このソリューションはCarrierにとって重要な意味を持ちました。なぜなら、500以上ある卸業者の拠点を統合し、住宅所有者や施工業者向けの注文を効率的に処理できるようになったからです。そして、市場投入までのスピードを加速し、コア業務へのリスクを最小限に抑えることができました。さらにEYが持つCarrierに関する事業知識をもとに、コスト効率・拡張性・カスタマイズの容易さを優先しました。Shopifyは、コスト効率の良い開発環境、豊富なストアレイアウトの推奨パターン、事前に構築されたアプリケーションやデータテンプレートを提供し、これらがeコマース変革で企業が頻繁に直面する障壁を取り除く役割を果たしました。

長期視点で考え、迅速に実行に移す

開発プロセスを進める上で、EYのチームはCarrierにおける受注作成、商品管理、顧客管理といったさまざまな社内システムとデータ移行の技術的要件を把握しました。住宅所有者や施工業者向けの両チャネルで受発注処理を実行できるよう、500以上ある卸業者の拠点を統合し、複数のクラウドサービス基盤にまたがるシステム連携を実現しました。さらにEYの技術力を生かし、Shopifyのプラットフォームと自動連携するオートメーション基盤を構築することで、業務プロセスをシームレスに自動化しました。1店舗あたり2カ月というスピードで、たった半年間に6つのストアフロント(ECサイトの店舗)を立ち上げました。結果として、Carrierの自社システムを横断してシームレスに機能するソリューションを構築し、業務全体の効率化を実現したことで、他社との差別化にもつながったのです。 

この統合されたソリューションにより、Carrierの非IT部門でも、市場の変化に応じてストアフロントを容易に調整できるようになりました。こうした新ソリューションのアジリティの特性(俊敏性)があったからこそ、顧客の要望に応じて即時にストアフロントを更新することが可能になりました。 

EY Digital Leaderであり、CarrierのEngagement Partnerを務めるGaurav Kohliは、次のように述べています。「EYとShopifyは、クライアント企業と戦略的に協働し、即時利用可能なソリューションでeコマース変革の需要に応えることで、両社のシナジーを創出しています。また、今日の世界でビジネスを成功に導くためには、いかにデジタライゼーションとテクノロジーを自社に取り込んでいくかが鍵となります。EYは、企業の現状に寄り添い、デジタルの未来へつなげる道筋を示す準備ができています」


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The better the world works

将来の成功につながる成果を積み上げる

EYとShopifyの協業により、半年間で6つのストアフロントを構築し、Carrierの市場投入スピードの限界を押し上げました。


EYのエンタープライズソリューションが前例のないスピードで導入され、住宅所有者と施工業者の両者にとって優れた顧客体験を提供することにもつながりました。 

空気清浄機などの「ヘルシーエア製品」を住宅所有者がオンラインで購入できるようになり、顧客体験の向上と新たな収益成長につながっています。既存のB2Bチャネルでは、14日かかっていた受注から納品までのリードタイムが3日に短縮され、売上は対前年比40%増加しました。 

さらに、このソリューションは基幹事業に大きな支障をきたすことなく実装されました。Carrier Residential and Light Commercial Systems(RLCS)のExecutive Director and CIOであるGundeep Singh氏は、「EYと協働することで、私たちはリスクを最小限に抑え、基幹事業への影響もほとんどないまま新規のeコマースチャネルを立ち上げることができました。EYが拡張性と柔軟性を兼ね備えたShopifyソリューションを開発・導入し、私たちは新たな市場へ参入することができました。今回の取り組みは、今後長年にわたり、私たち自身が達成できることの可能性を再定義していく一助となるでしょう」と述べています。

順応性のあるソリューションにより、Carrierは今後も住宅所有者や施工業者の期待・ニーズ・要望の変化に合わせて、eコマースチャネルを進化させ続けることができます。競争の激しい市場で「シームレスな顧客体験」を自社ブランドの中心に据えている企業にとって、力強い提供価値となるでしょう。 

こうした柔軟性の高さは、将来にわたる可能性の大きさを意味します。新たな市場機会が生まれる中で、Carrierは既存の枠組みを活用して、迅速かつ戦略的にeコマースのビジネス範囲を拡大していくことができるでしょう。適切なeコマース基盤は、今日のビジネスを支えるだけではありません。持続的な成長、新たな市場セグメントの開拓、そしてより強靭なビジネス基盤への道を切り開くのです。 

年々といった長いスパンではなく日々、アジリティと柔軟な対応が求められる市場では、これらすべてが非常に大きな価値を持ちます。 


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