EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
創業者の佐藤雅仁氏は、金融業界出身ながら、研究者への思いと日本のスタートアップへの危機感を胸に、兵庫県立大学発技術の社会実装に挑んでいます。創業の原点から事業の強み、そして今後の展望まで幅広く伺いました。
要点
経歴:
兵庫県出身、灘中高、東京大学経済学部(運動会アメリカンフットボール部)。
三井住友銀行(SMBC)にて法人営業・投資企画・ファンド投資等に従事した後、産業革新投資機構(JIC)で投資企画、ファンド投資、大型事業再編投資等に従事。特に大学発の国際的ユニコーン企業創出をテーマに投資活動を推進。その後、共同創業者としてHolowayを起業し、CEOとして経営企画・経営管理・事業開発の全般を統括。
事業概要:
独自のデジタルホログラフィ技術を活用した精密測定検査装置を開発する兵庫県立大学発スタートアップ。製造装置/検査装置メーカーや研究機関と協働にて光学検査ユニットの開発・製造を手掛けている。半導体・宇宙を中心とした先端産業に向けて、ラボ実験やオフライン品質管理から、インライン/インプロセス測定まで多様なニーズに対応する全く新しい測定ソリューションを提案し、モノづくりにおけるQCD向上およびさらなるイノベーション創出への貢献を目指す。
EOY 2025関西地区
Challenging Spirit部門 特別賞
株式会社Holoway
代表取締役 CEO 佐藤 雅仁 氏
―― EOY関西地区大会での受賞を経て、どのような印象を持たれましたか。
これまで兵庫県内でスタートアップと接点を持つ機会はありましたが、兵庫県外の企業との接点はあまりありませんでした。EOY関西地区大会には、兵庫県以外の関西地区で活躍されている起業家の方々やスタートアップ業界でご活躍されている方々も集まっており、こうした方々とじっくり話せたことはとても良い刺激になりました。
また、他の受賞者の方々は、事業の技術に深く結びつく強い原体験やバックグラウンドを持っておられました。一方、私は金融業界出身で、技術は研究チームが担ってきた経緯があります。技術領域の専門家ではないからこそ、自分ならではの発展の仕方が求められると強く感じました。
その上で、企業の事業規模を拡大させるには、私のようなバックグラウンドの人間が加わることにも意味があると考えるようになり、Holowayの事業を拡大させる覚悟がより明確になりました。
―― 起業に至る背景には、どのようなものがあったのでしょうか。
大きく二つの背景があります。
一つは研究者や技術者に対する思いです。
物理学の大学教授だった父の影響もあり、大学進学における文理選択の際には理系という選択肢にも強く惹かれたのですが、結果的に私は文系の経済学部へ進学しました。背景には、父をはじめ、日本の研究者の皆様が、研究内容の価値に対して十分な理解や評価を得られず、研究成果の意義を社会に届けるのに苦労している姿を見たことが大きかったと思います。また、とても難しい研究課題に人生をかけて挑んでいる博士号取得者が必ずしも十分な待遇を得られていない現実も、目にすることがありました。
研究者や技術者が適切に評価され、働きやすい環境でパフォーマンスを発揮することが社会への貢献やより大きなインセンティブにつながる——そうした循環がなければ、日本の技術力は伸びていかないし、自分自身もその環境に入りたいとは思えない。そのような強い課題意識を持ちました。
二つ目が、日本のスタートアップ業界への課題意識です。
前職時代に大企業の事業再編、大学発ファンドの創設といった支援の仕事を続ける中で、日本のディープテックが抱える構造的な課題を強く感じるようになりました。特に、大学発スタートアップは、研究段階で止まり、事業としてスケールアップしないケースも多く、非常にもったいないと感じていました。技術としては非常に優れていても、ビジネスの知見などが十分に備わっていないことがスケールアップの障壁になる場面を多く見てきました。
自分がスタートアップ業界の当事者となり、ビジネスの知見の不足というスタートアップ業界の課題を解決したいと感じ、起業に至りました。
―― 創業後に直面した課題はどのようなものでしたか。
創業直後の2年ほどは、大学の研究室のような状態でした。メンバーも研究室の出身者が中心で、議論の焦点も「技術としてのすごさ」に意識が偏っていました。「これまでできなかったことが技術的にできるようになった」という視点は強かったのですが、事業としては、技術が優れていることに加え、顧客の課題にどうつながるかが不可欠であり重要です。民間のソリューションビジネスを経験してきたメンバーに参画してもらい、顧客との対話を重ねることで徐々に事業らしさが出てきました。
研究メンバーは技術的視点で考えますが、私たちがビジネスとして提供すべきは顧客側のニーズを満たす製品・サービスです。この違いや、議論の視点を合わせることが難しく、調整に多くの時間を要しました。
技術サイドとビジネスサイドの認識の相違をどう乗り越え、建設的に方向性を定めていくかが創業初期の大きなテーマでした。
―― 御社の技術はどのような点に強みがありますか。
Holowayのコアは、研究室時代から取り組んできた光学計測・検査技術です。ミクロンオーダーの三次元構造を高速かつ高精度に計測できる点が特徴で、このレベルの技術を持つプレーヤーは国内外でもかなり限られています。
技術トレンドという観点でも、今が一番Holowayの技術がぴったりはまるトレンドが来ているタイミングだと感じています。おそらく10年前であれば、今のようなストーリーは描けなかったと思います。現在は、二次元的な加工というよりも、いわゆる三次元加工・三次元プロセスといったモノづくりが、新しく普及してきている状況です。半導体・宇宙といった先端産業を中心に三次元加工・三次元プロセスに対する需要がマーケットサイドで高まっており、そこにHolowayの技術がフィットしているという点が大きな強みだと考えています。
また、Holowayは「デジタルホログラフィ」という、デジタルで光の干渉を利用して物体の立体像を記録・再生する技術が事業の核です。コアバリューはハードウェアではなくソフトウェアにあるため、ハードウェアは可能な限りシンプルに設計し、光の波面を素直に捉える構造にしています。その上で、計測したデータを復元・解析して価値を生み出すアルゴリズム側が、技術の中心的な役割を果たしています。ハードがシンプルな分、汎用(はんよう)性が高く、ソフトウェアを中心としたビジネスモデルを構築できることは非常に大きな強みです。コスト面でも優位性がありますし、Holowayがファブレス・ファブライト型のモデルを採用しやすい理由にもなっています。
―― 社会への貢献についてはどのように考えていますか。
モノづくりでは、測定できないものはつくれないという考え方があります。Holowayはモノづくりの根幹である「測定」を高度化し、歩留まり改善やプロセス革新に貢献できます。
新しいプロセスを検討する際には、工程ごとにどれくらいの精度が必要なのか、どこまで条件を詰めればよいのかを検討する場面が必ず出てきます。その過程で、計測・検査の技術は大切な役割を果たします。
また、兵庫県立大学という地方大学からスケールするスタートアップ企業を生み出すこと自体が、日本のディープテック・エコシステムに大きな意味を持つとも感じています。
―― 今後の事業展開について教えてください。
創業後の2年間はPoC(コンセプトの実証)の積み上げが中心でしたが、現在は製品としての完成度と収益性の両立を目指すフェーズに入っています。これまでは他社からの研究受託による収益が主でしたが、今期からは実際に装置を納める案件も動き始めています。
中期では、半導体の先端パッケージング領域でのライン実装を見据えた検証を中心に、技術の完成度を高めていきます。
また、Holowayの強みである測定技術は半導体製造にとどまらず、金属加工など別の領域でも応用できます。参入事業のポートフォリオを増やすことで事業の安定性と成長性を高めたいと考えています。
ディープテック・スタートアップは、ワンプロダクト・ビッグスケールというシナリオで、なかなかマーケットに受け入れられずに苦しんでいるケースも多いと思います。一方でHolowayは、検査・測定検査技術を持っているので、いろいろな産業のさまざまなプロセスにアプローチできます。そこでしっかりとポートフォリオを持てることは、大きな強みだと考えています。
長期的には、新しいプロセスが立ち上がるたびにHolowayの計測技術が必要とされる存在を目指しています。
―― 佐藤さんの今後の展望について、聞かせてください。
私はモノづくりに対する付加価値を創出するというミッション、そして研究者や技術者が活躍し、自己実現できる環境をつくるという思いを、本気で大切にしています。
日本の研究者や技術者の方々を見ていると、本当に高い能力や素晴らしい熱意を持っているのに、十分に報われていない例が多いと感じます。大学や文系・理系に関係なく、能力の高い研究者や技術者が正当に評価されない現状はおかしいとずっと思ってきました。Holowayの事業を通じて、研究者や技術者がもっと高い評価を得られる社会を実現したいと考えています。
Holowayは、デジタルホログラフィを用いた三次元精密測定技術で製造現場の高度化に挑む大学発スタートアップです。研究者の価値を社会に届けたいという創業者の思いを原点に、研究から事業への転換を進め、半導体など先端産業での実装とスケールを目指しています。
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