EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
要点
経歴:
三井物産株式会社(化学品本部)を退職後、米国にてベンチャー企業およびコンサルティング業務に従事。2007年8月、マイクロ波化学株式会社設立、代表取締役就任(現任)。1990年慶應義塾大学法学部法律学科卒、2002年UCバークレー経営学修士(MBA)、技術経営(MOT)日立フェロー。
事業概要:
電子レンジでおなじみのマイクロ波を活用した「マイクロ波化学技術プラットフォーム」の開発。ラボおよびベンチ・パイロット機の研究開発から実機の設計・導入・立ち上げに至るエンジニアリングまで、ワンストップでソリューションを提供している。産業界の「電化」として、医薬品から水素、金属製錬まで、幅広い分野において、国内外の企業や研究機関と提携して60件以上のプロジェクトを推進し、プロセス革新、新素材開発、そしてカーボンニュートラルに貢献している。
EOY 2024関西地区
地区代表部門受賞
マイクロ波化学株式会社
代表取締役社長CEO 吉野 巌 氏
――2025年10月に開催したEY Entrepreneur of The Year 2025 Japan関西地区大会にて基調講演をご講演いただきました。本大会を振り返って、印象に残った点を教えてください。
他の起業家の皆様の情熱に触れ、私自身の視野を広げられたことが大きな収穫でした。スタートアップを続けていると視野が狭くなりがちですが、EOYのようなイベントに参加することで、さまざまな分野に取り組む方々の熱意に触れ刺激された部分もあり、また広い視点を有することの重要性を再認識しました。
素晴らしい起業家が集う場に参加できたことで、自分自身の“目線が上がった”と感じています。原点である、創業時の志を思い起こすきっかけにもなりました。
――創業のきっかけや当初の思いについて伺います。どのような課題認識から出発されたのでしょうか。
事業の種を探していた頃、古巣の三井物産関係のベンチャーキャピタルから紹介され、大学の研究グループと出会ったことがきっかけです。環境やエネルギー分野に大きなインパクトを与える事業をしたいと思っていた最中、マイクロ波技術の可能性に触れました。
「環境やエネルギー分野にインパクトを与えることを目標にすると、NPOでは持続性に乏しい。また、大学での研究では、社会実装への力に欠ける。営利企業を立ち上げ、ビジネスとしてこの技術を発展させるべきだ」
そう確信し、当時マイクロ波の研究をしていた当社の代表取締役CSOである塚原と共に、マイクロ波化学株式会社を立ち上げました。
――ゼロから事業化する際の最大の課題は何でしたか。
今なお直面していますが、新しい技術ゆえに実績がなく、お客様視点では未実装技術への投資判断が非常に難しい点です。特にモノづくりは設備投資に時間と資金がかかるため、お客様に先行導入いただくハードルは高いものです。そのため、私たちは自前で工場を立ち上げ、実績を積み上げる道を選びました。重厚長大産業では設備が一度稼働すると数十年単位で続くため、一気に置き換えるのは容易ではありません。そのため導入に向けたハードルの高さを実感しました。
――マイクロ波を用いた製造プロセスの強みや独自性についてご説明ください。
マイクロ波を用いた製造プロセスでは、“必要な場所に必要なエネルギーを直接伝える”ことができます。これにより熱の無駄を抑え、効率とスピードを両立できます。これらの特長を生かすことで、省エネルギー化・高効率化・装置のコンパクト化といった価値創出を目指しています。
また、マイクロ波は電力を変換して生まれるエネルギーの伝達手段であり、製造の脱炭素にも貢献できることが強みです。電力がクリーンで安価になるほど、価値は高まります。
――どの領域で社会実装が進んでいますか。
社会実装できた事例としては、われわれが建てた工場でインク原料を製造したことから始まります。現在は他社でも導入され、食品添加物の製造やペプチド合成、プラスチックのケミカルリサイクルが進行中です。
国内外で60件ほどの案件が動いていますが、今もっともホットな分野は膨大なエネルギーが必要な金属製錬分野への適用です。電化が進む希少金属(レアメタル)の需要が高まっています。経済安全保障の観点から日本初の金属精錬プロセスの確立が求められています。現在は日本国内での展開が主ですが、海外でのニーズが高いため横展開も視野に入れています。
――現在直面している課題は?
重厚長大産業は現状のプロセスが最適化されており、資金・時間のかかる設備更新が進みにくい点です。そのため、研究開発は進むのですが、設備投資の段階になるとスピードが落ちることがあります。
――今後の吉野さんおよびマイクロ波化学株式会社の展望についてお聞かせください。
マイクロ波を発振させる装置の内製化や大容量化に踏み込みます。これにより、大型プロセスにも適用可能となり、マイクロ波プロセスの社会実装が加速することを目標としています。
また、技術の社会実装を見据え、事業開発から研究開発(ラボ)、エンジニアリングまでを一気通貫で担うケイパビリティを生かし、ソリューションの幅を広げることを目指しています。そうすることで、あらゆる顧客課題を解決できる企業へ、事業を拡大しようとしています。
――最後に、これからの起業家へのメッセージをお願いします。
起業は決して平たんな道ではありません。私自身も創業以来、事業の継続そのものが問われる厳しい局面を何度も経験してきました。資金、人材、技術、市場、どれか一つ欠けても前に進めないのが、起業の現実です。
それでもなお、起業には「自分で自分の未来を決められる」という、他には代え難い大きな魅力があります。どの分野に挑戦するのか、どの技術を磨くのか、どの社会課題に向き合うのか。そのすべてを自らの意思で選び、結果に対する責任を自分自身で引き受ける。この経験は簡単ではありませんが、同時に大きなやりがいと面白さをもたらしてくれます。
思うように進まない時間の方が長いこともあります。だからこそ、自分たちが何を実現したいのか、その軸を見失わずに持ち続けることが重要だと感じています。
これから起業に挑戦される方、すでに挑戦の途中にいる方には、ぜひ「楽しむ」という気持ちを忘れずに進んでほしいと思います。困難の中にこそ、学びや成長の機会があります。その積み重ねが、やがて事業を、そして自分自身を大きくしてくれるはずです。
マイクロ波化学の吉野氏は、前例のないマイクロ波化学技術で省エネ・高効率を実現し、脱炭素や資源循環に貢献してきました。自社工場で実績を積み重ね、金属・化学など約60件の案件を展開。マイクロ波の適用領域を拡大、マイクロ波以外の技術も手がけ、課題解決型企業への進化を目指しています。
関連リリース
EOY 2024 Japan 関西地区代表アントレプレナーが決定
EY Japanが主催するアントレプレナー表彰制度「EY アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー 2024 ジャパン」(以下、EOY Japan)は、2024年の関西地区代表として下記1名のアントレプレナーを選出しました。選出された地区代表者は、本年12月10日に東京で開催されるEOY 2024 Japanに臨みます。