衛星データとAIは、世界の農業と脱炭素社会の取り組みをどこまで変えられるのか

衛星データとAIは、世界の農業と脱炭素社会の取り組みをどこまで変えられるのか



AIと衛星データで農業に革命を起こす――
衛星データとAIを活用し、土壌分析や炭素除去量算定を行い、持続可能な農業と脱炭素社会を支援するサグリ株式会社代表取締役CEOの坪井俊輔氏。創業の原点と、実装へ踏み出す次の一歩を語っていただきました。



要点

  • 教育事業の一環で訪れたルワンダの子どもたちの教育環境を改善したいという思いから、衛星データを活用して農業の効率化を図る事業を始めた。
  • 農学、衛星データ、AIを組み合わせた高度な解析モデルと、それを活用したアプリケーション開発により、農地情報の見える化と効率的な管理を実現している。
  • 将来的には、無償サービスの拡充と事業成長の両立を目指し、農業以外のエネルギーや生活分野にも衛星データ×AIの応用を広げ、社会課題の解決に取り組む。



プロフィール

経歴:
横浜国立大学理工学部機械工学科卒。2018年、サグリを創業。
Forbes 「世界を変える30歳未満30人」の1人に2022年度日本版および2023年度アジア版で選出。
農林水産省 「デジタル地図を用いた農地情報の管理に関する検討会」 委員。
経済産業省「2050年カーボンニュートラルの実現に向けた若手有識者検討会」委員。第6回宇宙開発利用大賞において内閣総理大臣賞を受賞。

事業概要:
アクタバ(耕作放棄地の検出)、デタバ(作物分類の推定)、ニナタバ(農地と人をつなぐマッチング)の3つを主たるサービスとして展開。衛星データや土地区画データを基に独自の技術で農地を見える化する。農地がより良い形で生かされ、持続可能な農業の実現や地域社会の活性化を目指す。また、農地区画化や土壌の化学性解析技術を用いて環境保全・再生型農業をサポートするサービスを提供している。SBTi-FLAGに対するGHG排出量・炭素除去量算定、削減・除去活動支援や農業由来のカーボンクレジット事業、脱炭素につながる農業資材の活用推進プロジェクト等を行う。


EOY 2025 Japan 関西地区 Challenging Spirit部門 大賞・特別賞 サグリ株式会社 代表取締役CEO 坪井 俊輔 氏

EOY 2025 Japan 関西地区
Challenging Spirit部門 大賞・特別賞
サグリ株式会社
代表取締役CEO 坪井 俊輔 氏



EOYで再確認した決意──アントレプレナーとしての原点

―― 受賞を振り返っての率直な感想を教えてください。

アントレプレナーとしての決意を振り返る良い機会をいただきました。最近は、事業成長のため海外を飛び回っており、事業を拡大させるために意思決定をする際、アントレプレナーとしての思いと事業成長についてどこで線引きをするのか、といった点で悩むことがありました。今回のEOY関西大会では、自身の軸であるアントレプレナーとしての思いをプレゼンし、またその思いを評価していただけるような非常に良い機会でした。私は社会課題解決のために起業したという経緯があり、スタートアップ業界の中でのロールモデルになることを目指してきました。また、この丹波の地で活動していることにもご縁や意義を感じています。そのようなアントレプレナーとしての思いを再度、振り返るきっかけになり、自身の決意を再確認できた瞬間でした。

―― 大会当日の発表でも坪井さんの思いを強く感じました。

私はアントレプレナーとしての思いを強く意識しており、この思いがあるからこそリスクの高い起業にも挑戦できますし、困難も乗り越えられます。この点を評価してもらい、また応援してもらえたことがとてもうれしかったですし、自身が歩んできた道が間違っていないことを再確認できました。

資本市場では事業成長の部分にフォーカスされることが多いですが、起業の軸となった社会貢献の部分を評価していただけたと感じています。


EOY 2025 Japan 関西地区 Challenging Spirit部門 大賞・特別賞 サグリ株式会社 代表取締役CEO 坪井 俊輔 氏

―― 坪井さんのアントレプレナーとしての思いの源泉は何でしょうか。

最初に立ち上げた株式会社うちゅうの活動でルワンダの子どもたちに出会った時の思い、そして偶然ご縁があった丹波市に恩返しをしたいという思いが源泉となっています。

株式会社うちゅうの教育事業の一環でルワンダに訪問した際、ルワンダの子どもたちは小学校を卒業した後に、中学校や高校に行くのではなく、家業である農業の手伝いをすることが多いという現実を目の当たりにしました。以前より発展途上国の教育の現状を何とかしたいという思いを持っており、実際に現場を見たことでその思いがさらに強まりました。

人は大人になるにつれて子どもの時に抱いていた夢を諦めてしまったり、忘れてしまったりします。株式会社うちゅうで教育事業を行っていた時は、夢を持ち続けることができるような教育活動に重点を置いていました。しかし、ルワンダの訪問を機に、夢をかなえることができない現実があることを理解し、教育者として衝撃を受けたことを鮮明に覚えています。教育が届かない場所があるという課題に対して、子どもたちが学び、夢を持ち続けられるようにするための生活基盤を整える必要があると考えました。そんな中、衛星データが無償で利用できるということを知り、衛星データを活用できれば農業にかける人手やコストを減らすことができ、家計を支えるため家業を手伝わざるを得ないというルワンダの子どもたちの環境を改善できると考えました。そこでルワンダの子どもたちの将来の選択肢を広げるため、事業としての活用の道を模索し始めました。その結果、農地の解析に利用できることが分かり、事業として本格的に稼働させるため、サグリを立ち上げました。ルワンダのような発展途上国の農業の現状を解決したいという思いが今も自身を動かす原動力になっています。

また、本社を構えている丹波市は、株式会社うちゅうの教育事業で最初に連携した場所です。サグリを立ち上げ衛星データの活用法を模索する過程では、農業の知識がほとんどなかった私に対し、丹波市の農家の方々が農業の基礎を丁寧に教えてくれました。丹波市出身でもない自分を応援してくれた丹波市の方々に、事業の成長を通じて税金や雇用面で恩返ししたいと考えています。さらに、地域を活性化し、子どもたちに希望を与えるロールモデルとなることで、教育という自身の原点にもつながると思っています。丹波市で生まれた子どもたちが世界を広げ、一度丹波市を出てもまた戻ってきたいと思えるような場所にしたいです。


衛星データを“価値”に変える──独自モデルと実装力

―― 事業上の強みを教えてください。

衛星データ解析を高度な水準で活用できていることが私たちの強みと考えています。  

私たちの事業を要素別に分解すると農学、衛星データ、AIの3つになります。これらの要素を組み合わせて、高精度なモデルを構築し、そのモデルを見やすく世界中に届けるアプリケーション開発ができている点が他社と比較した場合の私たち独自の強みと考えています。


EOY 2025 Japan 関西地区 Challenging Spirit部門 大賞・特別賞 サグリ株式会社 代表取締役CEO 坪井 俊輔 氏

農地活用事業では、耕作放棄地の検出を行う「アクタバ」、作物分類を推定する「デタバ」、農地所有者と担い手をマッチングする「ニナタバ」の3サービスを展開し、従来の人手中心の手法では困難だった課題を解決しています。

アクタバは、広範囲の農地の耕作放棄地率を迅速に把握し、調査工数を約9割削減します。タブレット一台で調査が完結し、地図作成や紙台帳入力も不要となり、台帳システムへの登録も約30分で完了します。

デタバは、作物種類の推定により、自治体やJAの作付け調査における現地確認業務を大幅に効率化します。従来の目視確認や紙台帳入力を不要とし、広範囲の農地を一括で確認し、パソコンやタブレットで直接記録が可能です。

ニナタバは、全国の農地所有者と担い手を結びつけ、遊休農地の有効活用を促進します。耕作放棄地や担い手不足の農地を特定し、所有者の意向を可視化することで、集約可能な農地を効率的に抽出します。これにより、業務効率化と農業DXの推進に貢献しています。                                  

アグリイノベーション事業では、衛星データと農地データを組み合わせた農業分野のビッグデータを機械学習で解析し、メーカーやカーボンクレジット購入者、プロジェクト実施者、自治体に対して、カーボンインセットやカーボンクレジットに関する高精度なソリューションを提供しています。豊富な解析データを生かし、他社にない仕組みを実現しています。

―― 事業が与える社会へのインパクトを教えてください。

国内と国外でそれぞれ与えるインパクトが異なると考えています。

まず、国内についてですが、食料安全保障上必要な農地の保護および環境問題からの農作物の保護という形で大きなインパクトを生み出すことができると考えています。

農地保護について、現在、農家の高齢化問題に伴い耕作放棄地が増加してきているという課題があります。この課題に対処するため耕作放棄地の担い手をうまくマッチングさせることで、守るべき農地を守っていくという支援が可能です。

次に、環境問題からの農作物保護についてですが、近年では異常気象による被害が避けられないケースが多くあります。そこでどの作物がどの農地に適しているのか、どのような農地環境が好ましいのかといった解析結果を提供することで、環境問題に適時に適応できるような支援が可能になります。国外については、発展途上国や新興国に対して農地解析結果を提供することはもちろんのこと、先進国についてはカーボンクレジット関連のサービスを提供することで、脱炭素支援が可能になると考えています。また、AIの実装に伴い、多様な言語への対応が可能であり、世界中の農業データベースが蓄積され、それらを活用できるという点で、国外に対しても多様なインパクトを与えることができます。

基盤強化から事業拡張へ──衛星×AIで描く持続可能な未来

―― 事業を拡大されている中で直面している課題はありますか。

人材についてはどんどんアップデートしていく必要があると感じています。特にグローバル化やAIの発展に対応できる人材を集め、メンバー各自が主体的に動けるような組織を目指しています。また、社会課題を解決していく中で、しっかりと事業成長につなげる必要があるので、そのためにも資金調達につながる基盤づくりは常に課題だと考えています。

――今後の展望について教えてください。

AIの発展に伴い、より多くの人に無償でサービスを提供し、かつ事業としても成長できるような形にすることが望ましいと考えています。私たちが向き合っている当該領域でリーディングポジションの確立を目指しています。また、農業以外の社会課題も解決できるような事業の展開も視野に入れています。例えば、エネルギー分野のほか、住まいや暮らしの分野を想定しています。そのように衛星データ×AIを組み合わせて活用することで、人類と地球に関する社会課題解決に向けて解決方法を模索し、事業として展開していけたらという思いがあります。


EOY 2025 Japan 関西地区 Challenging Spirit部門 大賞・特別賞 サグリ株式会社 代表取締役CEO 坪井 俊輔 氏

基盤強化から事業拡張へ──衛星×AIで描く持続可能な未来

―― 事業を拡大されている中で直面している課題はありますか。

人材についてはどんどんアップデートしていく必要があると感じています。特にグローバル化やAIの発展に対応できる人材を集め、メンバー各自が主体的に動けるような組織を目指しています。また、社会課題を解決していく中で、しっかりと事業成長につなげる必要があるので、そのためにも資金調達につながる基盤づくりは常に課題だと考えています。

――今後の展望について教えてください。

AIの発展に伴い、より多くの人に無償でサービスを提供し、かつ事業としても成長できるような形にすることが望ましいと考えています。私たちが向き合っている当該領域でリーディングポジションの確立を目指しています。また、農業以外の社会課題も解決できるような事業の展開も視野に入れています。例えば、エネルギー分野のほか、住まいや暮らしの分野を想定しています。そのように衛星データ×AIを組み合わせて活用することで、人類と地球に関する社会課題解決に向けて解決方法を模索し、事業として展開していけたらという思いがあります。



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より詳しい情報をご希望の方はご連絡ください。


サマリー 

サグリは、衛星データとAIを活用して農地の可視化や耕作放棄地対策、作物分類、農地マッチングを行うスタートアップです。社会課題解決を原点に、国内外で農業DXと脱炭素の実装を進め、地域活性化と持続可能な農業の実現を目指しています。


EY アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー ジャパン
関西地区

「EY アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー ジャパン(EY Entrepreneur Of The Year Japan)」では、全国7地区で各地区代表のアントレプレナーを選出しています。地区代表となられたアントレプレナーは、東京で開催される「EY Entrepreneur Of The Year Japan」にご参加いただきます。


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