ベトナムJBSタックスアラート 税関と国際貿易2021年8月 政令18‐輸出入税法に関する政令の重要な変更点

ベトナムJBSタックスアラート 税関と国際貿易2021年8月 政令18‐輸出入税法に関する政令の重要な変更点

2021年8月のタックスアラートの要点は以下の通りです。

  • 輸出加工企業(EPE)の位置づけおよび (i) 運営中のEPE、(ii)政令18の施行日より前に設立されたが建設中のEPE、(iii) 政令18の施行日後設立されたEPE、それぞれが考慮すべき事項と求められる対応
  • 再輸出を目的とする製造のために輸入する物品のOn-the-spot  import

1. EPE - 関税の優遇措置

政令18施行以前のEPEに関する規制の概要

EPEとして投資登録証明(IRC)を得た企業は非関税区域とみなされ、関税や間接税について優遇措置を受けることができます(付加価値税(VAT)が免除される、海外からの輸入品や海外への輸出品について関税免除を申請できる等)。

工業団地・経済区域の管理に関する政令82/2018/ND-CP(政令82、2018年7月10日施行) において、企業がEPEである旨は、投資登録証明書(IRC)、もしくはIRCと同等の書類(IRCの発行を行う必要がない企業の場合)に記載されることになりました。IRCもしくは同等の書類を発行するライセンス機関は、書類の発行に先立ち、企業がEPEの条件を満たしているかどうかについての意見を税関当局に確認する必要があります。

したがって、技術的には、企業がEPEの必要条件を満たす能力があるかどうかについて税関当局からの見解を得た後に、ライセンス機関がEPEであることをIRCの発行によって承認することになります。

政令82から生じる課題と政令18の重要性

2018年に政令82が施行されたものの、EPEが満たすべき税関検査の条件を定めた法令はありませんでした。そのため、各地域のライセンス機関と税関当局は、新規にEPEを承認することが難しい状況にありました。この問題を解決するための一時的な措置として、2020年6月9日に税関総局(GDC)は、EPEの税関検査の条件を定めたオフィシャルレター3778/TCHQ-GSQL(オフィシャルレター3778)を発行しました。

しかし、オフィシャルレター3778に記載された条件は、すでに施設を持つ投資プロジェクトや企業に対しては適用可能なものでしたが、新規投資プロジェクトやまだ施設を持っていない企業に対してどのように適用できるかは不明確なものでした。その結果、各地域のライセンス機関および税関当局が、新規投資プロジェクトや企業に対するEPEの承認を施設の建設が完了するまで遅らせるケースが多く見られました。これにより、プロジェクトの進行が遅れたほか、施設の建設に使用する物品・サービスに対する輸入関税や輸入VATを支払わなければならなくなり、新規投資プロジェクトに財政上の悪影響が生じました。

さらには、すでに稼働を開始しているEPEがオフィシャルレター3778に準拠する必要があるのかどうかも明確ではありませんでした。

政令18の発行は、上記を含むこれらの不備の解消も目的としています。

政令18におけるEPE承認の重要なポイント

2021年4月25日から施行された政令18においては、EPEが満たすべき税関検査の条件を以下の通りに定めています。

  • EPEと外部を隔てるフェンスを設置し、物品の出入りが明確となるように入口と出口を設置する
  • 出入口・物品保管場所のすべてを24時間(休日を含む)監視可能なカメラシステムを設置する。このカメラシステムは税関当局と接続する必要があり、EPEにおいて少なくとも12カ月間データを保存する必要がある
  • 非課税対象の輸入物品をモニタリングし、かつ関税年次報告書を作成するための在庫管理ソフトウエアを導入する

(以上の条件はオフィシャルレター3778に記載されているものと同じです。)

政令18は、EPE承認のための手続きを企業、各地域のライセンス機関・税関当局に対してシナリオ毎に以下の通り提供しています。

シナリオ重要なポイント企業の対応
1政令18施行後に設立される新会社、新規投資プロジェクトまたは拡張投資プロジェクト

1. 誓約のステップ

  • 企業は、新規・拡張投資プロジェクトが、稼働開始日の少なくとも30日前までにはEPEとして必要な条件を満たすようアレンジすることを誓約するために、ライセンス機関に誓約書(Commitment Letter)をIRC/企業登録証明書(ERC)の申請書と共に提出する必要があります。
  • 上記の誓約書に基づき、ライセンス機関は税関当局の見解を求めます。
  • 税関当局が承認をするか、あるいはEPEとしての条件を満たしている場合に、IRCにEPEである旨が記載されます。
  • 施設が完成していなくても、IRCの発行日よりEPEの関税優遇措置が適用されます。

2. 検査ステップ

  • 稼働開始日の少なくとも30日前までに、企業はEPEの条件を満たしたことを示す通知書(Notification Letter)を税関当局に提出する必要があります。
  • 通知日から10日以内に税関当局は検査を行います。企業が条件を満たしている場合、税関当局は確認書を書面により(Written confirmation)発行します。
  • 条件が満たされていない場合も、税関当局は結果を書面により通知します。税関当局が条件を満たしていない旨を最初に通知してから1年以内であれば、企業は引き続きEPE条件を満たすための施設の改善を行うことができ、税関当局に対して何度でも通知書を提出することが許可されています。
  • 企業が1年以内に通知書を提出しない、またはEPE条件を満たさない場合、EPEの承認は取り消されます。企業は、免税が適用された物品を輸入した日以降、すべての関税およびその他税金を追納し、遅延利息および罰金(該当する場合)を支払わなければなりません。

その後にEPE条件を満たした場合、税関当局に通知書を再度提出し、税関検査とEPEの再承認を求めることができます。税関当局がEPE条件を満たした旨を書面で通知した日より、企業はEPEとして承認されます。過去に遡ってEPEであると認められることはありません。

誓約書とIRC/ERC申請書を提出する


稼働開始日の少なくとも30日前に通知書を提出する


EPE条件を満たすため施設の改善を行い、通知書を提出する
2政令18施行日より前にEPEの承認を得た企業
  • 政令18施行日(2021年4月25日)から1年以内に、EPE企業は政令18で定められたEPE条件を満たすために税関検査を受ける必要があります。EPE条件を満たすために必要であれば、既存の施設の改善を行います。EPE条件を満たした時点で、通知書を税関当局に提出する必要があります。この期間内は、EPEの優遇措置を継続して適用することができます。
  • 通知日から10日以内に税関当局は検査を行います。企業が条件を満たしている場合、税関当局は確認書を書面により発行します。
  • 条件が満たされていない場合も、税関当局は結果を書面により通知します。企業は政令18の有効日(2021年4月25日)から1年以内であれば、企業は引き続きEPE条件を満たすための施設の改善を行うことができ、税関当局に対して何度でも通知書を提出することが許可されています。
  • 企業が1年以内に通知書を提出しない、またはEPE条件を満たさない場合、EPEの承認は取り消されます。以降、企業は通常の国内企業と同様の関税およびその他税金が適用されます。
  • その後にEPE条件を満たした場合、税関当局に通知書を再度提出し、EPEの再承認を求めることができます 。税関当局がEPE条件を満たした旨を書面で通知した日より、企業はEPEとして承認されます。シナリオ1同様、EPE承認が取り消された期間に遡ってEPEであったと認められることはありません。
施設の状況を確認し、期限(2021年4月25日から1年以内)までに通知書を提出する


必要であれば、要求される条件を満たした後に、有効日から1年以内に再度通知書を提出する
3政令18施行日より前にEPEの承認を得たが、未だ施設を建設中の企業
  • シナリオ1と同様の手順を経る必要があります。
  • 通常の国内企業に適用される輸入時の関税・税金を支払っている場合、税関当局によるEPEの承認後、企業は過払額として還付を受けることができます。
シナリオ1参照

過払いした関税および付加価値税の還付申請
4Non-EPEからEPEに変更したい企業
  • 申請書に基づき、ライセンス機関は税関当局の見解を求めます。
  • 通知日から10日以内に税関当局は検査を行います。企業が条件を満たしている場合、税関当局は確認書を書面により発行します。
  • 税関当局がEPE条件を満たした旨を書面で通知した日より、企業はEPEとして承認され、IRCに EPEである旨が反映されます。この日より、EPEに適用される関税およびその他の税金の優遇措置が適用されます(過去に遡って適用されることはありません)。
 

2. 再輸出を目的とする製造のために輸入する物品のOn-the-spot import

政令18は以下の2つのシナリオを区別しています:

  • 「再輸出のための無償支給による委託製造(Toll Manufacturing)」のスキーム(ベトナム語で「GCXK」という)の下では、再輸出を目的とする製造のために輸入する物品に対する関税は免除されます。
  • 「再輸出のための有償支給による委託製造(Contract Manufacturing)」のスキーム(ベトナム語で「SXXK」という)の下では、再輸出を目的とする製造のために輸入する物品に対する関税は免税されません。再輸出の際、企業は再輸出された製品数量に相当する分だけ、物品輸入時に支払った関税の還付を申請することができます。

税関総局が明確にしていますが、唯一の例外として、国内企業がEPEから直接購入/輸入するケースがあります。この場合でSXXKのスキームを適用している場合には、On-the-spot importに該当しますが、関税は免除されます。

サマリーおよび推奨事項

政令18は、税関に対する報告時の要求事項、EPE企業が満たすべき要件、およびその他の関連事項について複数の変更を規定しています。 変更内容は、このタックスアラートに記載した事項よりも広い範囲におよぶ点にご留意ください。企業は、自社の状況を確認し、最新の規制に準拠して関税ポジションを最適化し、関税に係る追徴金額を軽減するための措置を講じることを強くお勧めします。企業が検討すべき対策は以下の通りです:

  • 「サステナビリティレビュー」:現在のトレーディングモデルが最新の規制に従い、実行可能か、あるいは修正が必要かを判断します。旧規制において存在しなかった、関税に係る潜在的な追徴金額を識別できる可能性があります。
  • 「コンプライアンスレビュー 」:企業の現在の事業活動が満たすべき新たな行政上の要求事項を確認します。例えば、企業が再輸出のための加工製造や委託製造を行っており、完成品をOn-the-spot exportする場合、税関当局に対して、輸出者がOn-the-spot import手続を実施していることを通知する必要があります。自社が、輸入した固定資産について免税を申請している場合は、該当する免税された固定資産について年度末に報告書を提出する必要があります。
  • EPE企業は、自社がEPE条件を満たしているかを確認し、期限までに税関当局に通知する必要があります。必要であれば、企業は既存の施設が条件を満たすように改善しなければなりません。EPE企業 は、来たるべき税関検査のために人員を確保し、事前に準備する必要があります。
  • EPE申請をしているものの、現在関税を支払っている企業は自社の状況を確認し、還付が可能かを検討することをお勧めいたします。

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