グローバル・ネイチャーポジティブ・サミット2026参加レポート:EY主催イベント編 企業の取り組みを基礎分析から戦略実行へ

グローバル・ネイチャーポジティブ・サミット2026参加レポート:EY主催イベント編

企業の取り組みを基礎分析から戦略実行へ 


グローバル・ネイチャーポジティブ・サミット2026に先駆けて開催したEY主催のイベントでは、ネイチャーポジティブが「測定・開示」から「実装・戦略実行」へ移行しつつあることが示されました。

企業価値向上につなげるための実践的なアプローチと先進事例を紹介します。



要点

  • 自然関連情報は開示対応ではなく、経営判断と価値創造の基盤へ。
  • 現状分析やTNFD対応を事業戦略へつなげる先進企業の実践が共有。
  • ネイチャーポジティブは企業価値向上と成長を支える経営アジェンダへ。

概要

2026年7月に熊本で開催されたグローバル・ネイチャーポジティブ・サミット2026(GNPS2026)を前に、EYは7月13日に「EYとともに創るネイチャーポジティブ経済―企業の取り組みを基礎分析から戦略実行へ―」を開催しました。

近年、ネイチャーポジティブは、環境対応や情報開示のテーマから、企業の成長戦略やレジリエンス向上を支える経営課題へと発展しています。本イベントでは、「測定・開示」から「実装・戦略実行」への移行をテーマに、持続的な価値創造に向けた実践的なアプローチについて議論と情報共有が行われました。

セッション1では、Nature Positive Initiative(NPI)、Taskforce on Nature-related Financial Disclosures(TNFD)、EYのプロフェッショナルが、自然関連リスク・機会の把握、測定・モニタリング、AI活用の可能性について議論しました。セッション2では、環境省、豊田通商株式会社、株式会社ニッスイが、自然関連情報を活用した経営戦略や事業実践について具体的な事例を紹介しました。

本イベントを通じて、ネイチャーポジティブを実現するには、企業、行政、投資家、専門機関が連携し、自然資本を経営の中核に位置付けることが重要であるとの認識が共有され、参加者にとって、自然関連課題を持続可能な成長とレジリエンス強化につなげるための示唆を得る機会となりました。

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セッション1

自然関連情報を経営判断につなげるために

セッション1では、「現状分析」「高度化」「測定」「モニタリング」をテーマに、企業が自然関連リスクと機会をどのように把握し、意思決定へ活用していくべきかについて議論が行われました。


セッション1  自然関連情報を経営判断につなげるために

NPI Marco Lambertini氏からの主なメッセージ

  • 自然関連課題は企業価値や事業継続性に直結する経営課題
  • 企業活動は自然資本や生態系サービスに大きく依存している
  • 生物多様性の損失や生態系劣化は、サプライチェーンや事業運営へ直接的な影響を与える
  • ネイチャーポジティブな製品・サービスは新たな事業機会となり得る
     

TNFD Candice Dott氏からの主なメッセージ

  • 自然関連情報開示の目的は開示そのものではなく、より良い意思決定にある
  • 自然を事業活動の基盤となる重要な資産として捉えることが必要
  • 自然関連課題は経営層や取締役会にとって重要な戦略テーマになりつつある
     

EYフランス Alexis Gazzoからの主なメッセージ

  • データ収集や分析自体を目的化しないことが重要
  • 分析結果を具体的な行動や経営判断につなげる必要がある
  • LEAPアプローチは自然への依存・影響やリスク・機会を体系的に把握する有効な手法
  • EY Nature Analytics Tool(EY NAT)は科学的データを活用した評価を支援する
     

パネルディスカッションで挙がった主な論点

  • 気候変動と自然は相互に関連しており、切り離して考えることはできない
  • 自然分野には温室効果ガス排出量のような単一指標が存在しないが、比較可能性と実務適用性を両立する指標整備が重要
  • AIは自然関連データ分析やリスク評価の効率化に貢献する可能性がある一方で、AI利用に伴うエネルギー消費や環境負荷への配慮も必要
     

EYの視点

本セッションを通じて示されたのは、自然関連情報の活用が「開示対応」から「経営判断」へ移行しつつあるという点です。今後は、自然への依存・影響を把握するだけでなく、その結果を事業戦略や投資判断へ反映し、実際の行動変容につなげることが企業に求められます。


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セッション2

現状分析から戦略実行へ

セッション2では、環境省、豊田通商株式会社、株式会社ニッスイのご登壇者が、それぞれの取り組みを紹介しながら、現状分析から戦略実行に至るまでの実践について議論が行われました。


ネイチャーポジティブは実装のフェーズへ――EY主催イベントから読み解く企業経営の次の一手

環境省 永田氏からの主なメッセージ

  • 日本におけるネイチャーポジティブの推進において、「里地里山」の視点が重要
  • 原生自然だけでなく、人の利用や管理によって維持されてきた自然環境の価値も適切に評価する必要がある
  • 日本の自然特性を反映した生物多様性価値評価の検討を進めている
  • 分析や開示だけでなく、その先のネイチャーポジティブへの移行が重要
  • 「ネイチャーポジティブ経済移行に向けた企業価値向上ストーリー集」や各種ガイドラインを通じて企業の実践を後押ししている
     

豊田通商株式会社 伊藤氏からの主なメッセージ

  • LEAPアプローチを活用し、重点事業を対象に自然関連リスク・機会を分析
  • シナリオ分析を通じて財務インパクト評価まで実施
  • 事業部門との対話やデータ整備が実践上の重要な課題
  • 外部有識者の知見を活用しながら社内理解を促進
  • 「カーボンニュートラル」「サーキュラーエコノミー」「ネイチャーポジティブ」を三位一体で推進
  • 自然関連の取り組みを事業価値や利益創出につなげることが重要
     

株式会社ニッスイ 西氏からの主なメッセージ

  • サーモン養殖事業を対象に、サプライチェーンを含めた詳細なリスク評価を実施
  • ASC認証を重要な管理指標として活用
  • 「海洋生物多様性の主流化」を経営上の重要課題として位置付け
  • 自然資本をリスクだけでなく成長機会として捉えている
  • 完全養殖サイクルや沖合養殖などを推進し、事業競争力と自然資本保全の両立を目指している
  • Blue Nature Bondを活用し、ネイチャーポジティブ経営を推進
     

EYの視点

本セッションを通じて示されたのは、多くの企業が既に現状分析や情報開示の段階を超え、目標設定、投資判断、事業変革へと取り組みを発展させていることです。ネイチャーポジティブは環境部門だけの取り組みではなく、事業成長や競争力強化につながる経営アジェンダへと発展しつつあります。今後は、自社の依存・影響やリスク・機会を把握するだけでなく、それらを具体的な事業戦略や価値創造へどう結び付けるかが重要になると考えられます。


EYのネイチャーポジティブ支援

ネイチャーポジティブへの移行に求められるのは、開示のための分析ではなく、分析結果を経営判断や事業変革につなげることです。企業には、自然への依存・影響やリスク・機会を把握し、それらを事業戦略、投資判断、価値創造へと結び付けていくことが求められています。

EYは、現状把握、リスク・機会評価、戦略策定、自然移行計画の策定、実行支援、情報開示までを一気通貫で支援しています。グローバルネットワークと専門知見を活用し、企業が自然関連課題への対応を競争力強化や新たな事業機会の創出につなげられるよう伴走します。

ネイチャーポジティブは、もはや環境対応にとどまるテーマではありません。企業価値向上と持続的な成長を実現するための経営戦略そのものです。EYは、企業とともに自然と経済の好循環を創出し、持続可能な未来に向けた変革を推進していきます。



共同執筆者

松島 夕佳子
EY新日本有限責任監査法人 CCaSS事業部(気候変動・サステナビリティ・サービス)
マネージャー
JICA青年海外協力隊(環境教育隊員)、環境教育・環境政策関連のNPO法人での勤務等を経て、2013年に建設コンサルタント会社に入社。自然環境調査の現場から、生物多様性・資源循環・気候変動に係る国および地方公共団体の環境政策・環境関連計画策定支援に多数携わり、環境分野の幅広い知見を有する。2023年にEYに入社後は、TNFD対応支援やサステナビリティ情報の開示支援等に従事している。

浅井 亜耶
EY新日本有限責任監査法人 CCaSS事業部(気候変動・サステナビリティ・サービス)
マネージャー
総合建設コンサルタント会社の環境部門において技術職として、国内外における大規模な交通・発電インフラ事業に伴う環境影響評価や保全措置の計画立案業務に携わる。2024年にEYへ入社した後はCCaSS事業部にて、官公庁の自然関連案件や企業のTNFD開示支援、環境・ESGデューデリジェンス、サステナビリティ評価向上支援など、幅広く環境・サステナビリティ分野の業務に従事している。

髙篠 葵
EY新日本有限責任監査法人 CCaSS事業部(気候変動・サステナビリティ・サービス)
シニアコンサルタント
北海道大学大学院工学院 共同資源工学専攻修了後、総合建設コンサルタント会社にて、都市開発やダムなどの大規模な建設工事に伴う土壌・地下水の汚染調査・対策に従事。現在は気候変動・サステナビリティ・サービス(CCaSS)事業部にて、環境デューデリジェンスや、TNFD開示支援、労働安全衛生マネジメントの体制構築支援など環境・労働安全衛生分野の業務を担当。

山田 裕佳子
EY新日本有限責任監査法人 CCaSS事業部(気候変動・サステナビリティ・サービス)
シニアコンサルタント
建設コンサルタント会社にて地方自治体向けのコンサルタント営業に従事。経済と自然環境の両立を実現したい思いから2023年にEYに入社。CCaSS事業部にて、TNFD対応支援、資源循環分野に関する業務支援、環境デューデリジェンス業務、S&P等評価回答支援等、幅広く環境・サステナビリティ分野業務に従事している。

※所属・役職は記事公開当時のものです。



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サマリー 

本イベントを通じて、ネイチャーポジティブの実現には分析や開示だけでなく、その成果を戦略と実行につなげることが重要であることが改めて示されました。企業には、自然と経済の好循環を創出する経営への転換が求められています。


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