デジタル社会を支える通信インフラ障害・電気通信事故のリスクをいかにして抑制すべきか

デジタル社会を支える通信インフラ障害・電気通信事故のリスクをいかにして抑制すべきか


デジタル化の進展により重要な社会基盤となった通信インフラ(電話やインターネット等)が電気通信事故・障害などで利用できない場合、われわれの生活や社会経済活動に大きな影響を及ぼします。そのため、安定供給に向けた仕組みの構築が不可欠です。

共同執筆者

EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 リスクコンサルティング パブリックアジェンダ
ディレクター 稲垣 智子
マネージャー 田村 祐輔



要点

  • 技術の進歩や環境の変化などにより電気通信事故の大規模化・長期化や事故要因が多様化・複雑化している。
  • 電気通信サービスは情報発信やコミュニケーションツールに加え、医療、物流、自動車、金融、行政など多岐にわたる分野を支える社会インフラとして重要性が増している。
  • 法規制の改正や事故の再発防止に向けた教訓など国の取り組みを参考に設備の管理体制を整備することが重要である。


電気通信事業の重要性は増している

電気通信事業は、国民生活や社会経済活動に必要不可欠な電気通信サービスを提供する事業であり、社会構造が「人口急減・超高齢化」へ向かう中で、地域の産業基盤の強化や地方移住の促進など、地方の創生のためにICTが果たすべき役割が今後増大していくことが見込まれます。
 

* 総務省「情報通信白書令和7年版」(2026年6月30日アクセス)
 

 

通信インフラと重要インフラの関連性

新事業の創出や生産性の向上など経済活動の活性化や、安心・安全な社会の実現、医療・教育・行政などの各分野における社会的課題の解決に当たり、ICTが果たすべき役割も増大していくと考えられ、電気通信サービスの重要性は、一層高まってきています。

医療

院内業務や医療機関間における情報連携を効率的に行うため、医療機関等における情報化が進められており、電子カルテシステムの普及においては2011~23年にかけて一般病院では43.7%、一般診療所では33.8%増加している。*1

金融

2011~24年にかけてキャッシュレス決済額は117.9%増加している。 政府は将来的に世界最高水準のキャッシュレス決済の比率80%を目指している。*2

流通

電子商取引(EC)化が進んでおり、物販系、サービス、デジタル分野のBtoC-ECの市場規模は、2019~24年にかけて34.9%、BtoB-ECの市場規模は45.7%増加している。*3

物流

配送指示や配送ルート等の配送ドライバーが必要な情報の連携等を行うシステムや荷物の問い合わせシステム等を活用し、労働力不足等に鑑みた物流の構造改革の促進がされている。*4


*1 厚生労働省「医療分野の情報化の推進について」、www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/johoka/index.html (2026年6月30日アクセス)

*2 経済産業省「2024年のキャッシュレス決済比率を算出しました」、www.meti.go.jp/press/2024/03/20250331005/20250331005.html (2026年6月30日アクセス)

*3 経済産業省「令和6年度 電子商取引に関する市場調査 報告書」、www.meti.go.jp/press/2025/08/20250826005/20250826005-a.pdf(2026年6月30日アクセス)

*4 2030年に向けた物流のあり方、一般社団法人日本経済団体連合会「2030年に向けた物流のあり方」、www.keidanren.or.jp/policy/2025/069_honbun.html (2026年6月30日アクセス)


電気通信サービスの需要と供給

2014年(平成26年)から2023年(令和5年)までの間に、固定系ブロードバンドと移動系超高速ブロードバンドの契約合計は約2.7倍、音声通信サービスの加入契約数は約26%増加し、電気通信事業者数(登録と届出事業者の合計)は、毎年増加傾向にあり、過去11年で約10,000社増加しています。

契約数の推移

契約数の推移

電気通信事業者数の推移

電気通信事業者数の推移

* 総務省「情報通信白書令和4~7年版」を参照しEY作成(2026年5月1日アクセス)


電気通信サービスの安全・信頼性は確保されているのか

電気通信サービスの需要と供給の増加やデジタル化が進展した現代社会において、携帯電話やインターネット等の通信インフラが利用できない等の電気通信事故は、国民生活や社会経済活動に多大な影響を及ぼします。また、緊急通報に関する事故は、国民の生命や安全にも大きな影響を与える重要な問題です。

事故検証会議・検証報告書の取り組みが開始された2015年度(平成27年度)以降、四半期報告事故件数は6,000件台でしたが、2022年度(令和4年度)以降7,000件台を記録しており、令和以降、重大な電気通信事故の発生件数は増加傾向にあり、2023年度(令和5年度)は過去最多タイの件数を記録しています。

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四半期報告事故の件数

四半期報告事故の件数

重大な事故の件数

重大な事故の件数

* 総務省「令和5年度電気通信事故 に関する検証報告」、www.soumu.go.jp/main_content/001046226.pdf(2025年3月3日アクセス)


電気通信事故の発生リスク

重大な電気通信事故が発生するリスクは、設計段階の情報連携不足による考慮漏れや構成不備、工事段階でのヒューマンエラー、ソフトウェア導入・更改時の検証環境や項目の未整備、維持・運用時の監視不足や復旧手順の未確立など、各段階に常に介在しており、継続的な注意と対策が不可欠です。

電気通信事故の発生リスク
電気通信事故の発生リスク

* 総務省「電気通信事故検証会議の報告 平成27年度~令和6年度」を参照しEY作成(2026年4月13日アクセス)


電気通信事故のリスクにどのように向き合うべきか

電気通信事故の抑制に向けた国の取り組み

電気通信サービスが、社会インフラとしての重要性が急速に増していることや利用者の動向に伴い、電気通信事故を抑止し、その影響を小さくするため、総務省では、過負荷試験の義務化や経営資源の状況を含む管理規程の遵守状況の自己点検・評価、報告基準の見直し等の法規制の改正を行っています。

省令

改正のポイント

電気通信事業法施行規則及び事業用電気通信設備規則の一部を改正する省令(令和5年総務省令第71号)

故障による利⽤者に及ぼす影響が⼤きい (交換機能、制御機能、設備の運⽤・監視・保守に係る機能、 加⼊者管理機能を有する)携帯電話⽤設備等について、トラヒックの瞬間的かつ急激な増加及び制御信号の増加を想定した過負荷試験の実施を義務化。【事業⽤電気通信設備規則第8条の2の2】

事業⽤電気通信設備の⾃⼰確認の届出事項に、当該過負荷試験に関する説明書を追加。【電気通信事業法施⾏規則第27条の5 第4号】

電気通信事業者が事業⽤電気通信設備の管理の⽅針・体制・⽅法等を⾃ら定める管理規程の届出事項として、以下を追加。 【電気通信事業法施⾏規則第29条 第3号】

 

 

 

ヒューマンエラー防⽌策に関すること

電気通信設備の損傷⼜は故障による利⽤者に及ぼす影響が⼤きい (交換機能、制御機能、加⼊者管理機能等を有する)設備に対するリスクの分析・評価、事業継続計画の策定に関すること

管理規程の遵守状況、電気通信設備の保守・運⽤等に必要な経営資源の状況について⾃ら⾏う点検及び評価に関すること

電気通信事業法施行規則の一部を改正する省令(令和8年総務省令第21号)

利用者から電気通信役務の提供の対価として料金の支払を受けないインターネット関連サービスに関する停止及び品質を低下させた事故の時間を見直し。【電気通信事業法施⾏規則第58条第2項】

* 総務省「新規制定・改正法令・告示 省令」、「令和5年9月26日 電気通信事業法施行規則及び事業用電気通信設備規則の一部を改正する省令(令和5年総務省令第71号)」、「令和8年3月4日 電気通信事業法施行規則の一部を改正する省令(令和8年総務省令第21号)」(2026年4月13日アクセス)


電気通信事業者が行うべき取り組み

電気通信事故は、利用者の生活や社会活動に直接影響を及ぼすことから、事業継続における民間企業の重大な経営課題です。上記のリスクを未然に防ぎ、電気通信事故を抑制するため、総務省が公表している「電気通信事故に関する検証報告」に掲載されている他事業者の電気通信事故の事例や事故を踏まえた教訓、「情報通信ネットワーク 安全・信頼性基準」などの国が定めた規程や基準等を参考に、ネットワーク構成、運用プロセス、組織体制等、事故リスクを可視化の上、設計から維持運用プロセスの一貫した設備管理及びガバナンスの強化が必要です。

■電気通信事故の抑制に向けた取り組み

1.リスクの高い設備・業務領域の特定

  • 電気通信事故発生時のサービスへの影響や他設備等への影響の大きい設備を整理
    *電気通信事業法施行規則第58条の2を参考に整理

2.設計管理運用リスクの可視化(ヒートマップ化)

  • 国の規程・基準や自社・他社の事故事例等に基づく管理体制を確認
  • 改善が必要なリスクの洗い出し
  • リスク評価と対応の優先順位付け

3.リスクに応じた対策設計

  • 国の規程・基準、他社の管理体制等を参考に、管理体制を構築

4.対策実行・定着支援

  • 設計した対策を実行
  • 定着化に向け社内外に向け教育・研修や他設備への横展開を実施
電気通信事故の抑制に向けた取り組み
*電気通信事業法施行規則第58条の2を参考に整理

電気通信事故は、国民の生命・安全や社会経済活動に重大な影響を及ぼす重要な課題です。国と通信事業者が連携し、法規制や行政によるモニタリングを通じて事故リスクの抑制に取り組むとともに、事業者はデジタル化の進展を踏まえ、関係者間で協議しながらリスクを継続的に洗い出し、抑制策及び事故発生時の影響最小化に向けた備えを行うことが重要です。




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サマリー 

電気通信サービスの重要性が高まる中、電気通信事故の大規模化・長期化や原因の多様化・複雑化が進展しています。国や事業者が、電気通信事故抑制に向けてリスク管理や取り組みを強化する必要性が増しています。



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