EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
要点
デジタル技術の進化とともに、企業経営の在り方も大きく変化しています。従来の「モノ」や「サービス」そのものの価値に加えて、顧客が企業と接する全ての体験、すなわち「カスタマーエクスペリエンス(CX)」が企業価値の源泉となりつつあります。特にデジタルトランスフォーメーション(DX)が進展したことで、多様化した顧客属性や顧客行動をデータとして補足し、科学することで課題解決や利益創出を行うCXマネジメントが可能になりつつあります。
このような背景から、全世界の企業で最高顧客体験責任者(CCXO/CCO)を設置する動きが加速しています。2024年時点で約90%の企業がCCXO/CCOまたは同等のリーダーを置いているという調査結果*1 があるほど、CXマネジメントの全社的な統合による企業経営=「CX経営」が本格化しています。かつてはマーケティング部門の一機能であったCXが、今や経営戦略の中核に位置付けられているのです。
*1 Gartnerプレスリリースより
現代の消費者は、リアルとデジタルを自在に行き来しながら購買プロセスをたどっています。SNS、レビューサイト、Agentic AIなど、情報源は多岐にわたり、購買に至るまでのタッチポイントは平均27にも及ぶという調査結果*2もあります。特にZ世代以降の若年層は意思決定を行う際に、SNS上のクチコミや他者からの評価を重視する傾向にあり、従来の企業からの一方通行的なマーケティングでは顧客の心をつかむことが難しくなっています。同時に、「自分らしさ」や「オリジナリティ」を重視する傾向が強まっており、他者と同じものやメジャーな商品を避ける動きも見られます。
こうした多様化・複雑化した顧客行動に対応するためには、顧客一人一人のニーズや価値観を深く理解し、パーソナライズされた体験を提供することが不可欠となっています。
*2 Forrester購買調査より
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グローバル競争やAI技術の進化による模倣スピードの向上によって、製品やサービスの競争優位の寿命が著しく短くなり、機能的な差別化はますます困難になっています。ある調査*3では機能的な差別化ができている製品やサービスは21%に過ぎず、残る79%は価格競争や認知度で勝負せざるを得ない状況に陥っているという結果もあります。
このように機能的優位性の保持が困難になる中で、CX中心主義の企業・ブランドは、競合他社と比べ利益が高いといった調査結果が多く存在します。CXは新たな競争優位を創出する要素として注目されています。
*3 Innis Maggiore掲載記事より
ECやアプリなどのオンライン販売環境の拡充や、商品・サービスのブランド数増加によって、生活者は日常生活の中の選択肢の多さから知らず知らずのうちに意思決定にかかる時間が長くなっているという調査結果があります。さらに、デジタル広告の飽和やプライバシー規制の強化によってECサイトへの訪問獲得や顧客獲得といった広告経由での新規獲得コストは増加傾向にあります。
一方で、企業売上の過半数は既存顧客のリピート利用によるものであり、既存顧客の維持に要するコストは新規顧客獲得に要するコストの20%未満とコスト効率が良いとされています。このことから既存顧客の顧客生涯価値(LTV)最大化が経営革新の重要なテーマといえます。
CCXO/CCOは、CX改善とマネジメントによって顧客一人一人からどれだけの売上・利益を上げられるかにコミットする役割を担います。この役割のために従来のマーケティングや営業の枠を超えて全社横断的なCX経営の推進が求められており、具体的には以下の3つのミッションへの取り組みが挙げられます。
これらの取り組みにより、単なる顧客満足度の向上にとどまらず、CX視点から財務改善を実現し、利益創出につなげることが求められています。CCXO/CCOは、CEO直下の「戦略責任者」として、企業価値向上の中核を担う存在となっています。
CXの高い優良顧客と、売上や利益などの財務指標のつながりを可視化します。
例えば、顧客ロイヤルティ指標としては利用金額や利用サービス数などの顧客をランク分けと、ランク別の顧客数を縦横軸に整理して可視化し、財務指標としては顧客ランク別の年間売上金額とランク別の顧客数を掛け合わせることで売上金額を算出することができます。
他にも、顧客ロイヤルティ指標をNPSなどのCX指標で計測し、CX指標と解約や追加購入など因果関係を分析して可視化し、財務指標としてはCX指標でNPSが+1ptすることによる収益効果を予測することが可能になります。
CXの改善により、問い合わせ件数や返品数が減少することで、対応リソースの効率化や人件費・返品処理コストの削減が期待できます。例えば、月間問い合わせ件数が10,000件から7,000件に減少すれば、平均対応時間や人件費単価を掛け合わせることで、年間数百万円規模のコスト削減が可能となります。
さらにCXが向上することで、既存顧客からの紹介が増加し、新規顧客獲得コストの抑制につながることが期待できることも重要なポイントです。
CXマネジメントを通じて蓄積する顧客データは、抽象的なブランド資産に将来予測性の高い資産価値を付加する重要な要素となります。
顧客に関連する要素としては、顧客数、顧客価値(顧客一人一人が製品・サービスに適正だと感じる品質、価格、利便性)、ロイヤルティ価値(顧客一人一人が企業・ブランドに継続的な利用を判断する価値や関係性)などが挙げられます。
データに関連する要素としては、属性データ(氏名、住所、性別、年齢、連絡先、ご契約情報などの基本情報)、購買属性データ(過去の購買に関連する商品、金額、日時などの情報)、行動データ(サイトやアプリの閲覧履歴、サービスの利用履歴、問い合わせ履歴等)、アンケートデータ(サービス満足度、興味関心事項などへの回答データ)、機械学習データ(行動予測や需要予測等)などが挙げられます。
CXを起点とした従業員評価制度を構築し、従業員が顧客のために行ったCX向上の取り組みを顧客バリューアップの結果として従業員自身に還元します。これによりCXと従業員体験(EX)の好循環を創出し、従業員のやりがいだけでなく人的資本の強化につなげることができます。
例えば、顧客のNPS評価を従業員の評価制度に反映し、ロイヤルティ顧客の分布に応じた従業員への報酬還元を行うことによるEXとCX向上の同時実現が期待できます。
従来、企業は投入する資源を効率的に管理し、コスト抑制によってROIを向上するといったアプローチを行っていました。しかし現在、リアルとデジタルが融合し、顧客理解を高度化し、直接アプローチしてLTV最大化と利益の最大化を目指すアプローチが可能になったことで「コスト最大化・ROI向上」から「顧客価値×ロイヤルティ価値」による利益創出へとパラダイムシフトが進んでいます。
この顧客起点の利益創出アプローチの実現には、顧客行動をデータで補足し、顧客理解によって、最適な体験の設計・提供を行い、関係育成や顧客拡大を行いながら、CX評価/改善を行うというCXマネジメントプロセスの実践が重要です。
EYでは、CX経営実現に向けて戦略策定/モニタリング、PDCA実行機能、基盤構築といった各レイヤすべてにおいてCX変革を支援しています。
CX経営の実現に向け、顧客行動や顧客行動理由として取得できる情報を用いて、戦略策定/モニタリング、PDCA実行機能、基盤構築の各レイヤにおいての変革が必要となる
例えば、CCXO/CCOといったCX責任者、そしてCXチームは全社横断でCXを向上させるのがMissionとなります。CX戦略策定フェーズでは、部門や事業を横断したCX戦略立案や、財務成果指標(売上や利益等)と連携したCXマネジメント指標設計、モニタリングプロセスの設計を実施。実行フェーズはモニタリングと、スピーディな意思決定によってCX向上・改善、離脱防止の実行により財務成果を目指します。
CDPで顧客データを統合したのちに、顧客データを活用してCX向上、さらには売上や利益の改善につなげる必要があります。こういったケースでは、顧客行動データの分析やインサイト分析によって購買動機や離脱理由を推定、高収益な顧客を発見するなどCX最適化につながる要素をデータから導出。その上で、顧客体験設計においては購買や利用継続につながるチャネル横断の体験設計や、顧客一人一人に合ったナラティブな体験提供のためのパーソナライズドシナリオ設計により、LTVの向上を目指します。
部門や事業を横断した新たなCXマネジメント組織の立ち上げや、既存類似組織との業務機能の整理、CXマネジメントのモニタリングやPDCAプロセスの実行体制づくりをご支援します。また、設計した業務機能の整理やPDCAプロセスなどに基づきスキル定義を行い、育成計画と人材育成プログラムの作成も行っています。
私たちEYは顧客を中心に据え置き、プロセス全体ひいてはビジネスそのものをCXという考え方でご支援することにこだわったチームを組織しています。
デジタル/AI時代のCX経営は、単なる顧客満足度の向上にとどまらず、企業価値の向上や持続的成長の実現に直結する戦略です。経営層は、CX経営を全社戦略の中核に据え、組織横断での推進体制を構築することが求められます。また、顧客データの活用やAI技術の導入、EX(従業員体験)との連動など、最新のテクノロジーや組織マネジメント手法を積極的に取り入れることが重要です。
今後は、顧客一人一人の価値観や行動特性に寄り添ったパーソナライズドな体験提供が、企業の競争力を左右する時代となるでしょう。CX経営の実践を通じて、企業は新たな成長機会を創出し、社会に対してもより大きな価値を提供できるはずです。
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デジタル/AI時代において、顧客管理を中心に据えたCX経営は、企業の持続的成長と競争優位の実現に不可欠な戦略です。経営層がリーダーシップを発揮し、全社一丸となってCX変革を推進することが、これからの企業価値向上のカギとなるでしょう。